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「腎臓がんが転移する確率・ステージ別の余命」はご存知ですか?症状も解説!

 公開日:2024/02/23
「腎臓がんが転移する確率・ステージ別の余命」はご存知ですか?症状も解説!

腎臓がんの転移や余命についてご存じですか?本記事では、腎臓がんの転移や余命について以下の点を中心にご紹介します!

  • ・腎臓がんステージごとの余命
  • ・腎臓がんの検査方法
  • ・腎臓がんの症状

腎臓がんの転移や余命について理解するためにもご参考いただけると幸いです。ぜひ最後までお読みください。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

腎臓がんとは

腎臓がんとは、腎臓の細胞ががん化したもので、腎がんとも呼ばれます。腎臓がんのほとんどは、腎実質の尿細管の細胞ががん化した腎細胞がんです。腎盂の細胞ががん化した腎盂がんとは区別されます。腎臓がんは、初期には自覚症状に乏しく、健康診断や他の病気の検査で偶然に発見されることが多いです。腎臓がんの症状としては、血尿、腰痛、腹部のしこり、食欲不振などがあります。

腎臓がんの原因

腎臓がんになる原因は、明確には分かっていませんが、以下のような危険因子が関係していると考えられています。

喫煙:タバコに含まれる有害物質が腎臓にダメージを与える可能性があります。
肥満:脂肪細胞から分泌される物質が腎臓の細胞をがん化させる可能性があります。
高血圧:血管の圧力が高くなることで腎臓に負担がかかり、酸化ストレスや遺伝子の傷が生じる可能性があります。
人工透析:腎不全の治療として行われる透析は、腎臓の組織に炎症や傷を引き起こす可能性があります。
遺伝性症候群:フォン・ヒッペル・リンダウ病やバード・ホッグ・デュベ症候群などの遺伝性症候群は、腎臓がんの発症率が高いとされています。

腎臓がのステージごとの余命

腎臓がんの転移や余命について、ステージごとに解説します。腎臓がんのステージは、がんの大きさやひろがり具合によってIからIVまで分けられます。ステージごとの余命は、平均余命や5年生存率などの指標で表されます。平均余命とは、同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示すものです。5年生存率とは、病気の発見から5年後に生きている人の割合を示すものです。

ステージ1

ステージ1は、がんが腎臓内にとどまり、直径が7cm以下の場合に該当します。腎臓がんのステージ1の場合、平均余命は5年以上、5年生存率は約90%以上と高くなっています。これは、腎臓がんの中でも早期で治療の影響力が大きい段階であることを意味します。ステージ1の腎臓がんは、手術や分子標的薬などの治療で病状が改善する可能性があります。

ステージ2

ステージ2は、がんが腎臓内にとどまるものの、直径が7cmを超える場合に該当します。腎臓がんのステージ2の場合、平均余命は5年以上、5年生存率は約75%~90%と高くなっています。これは、腎臓がんの中でも早期で治療による影響力が大きい段階であることを意味します。ステージ2の腎臓がんは、手術や分子標的薬などの治療で改善する可能性があります。

ステージ3

ステージ3は、がんが腎静脈や周囲の脂肪組織、下大静脈に及んでいる場合、あるいはがんが所属リンパ節の1つに転移している場合のいずれかが該当します。腎臓がんのステージ3の場合、平均余命は5年以上、5年生存率は約66.3%となっています。これは、腎臓がんの中では進行した段階であることを意味します。ステージ3の腎臓がんは、手術や分子標的薬などの治療で改善する可能性があるものの、再発や転移のリスクが高いです。

ステージ4

ステージ4は、がんが別の臓器に転移しているか、所属リンパ節に2個以上の転移を認める場合に該当します。腎臓がんのステージ4の場合、平均余命は約17ヶ月、5年生存率は10%〜30%と低くなっています。これは、腎臓がんの中ではかなり進行した段階であることを意味します。ステージ4の腎臓がんは、手術や分子標的薬、免疫療法などの治療で寛解する可能性があるものの、再発や転移のリスクが高いです。

