「食道がんステージ3」の症状・治療法はご存知ですか?医師が監修!
食道は、食物を口から胃へ運ぶ管状の臓器で、食事をするためには欠かせない臓器の一つですよね。そんな食道の代表的な病気として食道がんがありますが、食道がんについてや食道がんのステージについて、皆さんはご存じでしょうか。
本記事ではそんな食道がんのステージ3について以下の点を中心にご紹介します。
- ・食道がんのステージ
- ・食道がんステージ3の症状
- ・食道がんステージ3の治療
食道がんのステージ3について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
食道がんとは
食道がんは、食道の粘膜から始まるがんで、一度に食道内の複数の場所に発生することもあります。
食道がんは、早期食道がん、表在食道がん、進行食道がんの三つの段階に分けられます。早期食道がんは食道の粘膜内に留まり、表在食道がんは粘膜下層まで広がり、進行食道がんはさらに深い層まで広がります。
進行食道がんでは、がんは食道の外に広がり、気管や大動脈などの周囲の臓器に浸潤します。さらに、がん細胞は食道の壁内のリンパ管や血管を通じて全身に広がり、リンパ節や肺、肝臓などの遠隔臓器に転移します。
早期発見と診断が重要で、内視鏡を用いた治療により、早期の食道がんは治療できるとされています。
食道がんのステージ
食道がんは五つのステージ(病期)で進行段階が分類されています。それぞれステージごとに解説します。
0期
食道がんのステージ0期は、がん細胞が食道の内側を覆う粘膜層に限定されている状態を指します。この段階では、がんは食道の壁を透過して広がることや、リンパ節やほかの臓器に転移することはありません。
早期発見と適切な治療により、予後は良好とされています。
I期
食道がんのステージI期は、がん細胞が食道の粘膜下層まで広がっていますが、がんはまだほかの臓器に広がっていない状態を指します。また、食道の粘膜内にがんが留まっていますが、近接するリンパ節に転移している場合もI期に含まれます。
II期
II期の食道がんは、がん細胞が食道の筋層を超えて食道壁の外部に広がった状態、またはがんが筋層に留まっていますが、近接するリンパ節に転移している状態を指します。
III期
III期の食道がんは、がん細胞が食道の外部に広がり、リンパ節(食道壁に近いまたは少し離れている)に転移が見られる段階、またはがんは周囲の臓器に広がっていますが、転移は確認されない状態です。
IV期
IV期はがん細胞が周囲の臓器に広がり、リンパ節にも転移している状態(IVa期)や、ほかの臓器への転移が見られる状態(IVb期)です。IV期では、がんは体の広範囲に広がっており、治療はより複雑で困難になります。
食道がんのステージ3の症状
食道がんのステージ3の段階では、飲食するときに胸部や喉に違和感を感じることが多く、なかでも固形食や液体の摂取が困難になることがあります。これは食道内の通路が狭くなるためで、これが進行すると栄養不足や脱水症状が起こりやすくなります。
さらに、体重減少もステージ3の症状です。これは食事摂取の困難さから栄養が不足し、急激な体重減少が見られるためです。また、食道がんが進行すると、周囲の組織や器官が圧迫され、胸部に痛みや圧迫感が現れることもあります。さらに、咳や痰に血が混ざることもあり、これにより急激な血液の損失を引き起こし、貧血や倦怠感をもたらす可能性があります。
食道がんが進行すると、喉や喉頭に影響を与え、声に変化が生じることもあります。
食道がんのステージ3の治療法
食道がんのステージ3の治療は、患者さんの体調と希望に基づいて選択されます。手術ができる場合は手術が第一選択ですが、その場合でも最初に細胞障害性抗がん薬を用いた化学療法が行われ、その後に手術が行われます。
手術後の病理検査でがんが消えていない場合、免疫チェックポイント阻害薬が補助療法として使用されます。手術が行われずに化学療法が行われた場合で、リンパ節への転移が確認された場合には、手術後に化学療法が行われることがあります。
手術が困難な場合や手術を希望しない場合、根治的化学放射線療法が行われます。この治療後にがんが残存または再発した場合、救済治療として手術や内視鏡治療が行われます。内視鏡治療は、食道内の小さな病変に対して行われ、光線力学療法が用いられることもあります。
手術や化学放射線療法が困難な場合は、放射線治療単独療法や化学療法が行われます。
食道がんの治療
続いては、ステージに関係なく、食道がんの治療法を治療法ごとに紹介します。どんな場合でも、治療は患者さんの体調と希望に基づいて選択されます。
内視鏡治療
