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「大腸がん手術後の生活」で食べてはいけないものはご存知ですか?【医師監修】

 更新日:2024/03/22
「大腸がん手術後の生活」で食べてはいけないものはご存知ですか?【医師監修】

自分や身近な方が大腸がんの手術を受けることになったら「食べてはいけないものがあるのだろうか」「普通の生活に戻れるだろうか」など不安を感じる方も多いかもしれません。

今回の記事では、大腸がんの手術を終えた後の食生活・日常生活について詳しく解説します。

記事の最後には、大腸がんの術後についてよくある質問にも答えますので、そちらも参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

大腸がんとは?

大腸がんは、名前のとおり大腸から発生するがんの総称です。日本で、大腸がんは年間の罹患者数(男女合わせた総数)が多いがんとなっています。
そのため厚生労働省では大腸がんの早期発見に力を入れており、市町村がん検診での「便潜血検査」を推進しているのです。こうした努力から、大腸がんは手術可能な状態でみつかることも多いがんになりました。

大腸がん手術後の生活について

大腸がんの手術では、がんが発生した部位を切除して残存した腸管をつなぎ合わせることが多いです。術後すぐは、つなぎ合わせた部分に負担がかからないように食事を休み、徐々に水分・お粥などの食事が開始になります。
退院する頃にはほとんどの患者さんが消化によいものであれば食べられる状態となるでしょう。また、運動に関しても寝たまま安静にする期間は短く、積極的に離床・病棟内での歩行などを推奨している病院が多いです。
これは手術部位の癒着予防・下肢静脈血栓・術後肺炎の予防を目的としたもので、退院後も無理のない範囲でウォーキングなどを習慣化することで体力のスムーズな回復にも役立つとされています。
なお、手術が終わった後も再発・合併症などの可能性があるため注意が必要です。予定された診察にしっかり通い、体調の変化・異常を感じたらすぐに医師に相談しましょう。

大腸がん手術後の食事

前述のとおり、大腸がんの手術を終えたら数ヵ月は消化管に優しい食事を心がける必要があります。食事による負担を減らすためにも、食事内容のほかに食事量や食べ方にも注意しましょう。

手術後すぐは消化のよいものから始める

手術後の食事は、負担をかけないように水分やお粥といった消化によいものから始めます。術後5日程度経過してから徐々に普段の食事に戻していきます。
退院後のメニューを考える際には、入院中の食事・栄養士からの指導なども参考になるでしょう。消化管への負担が大きいため、食物繊維が多いもの・油分が多いものは避けてください。
食物繊維を多く含む食品の例では、ゴボウ・山菜・キノコなど繊維質で歯ごたえがあるものが挙げられます。

食物繊維の多いもの・消化の悪いものは避ける

大腸の手術後は、腸閉塞のリスクが高まります。特に術後3ヵ月間は、蠕動運動の低下や傷の癒着などにより、腸閉塞になりやすいです。
そのため、胃・小腸での消化を経ても形が残りやすい食物繊維には特に注意が必要です。前述のような野菜類のほか、煮るとやわらかく噛みやすい海藻・大豆なども、意外に食物繊維が多いため避けることが推奨されます。

ゆっくりとよく噛んで食べる

大腸の負担を減らすためには、食材の選び方と併せて「食べ方」も重要です。食品がなるべく細かい状態で胃腸に入っていくように、ゆっくりとよく噛んで食べましょう。
具体的には、1回の食事は30分以上、一口で20回程の咀嚼が目安です。食べる機能を低下させないために噛むことは重要ですが、もし「たくさん噛むことが負担になる」場合には、調理する段階で細かく刻むと負担を減らすことができます。

食べ過ぎに注意する

食事の内容だけでなく、量によっても消化管への負担は変わります。健康な方の場合は、適切な食事の量は「腹8分目」と表現されることがありますが、大腸がんの手術後は「6分目」を目安に食事量を調整しましょう。

バランスのよい食事を心がける

消化のよさばかり気にかけていると、お粥や素うどんなどが中心になってしまう患者さんがいます。しかし、手術後は徐々に体力を回復させ、1~3ヵ月程をかけて手術前の生活に戻っていくことが目標です。
退院後まもない時期のタンパク質摂取に、卵・はんぺんなどやわらかい食材・食品が役立ちます。またビタミンや食物繊維では、やわらかく煮た野菜や、バナナ・リンゴといった繊維の強すぎない果物を摂るなど、工夫しながらバランスのよい食生活を心がけましょう。

過度の飲酒を避ける

大腸の手術をした場合でも、肝臓の疾患などほかの病気がない患者さんは基本的にお酒を飲むことができます。しかし、アルコールは腸への刺激が強いため、適量を守りましょう。飲酒を始める時期・量は、担当の医師への確認をおすすめします。

大腸がん手術後に注意するべきことは?