腎臓がんの検査方法

腎臓がんの検査方法についても解説します。

超音波検査

腎臓がんの診断やステージの判定には、体の中の状態を画像として見る画像検査が重要な役割を果たします。超音波検査(エコー検査)では、超音波を体に当てて、腎臓の形や大きさ、腫瘍の有無や性状などを調べる検査です。痛みや被ばくの心配はありません。

CT検査

CT検査とは、放射線を利用して、体の断面を画像化する検査です。CT検査では、腫瘍の大きさや周囲の臓器への広がり、肺や肝臓への転移の有無などが調べられます。また、より詳細に調べるために造影剤という薬を注射して行う場合もあります。造影剤は、腎臓や血管などの血液の流れを強調して、画像のコントラストを高めます。
CT検査には以下のような注意点もあります。

・放射線を使用するため、被ばくのリスクがある
・造影剤にアレルギーがある人や腎機能が低下している人は使用できない
・腎臓がんが小さい場合や特殊なタイプの場合は、診断が難しいことがある

MRI検査

腎臓がんの検査方法の一つに、MRI検査があります。MRI検査とは、強力な磁石と電波を使って体の内部の断面像を作り出す検査です。
MRI検査は腎臓がんの診断に役立つ検査ですが、副作用やリスクもあります。例えば、検査中に不安や閉塞感を感じる人もいます。また、画像を鮮明にするために、造影剤という液体を注射することもありますが、造影剤によってアレルギー反応や腎機能障害を起こすこともあります。そのため、検査を受ける前に医師に自分の病歴やアレルギーの有無などを伝えることが大切です。

生検

生検とは、がんかどうかや、がんの悪性度などを調べる検査です。腎臓がんの場合、画像検査だけでは診断ができない場合や、転移がある場合に行われることがあります。
生検の方法は、主に以下の2種類があります。

経皮的針生検:局所麻酔をした後、腹部に細い針を刺して、腎臓の組織の一部を採取する方法です。超音波やCTなどの画像検査を併用して、正確な位置を確認しながら行います。通常、1泊2日の入院で行われます。
手術的生検:開腹手術や腹腔鏡手術などの方法で、腎臓の組織の一部を採取する方法です。経皮的針生検ができない場合や、腎臓の一部を切除する場合に行われます。通常、数日間の入院が必要です。

生検の結果は、病理医が顕微鏡で組織を観察して、がんの有無や種類、悪性度などを判断します。治療方針を決める上で重要な情報となります。

骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィとは、骨への転移を調べる検査です。骨の痛みや血液検査の異常など、骨への転移を疑う場合に行われます。骨シンチグラフィは、まず静脈注射で放射性物質を含む薬剤を投与します。ここで用いる薬剤は、骨の異常部分に集まる性質を持っています。薬剤が全身に浸透するのを待ってから、特殊なカメラで撮影します。カメラは、薬剤から出る放射線を捉えて、骨の画像を作ります。

腎臓がんの症状

腎臓がんが進行すると以下のような症状を呈することがあります。

血尿

血尿とは、尿に血液が混じることで、尿の色が赤くなったり、血の塊が出たりする状態です。血尿は、腎臓がんだけでなく、腎結石や腎炎、膀胱炎などの尿路の病気でも起こります。
腎臓がんの場合、血尿は進行した症状のひとつです。腎臓がんは、初期の段階では自覚症状がほとんどありませんが、がんが大きくなると、腎臓や尿管などの尿路に傷がついて、血液が漏れ出します。血尿は突然出たり止まったりすることが多く、排尿時に痛みを感じることは少ないです。
腎臓がんの種類によっても、血尿の出方は異なります。腎臓の本体にできる腫瘍のほとんどが腎細胞がんで、見た目にはわからない、検査を行ってわかる血尿(顕微鏡的血尿)を含めると、約40%の割合で見られます。腎臓の中にある腎盂や尿管にできる腫瘍は腎盂・尿管がんで、血尿は約80%の割合で見られます¹²。腎盂・尿管がんの場合、血尿は尿の全部が赤くなるのが特徴です。

