「肺がんの初期症状」をチェックする方法はあるの?医師が監修!
「肺がん」と聞くと喫煙者の方だけに関係があると思われがちですが、非喫煙者の方でも肺がんになるリスクはゼロではありません。
日本人の肺がんによる死亡数は男性が1位、女性が2位と統計されており、私たちにとって非常に身近で危険な病気です。
この記事では、肺がんの症状・原因・対処法について解説します。肺は私たちが生きていくうえで非常に重要な器官の一つです。これを機会に理解を深め、参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
肺がんとは?
肺がんとは、気管支・肺胞の細胞に傷がつくことでがん化してしまう病気です。主に40代から増え始め、年齢が高くなるにつれ罹患率が上昇しています。
肺がんは発生したがん細胞の組織によって、腺がん・扁平上皮がん・小細胞がん・大細胞がんの4種類に分けられ、なかでも腺がんが肺がんの約60%を占めています。
進行していくと血液・リンパの流れにのってほかの臓器に転移することも考えられるため、より早期発見が重要になってくるでしょう。
肺がんの初期症状をチェック
肺がんの主な症状は一般的な呼吸器疾患の症状でもあることから、初期段階で肺がんと判断するのは難しいのが懸念点です。
具体的な症状にはどのようなものが挙げられるのでしょうか。一つずつチェックしていきましょう。
初期には症状が見られないことも
肺がんは、がんの大きさ・位置によって初期症状がはっきりと現れず、特徴的な症状がほとんど見られません。症状が現れるときには進行していることがほとんどです。
そのため、症状が長引いたり身体に異変を感じたりする場合は、速やかな医療機関の受診が必要です。
咳・痰
肺がんの多い症状として咳・痰などが挙げられます。咳・痰が出るのは、気道の粘膜が炎症していたり、過剰な分泌物を排出しようとしていたりするのが原因です。
風邪の場合でも咳・痰の症状が多く見られますが、通常は3週間も続かないといわれています。
症状が2週間以上続き、改善が見られない場合・血痰が認められる場合は医療機関を受診してください。
血痰
血痰とは痰に血が混じった状態を指します。気管支・肺に問題が見られるとき、痰に血が混じることがありますが、そのほかの血が混じる原因としては次が挙げられます。
- 肺・気管支からの出血
- 喉からの出血
- 鼻・口の中からの出血
- 食道・胃からの出血
さまざまな病気の可能性が考えられますが、気管支・肺からの出血の場合は、血痰は鮮明な赤い色であることが多いです。
また、肺がんの発生した場所によっても血痰の出方が異なるのが特徴です。気道が近い肺門にがんができると、気道が刺激され、咳・血痰・喀痰などの症状が現れます。
その一方で、肺の奥にある肺野部に発生すると気道からは遠い場所になるため、進行するまでは血痰が現れにくいことがあります。症状の違いを理解し、定期的な診断と検査が必要です。
胸の痛み
肺がんが進行していくと、胸の痛みの症状も出てきます。この症状は、がんが大きくなり胸に水が溜まることで肺・心臓などが圧迫され痛みを感じる状態です。
また、がんが神経・肋骨などに広がっている可能性がある場合も考えられます。
ただし、これらの症状はがん以外の肺疾患・食道疾患・心臓疾患などでも見られる症状のため検査を受け、診断を確定させることが重要です。
動悸
肺がんが進行していくと胸の痛みとともに動くだけで息苦しさ・動悸を感じます。
肺にがんが発生していることで、空気が気管支を通りにくくなっている・胸の周りに水が溜まっていることで、心肺が機能していないのが原因です。
発熱
発熱の基準は37.5℃以上を発熱、38℃以上を高熱と定義されています。
発熱もさまざまな病気の症状に当てはまりますが、肺がんの症状としても挙げられています。発熱が5日以上続く場合は、近くの医療機関を受診してください。
肺がんの原因
肺がんは126,548例の診断数があるのに対し、75,585名の死亡数が統計されています。
5年生存率に関しても34.9%となっています。肺がんにならないためにも原因をきちんと理解することが重要です。
喫煙
がんになる原因は細胞に傷がついてしまうことでがんになりやすいとされています。
その細胞を傷つける一番の原因は喫煙です。喫煙者は非喫煙者と比較し、男性で4.4倍、女性で2.8倍の確率で肺がんになるといわれています。
タバコの煙には3,000〜4,000種類以上の化学生成物が含まれており、50種類以上の発がん性が指摘されています。
