「胆嚢がん」を発症すると「血液検査」にどんな異常が現れる?【医師監修】
胆嚢から発生する胆嚢がんは、血液検査での異常をきっかけに発見・診断されることも多い病気です。
今回の記事では、胆嚢がんになると血液検査ではどのような項目に異常が出るのか、血液検査で異常を指摘された場合に行う追加検査などを解説します。
記事の後半では、胆嚢がんの治療方法やよくある質問も解説するので、そちらも参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
胆嚢がんとは?
胆嚢は、肝臓と十二指腸のあいだにある臓器です。肝臓では、脂肪の消化を助ける胆汁が作られ、胆嚢は胆汁を一時的に貯める役割を担っています。
この胆嚢から発生したがんが胆嚢がんです。胆嚢がんは肝臓に転移しやすいほか、リンパ節・肺などに転移する場合があります。また、周囲にある膵臓などに浸潤する可能性もあるため注意が必要です。
胆嚢がんの血液検査・診断
胆嚢がんが疑われる場合、まずは血液検査を行います。胆嚢がんになると、胆汁の通り道である胆道が腫瘍に圧迫されて狭くなり、胆汁が流れにくくなる可能性があります。
このような場合に、血液検査ではビリルビン・ALP・γ-GTPなどの数値が上昇する可能性が高いのです。
また、腫瘍の有無を血液検査から調べる腫瘍マーカー検査も併せて行う場合があります。胆嚢がんがある場合、腫瘍マーカーの項目のなかでCA19-9・CEAが高値を示します。ただし、血液検査でわかるのは胆嚢に機能低下が起きている可能性や、胆嚢に腫瘍がある可能性のみです。
実際には、胆嚢がん以外の原因で上記の数値が上昇する場合もあるので、診断を行うためには別の検査を追加で行う必要があります。
胆嚢がんのその他の検査
上記のような血液検査から胆嚢がんが疑われたら、画像検査などにより腫瘍の有無を確認します。腫瘍がある場合、その大きさ・周囲への広がりなども調べるほか、実際に腫瘍の一部を採取して性質などを調べることで診断を行います。
超音波検査
超音波検査は、プローブという器具をお腹の表面に当てて内臓の様子を観察する検査です。プローブから出て腹腔内から跳ね返ってきた超音波を画像化して、痛みをともなわずにリアルタイムでお腹の中の様子がわかります。
胆嚢がんが疑われる場合、超音波検査では胆嚢狭窄の有無・腫瘍の場所などを中心に観察を行います。
CT検査
CT検査は、X線を使って体内を輪切りのように映し出す検査です。超音波検査のように内臓・血流の動いている様子はわかりませんが、より鮮明な画像が得られます。
CT検査は、がんの有無・がんの広がり(浸潤や転移)などを確認するために行う検査です。撮影自体は痛みをともないませんが、必要に応じて造影剤を注射することがあります。
MRI検査
MRIも、輪切りのような鮮明な画像が得られる点はCT検査と似ています。しかし、撮影には磁気を利用しており、映し出される内容が異なります。
MRI検査の画像では正常な細胞とがんをはっきりと見分けることが可能です。胆嚢・膵臓の異常を調べる場合、通常のMRIだけでなくMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)を行う場合があります。
内視鏡検査
胆嚢がんに対して内視鏡検査を行う場合、上部消化管内視鏡(胃カメラ)を使用します。一般的な内視鏡検査は、胆道が開口している十二指腸を直接観察する検査です。
そのほか、内視鏡の先端に小型のプローブを付けて胃・十二指腸から超音波によって胆嚢を観察する超音波内視鏡検査を行う場合があります。
また、前述のMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)も内視鏡を利用して、カテーテルによって胆道に造影剤を直接注入してX線で撮影する検査です。
PET・PET-CT検査
上記の検査ではがんの広がりが十分に確認できない場合に追加で行うことがあります。PET検査は、放射性フッ素を付加したブドウ糖を注射した状態で撮影する検査です。
がん細胞がブドウ糖を取り込んでいる場所を画像化し、CT・MRIの画像だけではわからなかったがんの分布をみることができます。
生検・細胞診
生検・細胞診とは、実際に腫瘍の一部・周辺組織などを採取して分析する検査です。上記の内視鏡検査のほか、手術をした際に同時に行うことが多いでしょう。
生検・細胞診では、がん細胞の有無・がんの細胞型(タイプ)などを知ることができます。これにより、できた腫瘍ががんだという確定診断につながります。
胆嚢がんの治療方法
検査により胆嚢がんと診断された場合、治療にはどのような選択肢があるのでしょうか。ここからは、主な治療法と治療の目的を解説します。
手術療法