腹部腫瘍

腹部腫瘍とは、腹部にしこりができることをいいます。腫瘍が大きくなると、腹部や腰に触れると硬いしこりを感じることがあります。腹部腫瘍は、進行した腎臓がんの症状のひとつで、自覚症状がない初期の段階ではあまり見られません。
腹部腫瘍の原因は、腎臓の細胞ががん化して増殖することで、腎臓が肥大化することです。腎臓がんは、腎臓のどの部分にできるかによって、腫瘍の大きさや形が異なります。腎臓の本体にできる腫瘍は、腎細胞がんと呼ばれ、腎臓がんのほとんどがこのタイプです。腎細胞がんは、腎臓の外側に向かって成長することが多く、腫瘍が大きくなると腹部にしこりができます。腎臓の中にある腎盂や尿管にできる腫瘍は、腎盂・尿管がんと呼ばれ、腎臓がんの約10%がこのタイプです。腎盂・尿管がんは、腎臓の内側に向かって成長することが多く、腫瘍が大きくなっても腹部にしこりができにくいです。

腎臓がんの治療方法

腎臓がんの主な治療法について以下に解説します。

薬物療法

薬物療法とは、薬剤を使ってがん細胞の増殖を抑えたり消滅させたりすることを目的とした治療法です。薬物療法は、切除不能な腎臓がんや転移がある腎臓がんの場合に行われます。薬物療法には、免疫療法と分子標的治療の2種類があります。
免疫療法とは、免疫を担当している細胞やタンパク質のはたらきを活性化させることで、がん細胞を攻撃し、がんを抑制する治療法です。腎臓がんでは、インターフェロン製剤とインターロイキンの2つの薬剤があります。これらの薬剤は、静脈注射や皮下注射で投与されます。免疫療法は、約15〜20%の患者さんのがんが半分以下に縮小します。免疫療法の副作用には、発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、食思不振、白血球減少、血小板減少、甲状腺機能異常、耐糖能異常、間質性肺炎、神経精神症状、目や網膜の症状、脱毛、皮膚症状、循環器の症状などがあります。
分子標的治療とは、がん細胞の増殖や転移に関与する特定の分子を標的にすることで、がんを抑制する治療法です。分子標的治療には、チロシンキナーゼ阻害薬とmTOR阻害薬の2つのタイプがあり、現在では合わせて6種類の薬が使用できます。これらの薬剤は、経口で服用するか、静脈内に点滴するかの方法で投与されます。分子標的治療は、がんを小さくしたり、増大を遅らせたりします。分子標的治療の副作用には、高血圧、下痢、食思不振、疲労感、手足症候群、血球減少、甲状腺機能障害、蛋白尿、消化管出血、心筋障害などがあります。

外科的治療

外科的治療とは、がんやがんのある臓器を切り取る(切除する)治療法です。腎臓がんの場合、外科的治療が主体となります。外科的治療には、腎部分切除術と腎摘除術の2種類があります。
腎部分切除術とは、がんの病巣と腎臓の一部を切除する方法です。がんが小さい場合(4cm以下)に選択されることが多いです。残った腎臓の機能を温存できるという利点があります。腎部分切除術は、おなかを切開して行う「開腹手術」や、おなかに開けた小さな穴から腹腔鏡を入れて行う「腹腔鏡手術」があります。腹腔鏡手術では、手術用ロボットを遠隔操作して行う場合もあります。
腎摘除術とは、腎周囲脂肪組織も含め腎臓ごと腫瘍を取り除く方法です。腎臓の頭側にある副腎を一緒に切除するかどうかは、がんの位置や副腎への転移の状況などを考慮して決定されます。腎摘除術も、開腹手術や腹腔鏡手術があります。外科的治療の合併症には、出血、感染、尿漏、血栓症などがあります。

