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「多発性骨髄腫(血液のがん)の入院期間」はどれくらいかご存知ですか?【医師監修】

 更新日:2024/03/21
「多発性骨髄腫(血液のがん)の入院期間」はどれくらいかご存知ですか?【医師監修】

多発性骨髄腫という病気をご存じでしょうか。多発性骨髄腫は血液のがんとされ、治療の際に入院が必要な場合があります。本記事では多発性骨髄腫の入院期間について以下の点を中心にご紹介します。

  • ・多発性骨髄腫とは
  • ・多発性骨髄腫とは
  • ・多発性骨髄腫の治療時の入院

多発性骨髄腫の入院期間について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

多発性骨髄腫とは?

多発性骨髄腫は、血液細胞の一部である形質細胞が異常に増殖する疾患です。形質細胞は通常、体を守る抗体を生成しますが、多発性骨髄腫になると、形質細胞が骨髄腫細胞に変化し、無効な抗体(M蛋白)を生産します。骨髄腫細胞とM蛋白が増加すると、さまざまな症状が現れるようになります。特に、血中のカルシウム濃度が高くなったり、腎臓機能の低下、貧血、骨が壊れやすい場合には治療が必要となります。日本では、全てのがんの約1%、血液がんの約10%を占め、高齢者に多く見られます。無症候性の場合もあり、その場合は定期的な検査と観察が行われます。

多発性骨髄腫の症状と原因

ここからは、多発性骨髄腫の症状と原因を解説します。

症状

多発性骨髄腫の初期段階では自覚症状がないことが一般的で、健康診断などで無症候性骨髄腫として発見されることもあります。
自覚症状がある場合、多いのは骨の痛みです。これは、骨髄腫細胞が骨を壊すため、骨がもろくなり、骨が折れる場合があるためです。また、骨髄腫細胞の増加により、正常な血液細胞が減少し、貧血や血小板減少による出血傾向、白血球減少による感染症の発症リスクが高まるとされています。
さらに、血液中のカルシウム濃度が高くなると、めまいや頭痛、口の渇き、便秘、食欲不振などの症状が現れる場合があります。また、血液中のM蛋白の量が増えると、血液の粘性が上昇し、めまいや頭痛などの症状が現れることがあります。
以上のように、多発性骨髄腫の症状は多岐にわたり、個々の患者さんで異なる場合が多いです。

原因

前述した通り、多発性骨髄腫の原因は、形質細胞に生じるさまざまな遺伝子異常や染色体異常とされていますが、具体的な原因はまだ明らかになっていません。

多発性骨髄腫の診断と検査

多発性骨髄腫を診断し、治療を選択するためにはさまざまな検査が必要です。以下で、多発性骨髄腫の骨髄検査、血液検査、尿検査、画像診断について解説していきます。

骨髄検査

多発性骨髄腫の診断には「骨髄検査」が重要な役割を果たします。この検査は、血液やリンパのがんの診断や病型を確定するために行われ、腸骨(腰の骨)から骨髄液または骨髄組織を採取します。採取した骨髄液や骨髄組織を顕微鏡で観察し、骨髄腫細胞の種類や悪性度を調べます。細胞表面に存在するマーカー(腫瘍の特徴や存在を示す印)の検査で診断を確定することもあり、染色体の異常を調べる染色体検査は、予後を予測することや治療法を決定するために行われます。

血液検査

多発性骨髄腫の診断における血液検査は、ヘモグロビン、赤血球、血小板、白血球などの数値を計測し、体の造血機能がどの程度あるかを調べるものとなっています。さらに、病状の進行度や腎機能を評価するために、Mタンパク、免疫グロブリン、カルシウム、クレアチニン、β2ミクログロブリン、アルブミンなども測定します。

尿検査

尿検査では、多発性骨髄腫の患者さんの尿中に存在するとされるタンパク質、ベンスジョーンズタンパク(BJP)と呼ばれるMタンパクの一部が検出されるかを確認します。
さらに、尿検査では腎機能の状態も確認します。Mタンパクが大量に尿中に排泄されることで腎臓に大きな負荷がかかり、腎障害の原因にもなるためです。

画像診断(X線、CT、MRI、PET検査)

多発性骨髄腫と診断された場合、病気の全身への広がりと骨の状態を評価するために画像検査が行われます。一般的なのはX線検査で、全身の骨の病変や病的骨折の存在を確認します。また、小さな骨の病変や骨髄腫細胞の広がりを詳しく調べるためには、CTやMRI検査が適しているとされています。
最近では、骨髄外の病変を評価するために、がんに集まるブドウ糖の性質を利用し、がん細胞に吸収されたブドウ糖の配置を確認してがんの位置や広がりを診断する、PET検査が行われることもあります。ただし、多発性骨髄腫が疑われる場合、造影剤を使用した画像検査は基本的に行われません。造影剤は腎機能を悪化させる可能性があるためです。

多発性骨髄腫の治療

多発性骨髄腫の治療は、年齢や合併症によって異なり、造血幹細胞移植療法が適応できる場合は、薬物療法後に造血幹細胞移植療法を行い、造血幹細胞移植療法が適応できない場合は薬物療法をする、というのが標準治療とされています。以下からは、それぞれの治療法について詳しく解説します。

