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「前立腺がんの放射線治療」はどんな治療をするの?メリットや注意点も解説!

 公開日:2024/03/21
「前立腺がんの放射線治療」はどんな治療をするの?メリットや注意点も解説!

前立腺がんと診断される人の数は、年々増加しています。がん治療は早期発見に伴い、治療後の生存率も高く、定期的ながん検診が推奨されてきました。

前立腺がんの治療法として、抗がん剤治療や手術などがありますが、この記事では放射線治療に焦点を当てて解説します。

前立腺がんとはどのような病気なのか、放射線治療のメリットや注意点について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

前立腺がんとは

前立腺がんとは、前立腺の中で働いている細胞が正常な機能を失い正常性が欠如し、無秩序にがん細胞が増殖する病気です。
前立腺とは男性のみに存在している臓器で、膀胱の下位にあり尿道を取り囲んでいます。また、精液の一部に含まれている「前立腺液」を生成しています。
発症してすぐの状態では、自覚症状はほとんどありません。がんが進行して肥大したり、ほかの臓器へと転移したりすると、以下のような症状が出現します。

  • 排尿しにくい
  • 残尿感がある
  • トイレの回数が多くなる
  • 尿に血が混じっている
  • 腰痛

ほかにも、前立腺がんには以下のような特徴があります。

  • 50代以上の男性に発生しやすい疾患
  • 原因は不明だが遺伝や加齢によるものの可能性もある
  • PSA値を知ることが予防の一歩

50代以上の男性は、前立腺がんを発症しやすいとされています。
ほかのがんと比較すると、進行するスピードがゆっくりであることも特徴です。一部の前立腺がんでは、発症しても気がつかず、寿命に影響しないと考えられるがんもあります。
前立腺がんを発症する原因は不明です。しかし、遺伝や加齢による可能性が示唆されています。家族の中に前立腺がんを発症している人がいる場合、発症する可能性が1.6〜2倍といわれています。
前立腺がんの早期発見をするためには、定期的な検診でPSA値を測定することです。PSAとは、Prostate-specific antigenの略であり、前立腺組織のタンパク質です。
正常な人でも血液中にPSAは存在していますが、がん細胞により細胞が破壊されることで、血液中のPSA値の割合は増加します。そのため、PSA値を知ることは、がんの発症の有無を判断するために必要な検査です。

前立腺がんの放射線治療とは?

前立腺がんの放射線治療とは、前立腺に放射線を照射し、がんの根治を目指す治療法です。
前立腺がんの放射線治療は、以下の2種類に分類されます。

  • 外照射療法
  • 組織内照射療法

がんへの放射線治療は、がんの周囲の正常組織への線量は抑えつつ、がんにはできる限り多くの放射線を照射することが求められます。
一方で、前立腺は精液に関連する臓器のため、前立腺がんの治療により生殖能力に影響する可能性も否めません。そのため、子どもを持ちたい人は治療前に医師に相談することがおすすめです。

外照射療法

外照射療法とは、身体の外から前立腺に放射線を照射する方法です。
治療頻度は、1日1回、週5回で7〜8週間前後ほど必要です。外照射療法の種類は、以下のようなものがあります。

  • 三次元原体照射:コンピューターで前立腺の形に合わせ、周囲の臓器に当たる放射線の量を減らす
  • 強度変調放射線治療(IMRT):1つの照射野内で照射強度を変化でき、理想的な線量分布での治療が可能
  • 定位放射線治療:さまざまな方向からターゲットに線量を集中する治療法
  • 粒子線治療:粒子を用いた治療法

治療して3ヶ月以内に生じる副作用として、頻尿・排尿や排便時の痛みが一般的な症状として挙げられます。
3ヶ月以降に生じる副作用は、排便時の出血・血尿です。

組織内照射療法

組織内照射療法とは、小さな粒状の容器に放射線を出す物質を密閉した物を前立腺の中に入れ、体内から照射する方法です。
密封小線源療法とも呼ばれています。体内に入れるため、がん組織の近くから高い線量を照射することが可能です。組織内照射療法は、以下の2種類に分類されます。

  • 密封小線源永久挿入療法(LDR):永久的に体内に埋め込む方法
  • 高線量率組織内照射法(HDR):一時的に埋め込む方法

副作用としては、排尿困難感・頻尿がありますが、1年ほどで改善していくでしょう。
外照射療法と比較すると、性機能が維持される可能性が高いですが、精液量は減少します。

