「メラノーマの生存率」はどのくらい?検査・治療法も解説!【医師監修】
メラノーマとは皮膚のメラニン色素を作る細胞ががん化する病気です。ほくろが大きく広がるように進行し、やがてリンパや血液の流れに乗って全身に転移します。
ほかの皮膚がんと比較しても特に病気の進行が早いため、メラノーマと診断された時点で治療が困難になることを覚悟しなければならない場合もあるでしょう。
今回はメラノーマの進行速度・生存率・検査方法・治療方法について解説します。メラノーマと診断されても過剰に悲観せず、正しい知識を得て治療にあたりましょう。
監修医師:
高藤 円香(医師)
目次 -INDEX-
メラノーマとは?
メラノーマとは皮膚のメラニン色素を作るメラノサイトががん化した腫瘍と考えられています。がんが広がるスピードが大変早い点が特徴で、1〜2ヵ月で全身状態が変わり、手術しても早い時期に再発・転移が起こるケースも少なくありません。
ほくろのような見た目のメラノーマは、日本人の場合は約30%が足の裏に発症するといいますが、ほかにも粘膜・爪にも表れます。急にほくろができたり、ほくろが急速に大きくなっている場合はメラノーマを疑い、皮膚科専門の医師に相談しましょう。
メラノーマの生存率はどのくらい?
以下ではメラノーマの生存率を解説します。正しく理解するためにまずは臨床進行度について理解しましょう。臨床進行度とはがんと診断された時点での病巣の広がりによって症例を分類する考え方です。
以下の3群に分類します。
- 限局
- 領域浸潤
- 遠隔転移
限局とはがんが発症した臓器内に留まっている状態、領域浸潤とはがんが発症した臓器から近いリンパ節・臓器まで広がった状態です。そして遠隔転移はがんが発症した臓器から遠いリンパ節・臓器まで転移している状態を指します。
以下では22府県が参画した地域がん登録による、2009〜2011年のがん生存率データを臨床進行度ごとに紹介します。
限局の5年相対生存率
メラノーマを含む皮膚がんが臨床時点で限局の状態だった場合、つまりがんと診断された時点でがん細胞が発症した皮膚に留まっていた場合の5年後の生存率は98.1%です。
領域の5年相対生存率
メラノーマを含む皮膚がんが臨床時点で領域浸潤の状態だった場合、つまりがんと診断された時点でがん細胞が発症した皮膚周辺まで広がり始めていた場合の5年後の生存率は65.8%です。
遠隔の5年相対生存率
メラノーマを含む皮膚がんが臨床時点で遠隔転移の状態だった場合、つまりがんと診断された時点でがん細胞が発症した皮膚から離れた臓器まで転移していた場合の5年後の生存率は16.5%です。
メラノーマの検査方法は?
メラノーマの検査は以下のように段階的に進められます。
- 肉眼による視診
- ダーモスコピー検査
- 生検
- 全身の画像診断
具体的にどのような検査になるのか以下で解説します。
肉眼による視診
メラノーマの肉眼による視察はABCDEルールに基づいて行われます。
- Asymmetry(左右非対称である)
- Border of irregularities(辺縁がギザギザしている)
- Color variegation(色むらがある)
- Diameter greater than 6mm(大きさが6ミリ以上ある)
- Evolution(大きさ・色・形などに変化がある)
同じメラノーマでも見た目・症状などにより以下のように分類されます。
- 表在拡大型
- 末端黒子型
- 悪性黒子型
- 結節型
- 粘膜型(眼球結膜)
- 粘膜型(口腔粘膜)
- 粘膜型
自己判断で通常のほくろとメラノーマの区別はできません。違和感を覚えたら早めに皮膚科専門の医師に相談しましょう。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピーとは皮膚病変の表面を拡大して詳しく観察できる特殊な拡大鏡です。皮膚表面の色素を詳細に観察し、ほくろかメラノーマか簡易的に判断します。観察するのは以下のようなポイントです。
- 色調
- 色素のパターン
- 色素の分布
ダーモスコピー検査のみでメラノーマの診断を確定することはありません。ダーモスコピーでの検査はあくまで臨床診断を補助するものと理解しておきましょう。
生検
