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「男性乳がんのステージ分類」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/02/21
「男性乳がんのステージ分類」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】

男性乳がんにはどのようなステージがあるか知っていますか?本記事では、男性の乳がんのステージについて、下記内容を中心に解説していきます。

  • ・男性の乳がんとは
  • ・男性乳がんのステージ
  • ・男性乳がんのステージ別の治療法

男性の乳がんのステージについて知るためにも参考にしてください。ぜひ最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

男性の乳がんとは?

男性の乳がんは、比較的まれな疾患であり、乳がん全体の約1%を占めるとされています。生涯を通じて、男性のおよそ1000人に1人が乳がんに罹患するというデータがあります。これは、女性の乳がんの発生率と比較してかなり低い割合です。女性の場合、生涯を通じて約8人に1人が乳がんに罹患するといわれています。男性の乳がんは、あらゆる年齢の男性に発生する可能性がありますが、特に多く見られるのは60〜70代の年代であり、診断された時点ですでに進行している場合が多いとされています。その理由は、男性における乳がんへの認識の低さや、乳がんが女性に多い疾患という認識により、男性が乳がんの可能性を見落としやすいためかもしれません。

男性の乳がんの危険因子・要因

男性の乳がんには、いくつかの重要な危険因子や要因があります。以下の要因は、男性が乳がんを発症する可能性を高めることが知られています。

家族歴:乳がんになったことのある近親者がいる男性は、そうでない男性に比べて、乳がんを発症するリスクが2倍になります。このリスクは、性別に関わらず、一族に乳がんの既往歴がある場合に増加します。

放射線療法の経験:胸部や乳房に放射線療法を受けたことがある場合、乳がんの危険因子となることがあります。

体内の女性ホルモンの増加:何らかの理由で体内の女性ホルモンの量が多い場合(クラインフェルター症候群、肝硬変など)、乳がんのリスクを高めます。

遺伝的要因:特に、BRCA1およびBRCA2という遺伝子異常は、男性乳がんの危険因子として知られています。海外のデータによると、男性乳がんの0〜4%にBRCA1変異があり、4〜16%にBRCA2変異が見られることが示されています。

乳がんのステージ

男性乳がんのステージは0期からⅣ期まであり、ステージが進むにつれて、がんはより進行した状態を示します。各ステージは、以下のように定義されます。

0期:がんは乳房内に限局しており、周囲の組織への浸潤がなく、リンパ節転移や遠隔転移はありません。

Ⅰ期:がんの大きさは2cm以下で、リンパ節転移も遠隔転移もありません。

ⅡA期:がんの大きさが2cm以下で、動く腋窩リンパ節に転移している、もしくは、がんの大きさが2cm〜5cm以下で、リンパ節転移も遠隔転移もありません。

ⅡB期:がんの大きさが2cm~5cm以下で、動く腋窩リンパ節に転移している、もしくは、がんの大きさが5cm以上で、リンパ節転移も遠隔転移もありません。

ⅢA期:がんの大きさが5cm以下で、動かないまたは互いに癒着している腋窩リンパ節に転移している、または内胸リンパ節に転移している状態、もしくはがんの大きさが5cm以上で、腋窩リンパ節か内胸リンパ節に転移している状態です。

ⅢB期:がんの大きさやリンパ節転移があるかないかに関わらず、がんが胸壁に固定されている、皮膚にでて皮膚が崩れている場合であり、炎症性乳がんも含まれます。

ⅢC期:腋窩リンパ節と内胸リンパ節の両方、または鎖骨上または下のリンパ節に転移がある状態です。

Ⅳ期: がんの大きさやリンパ節転移の有無に関わらず、骨や肝臓、肺、脳など他の臓器への遠隔転移がある状態です。

乳がんの検査・診断について

男性乳がんの検査・診断について解説します。

視診・触診

視診では、乳房の外観を目で見て確認します。乳がんの存在が乳房の外観に変化をもたらすことがあるため、乳房のくぼみやただれの有無や乳房の左右の違いを確認します。また、触診では、医師または自分が指を使って乳房全体とわきの下を慎重に触り、しこりや異常を確認します。しこりがある場合、その大きさ、硬さ、動きやすさなどの特性を評価します。乳がんのしこりは、硬く不規則な形をしており、動きにくいことが多いです。

