「肝臓がんの初期症状をチェック」する方法はある?進行後の症状も解説!
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症やがんがあっても自覚症状があまりなく、なかなか発見しにくいという特徴があります。
この記事では肝臓がんの症状や早期発見のためのポイント、肝臓がんが疑われる場合はどのような検査をするのかなどを解説します。
肝臓がんのよくある質問にもお答えしますので、ぜひ参考になさってください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
肝臓がんとは?
体中で大きいといわれる臓器が肝臓です。この肝臓にできたがんを肝臓がんまたは肝がんと呼びます。
肝臓がんは、肝臓にがんが生じる原発性肝がんと、他の臓器にできて肝臓に転移した転移性肝がんの2種類に分けられます。
原発性肝がんはさらに、肝臓を作り上げている細胞ががん化することによる肝細胞がんと、肝臓でできた胆汁を運ぶ役割を果たす胆管の細胞のがん化による肝内胆管がんの2種類に分けられます。
肝がんは50歳代から増え始め、80~90歳代が最も多くなります。男女の罹患率を比べると2:1で男性の方が多いことが特徴です。
肝臓がんの初期症状をチェック
ここでは、肝臓がんの初期症状や自覚症状について詳しく解説していきます。
初期には自覚症状がほとんどない
肝臓がんは特有の初期症状といえるものがなく、健康診断や他の病気での検査によってたまたま見つかるケースが多いようです。
ほとんど自覚症状もあらわれないため、初期段階で肝臓がんを発見するには日頃から定期検診を受けることが大切です。
進行してからあらわれる症状:腹部のしこり
原発性肝がんの場合、がんが進行すると右側腹部のみぞおちあたりにしこりを感じるようになります。しこりが感じられる場合は、早めに診察を受けましょう。
進行してからあらわれる症状:圧迫感
しこりが大きくなると周囲が圧迫されて不快感を覚えることもあります。特に腹部の右上に圧迫感がある場合は、肝臓がんの恐れがあるので注意が必要です。
進行してからあらわれる症状:痛み
しこりが大きくなることで鈍い痛みがあらわれることもあります。痛みがあらわれる場所はみぞおちや右わき腹です。
肝臓がんの検査
肝臓がんが疑われる場合、超音波(エコー検査)や腫瘍マーカー検査、CT検査、MRI検査を組み合わせて検査します。それぞれの検査について解説していきます。
超音波(エコー)検査
超音波検査はがんの大きさや形、がんができている場所と周辺の臓器との関係などを調べるために行います。肝臓がんの場合は、血流を確認するために造影剤を使うことがあります。
腫瘍マーカー検査
がん細胞やがん細胞に反応した細胞が作り出すタンパク質などの物質を腫瘍マーカーと呼びます。がんの種類によって作られる物質が異なることが特徴で、血液検査や尿検査で確認できます。
がんであっても腫瘍マーカーが陰性となる場合や、肝炎、肝硬変、肝臓以外でのがんによって腫瘍マーカーの数値が高くなる場合があるので、必ず画像検査なども併せて行います。
CT検査・MRI検査
CT検査とMRI検査は治療の前にがんの有無や、がんがどれくらい広がっているのか、他の臓器への転移がないかを調べる検査です。治療の効果を確認したり、治療後に再発の有無を調べたりするために行われることもあります。MRIでは造影剤を使うことがあります。
肝臓がんの治療方法
次は肝臓がんと判明した際に行われる治療方法について解説します。
肝臓がんの治療として考えられる治療方法は、主に以下の種類があります。
- 穿刺局所療法
- 肝動脈(化学)塞栓療法
- 薬物療法
- 放射線治療
それぞれの治療方法について詳しく解説します。
穿刺局所療法
皮膚の上からがんに直接針を刺して、その部分だけ治療を行う方法です。手術より身体に負担がかかりません。
穿刺局所療法にはいくつか種類がありますが、肝臓がんに推奨されるのはラジオ波焼灼療法(RFA)です。ラジオ波焼灼療法はがんに刺した針に電気を通すことで針の先端を高熱にし、がんを焼いて死滅させます。
治療を行う際は針を刺す部分に局所麻酔を行い、がんを焼く時の痛みを抑えるために鎮痛剤や点滴による麻酔を使用することがあります。
肝動脈(化学)塞栓療法
手術が難しかったり、穿刺局所療法の対象外である場合に行われます。
足の付け根、肘、手首などの動脈からX線で体の中を確認しながらカテーテルを入れ、がんの近くの肝動脈を詰まらせることでがんへの血流を減らす治療法です。塞栓療法には肝動脈化学塞栓療法(TACE)と肝動脈塞栓療法(TAE)があります。
