「食道がんの末期症状」はご存知ですか?治療法も解説!医師が監修!
食道がんは初期の場合、症状がほとんどないといわれていますが、がんが進行すると嚥下障害・胸痛・咳などの症状が現れます。
末期ではほかの臓器に転移しているケースも少なくないため、それぞれの臓器特有の症状が現れる可能性があるでしょう。
今回の記事では、食道がんの末期症状・治療法・緩和ケアを詳しく解説します。ご自身やご家族の方で食道がんの末期に該当するもしくはその疑いがある場合は、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
食道がんとは?
食道がんとは、食道の内側を覆っている粘膜に発生するがんです。
食道がんには扁平上皮がん・腺がんの2つのタイプに分けられます。ここからは、食道がんの種類・原因・患者数・好発年齢について紹介します。
扁平上皮がん
扁平上皮がんは、食道の粘膜上皮にある扁平上皮細胞ががん化したものです。
食道の壁は内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・外膜の4つで構成されています。扁平上皮がんは、粘膜のなかでも内側に位置する粘膜上皮にできるがんです。
日本では食道がんの約90%が扁平上皮がんといわれています。
腺がん
腺がんは粘膜下層にある食道腺などの腺細胞ががん化したものです。欧米で発症しやすく日本では少ない特徴があります。しかし、近年では食の欧米化や肥満の増加に伴い、腺がんの患者数が増加傾向にあります。
原因
食道がんの主な原因は飲酒と喫煙です。特に、扁平上皮がんは飲酒・喫煙との関連が強く、飲酒習慣・喫煙習慣がどちらもある方はより発症しやすいといわれています。
また、栄養状態が悪い・野菜不足なども食道がんを引き起こす原因と考えられています。なお、腺がんは逆流性食道炎により胃酸で食道が傷つくことで発症することもあるようです。
患者数と好発年齢
日本で食道がんと診断された患者数は、2019年で26,382人といわれています。このうち男性は21,719人、女性は4,663人です。食道がんは男性に多く、60〜70歳に好発しやすいといわれています。
食道がんの末期症状
食道がんの末期では、どのような症状が現れるのでしょうか。
末期ではがんが食道の外側に広がっているだけではなく、ほかの臓器に転移している可能性があります。ここからは食道がんの末期症状について解説します。
食物・水分の摂取困難
食道がんの末期では腫瘍が大きくなっているため、食道が狭くなっており食物や水分がとおりにくい状態となります。このように十分な栄養や水分が摂取できなくなるため、点滴や胃ろうなどによる栄養補給が必要になります。
咳
腫瘍が大きくなると気管や気管支にも影響を及ぼします。食道の腫瘍が大きくなったり、気管や気管支にがんが広がったりすることで、咳が出る場合もあります。
がんの転移による症状
食道がんの末期では、ほかの臓器に転移しているケースも少なくありません。
転移しやすい臓器は肺・肝臓・骨などです。肺に転移した場合は血痰(血が混ざった痰)や息切れが生じ、肝臓に転移した場合は背中の痛みやむくみなどが生じます。
骨に転移した場合は、痛みや骨折などが起こります。いずれも日常生活に支障を来す可能性があるでしょう。
食道がん末期の治療法
食道がんの末期は手術でがんを切除するのが難しいケースも少なくないため、放射線治療や抗がん剤による治療がメインとなります。
また、がんの症状や治療による副作用を緩和させるために対症療法も行います。ここからは食道がん末期の治療法をみていきましょう。
放射線治療
放射線治療は、がんやその周辺に放射線を当ててがん細胞を死滅させて治療する方法です。
食道がんの末期では手術が難しいもののがんが部分的にとどまっている場合は、抗がん剤による治療と併用して治療を行います。
また、がんがほかの臓器に転移し全身に広がっている場合は、がんの症状を抑えるために症状の原因となっている部分に放射線治療を行います。ただし、放射線治療には副作用があるため注意が必要です。
治療を開始してから数週間後に食道が炎症を起こし、痛みやつかえ感を覚えることがあります。さらに治療が終わった後も肺炎などの副作用が生じることがあります。
抗がん剤による治療
抗がん剤による治療には、完治を目指して行う場合・がんの進行を抑制するために行う場合があります。
食道がんで用いられる抗がん剤は、細胞障害性抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬が挙げられます。細胞障害性抗がん剤は、細胞の増殖を抑制することでがん細胞を攻撃する薬です。