前立腺がんの放射線治療でのメリット

前立腺がんの放射線治療でのメリットは、切開せずに治療できるため回復が早く、局所的な痛みの軽減を図れることです。
放射線治療以外でも、抗がん剤治療や前立腺摘出のような手術による治療法があります。
がん治療は、がんを治すだけでなく、その後の生活についても考えることも必要です。放射線治療は、治療後でも生活の質を高いレベルで維持することができる治療法といわれています。

切開せずに治療をするので回復が早い

放射線治療では、手術のように身体を切開する必要はありません
そのため、高齢者・合併症がある人・基礎疾患がある人でも対応が可能です。
また、基本的には入院の必要性がなく、病気や患者さんの状態に合わせた治療ができます。手術と比較すると、身体への負担が少ないため、回復も早くなります。

がんの移転箇所の痛みの軽減が図れる

がんの転移箇所の痛みの軽減が図れることも、放射線治療のメリットです。
がんの病巣部分に照射して治療できるため、がんが転移しても治療することができます。
しかし、がん細胞を死滅させるためには、大量の放射線が必要なため、転移した際には治療法を再度相談することをおすすめします。

前立腺がんの放射線治療での注意点

放射線治療には、メリットだけでなく注意点もあります。
照射はがん細胞を局所的に狙いますが、周囲の正常な細胞にも照射されてしまいます。そのため、放射線治療を受ける際には、副作用があることを知っておくことが必要です。では、1つずつ解説します。

排尿に関連した症状が起こりやすい

1つ目の注意点は、排尿に関連した症状が起こりやすいことです。前立腺は膀胱の下に位置しており、尿道を囲んでいます。
放射線治療により、膀胱や尿道への損傷を起こす可能性があります。そのため、排尿のしづらさ・残尿感・排尿時痛などの排尿に関する症状が起こりやすくなるでしょう。
副作用の治癒には数年かかることもありますが、頻度は低く、重篤な症状はほどんどありません。

出血を伴う可能性がある

2つ目の注意点は、出血を伴う可能性があることです。放射線により損傷した前立腺の周囲の組織から出血し、血尿が出現するかもしれません。
また、尿に関わる臓器ではなく、大腸に影響があれば、血便が生じることもあります.
出血は放射線治療を開始して1ヶ月程度で収まる場合もあれば、数年以上続く可能性もあります。症状が気になる場合は、早めに専門の医師に相談しましょう。

皮膚を傷めることがある

3つ目の注意点は、皮膚を傷める可能性があることです。放射線の照射により皮膚の細胞が損傷し、炎症につながります。
そのため、照射している部分に皮膚炎・ヒリヒリ感・かゆみ・乾燥などが生じる場合があります。
一般的には、放射線治療を終了して1ヶ月程度で改善するでしょう。しかし、汗腺や脂腺の回復には時間がかかります。

前立腺がんの放射線治療についてよくある質問

ここまで前立腺がんの特徴・症状・放射線治療などを紹介しました。
ここでは「前立腺がんの放射線治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

放射線治療後有害な放射能は体内に残りますか?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

放射線が体内に残ることはありません。そのため、周囲の人への影響もないため、通常通りの生活が送れます。

がんの深達度とは何ですか?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

前立腺がんと診断され放射線治療のみを受けた場合、治療後にPSA値の最低値が2ng/mL以上の上昇が見られると、再発の疑いがあります。再発率は明確にされていませんが、5年生存率は99.1%と高い数値です。

編集部まとめ

前立腺がんは、日本において罹患率が上昇しており、早期発見・治療が求められます。ほかのがんと異なり、進行速度も遅いですが、前立腺がんが原因で亡くなっている人もいます。

さまざまな治療法がありますが、放射線治療はがん細胞への局所的な治療ができ、治療に伴う生活の変化が少ない治療法です。

気になる症状がある人は、1人で悩む前に専門の医師に相談してみましょう。

前立腺がんと関連する病気

「前立腺がん」と関連する病気は1個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

前立腺肥大症とは、前立腺がんとは異なり、良性の病気です。前立腺の細胞の数が増加することで、前立腺が肥大します。
加齢に伴い罹患者も増加するため、高齢者に多い病気です。また、前立腺肥大症は前立腺がんと同時に発症することもあります。排尿について悩みがある人は、早めに専門の医師に相談しましょう。

前立腺がんと関連する症状

「前立腺がん」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 尿の切れが悪い
  • 排尿したのにスッキリしない
  • 夜間も頻回にトイレに行く
  • 尿を漏らしてしまうことがある

前立腺がんと関連する症状は、排尿に関する症状が多く見られます。加齢に伴い膀胱や前立腺の機能は低下してきます。
そのため、がんによる症状に気がつかない人もいるでしょう。紹介した症状に当てはまる項目があれば、一度近くのクリニックに受診してみることをおすすめします。

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