胆嚢がんを指摘された場合、全身の状態・転移の有無・がんの位置や広がりにより手術が可能かどうかが決まります。また、胆嚢とともに肝臓の一部を切除する場合には、残った肝臓だけで十分に機能を果たせるかを確認するための残肝予備能評価なども必要です。
このような条件を満たしたうえで、患者さんの希望なども併せて方針を決めていきます。手術の際には転移・浸潤からの再発を防ぐため、胆嚢だけでなく肝臓の一部・胆管なども切除する場合があります。
薬物療法
全身の状態・がんの広がりなどから手術での切除が困難だと判断された場合、薬物療法が治療の選択肢となります。薬物療法は、細胞障害性抗がん薬・分子標的薬など、がんを攻撃する薬を投与して、がんの縮小・消滅・進行抑制を図る治療方法です。
薬物療法は手術ができない場合の選択肢になるほか、手術を選択したうえで再発予防などのため補助的に行われる場合があります。また、がんが進んだ場合には痛みなどの苦痛を和らげる目的で薬物療法が行われることもあります。
放射線治療
全身状態などから手術が難しいものの、がんが全身に広がっていない場合には放射線治療も選択肢となります。放射線治療は、X線・重粒子線・γ(ガンマ)線などの放射線によってがん細胞のDNAを切断し、がん細胞を攻撃する治療方法です。
放射線の照射自体はほぼ痛みをともないませんが、周囲の正常な組織にも放射線が当たることで体調に影響が出る場合があります。
胆道ドレナージ
胆嚢がんにより胆管が狭窄すると、胆汁が正常に分泌されず消化機能に問題が起こったり、黄疸が出たりなどの影響が現れます。このような場合に、胆汁の通り道を作るための治療が胆道ドレナージです。
胆道ドレナージの方法には、鼻・お腹の外から胆管までチューブを入れて胆汁を体外の排出する外瘻(がいろう)と、詰まっていた胆道にステント・チューブなどを留置して通り道を確保する内瘻(ないろう)があります。
胆嚢がんの血液検査についてよくある質問
ここまで胆嚢がんの検査・治療方法などについて紹介しました。ここでは「胆嚢がんの血液検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
血液検査で異常がみられない場合ほかの検査は行われないのですか?
甲斐沼 孟(医師)
血液検査は全身の目にみえない異常も数値に反映でき、身体への影響がほぼない検査です。一方、X線による被ばく・造影剤によるアレルギー反応など、検査のなかには身体に影響を及ぼす可能性があるものもあります。検査目的のX線検査・CT検査による被ばく量は健康に影響する線量以下であるといわれていますが、血液検査や超音波検査で異常が指摘されない場合には、それ以上の検査を行わない場合が多いでしょう。
腫瘍マーカーについて詳しく教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
がん細胞にはいくつかの種類があり、その種類ごとに特徴的な物質を作り出しています。腫瘍マーカーとは、血液中からがん細胞が作り出している物質を検出する検査です。もし腫瘍マーカーが高値を示した場合、どの物質が多いかを知ることで大まかに腫瘍の有無・どの臓器にがんがある可能性が高いかなどを推測できます。ただし「実際に存在しているか」「その腫瘍は悪性か」「どこにあるか」を知るためには追加で画像検査などが必要です。
編集部まとめ
胆嚢がんの腫大により胆管が狭窄すると、胆汁の流れが悪くなることで右わき腹の痛み・黄疸などの症状が現れます。
しかし、症状が現れる前に血液検査で「数値が高すぎる」といわれたことがきっかけとなり、胆嚢がんがみつかることもあります。
胆嚢がんの早期発見のためには、検診などで指摘された異常を放置せず、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。
胆嚢がんと関連する病気
胆嚢がんと関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細は、リンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胆石症では、胆石によって胆管が閉塞することで、胆嚢がんと似た症状が現れることがあります。また、胆嚢がんが転移しやすい肝臓・肺のがんが先にみつかったことで、原発巣である胆嚢がんが判明するケースがあります。
胆嚢がんと関連する症状
胆嚢がんと関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 黄疸(おうだん)
- 右わき腹の痛み
- 体重減少
胆嚢がんでは、胆汁の流れが悪くなることで上記の症状が現れることがあります。ただし、がん以外の胆嚢疾患でも同様の症状がみられることが多いです。