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【感染症専門医に聞く】新型コロナワクチンの有効性や副反応は実際どうなの?

 更新日:2023/03/27
【感染症専門医に聞く】新型コロナワクチンの有効性や副反応は実際どうなの?

日本でも2月17日より、新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されました。まずは医療従事者への接種が先行され、一般の方への接種は4月ころとなる見込みです。接種を受けるにあたり気になるのは異例の短期間で開発・承認されたワクチンの効果と副反応ではないでしょうか。感染症専門医の堀野先生にお伺いしました。

※この記事は、2021年2月22日時点の取材データをもとに作成しております。

堀野 哲也

監修医師
堀野 哲也(東京慈恵会医科大学附属病院感染症科 診療医長、日本感染症学会感染症専門医)

編集部編集部

15日に承認された米国ファイザー社のワクチンは、どのような仕組みでCOVID-19の予防をするのでしょうか?

堀野先生堀野先生

新型コロナウイルスは、ウイルスの表面にあるスパイクタンパク質が人の細胞に結合することで侵入します。スパイクタンパク質に対して免疫ができれば、新型コロナウイルスの細胞内への侵入を防ぐことができますから、多くのワクチンがこのスパイクタンパク質をターゲットにしています。人のタンパク質は細胞質にあるリボソームと呼ばれる器官で合成され、mRNAはリボソームにタンパク合成に必要な情報を運ぶ役割を持っています。米国ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発したワクチンはmRNAワクチンと呼ばれ、スパイクタンパク質の合成に必要な情報をもつmRNAが含まれています。このmRNAワクチンを接種すると、人の細胞質内でスパイクタンパク質が合成され、スパイクタンパク質に対する免疫を獲得することができます。

編集部編集部

どの程度の有効性があるのでしょうか?

堀野先生堀野先生

このワクチンは21日間隔で2回接種しますが、2回目のワクチン接種から7日以降にCOVID-19を発症した人数を比較した報告では、ワクチン接種を受けた方では21,669人中9人、ワクチン接種を受けなかった方では21,686人中172人で、発症を94.8%減らすことができたことが報告されています。また、ワクチンを受けた人では重症化した人数も少なかったため、重症化を防ぐ効果も期待されています。

編集部編集部

同じく厚労省へ承認申請が出ているアストラゼネカ社や日本へ供給予定のモデルナ社のワクチンとの違いはあるのでしょうか?

堀野先生堀野先生

モデルナ社はファイザー社と同様にmRNAワクチンですので、仕組みは同じですが、投与は28日あけて2回接種します。アストラゼネカ社のワクチンはウイルスベクターワクチンとよばれ、他のウイルスの中にSARS-CoV-2のスパイク蛋白を形成する情報を組み込んで接種することで免疫を獲得します。ワクチンの効果はモデルナ社で94.1%、アストラゼネカ社で70.4%と報告されています。

編集部編集部

いずれも短い期間で開発、臨床試験がおこなわれていますが、副反応の心配はないのでしょうか?

堀野先生堀野先生

ワクチン接種を受けた方の約20%に副反応が認められたことが報告され、ワクチンを接種した部位の疼痛(痛み)、発赤(赤くなる)、腫脹(腫れ)などの局所反応や、発熱倦怠感(だるさ)、頭痛などの全身反応が報告されています。また、重篤な副反応としてアナフィラキシー反応が報告されています。2020年12月14日~23日にワクチンの初回接種をうけた1,893,360人中21人で アナフィラキシー反応がみられており、これは100万例中の11.1例に相当します。アナフィラキシー反応は非常に重篤な副作用ですが、治療は可能ですので、発生時にすぐに対応できるように接種後15分は施設内に待機していただくことになっています。

編集部編集部

一部でワクチン接種の危険性を指摘する人もいますが、接種したほうがいいのでしょうか?

堀野先生堀野先生

今回の新型コロナウイルス感染症に対するワクチンは新たに開発されたワクチンですし、ワクチンは感染症に対する治療ではなく予防ですから、接種による効果とリスクは慎重に考えた方が良いと思います。新型コロナウイルス感染症の重症化率や致死率は、高齢者で高いことが注目されますが、20-29歳でも重症化率0.03%、致死率0.01%と報告されています。年齢だけで単純に計算しますと、20歳代でも感染すると1万人に3人が重症となり、1人がお亡くなりになることになります。また、これらの数値に含まれていない持続する倦怠感や味覚障害、脱毛などの後遺症を考慮すると、感染したときのリスクは若い方であっても低くないと思います。家庭内感染の報告が増えており、外出時の注意だけでは防ぎきれないことがあることを考えると、接種のメリットは大きいと考えています。

この記事の監修医師