マンモグラフィ

マンモグラフィは、乳がんのスクリーニングと診断に広く用いられる、乳房専用のX線検査です。マンモグラフィは、視診や触診で発見しにくい小さな病変や、超音波検査では検出が困難な微細な石灰化を発見するのに有効とされています。石灰化は、乳腺組織内に微細なカルシウムが沈着した状態で、乳がんを発症していると見られることがあります。ただし、マンモグラフィには限界もあり、特に高濃度乳房の女性では病変の検出が困難な場合があるため、超音波検査やMRIなど他の検査法と併用することが推奨されます。

超音波検査

超音波検査は、乳房内の病変の有無、しこりの性質や大きさ、及びわきの下に周囲のリンパ節への転移の有無を調べるために実施され、超音波を発生する探触子(プローブ)を乳房の表面に当て、超音波の反射具合を確認します。

病理検査

病理検査には、主に細胞診と組織診の2種類があります。細胞診は、病変部位に細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で調べる検査です。これは穿刺吸引細胞診とも呼ばれます。組織診は、病変の一部の組織を採取して顕微鏡で調べ、がんの確定診断をする検査です。通常は局所麻酔をした上で、注射針よりやや太い針を用いて組織を採取します。

MRI検査・CT検査・PET検査・骨シンチグラフィ

MRI検査は、磁気とラジオ波を用いて高精度の画像を生成します。MRI検査は、マンモグラフィや超音波検査では見つけにくい小さな病変や、その広がりを手術前に確認するのに特に有用です。また、CT検査では、X線を使用して体の断層画像を生成し、主に遠隔転移の有無を調べるために用いられます。そして骨シンチグラフィは、骨に集まる特性を持つ弱い放射線を出す薬剤を使用して撮影します。骨シンチグラフィは、がんが骨に転移しているかどうかを調べるために行われます。PET検査は、放射性フッ素を付加したブドウ糖を体内に注射し、がん細胞が取り込むブドウ糖の分布を画像化します。

ステージごとの乳がんの標準治療

ステージごとの乳がんの標準治療について解説します。乳がんは、ステージが同じでも、患者の体調や進行状況によって治療が異なる場合もあるため、担当医と相談してください。

ステージ0(0期)の治療

ステージ0(0期)の乳がんは、非浸潤性であり、がんが乳腺の内側に限局している状態を指します。この初期段階の乳がんの治療には、主に以下の方法が含まれます。

乳房部分切除術:乳房部分切除術では、がんのある部分のみを切除し、残りの乳房を保持します。乳房部分切除術の後、残った乳房組織に隠れたがん細胞を破壊し、がんの再発リスクを減らすために放射線治療を実施します。また、部分切除の他にも乳房全切除術もあります。乳房全切除術は、乳がんが全体に広がっている場合や離れている場所にがんがあるときに、乳房を全切除する手術です。

腋窩リンパ節郭清:腋窩リンパ節郭清は、腋窩リンパ節にがんが転移していると判断されたときに実施されます。転移している範囲によって、切除するリンパ数が決まります。腋窩リンパ節郭清は、リンパ浮腫が起こるなど体に負担が多い治療であるため、転移がない場合や転移している箇所が少ない場合は実施されません。

ステージ1~ステージ3A(Ⅰ~ⅢA期)の治療

ステージ1からステージ3A(I〜ⅢA期)の乳がん治療は、がんの大きさ、広がり、リンパ節への転移の有無などに基づいて、以下のような異なる治療が取られます。

乳房全切除術:がんが大きい場合や広範囲に広がっている場合は、乳房全切除術が選択されます。この手術では、乳房全体が切除されます。

リンパ節郭清(リンパ節切除):腋窩リンパ節への転移がある場合、リンパ節郭清、つまりリンパ節を切除します。

薬物療法:手術前に薬物療法(新治療または化学療法)を実施することで、がんを縮小させ乳房部分切除術が可能になる場合があります。手術後にも、放射線治療やホルモン療法、化学療法などの薬物療法が必要な場合があります。

