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「大腸がんから転移しやすい場所」はご存知ですか?転移後に現れる症状も解説!

 公開日:2024/04/25
「大腸がんから転移しやすい場所」はご存知ですか?転移後に現れる症状も解説!

大腸がんから転移しやすい場所とは?Medical DOC監修医が大腸がんから転移しやすい場所・再発しやすい場所・転移後に現れる症状・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

「大腸がん」とは?

大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんです。腺腫という良性のポリープが癌化して発生するものと、正常な粘膜から発生するものがあります。大腸がんは、年々増加傾向にあります。ただし、症状があまりないことが多く、大腸がん検診などの受診で早期に発見することが大切です。

大腸がんから転移しやすい場所

大腸がんは、血液の流れに沿って肝臓、肺、脳などに転移を起こすことがあります。これらの大腸がんの転移しやすい場所について解説いたします。

肝臓

大腸から肝臓へ流れ込む門脈という血管を通って、大腸がんは肝臓への転移がおこります。大腸がんの多くは、まず肝臓に転移し、その後他の臓器へ転移します。
患者さんの状態にもよりますが、大腸がんの原発巣と肝転移の病巣が切除可能であれば、根治を目指し切除します。しかし、転移の範囲や場所により手術で切除ができない場合には、化学療法を選択することもあります。
大腸がんになった人の約11%が肝転移をすると言われており、肝転移は少なくありません。これは、大腸からの血液の流れに乗り、がん細胞が肝臓に転移しやすいためです。多くの場合、自覚症状はほとんどありません。腹痛、だるさ、腹水、黄疸など症状が出る場合には早めに消化器内科で相談しましょう。

大腸がんの肺転移の多くは、肝臓への転移後に肺への血液の流れに伴って起こります。肺への転移が起こると、息苦しさ、咳、血痰などがみられるようになります。これらの症状が1週間以上長引く時には、まず内科を受診して精密検査を受けた方が良いでしょう。息苦しさが強い時にはすぐに病院を受診してください。また、血痰が出る場合には何か肺で異常が起こっている可能性が高いため、早急に受診することをお勧めします。
大腸がんに肺転移を伴う場合には、転移の範囲などにより治療法が異なります。切除可能な場合には外科手術を行い、切除が不可能な場合などは抗がん剤や放射線療法などを行うこともあります。患者さんによって治療法が異なるため、主治医から治療についての説明を聞きましょう。

腹膜

大腸がんが進行すると、がん細胞が腸管から外に出てしまうようになります。腸管を破り外に出たがんは、腹膜をつたって広範囲に転移します。これが腹膜転移です。
腹膜転移の症状は、初期はわかりづらいことが多いです。しこりが発生し、大きくなって初めて気がつく、あるいは、腸管を圧迫するようになってようやく気がつく場合もあります。腸管が圧迫され、腸閉塞を起こすこともあります。腸閉塞が起こると、吐き気や痛みが出ます。このような場合には、早めに病院へ行きましょう。

大腸がんが血液にのり、脳に転移することも多いです。脳転移をすると、転移した場所にもよりますが、麻痺や痙攣、目の見えづらさ、ろれつが回らない、ふらつきなどの症状が現れます。放置すると、頭痛や吐き気、意識障害などがおこります。これらの症状が現れた場合には、まず主治医に相談をしましょう。
脳転移に対しては、手術治療とガンマナイフという放射線治療を行うことが多いです。

大腸がんが、骨へ血行性に転移することもあります。骨に転移すると、痛み、骨折、麻痺などの症状が出ます。
骨転移への治療としては、放射線治療や化学療法を行うことが多いです。

大腸がんが再発しやすい場所

大腸がんの手術を行い、がんを取りきれたと判断された場合でも、その後しばらくして再発することがあります。大腸がんの再発は、がんが元々あった部位の近くに起こる「局所再発」や、肝臓や肺など大腸以外の臓器に再発する「遠隔転移」があります。
大腸がんの中でも「結腸がん」と「直腸がん」では再発しやすい部位が異なります。結腸がんでは、肝臓での再発が最も多く起こります。また、腹膜転移での再発も多いです。一方直腸がんでは、肺と肝臓への転移が同じくらい多く、また局所での再発も起こりやすいです。

肝臓

結腸がんでも直腸がんでも、大腸がんの再発として、肝転移は多くみられます。肝転移は初期では症状がないことが多いです。このため定期的なチェックが必要です。
肝転移は、患者さんの体力などの状態と肝転移の範囲や場所などで手術可能と考えられるときには、手術を行います。また、化学療法を選択する場合もあります。いずれにしても、患者さんによって体力や転移の状態などはそれぞれ異なります。このため、主治医に治療の方針をよく聞いてみましょう。