薬物療法

多発性骨髄腫の薬物療法は、新規薬剤の登場により大きく進化しています。
ベルケイド、サレド、レブラミドなどの新規薬剤が使用可能となり、さらにポマリストが再発または難治性の症例に対して承認されました。2017年以降、エムプリシティ、カイプロリス、ニンラーロといった新規薬剤も承認され、治療の選択肢が増えています。初回治療では、主にベルケイドとレナデックス、またはレブラミドとレナデックスが併用されます。これらの薬剤に加えて、エンドキサンなどの抗がん剤が併用されることもあります。
新規の抗体製剤の開発も進んでおり、今後も治療の選択肢が広がることが期待されています。

自家末梢血幹細胞移植療法

薬物療法は、大量の薬剤を用いて骨髄腫細胞を減少させる一方で、正常な造血幹細胞もダメージを受けるため、薬物療法より前に患者さん自身の血液から造血幹細胞を採取し保存しておきます。その後、大量の薬剤による治療を行い、保存しておいた造血幹細胞を戻すことで、血液を作る能力を回復させるというのが自家末梢血幹細胞移植療法です。
自家末梢血幹細胞移植療法は効果が期待できる一方で、体への負担も大きいため、65歳以下で、重大な感染症を持っておらず、腎臓、肝臓、肺、心臓の機能が適切に維持されている人に限られるとされています。

放射線治療

多発性骨髄腫の治療法として、腫瘍の縮小や痛みを和らげるために放射線治療が適用されることがあります。骨髄腫細胞が放射線に対して高い感受性を示すとされているためです。特に、骨の病変が局所的である場合、少量の放射線照射でも効果が期待できるとされています。しかし、病変が脊髄を圧迫するほど進行している場合は、ステロイド剤などの治療を併用して迅速に行う必要があります。

多発性骨髄腫治療のための入院

多発性骨髄腫の治療には一部入院が必要になる場合があります。以下で解説します。

入院が必要な治療

多発性骨髄腫の治療は、主に外来で行われますが、自家造血幹細胞の採取や移植、または副作用が強い初期の大量薬物療法では入院が必要となります。

入院期間

前述した通り、自家造血幹細胞移植療法は、抗がん剤の投与と幹細胞移植が含まれます。移植後、細胞が定着するまでの約10~14日間は無菌室で過ごし、感染症を予防します。そして、治療開始から約1ヶ月後に退院が可能とされています。

多発性骨髄腫の治療中・治療後に日常生活で注意すること

多発性骨髄腫の治療中や治療後は感染症に注意し、手洗いやうがいを忘れずにしましょう。また、バランスの良い食事を心掛け、治療中の重労働や長期旅行はできるだけ避け、定期的な検査を受けることが大切です。
また、治療中の抗がん剤の副作用には制吐剤などで対処ができる可能性がありますので、主治医や病院に確認してみましょう。

多発性骨髄腫についてよくある質問

ここまで多発性骨髄腫を紹介しました。ここでは多発性骨髄腫についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

多発性骨髄腫のステージを教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

多発性骨髄腫の進行度は、血液中のアルブミンとβ₂ミクログロブリンのレベルにより、Ⅰ〜Ⅲの3つの段階に分けられます。Ⅰ期は、血清β2ミクログロブリンが3.5 mg/L未満で、血清アルブミンが3.5 g/dL以上の場合です。Ⅱ期は、Ⅰ期でもⅢ期でもない状態を指します。具体的に挙げると、血清β2ミクログロブリンが3.5 mg/L未満で血清アルブミンが3.5 g/dL未満、または血清β2ミクログロブリンが3.5 mg/L以上で5.5 mg/L未満の場合です。
Ⅲ期は、血清β2ミクログロブリンが5.5 mg/L以上の場合とされます。

多発性骨髄腫は予防できますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

多発性骨髄腫の予防については、現在のところ確立された方法は存在しません。その理由は、多発性骨髄腫の具体的な原因がまだ明らかにされていないからです。しかし、早期発見に努めることは重要で、血液検査や尿検査で異常が見つかった場合は、すぐに詳細な検査を受けることが推奨されます。また、治療後は定期的に通院し、経過を観察することが大切です。特に、多発性骨髄腫は再発や病状進行の可能性が高いため、定期検査は必須となります。

編集部まとめ

ここまで多発性骨髄腫の入院期間についてお伝えしてきました。多発性骨髄腫の入院期間についての要点をまとめると以下のとおりです。

⚫︎まとめ

  • ・多発性骨髄腫とは、血液細胞の一部である形質細胞が異常に増殖する疾患
  • ・多発性骨髄腫の治療は、年齢や合併症によって異なり、基本的には薬物療法で治療し、造血幹細胞移植療法が適応できる場合は、薬物療法後に移植を行う
  • ・多発性骨髄腫の治療は、主に外来で行われ、自家造血幹細胞の採取や移植、または副作用が強い初期の大量薬物療法では入院が必要となり、患者さんの状態などによるが、入院期間は1か月程度とされている

多発性骨髄腫と関連する病気

多発性骨髄腫と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

血液内科の病気

  • 形質細胞腫
  • マクログロブリン血症
  • 免疫グロブリン性(AL)アミロイドーシス

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

多発性骨髄腫と関連する症状

多発性骨髄腫と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師