一方で、免疫チェックポイント阻害薬は免疫細胞のはたらきを抑制するものを阻害し、がん細胞に対する免疫力を維持する薬です。いずれも副作用があり、口内炎・吐き気・食欲不振などに悩まされる可能性があります。
副作用は薬の種類によって異なるため、医師と話し合って患者さんに合う薬を選択することが重要です。
対症療法
対症療法は、つらい症状をできるだけ取り除いたり緩和したりすることで生活の質を維持するために行う治療です。
食道が狭くなることによる通過障害や気管が狭くなることによる呼吸困難などの症状に対して、対症療法を行います。
具体的には飲食物が通過できるように食道ステントという金属の筒を食道に留置したり、呼吸できるように気道ステントを挿入したりします。患者さんによって症状が異なるため、患者さんの状態に応じて行うことが必要です。
食道がん末期の苦痛を和らげるための緩和ケア
食道がんになると、身体的なつらさだけではなく精神的にもつらくなります。
特に食道がんの末期では、痛みが強く出てつらくなったり、食べられなくてストレスを感じたりすることがあるでしょう。そのような場合、ほかの治療に加えて緩和ケアが行われます。
食道がんの末期ではほかの臓器へ転移している場合が多く、全身の痛みに悩まされる可能性が高いでしょう。これらの痛みに対しては適切な評価を行い十分な鎮痛剤を使用します。
また、精神的なつらさに対しても、心理士やソーシャルワーカーなどの専門職がチームとなりケアを行います。心身のつらさは患者さんによって異なるため、つらいことがあれば専門家に相談しましょう。
食道がんの終末期では、呼吸困難や大量出血などが起こり、生命に関わる可能性が考えられます。医師からの十分な説明を受けて、ご家族の方と一緒に向き合うことが大切です。
食道がんの末期についてよくある質問
ここまで食道がんの生存率・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「食道がんの末期」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がん末期の生存率と余命はどのくらいでしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
食道がん末期に該当するステージ4の5年生存率は10%未満といわれています。なお、5年生存率はがんと診断されてから5年間生存している患者さんの割合です。ほかのがんと比べて生存率が低いとされます。また、余命は患者さんによって異なりますが、診断されてから数ヵ月で亡くなるケースがあるようです。
食道がんをできるだけ早く発見する方法を教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
食道がんは早期の段階ではほとんど症状がなく、進行してから見つかるケースも少なくないとされます。早期発見するためには、定期的に健康診断や人間ドックを受けることが大切です。また、胸の違和感は早期発見につながる症状といわれています。飲食物を飲み込んだ際に胸の奥が痛んだり、熱い飲食物を飲み込んだ際にしみたりする症状が現れたら、医療機関を受診するとよいでしょう。
編集部まとめ
食道がんの末期では、がんが食道の外側に広がっているだけではなく、ほかの臓器に転移している状態です。そのため、飲食物が摂取困難になったり全身に痛みが出たりして、日常生活に支障を来します。
手術でがんを切除するのが難しいケースも少なくないため、治療では放射線治療や抗がん剤による治療が行われます。
また、がんの症状や治療による副作用を緩和させるための対症療法・がんによる心身の苦痛を緩和させるための緩和ケアも欠かせません。
食道がん末期は、生存率が低く予後が不良とされています。そのため、早期発見と早期治療が重要です。
胸の違和感や飲み込みのつかえ感など少しでも気になる症状がありましたら、医療機関を受診しましょう。
食道がんと関連する病気
「食道がん」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください
上記の病気は、食道がんのうち約20%にみられる病気です。食道がんと同時もしくは別の時期に発生する可能性があります。食道がんと診断されたら、ほかの部位でもがんを疑い検査することが大切です。
食道がんと関連する症状
「食道がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 食べ物が飲み込みにくい
- 胸や背中の痛み
- 体重減少
- 食欲不振
- 咳
- 声のかすれ
上記の症状は、逆流性食道炎・食道アカラシア・食道良性腫瘍などの病気でも現れる可能性があります。症状が現れたら自己判断せず、医療機関で検査を受けるようにしましょう。