メラノーマの診断確定のために、疑いのある組織を顕微鏡で観察する皮膚生検を行います。生検用の組織を採取する際は、病気か判断しやすくするため可能であれば疑いのある部分を全切除します。
部分の場所や大きさ・合併症などの事情があれば、一部の組織のみ採取して生検に使うことも可能です。しかし、判断の精度が劣ることを理解しておきましょう。
全身の画像診断
メラノーマの診断が確定すると、次は病気がどの程度進行しているか、つまり病期(ステージ)を確認しなければなりません。その時に必要になるのが以下のような全身の画像検査です。
- レントゲン
- CT
- MRI
- 超音波検査
- PET検査など
リンパ節・内臓に転移がないか確認し、治療方法を確定するための判断材料とします。
メラノーマの治療方法について
メラノーマの治療方法は以下の3つから選択されます。
- 手術
- 放射線療法
- 薬物療法
医師は検査で得た「がんが身体のどこまで広がっているか」の情報をもとに、適切な治療方法を選択します。以下ではその治療方法を詳しく解説します。
手術
ほかの臓器に転移が認められない場合は、手術で患部を切除します。手術にもいくつか選択肢があり、病変が皮膚表面に限られる場合は、患部周辺を少し大きめに切除する拡大切除を選ぶのが一般的です。
対してリンパ節まで病変が広がっていた場合は領域リンパ節をまとめて切除するリンパ節郭清術が選ばれます。
放射線療法
放射線療法の目的は症状緩和と術後補助療法です。メラノーマが脳・骨に転移した場合は、手術・薬剤での治療が難しいため、症状緩和を目的とした放射線治療をします。
また術後にメラノーマの再発・転移が心配される場合は、術後補助療法として放射線療法が行われることもあります。
薬物療法
薬物療法は放射線療法と同様に、手術が難しい症例での症状緩和・術後の再発と転移防止のために選択されます。薬物療法は目覚ましい進化を遂げており、従来使われていたダカルバジンに加え、ニボルマブ・ペムブロリズマブ・イピリムマブなど選択肢が広がっています。
メラノーマの生存率についてよくある質問
ここまでメラノーマの生存率・検査方法・治療法などについて紹介しました。ここでは「メラノーマの生存率」についてよくある質問にMedical DOC監修医がお答えします。
メラノーマの人口あたりの罹患率はどのくらいですか?
高藤 円香医師
メラノーマを含む皮膚がんの人口10万あたりの罹患率は20.0例です。罹患率とは新たに診断される患者さんの割合のことです。メラノーマは皮膚がんのうち12%程度ですので、ほかのがんと比較してめずらしいがんとなっています。
メラノーマの人口あたりの死亡率はどのくらいですか?
高藤 円香医師
メラノーマを含む皮膚がんの人口10万あたりの死亡率は1.4人です。日本におけるメラノーマでの死亡数は、この40年間で4倍程も増加しているといいます。
編集部まとめ
メラノーマは皮膚のメラニン組織を生成するメラノサイトががん化したものといわれています。皮膚・粘膜・爪にほくろのように表れ、知識・経験のある医師でもほくろとメラノーマの識別を肉眼だけで行うことは困難です。
進行が大変早いという特性が治療を困難にしており、診断時にメラノーマが別の臓器に転移していた場合の5年後の生存率は16.5%です。
治療法は病気の進行度によって異なりますが、早期であれば手術で患部を切除し、再発・転移を抑えるため薬剤・放射線でがん細胞の除去を目指します。
メラノーマの治療は薬品開発の分野を中心に日々進化しています。メラノーマと診断されたならば、信頼できる知識・経験豊富な医師と相談しながら治療を進めましょう。
メラノーマと関連する病気
「メラノーマ」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
皮膚がんの診断は困難です。皮膚科の知識がない医師では、正確な診断ができません。メラノーマの疑いがある場合は、臨床経験豊富な皮膚科の医師に相談してください。
メラノーマと関連する症状
「メラノーマ」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- ほくろが急にできた
- ほくろが急に大きくなった
- 粘膜に黒い部分がある
- 爪に黒い線が入っている
メラノーマは早期発見によって生存率が高まる病気です。身体の異変は放置せずに早めに受診しましょう。