肝動脈化学塞栓療法は、細胞障害性抗がん薬と造影剤を混ぜたものを先に注入し、その後塞栓物質を入れる方法です。肝動脈を詰まらせてがんへの血流を減らし、細胞障害性抗がん薬ががん細胞の増殖を抑制します。
対して肝動脈塞栓療法は塞栓物質のみを注入し、がんに栄養を運んでいる肝動脈を詰まらせて血流を減らす方法です。
薬物療法
穿刺局所療法と肝動脈塞栓療法のどちらもあまり効果が得られない進行性肝細胞がんで、全身状態がよく、肝臓の機能も良好な場合に行う治療法です。
薬物療法で使われる薬は分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の2種類です。分子標的薬はがん細胞が栄養や酸素を取り入れるために新しい血管を作ることを阻害し、免疫チェックポイント阻害薬はリンパ球にがん細胞を攻撃しやすくさせます。
薬物療法ではそれぞれの薬に特有の副作用があり、身体の状態やがんの進行度合いに応じて医師とよく相談して治療方針を決めていきます。
放射線治療
放射線治療は肝臓に対して影響が強くあまり一般的ではありませんでしたが、最近では放射線技術が進歩して肝臓がんにピンポイントで照射できるようになり、治療の選択肢の1つとなっています。
手術や穿刺局所療法が困難な場合に行うことがありますが、実施できる施設はまだ多くありません。
肝臓がんの早期発見のためのポイント
肝臓がんの場合、初期には特有の症状などがなくほとんど無症状のため定期的に健診を受けることが大切です。
肝臓は比較的がんができにくい臓器で、肝硬変や慢性肝炎などの肝炎が続くと肝臓がんを発症しやすくなるともいわれます。肝硬変や慢性肝炎にかかっている方は定期的に超音波検査や腫瘍マーカーの測定を受けて、肝臓がんの早期発見に努めましょう。
肝臓がんの初期症状チェックについてよくある質問
ここまで肝臓がんの初期症状や検査、治療法などをご紹介しました。ここでは「肝臓がんの初期症状チェック」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
今すぐに病院を受診するべき目安を教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
みぞおちのあたりにしこりや疼痛がある場合は、肝臓がんの可能性もあるので早めに受診しましょう。肝臓がんの初期では自覚症状がほとんどありません。定期的に健康診断を受け、肝機能に異常があったり肝炎ウイルスに感染している恐れがあるといわれた時は早めに病院を受診してください。
肝機能に異常があると肝臓がんになりやすいのですか?
甲斐沼 孟(医師)
肝機能に異常がある場合、特にB型肝炎やC型肝炎を長く患っていると肝臓がんを発症しやすい傾向があります。肝炎ウイルスにかかっていなくてもアルコール性肝障害や糖尿病・肥満などの生活習慣病がある人も発症する割合が高い傾向にあります。
編集部まとめ
今回は肝臓がんの初期症状と、肝臓がんが疑われる場合に受ける検査や早期発見のためのポイントについて解説してきました。
肝臓がんは初期症状があまりなく、がんになったことに気づきにくい病気です。肝炎など肝機能に異常があると発症しやすくなる傾向があります。
定期的な健康診断を受けて肝臓の異常をなるべく早く発見することが肝臓がんの早期発見につながります。
肝臓がんと関連する病気
「肝臓がん」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 肝硬変
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
B型肝炎やC型肝炎ウイルスに長く感染していると、肝細胞の炎症が続き慢性肝炎から肝臓が硬くなる肝硬変へと至ることがあります。また脂肪肝炎とは肥満や糖尿病などの生活習慣病により、肝臓に多量の脂肪が溜まって炎症を起こしている状態のことです。慢性肝炎同様に肝硬変になることがあります。非アルコール性の脂肪肝から脂肪肝炎に、さらに肝硬変へと進む肝臓の病気を非アルコール性脂肪性肝疾患と呼んでいます。自覚症状などはあまりないので、定期的に健康診断を受けて肝臓に異常が認められた際は早めに内科や消化器内科を受診しましょう。
肝臓がんと関連する症状
「肝臓がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 黄疸
- むくみ
- かゆみ
- だるさ
- 倦怠感
- 腹部のしこりや圧迫感
- 腹部の痛み
肝臓がんは慢性肝炎や肝硬変を伴っていることが多いため、がんとは別に肝機能の低下による症状があらわれることがあります。上記のような症状が少しでも気になるようであれば、早めに病院へ行き相談しましょう。肝臓がんは早期に発見し、治療することが非常に大切です。