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【闘病】30歳で「子宮頸がん」自覚症状もなく他人事に感じた…情報の取捨選択がより重要な時代に

 更新日:2024/03/27
30歳で「子宮頸がん」自覚症状もなく他人事に感じた…情報の取捨選択がより重要な時代に

今回話を聞いたのは、30歳という若さで子宮頸がんと診断されたサバイバーちゃん(仮名)です。自覚症状もなかったことから、なかなか病気を受け入れることができなかったといいます。そんなサバイバーちゃんはどのように病気を捉え、日々を過ごしているのでしょうか? また、病気について情報収集をする際に気をつけるべきことなども教えていただきました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。

サバイバーちゃん

体験者プロフィール
サバイバーちゃん(仮称)

プロフィールをもっと見る

1991年生まれ、関西在住。診断時の職業は製薬会社の事務。2021年10月に子宮頸がんが発覚し、11月に手術を受け、2022年1月より抗がん剤、放射線治療を受ける。現在は半年に1度CT、3カ月に1度細胞検査を受け経過観察中。

鈴木 幸雄

記事監修医師
鈴木 幸雄(産婦人科専門医・婦人科腫瘍専門医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

30歳の私が子宮頸がん……? 初めは他人事にしか思えなかった

30歳の私が子宮頸がん……? 初めは他人事にしか思えなかった

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

子宮頸がん検診は定期的に受けていました。ですが、あるとき不正出血があり婦人科を受診しました。そこでいくつか検査を受け、「子宮頸がん」と告知を受けました。

編集部編集部

自覚症状などはあったのでしょうか?

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

特にありませんでした。不正出血も病院を受診したきっかけになった一度だけです。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

単純に子宮を全摘出するのではなく、腟の一部分を含めて周りの組織を骨盤壁の近くまで切除する「広汎子宮全摘術」と合わせて、「骨盤内のリンパ節郭清」「両側卵管摘出」「卵巣移動術」をまず行い、病理検査の結果で手術後に放射線治療と化学療法を行うことになりました。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

どこか他人事でした。告知後、手術台に向かうまでずっと受け入れられずにいました。死ぬのが怖いというよりは特に自覚症状もなかったので、「元気なのになぜ治療しないといけないの? 長生きしたいわけじゃないのに」という気持ちの方が強かったです。また、婦人科系のがん=リンパ浮腫というイメージが強く、子宮摘出よりリンパ節郭清に対する不安のほうが心のダメージが大きかったですね。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

検査を受けるまで特に自覚症状がなかったので、告知後も何も変わらず日常を過ごしていました。ただ術後は排尿障害が残り、術後1年、自己導尿を続けていました。それから放射線治療による卵巣への影響を予防するために卵巣の移動術はしたものの結果的には卵巣の機能が低下し、急に汗をかく、不眠、関節が痛むなど更年期障害のような症状もありました。こちらの症状はエストロゲンの投与によって落ち着き、現在はエストロゲン投与をやめて様子をみているところです。また、軽度ですがリンパ浮腫の症状があり、予防のために可愛い靴も履けず、日焼けも虫刺されもNGなためアウトドアも思い切り楽しめず、長風呂やサウナも禁止されています。「大変な思いをして手術を受けても後遺症に悩まされるし、治療を受けても2度と今の身体には戻れない……」そんな自分を徐々に受け入れようとしているところです。

編集部編集部

闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

情報収集のため始めたSNSで同じ婦人科系のガンサバイバーさんたちと繋がり、温かいメッセージをいただいたことです。「ひとりじゃないんだ」と沢山の勇気と希望をいただきました。見ず知らずのわたしに励ましの言葉をかけてくれて、本当に感謝でしかありません。

インターネットで情報収集する上では、情報リテラシーが試される

インターネットで情報収集する上では、情報リテラシーが試される

編集部編集部

情報収集をしていく中で、さまざまな情報があったことと思います。情報収集する上で大切なことは何だと思いますか?