局所療法

局所療法とは、体外から専用の細い針でがんに向かって刺し、がんを壊死させる治療法です。局所療法には、凍結療法とラジオ波焼灼療法の2種類があります。
凍結療法とは、針の先端に極低温を発生させて凍結、解凍をくり返すことでがんを凝固・壊死させる治療法です。凍結療法は、4cm以下の小さながんに対して行われます。凍結療法は、局所麻酔下にて行われ、傷痕が小さく出血も少ない体の負担が少ない治療法です。凍結療法の合併症には、後腹膜出血、血尿、膀胱タンポナーデ、腎臓周辺の臓器の損傷、疼痛、発熱などがあります。
ラジオ波焼灼療法とは、針に高周波の電磁波を流してがんを焼いて壊死させる治療法です。ラジオ波焼灼療法は、3cm以下の小さながんに対して行われます。ラジオ波焼灼療法は、局所麻酔下にて行われ、傷痕が小さく出血も少ない体の負担が少ない治療法です。ラジオ波焼灼療法の合併症には、後腹膜出血、血尿、腎臓周辺の臓器の損傷、疼痛、発熱、周辺組織の熱傷などがあります。
局所療法は、手術が難しいと考えられる高齢の方や腎機能が低下した方、心疾患系の疾患を有する方などに対して行われます。また、手術後の再発例で適用されることもあります。

腎臓がんについてよくある質問

ここまで腎臓がんを紹介しました。ここでは腎臓がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腎臓がんで腎臓を取ってしまっても大丈夫ですか?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

腎臓がんの治療では、腎臓を切除する手術が行われることが多いです。腎臓が一つだけになっても、もう一方の腎臓が正常に働いていれば、日常生活にはほとんど影響はありません。しかし、残った腎臓に負担がかかるので、腎臓の機能を測定する検査や、腎臓に優しい食事や生活習慣を心がける必要があります。残った腎臓の機能が低下してしまった場合には、透析や腎移植が必要になることもあります。

腎臓がんにかかる人はどのくらいいますか?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

腎臓がんは、男性に多く、女性の2倍の頻度で発症します。腎臓がんの原因は、喫煙や高血圧、肥満などが関係していると考えられています。日本では、腎臓がんの発症率は年々増加傾向にあります。2018年の統計では、腎臓がんの新たな患者数は約2万人で、男性は約1万4千人、女性は約6千人でした。10万人あたりの発症率は、男性で11.3人、女性で4.7人でした。

腎臓がんが転移する確率はどれくらいですか?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

腎臓がんが転移する確率は、がんの進行度や種類によって異なります。一般的に、がんが腎臓内にとどまっている場合は転移しにくく、腎臓の外に広がっている場合は転移しやすいといわれています。また、腎臓がんの中でも、淡明細胞がんや粘液管状紡錘細胞がんは転移しやすいとされています。
腎臓がんの転移は、血管やリンパ管を通って他の臓器に移動することで起こります。腎臓がんが転移しやすい臓器には、肺、骨、肝臓、膵臓などがあります。転移の有無や部位によっても、予後や治療法が変わってきます。
腎臓がんの転移の確率を具体的に示す統計は少ないですが、ある報告によると、腎臓がんの患者の約6割に肺転移が見つかり、約3割に骨転移が見つかったということです。また、別の報告によると、腎臓がんの手術後に再発する場合は約3割で、そのうち約半数が遠隔転移であったということです。

編集部まとめ

ここまで腎臓がんの転移や余命についてお伝えしてきました。腎臓がんの転移や余命の要点をまとめると以下のとおりです。

⚫︎まとめ

  • ・腎臓がんの余命はステージごとで異なり、転移のないステージ1の5年生存率は90%以上、ステージ2の5年生存率は75%~90%、転移のあるステージ3の5年生存率は66.3%、ステージ4の5年生存率は10%~30%
  • ・腎臓がんの診断には画像検査や生検が用いられることが多い
  • ・腎臓がんが進行すると血尿や腹部腫瘍などの症状を呈することがある

腎臓がんと関連する病気

腎臓がんと関連する病気は1個あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

泌尿器科の病気

  • 腎細胞癌

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

腎臓がんと関連する症状

腎臓がんと関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師