局所再発

直腸がんは局所再発が起こりやすいです。切除した腸の近くで再発することが約10%程度起こります。手術で吻合した部位での再発が起こることもあります。局所再発の症状は、大腸がんと同じく、痛みや、血便、便通異常などです。しかし、症状がないこともあり、注意が必要です。術後の定期検診は必ず受けましょう。
CT、MRIなどの画像検査を行い、再発層の進展範囲を評価して、症状や、患者さんの体力など総合的に評価をして完全切除が期待できる場合には手術を選択します。そのほか、化学療法や放射線療法を選択する場合もあります。

大腸がんの再発で、肺転移がみられることもあります。特に直腸がんでは、肺への転移が多いです。肺の転移が見つかった場合、肺の転移巣の切除が可能か、全身状態が問題ないかなど、患者さんの状態に合わせて手術が可能か判断します。手術以外にも薬物療法を行うこともあります。肺転移の症状は、呼吸が苦しくなったり、咳が長引いたり、血痰が出ることなどです。このような症状がある場合には、主治医に相談をしてみましょう。

大腸がんは、がん細胞が血行性に移動し、脳転移で再発することもあります。脳転移は転移した場所にもよりますが、麻痺や痙攣、視覚障害、ふらつきなどの症状が現れ、放置すると、頭痛や吐き気、意識障害などがおこることもあります。これらの症状が大腸がん術後の経過観察中に起こるようでしたら、主治医に相談するか、脳神経外科もしくは神経内科などで相談をしましょう。
脳転移に対しては、切除が可能であれば手術をすることもあります。そのほかに、放射線療法が適応となります。

大腸がんから転移した後に現れる症状

大腸がんが転移すると、転移した場所に関連した症状が現れることがあります。これらの症状について解説いたします。

肝転移に伴う症状

肝転移に伴い、初期には症状が出ることは少ないですが、進行すると黄疸などの症状が出てきます。黄疸とは、皮膚や目の白い部分が黄色くなる症状です。肝転移により肝機能が悪くなることで、血液中のビリルビン濃度が上昇したことでみられます。おなかの右上に肝臓があり、このあたりの鈍い痛みも症状の一つです。また、肝臓の機能が低下して、だるさが出てきたり、腹水が溜まることでおなかの張りなどの症状がみられたりすることもあります。これらの症状がある場合には、主治医の先生に相談をしましょう。

肺転移に伴う症状

肺に転移した場合には、長引く咳、息苦しさや呼吸困難、ものを飲み込んだときにつかえる感じ、血痰などの症状が現れることがあります。咳に関しては、風邪などでも症状が出るため、分かりづらいですが、熱など他の症状もなく1週間以上咳が持続する場合には検査を受けた方が良いでしょう。また、息苦しさや呼吸困難、血痰は肺で何かしらの異常が起こっている可能性が高く、主治医に相談するか、呼吸器内科を受診しましょう。

腹膜転移に伴う症状

腹膜転移は初期では症状がありません。腹膜に転移したがん細胞が大きくなるとしこりとしてふれる様になることもあります。そのほかの症状は、おなかの張り、便秘、腹痛、嘔気、嘔吐などです。さらに進行すると、腸のとおりが悪くなる腸閉塞や、大量の腹水が溜まりおなかが膨れてくることで苦しくなります。このような症状が現れたときには、日常生活にも支障が出てくるため、主治医と相談しましょう。

脳転移に伴う症状

脳転移は、転移した場所により症状が異なります。また、脳卒中は突然症状が現れるのに対し、脳転移はじわじわ症状が悪くなることが多いです。症状としては、手足の力が入りにくい、言葉が出にくい、ろれつが回らない、視覚障害、けいれん、ふらつきなど多彩です。脳に腫瘍ができると周囲がむくみ、脳の容積が増え、脳が圧迫されて頭痛が起こったり、吐いたりしてしまうようになります。さらに進行すると、意識障害が起こることもあります。今までと違う症状が現れたときには、主治医に相談するか、脳神経外科もしくは神経内科を受診しましょう。

大腸がんから転移した後の治療法

大腸がんは、がんが血液の流れに乗って、肝臓、肺、脳などに転移を起こしやすいです。大腸がん以外のがんでは、このような遠隔転移が起こっている場合には完治が困難となりますが、大腸がんの肝転移、肺転移では適切な治療を受けることで根治を目指せる場合もあります。一方、大腸がんは手術後ある程度の期間がたってから転移が見つかることも少なくないため、長期にわたって転移の有無を定期的にチェックする必要があるがんでもあります。

