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「食道がんの生存率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!医師が監修!

 公開日:2024/05/10
「食道がんの生存率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!医師が監修!

食道がんとは、食道という喉と胃をつなぐ臓器の粘膜にある細胞ががん化することで発症する病気です。進行すると食道の外側に広がっていき、ほかの臓器に転移する場合もあります。

食道がんの生存率は発症してから早い段階の方が高く、ほかの臓器に転移すると治療が難しくなり生存率が低くなります。食道がんを治療するためには、早期発見が重要です。

今回の記事では、食道がんの生存率・症状・治療法を詳しく解説します。ご自身・ご家族などの周りの方で食道がんの疑いがある場合は、ぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

食道がんとは?

食道がんとは食道の内面をおおう粘膜にできるがんです。
食道とは、喉と胃の間をつなぐ細長い管状で、飲み込んだ食物が胃に送り込まれる通り道として役立つ臓器です。食道の壁は内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・外膜の4つから構成されています。
早期では粘膜内にがんがとどまりますが、進行すると食道の外側に広がり周辺臓器までがん化することがあります。さらにリンパ管や血管までに及ぶと、肝臓や肺などの臓器まで転移する恐れがあります。

食道がんの生存率・再発率

食道がんの生存率はステージによって異なります。食道がんのステージは大きく0期・1期・2期・3期・4期に分けられます。
0期はがんが粘膜内にとどまっている状態、1期は粘膜下層にとどまっている状態で、2期は粘膜下層にとどまっているがリンパ節に転移がみられるもしくは外膜まで広がっている状態です。
また、3期は外膜までの広がりやリンパ節に転移がみられる状態、4期は食道周辺の臓器に広がっているもしくはほかの臓器に転移している状態です。
一般的に、生存率はがんと診断されてから5年間生存している患者さんの割合を示す5年生存率が使われます。食道がんの5年生存率は、以下のとおりです。

  • 1期:約70%
  • 2期:約40%
  • 3期:約25%
  • 4期:10%未満

がん統計の結果では、食道がんの5年生存率は全体で約40%です。
胃がんや大腸がんでは約60〜70%とされているため、食道がんは胃がんや大腸がんよりも治療が難しいと考えられています。
また、食道がんの再発率は40〜60%前後とされています。再発したケースは手術してから2年以内に発生することが多いようです。
再発する部位は、最初に発生した部位・リンパ節・肺や肝臓などのほかの臓器などが挙げられます。

食道がんの症状

食道がんが発症すると、どのような症状が現れるのでしょうか。
食道がんの初期ではほとんど症状がなく、進行すると飲食物を飲み込んだ際に違和感を覚える・胸や背中が痛むといった症状が現れます。ここからは、食道がんの症状について詳しく解説します。

進行するまでは無症状のことも多い

食道がんの初期では、ほとんど症状がないとされています。
そのため、自覚症状がきっかけでがんを発見したタイミングではすでに進行しているケースが多いようです。なお、健康診断や人間ドックで偶然発見される場合もあります。

嚥下障害・体重減少

がんが大きくなり食道の内側が狭くなると、飲食物がつかえ飲み込みにくくなります。
そのため、食事量が減り体重が減少します。次第に水も通らなくなり、唾液も飲み込めず戻してしまうこともあるため注意が必要です。

胸痛・背部痛

食道は体内の背中側に位置しており、肺や心臓などの臓器が近接しています。がんが食道の周りにある肺・背中・大動脈などに広がると、胸や背中に痛みを感じるようになります。

食道がんは気管や気管支などにも影響を及ぼします。食道にできたがんが大きくなり気管や気管支を圧迫したり、気管や気管支などにがんが広がったりすると、咳が出ることがあります。
さらに肺炎を起こしやすくなるため注意が必要です。

声のかすれ

食道がんは声を調整している反回神経の近くのリンパ節まで広がることがあります。
反回神経ががんで壊されると、声がかすれます。一般的に声がかすれると耳鼻咽喉科を受診する場合が多いですが、喉そのものには腫瘍や炎症はないため見逃されてしまう可能性があるでしょう。

食道がんの治療法

食道がんはがんの広がり具合によって、治療法が変わります。
一般的に切除可能な場合は手術で腫瘍を切除し、ほかの臓器に転移している場合は抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療などを行います。
また、患者さんの希望や状況も考慮して治療法が決定されるため、医師と十分に相談することが大切です。