ステージ3B~ステージ4(ⅢB~Ⅳ期)の治療

ステージ3B〜ステージ4(ⅢB〜Ⅳ期)の乳がんでは、がんの進行度が高く、治療はより複雑で多角的な治療となります。

手術と放射線治療:ステージ3Bと3Cでは、薬物療法の効果に応じて手術や放射線治療を追加することがあります。手術は、がんの局所的な制御を目的とし、放射線治療は、残存がん細胞の破壊や再発防止を目的としています。

症状緩和とサポーティブケア:ステージ4では、薬物療法に加えて、転移したがんによって生じる症状を和らげる治療も重要です。痛みや他の不快な症状を管理するため、緩和ケアが施されることがあります。症状の緩和が見込まれる場合、手術や放射線治療も検討されます。

男性の乳がんの予後と生存率

Ⅰ期:生存率は95.2%です。この段階の乳がんは早期であり、適切な治療によって治癒の可能性が高いことを示しています。

Ⅱ期:生存率は90.9%です。がんがある程度進行しているものの、依然として高い生存率を維持しています。この段階では、治療の成功率は高いですが、Ⅰ期と比較して若干低下しています。

Ⅲ期:生存率は77.3%です。このステージでは、がんはより広範囲に広がっており、リンパ節に転移している可能性が高いです。生存率の低下は、がんの進行度が高まり、治療がより困難になることを示しています。

Ⅳ期:生存率は38.6%です。ステージ4の乳がんは、遠隔転移を伴う進行したがんを示しており、治療が非常に複雑で、予後が不良になりがちです。この段階では、治療の主な焦点はがんの進行の管理と生活の質の維持になります。

男性の乳がんについてよくある質問

ここまで男性の乳がんを紹介しました。ここでは男性の乳がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

転移や再発した乳がんの治療について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

転移や再発した乳がんの治療は、男女とも基本的に同じ治療原則に従います。主な目的は、がんの治癒を目指すのではなく、がんの進行を抑制することであり、具体的には以下のような治療法があります。

ホルモン療法:ホルモン受容体陽性乳がんの場合、タモキシフェンが最初の治療選択肢として推奨されます。

CDK4/6阻害薬:ホルモン受容体陽性の再発または転移乳がんに対して、CDK4/6阻害薬が検討されることがあります。

化学療法:トリプルネガティブ乳がんやホルモン療法が効かなくなった患者には、化学療法が実施されます。

乳がんの予防法はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

飲酒の制限:アルコール摂取量を減らすことは、乳がんのリスクを低減するのに有効とされています。

適正な体重の維持:特に、閉経後の肥満は乳がんのリスクを高めるとされているため、バランスのよい食事と適切な体重管理が重要です。

適度な運動:定期的な運動は乳がんのリスクを減少させるのに役立ちます。適度な身体活動は、健康を維持し、体重管理にも寄与します。

遺伝カウンセリング:BRCA1やBRCA2遺伝子の変異がある場合、遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。これらの遺伝子変異は、乳がんだけでなく、卵巣がんや卵管がんのリスクも高めます。

リスク低減手術:特定の遺伝子変異を持つ方は、がん発症のリスクを減少させるために、リスク低減乳房切除術やリスク低減卵管卵巣摘出術も選択肢の1つとなります。

編集部まとめ

ここまで、男性乳がんのステージについてお伝えしてきました。男性乳がんのステージについてまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

  • ・男性の乳がんは比較的まれな疾患であり、乳がん全体の約1%を占めるとされている
  • ・男性の乳がんのステージは、0期、Ⅰ期、ⅡA期、ⅡB期、ⅢA期、ⅢB期、ⅢC期、Ⅳ期に分けられる
  • ・男性乳がんの治療は、ステージ0では乳房部分切除術や腋窩リンパ節郭清、ステージ1~ステージ3Aでは乳房全切除術やリンパ節郭清、薬物療法、ステージ3B~ステージ4では手術と放射線治療に加え症状緩和とサポーティブケアが実施される

男性乳がんと関連する病気

男性乳がんと関連する病気は1個あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

乳腺科の病気

  • 女性化乳房症

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

男性乳がんと関連する症状

男性乳がんと関連している、似ている症状は2個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 乳腺症
  • 乳腺炎

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師