内視鏡治療は、早期食道がんの治療法の一つで、がんが食道壁の粘膜層に留まり、リンパ節転移がない場合に適用されます。内視鏡治療では、内視鏡を用いてがんを切除します。また、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)の二つの手法があります。
EMRは粘膜にとどまったがんを切り取る方法で、短期間の入院で完了し、治療後すぐに食事が取れます。一方、ESDはより深く、がんを切除する方法ですが、食道の壁が薄いため、技術的に難しく、熟練した施設でのみ行われます。
切除した組織は顕微鏡でがんの進行状況やリンパ節転移の可能性を詳細に検査されます。そして検査の結果に基づき、追加の治療が必要な場合もあります。
外科治療
食道がんの外科治療は、がんの位置と進行度により異なります。頚部食道がんでは、がんが限定されている場合、頚部食道のみを切除し、小腸を移植します。胸部食道がんでは、食道と一部の胃を切除し、胃を管状にして再建します。
腹部食道がんでは、食道の下側と胃の出口部分を除去し、残胃を食道とつなぎます。手術は体に大きな負担をかけ、合併症のリスクがありますが、適切な管理とケアにより、リスクは抑えられるとされています。
最近では、ロボット支援手術が導入され、より精密な手術が行われています。
放射線治療
放射線治療は、がん細胞を縮小するために高エネルギーのX線を直接照射する治療法です。放射線治療は、食道や胃、喉頭の機能を保持することが可能とされ、化学療法と併用したほうが効果が期待できるとされています。治療の目的は、がんの消失(根治照射)またはがんによる症状の緩和(緩和照射)です。
放射線治療は副作用を伴う可能性があり、治療後の数ヶ月から数年にわたって副作用が現れることもあります。効果判定は内視鏡やCTを用いて行われます。
最近では、手術を受けられる患者さんにも化学放射線療法(放射線治療と抗がん剤治療を同時に行う方法)が行われる場合もありますが、長期的な治療成績では手術療法に劣る可能性があるため、治療法を選択する際は医師としっかり相談しましょう。
薬物療法
食道がんの薬物療法は、全身に広がったがん細胞に作用する抗がん剤を用います。主にフルオロウラシル(5-FU)、ドセタキセル、シスプラチン、ニボルマブなどが使用されます。これらの薬剤は単独、または複数組み合わせて用いられ、放射線や手術とも組み合わせることがあります。
なかでも5-FUとシスプラチンの併用療法(FP療法)が主流で、さらにドセタキセルを加えた3剤併用療法(DCF療法)も効果が期待されています。
副作用は個人差がありますが、血液細胞の減少や吐き気などが現れる可能性があります。
「食道がんのステージ3」についてよくある質問
ここまで食道がんのステージ3の症状や治療法を紹介しました。ここでは「食道がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がんの治療によって、日常生活にどのような影響が出ますか?
甲斐沼 孟(医師)
手術をする場合は入院と長期の回復期間が必要になるため、仕事や日常生活の調整が求められます。また、放射線治療は週5回程度の通院を必要とします。また、頸部食道がんの手術後は、声帯が失われ、発声法の習得や人工喉頭の使用が必要となります。
食道がんの原因は何ですか?
甲斐沼 孟(医師)
食道がんの主な原因は、喫煙と飲酒です。また、飲酒の際に生じるアセトアルデヒドという発がん物質を分解する能力が低い人はよりリスクが高いとされます。また、熱い食べ物の摂取や長期的な食道の炎症も食道がんのリスクを増加させるといわれています。
編集部まとめ
ここまで食道がんのステージ3についてお伝えしてきました。食道がんのステージ3の要点をまとめると以下の通りです。
⚫︎まとめ
- ・食道がんは0期、I期、II期、III期、IV期のステージがある
- ・食道がんステージ3の症状は、さまざまで、飲食するときに胸部や喉に違和感を感じることや急激な体重減少、胸部に痛みや圧迫感が現れることなどがある
- ・食道がんステージ3の治療は、手術が可能な場合は手術が第一選択で、最初に化学療法も行われる場合が少なくない
「食道がん」と関連する病気
「食道がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
「食道がんの症状」と関連する症状
「食道がんの症状」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸の違和感
- 食べ物がつまる感じ
- 飲食物がしみる
- 声がかすれる
これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。