内視鏡治療

がんが粘膜にとどまっている早期の食道がんの場合は、内視鏡を用いて食道の内側から腫瘍を切除する内視鏡的切除を行います。
内視鏡的切除はほかの手術と比べると体への負担が少なく、食道を残すことが可能です。ただし、食道がんは早い段階でリンパ節に転移する可能性が高いため、切除後は詳しい検査を行う必要があります。

外科治療

がんが広がっていても手術ができる場合は、外科手術を行います。
外科手術はがんが発生している食道や周辺の組織を切除し、胃や腸を使って食道の代わりになる道をつくる手術です。がんが発生する部位によって手術方法は異なります。
ただし、食道がんの手術では消化管のつなぎ目から食物や消化液が流れ出て炎症を起こしたり、声がかすれたりするため、注意が必要です。

抗がん剤治療(化学療法)

抗がん剤治療(化学療法)は、根治を目指してほかの治療法と組み合わせて行う場合・外科手術できない場合・再発した場合に適用されます。
抗がん薬は状態によって、1種類もしくは複数の種類の薬を組み合わせて使用します。ただし、抗がん薬は副作用があるため医師と話し合って決めることが大切です。
抗がん薬の副作用は使用する薬によって異なりますが、一般的に吐き気・食欲不振・口内炎などが挙げられます。

放射線治療

放射線治療はがんの部分に放射線を当てて治療する方法です。手術と同様にがんの部分のみに対して行う治療であるため、食道や胃の機能を維持することが可能です。
また、放射線治療のみで行うよりも、化学療法と併用して行う化学放射線療法が効果的とされます。放射線治療も副作用があり、食道が炎症を起こしたり声がかすれたりします
さらに治療後、数ヵ月から数年後に肺炎や甲状腺機能低下などが起こるため、注意が必要です。

緩和治療

食道がんは手術や抗がん薬などの治療に加え、心身のつらさを解消する緩和治療も欠かせません。緩和治療ではがんの症状やがんの治療に伴う副作用などを緩和させるために行います。
食道がんでは嚥下障害によって栄養状態が低下している場合が多いため、治療の初期から緩和治療を取り入れることが大切です。

食道がんの生存率についてよくある質問

ここまで食道がんの生存率・症状・治療法などについて紹介しました。ここでは「食道がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

食道がんになりやすいのはどのような人ですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

食道がんは性別では男性に多く、年齢では60〜70代に多いといわれています。また、食道がんを引き起こす危険因子は飲酒や喫煙が挙げられます。そのため、喫煙習慣や飲酒習慣のある60歳以上の男性が食道がんになりやすいでしょう。

食道がんは完治しますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

食道がんは早期に見つかりがんを切除できれば、完治する可能性があるといわれています。ただし、手術で完全に切除しても約40〜60%の確率で再発する可能性があるため、手術後の定期的検査が必要です。

編集部まとめ

食道がんは食道の粘膜にできるがんで、進行すると食道の外側に広がりほかの臓器に転移する可能性があります。

食道がんの生存率は全体で約40%で、早期であれば生存率が高い傾向にあるといわれています。一方で、がんが進行しほかの臓器に転移すると生存率が低くなり、治療が難しいようです。

食道がんの治療ではステージや体の状態によって手術・抗がん剤治療・放射線治療・緩和治療を組み合わせて行います。

食道がんは初期の症状がほとんどないとされるため、進行しやすく治療が難しくなります。少しでも気になる症状があれば、医療機関を受診するように心がけましょう。

食道がんと関連する病気

「食道がん」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください

これらの病気は、食道がんと同時もしくは別の時期に発生する可能性があります。食道がんでは約20%の割合で発生するといわれているため、食道がんの発生が判明した場合はほかの臓器にも発生していないか確認することが必要でしょう。

食道がんと関連する症状

「食道がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胸の違和感
  • 食べ物のつかえ感
  • 体重減少
  • 胸や背中の痛み
  • 声のかすれ

上記の症状のなかでも、胸の違和感は早期発見につながる症状です。飲食物を飲み込んだ際に胸の奥がいたんだり、熱い飲食物を飲み込んだ際にしみたりするといった症状が現れます。これらの症状は一時的に消えることもありますが、違和感を覚えたら早めに医療機関を受診しましょう。また、食道がんでは喉に腫瘍や炎症がないため、声がかすれた症状で耳鼻咽喉科を受診してもがんを発見できない可能性があります。

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