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

巷にはさまざまな情報があふれています。「ヨガでむし歯が治る!」なんて言われたら「何でやねん!」と冷静に突っ込めるはずなのに、それが、がんになると、良いといわれるものは根拠なくとも試してみたくなりますよね。わたしのSNSにも怪しい水やサプリメントをお勧めするDMがたくさん届きました(笑)。標準治療を受けることを否定するようなものは警戒心を持ち、手を出す前に自分でちゃんと調べることもとても重要だと思います。特に子宮は”女性の象徴”や”スピリチュアル”な要素も強いからか、できれば手術や化学治療なんか受けず自然療法で治したい、という方が多い気がします。冷静な心と正しい知識を身につけることがとても大切だと感じています。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

治療が始まると口にするものにこだわりが出てしまい、「無添加」「化学調味料不使用」「オーガニック」のループにハマってしまいます。質の良い食事を摂ることはもちろん大切だけど、いろいろとこだわりすぎたのが逆にストレスになるので、「ほどほどでね。無理しない程度で大丈夫なんだよ」と言ってあげたいです(笑)。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

放射線治療の影響で卵巣機能が低下し、急にどっと汗をかいたり、不眠の症状が出始めたりしました。ホルモン数値も良いとは言えず、エストロゲンを投与したところ半年ほどで汗や不眠の症状は落ち着きました。現在はエストロゲン投与しなくてもホルモン数値が落ち着いてきたので投与をストップし、様子をみているところです。生活に制限もありますが、昨年はハワイへ旅行に行けるほど回復しています。

病と「闘う」のではなく、がんと刺激し合うことなく穏やかな日々を過ごしていきたい

病と「闘う」のではなく、がんと刺激し合うことなく穏やかな日々を過ごしていきたい

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

告知された時、真っ先に思ったのは、「がん保険に入っていてよかった」でした。自分がまさかこの歳でがんを患うなんて思ってもいませんでしたが、お守りのつもりで告知一年前にたまたま加入していました。高額療養費制度や限度額適用認定証でカバーされるところはあっても、まずは自分で立て替えて支払わなければいけませんし、がん治療には健康保険適用外の治療もあります。お金に余裕があれば入院の際に個室を希望することもできますし、治療の選択肢も増えます。ステージによっては新たに保険に加入するのも難しいので、本当に入っていてよかったと思いました。若ければ特に、「まだ保険なんて」と思う人も少なくないかと思いますが、やっぱりお金がなければ自由な生活は送れないので、万が一の事態を乗り越えられるよう加入しておくことをおすすめします。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

転院前の病院は婦人科と放射線科、それぞれの先生の連携が取れておらず(ひどい時には婦人科で行った細胞検査の結果すら知らないことも)、それぞれで意見が違うこともあり、どんどん不信感が募りました。それぞれ専門はあるでしょうが、同じ患者を担当しているのであれば、こちらが「きちんと連携が取れているんだな」と思えるような診察をお願いしたかったです。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

サバイバーちゃんサバイバーちゃん

「期待しない」「気にしない」「自分のせいにしない」をモットーにすると、とても生きやすくなりました。再発や転移など、まだ起こってもいない不幸なんて考えない、気にしない。病気になると自分のことを責めることも増えましたが、物事が起こるのは全ての要因が重なって起きるわけだから自分のせいにしないようにしましょう。病と闘うで「闘病」と書きますが、わたしはこの言葉に違和感があります。 闘うことは身体的にも精神的にも苦しく、辛いことだからです。何かと闘う人生よりも、毎日楽しくふわふわっと幸せに過ごしたい。がんと刺激し合うことなく穏やかな日々を過ごすわたしが、また誰かの希望になれたらと思います。

編集部まとめ

サバイバーちゃんの取材の中で印象的だったのは、「『闘病』という言葉に違和感がある」とおっしゃられていたことです。「病気と闘わなければいけない」とプレッシャーに感じる方もいるのではないかと気づかされました。サバイバーちゃんの話にあったように、病気に向き合いながらも、「毎日を幸せに過ごすこと」を忘れてはいけないのではないかと思いました。そして、万が一のときに備えて、医療保険に加入しておくこともとても大切なことだと実感しました。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師