ここまで、食事の注意点を解説してきました。では、食事以外の日常生活で注意すべき点はあるのでしょうか。もとの生活への復帰と、術後の受診のポイントを紹介します。

自分の体力に合わせて徐々に手術前の生活に戻していく

大腸の手術を終えた後は「入院で休んでいた分、家事・仕事などに早く戻らなくては」と、焦りを感じる方もいるかもしれません。しかし、患者さん自身への調査では「体力・生活がほぼ手術前の状態に戻ったと感じたのは手術から2~3ヵ月後だった」という結果が得られたそうです。
過度に安静にする必要はありませんが、初めのうちは身体的負担の多い活動を避けるなど、周囲の協力を得ながらもとの生活への復帰を目指しましょう。

合併症など体調に異変があったらすぐに受診する

大腸がんの手術後に起こりやすい合併症は、腸閉塞・縫合不全・創部感染などです。腹部の違和感・痛み・創部の腫れなど、体調に異変を感じたら、我慢はせずに手術を受けた医療機関へ相談・受診をしましょう。

定期検診をしっかり受ける

手術が終わった後も、術後の状態・合併症・再発の有無などを確認するために定期的な受診が必要です。受診では、診察のほかに採血検査・画像検査・大腸カメラなどを行います。
症状がなく日常生活を送れている場合でも、こうした定期検診はしっかり受けましょう。

転移の兆候がないか注意する

がん細胞が血液・リンパの流れに乗って移動し、離れた場所で原発巣由来のがんが発生することを「転移」といいます。定期検診でも転移には気を配っていますが、患者さん自身でも気になる症状があれば「大腸には関係なさそうな不調だから」と考えず医師に伝えてみましょう。

大腸がんの手術後の生活についてよくある質問

ここまで大腸がんの手術を受けた後の食事・療養生活などについて紹介してきました。これまでの内容も踏まえて「大腸がんの手術後の生活」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

                  

手術後の仕事復帰はいつから可能ですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

                   

一般的に、大腸がんの患者さんが手術前の生活に戻るまでには少なくとも1ヵ月程かかるといわれています。また、仕事の内容がデスクワークか、重いものを運んだり動いたりするのが多い仕事かによってももとどおりの業務に戻れるまでの期間は異なります。なお、大腸切除だけではなく人工肛門を作った場合や術後に化学療法を行うなどの場合は、ストーマ管理の習得・化学療法を受けるための日程調整などがあるでしょう。このように、体力の回復以外の要因にも復帰時期が左右される可能性があります。

                 

手術後すぐは激しい運動は避けた方がよいですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

                  

手術後すぐに腹圧がかかるような激しい運動をすると、腹壁瘢痕ヘルニアを起こす可能性があるため控えましょう。退院後は「早く体力をもとに戻したい」という気持ちがあるかもしれませんが、まずはゆっくりとしたウォーキングなどから始めることをおすすめします。体力と相談しながら運動量を徐々に増やしてもよいですが、腹筋を使う激しい運動は数ヵ月程避けましょう。

編集部まとめ

大腸がんの手術を受けても、食事・運動・仕事・家事などの日常生活が強く制限されることはなく、数ヵ月をかけてほぼもとの生活に戻ることができます。

ただし、腸の一部を取り除いたこと・術後に安静にしていたことで、術後まもない時期には消化機能・体力ともに低下しています。

退院後は慌ててもとの生活に戻そうとせず、体調や合併症などに気を付けながら負担の少ない生活を心がけましょう。

大腸がんと関連する病気

「大腸がん」と関連する病気は3つ程あります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細は、リンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 肝臓がん
  • 腸閉塞(イレウス)

大腸がんは肺や肝臓に転移しやすいといわれています。また、大腸がんが腫大して腸管が狭くなったり、大腸がんの手術をしたりすると腸閉塞になるリスクが高まります。

大腸がんと関連する症状

「大腸がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

大腸がんの術後は、腸の蠕動運動が低下して便秘や下痢になることがあります。また、術後の合併症により腹痛を起こしたり、腸閉塞を起こして嘔吐がみられたりする場合があります。このような場合にはすぐに医療機関を受診しましょう。

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