外科手術

大腸がんの転移は転移巣が切除可能な場合には切除を行います。特に肝転移や肺転移では大腸の原発巣とともに転移巣も切除が可能な場合には、癌を取り切ることを目指して外科手術を行います。しかし、切除が困難な場合には、転移巣に対しては手術以外の方法を用います。

化学療法

大腸がんに対しての化学療法では「細胞障害性抗がん薬」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」を単独あるいは組み合わせて使います。「細胞障害性抗がん薬」は、細胞が増殖するのを邪魔してがん細胞を攻撃する薬です。「分子標的薬」は、がん細胞の増殖にかかわる蛋白などを標的にがん細胞を攻撃します。「免疫チェックポイント阻害薬」は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬です。これらの薬の組み合わせは、治療の目的や癌の状態、患者さんの全身状態などにより検討されます。

放射線療法

切除が可能な直腸がんでは、骨盤内の再発を抑える目的に術前照射を行うことがあります。これを補助放射線治療といいます。また、直腸がんの腫瘍による痛みや出血などに対してや、骨への転移による痛みや骨折予防、脳転移による嘔気、めまいなどの神経症状を改善する目的に行われる緩和的放射線治療があります。

「大腸がんから転移しやすい場所についてよくある質問

ここまで大腸がんから転移しやすい場所などを紹介しました。ここでは「大腸がんから転移しやすい場所」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんはどこの部位に転移しやすいですか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

大腸がんは、肝臓、肺、脳、腹膜に転移をしやすいです。これらの場所を中心に定期的に再発がないかチェックをする必要があります。

大腸がんは転移する確率が高い疾患なのでしょうか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

大腸がんは他のがんと異なり、転移の広がりが遅いのが特徴と言われています。他のがんでは一か所転移が見つかると、すでに全身に転移していることが多いですが、大腸がんでは、ある程度のがん転移があったとしても切除可能であれば長期生存も期待できると考えられています。しかし、転移の広がりが遅いことが一因となっているためか、手術後ある程度の期間がたってから転移が見つかることも珍しくありません。大腸がんは手術で完全に切除しても、一定の割合で再発が起こるため転移する確率が高い様に思われるのかもしれません。5年程度の定期的な検査で再発、転移がないかを調べることが非常に重要です。

大腸がんが再発しやすい人の特徴を教えてください。

和田 蔵人和田 蔵人 医師

大腸がんの進行が進むにつれて再発しやすくなります。粘膜内癌であれば転移は起こりません。がんを完全に切除できれば再発は起こりません。しかし、粘膜下層まで浸潤していると再発率は約1%、固有筋層まで浸潤すると再発率約6%、ステージⅡの再発率で約13%、ステージⅢの再発率は約30%となっています。このため、がんの進行が進んでいる場合には、完全にとりきれたと思っても注意が必要です。また、再発の約85%は手術後3年以内に、95%以上は術後5年以内に見つかります。手術をして5年以内の方は、再発の可能性を考えて定期的に検査を受ける必要があると言えます。

まとめ 大腸がんの転移は、完全に切除しても注意が必要!

大腸がんは、転移の広がるスピードが他のがんと比較してゆっくりであると考えられています。このため、完全にがんを取りきれたと思っても、術後に転移が見つかることも少なくありません。転移が見つかっても、大腸がんの場合には、切除可能であれば早期に外科手術で切除し、根治を目指すこともできると考えられています。手術をして5年以内には再発、転移が見つかることも多く、なるべく早く発見されれば根治を目指す治療が可能です。主治医の指示に従って、定期的に再発の可能性がないかチェックすることが大切です。

「大腸がんから転移しやすい場所」と関連する病気

「大腸がんから転移しやすい場所」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経科の病気

  • 転移性脳腫瘍

消化器科の病気

  • 転移性肝がん
  • 腹膜播種

呼吸器科の病気

整形外科の病気

  • 転移性骨腫瘍

大腸がんは術後に転移が分かることも少なくありません。定期的な検査を受けることで早期に転移を見つけることができます。転移がとり切れる状態であれば、外科手術をします。また、切除が難しい場合には化学療法や放射線療法を行うこともあります。いずれにしても、主治医の指示に従い定期的な検査を受け、治療が必要な場合には説明を聞きましょう。

「大腸がんから転移しやすい場所」と関連する症状

「大腸がんから転移しやすい場所」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 麻痺
  • 頭痛
  • 血痰
  • 呼吸困難
  • 黄疸
  • おなかの張り
  • 骨の痛み

転移した場所により多彩な症状がみられるため、これらの症状になくともいつもと違う症状が続いている場合には注意が必要です。大腸がんの転移の症状からくるものなのか、まず主治医と相談してみると良いでしょう。

この記事の監修医師