近年では電子タバコの普及も増加していますが、これらも発がん性があるため、依存症になる前にも禁煙したほうが良いでしょう。
受動喫煙
受動喫煙とは、周囲の人が吸っているタバコの煙にさらされる状態です。
受動喫煙を受けている人と受けていない人と比較すると、肺がんになるリスクが約1.3倍になるといわれています。また、同居している人が喫煙者の場合も肺腺がんになるリスクが2倍とされています。
アルミニウム・ヒ素・アスベストなどの吸引
肺がんは喫煙だけでなく、環境が原因となって引き起こすこともあり、主にアルミニウム・ヒ素・アスベストなどが挙げられています。
アルミニウムは、土壌・水・食品添加物などに含まれており、一部例として肺がんリスクを上昇させる要因といわれています。
ヒ素とは、自然環境・食品に広く存在している元素の一つです。ヒ素は有機ヒ素化合物・無機ヒ素化合物の2種類に分けられており、肺がんと関係があるのは無機ヒ素化合物の方であるとされています。
主な健康被害の症状は、嘔吐・腹痛・下痢などがあり、長時間体内に溜め込むと肺がんを引き起こすともいわれています。
アスベストとは石綿とも呼ばれている天然鉱物の一種です。電気・熱・化学物質に強く、安価であることから建設資材・家電製品などの製品に使用されてきました。
しかし、その後の健康被害で肺がんと関係があることが判明しており、日本では2012年3月からアスベストを含む製品の製造が全面禁止されています。
アスベストにさらされる可能性がある作業・居住環境にいた方・そのご家族の方はアスベストを原因とした疾患を発症するリスクがあるといわれています。
慢性閉塞性肺疾患などへの罹患
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive disease)とは、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれる病気の総称になります。
推定される患者数は約500万人以上と考えられており、WHOでは世界の死因の第3位と発表されました。
慢性閉塞性肺疾患の原因はタバコの煙であるといわれており、受動喫煙も対象になります。
肺がんの対処法
肺がんと診断された場合の対処法は病期・治療目標・患者さんの状態によって異なります。
それらを踏まえて、手術・放射線治療・薬物療法・免疫療法に大きく分けられます。
治療前に自身の状態を把握することが、今後適切な治療を受けるために重要です。
肺がんの初期症状チェックについてよくある質問
ここまで肺がんの初期症状・原因・対処法などを紹介しました。ここでは「肺がんの初期症状チェック」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
病院を受診するべき目安を教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
血痰・咳・胸の痛み・息切れ・動悸が2週間以上、また発熱が5日以上続く場合などの症状がある場合は迅速に医療機関を受診してください。
早期発見のためにはどのくらいの間隔で検査を受けるべきですか?
甲斐沼 孟(医師)
40歳から1年に1回健康診断や人間ドックなどを通して定期的に受診をしてください。初期症状が多く見られない病気であるからこそ、定期的な検診が早期発見に繋がるでしょう。
編集部まとめ
今回は肺がんの症状・原因・対処法などについて解説しました。
肺がんは特有な症状がない疾患だからこそ、定期的な健康診断を受け続けることが非常に大事です。
そして、禁煙することで肺がんリスクの低下・治療効果などの向上も見られるため、禁煙するよう努めるようにしましょう。
ぜひ、ご自身や周りにいる人達にとって健康な環境作りを心がけてみてください。
肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺の役割は体内で酸素と二酸化炭素を交換することです。そのため、肺の手術で肺切除を行うことで、十分なガス交換ができなくなり肺活量が低下します。肺活量の低下・術後の免疫力低下で肺炎・無気肺などの合併症を引き起こすことがあります。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんの症状と似ている疾患は多くあり、一般的な呼吸器疾患と似ています。そのため、体調不良が長引く場合には医療機関の受診をおすすめします。