「骨肉腫の痛みにはどんな特徴」があるかご存知ですか?症状も解説!【医師監修】
骨肉腫を知っていますか。本記事では、骨肉腫の痛みや特徴について、下記内容を中心に徹底解説していきます。
- ・骨肉腫とは
- ・骨肉腫の特徴的な痛み
- ・骨肉腫の特徴的な症状
骨肉腫の痛みや特徴について理解するためにも参考にしてください。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
そもそも骨肉腫とは
骨肉腫は、骨に発生する悪性腫瘍の一種です。これは骨の中で最も頻度が高いがんの1つであり、特に10代の思春期の若者、つまり中学生や高校生くらいの年齢に多く発生することが知られています。しかし、約30%は40歳以上の大人にも見られます。
年間約200人が骨肉腫にかかるとされ、日本国内ではがんの中でも比較的まれな病気に分類されます。骨肉腫の約60%は膝の上下部分、具体的には大腿骨と脛骨の膝関節に近い部分に発生します。次いで発生しやすい部位は、上腕骨の肩に近い部分や大腿骨の股関節に近い部分など、骨が速く成長する骨端線(骨幹端部)です。
この種の腫瘍は、成長するにつれて発生した骨を破壊しますが、骨肉腫自体が骨を作る能力を持つのが特徴です。また、血液の流れを通じて転移することが多く、骨肉腫の最も一般的な転移先は肺です。ただ、診断時に肺転移が見られる場合でも、術前の薬物療法や肺の転移巣の手術により、20〜30%の症例で治癒が期待されます。
肺の次に多い転移先は、同じ骨内や他の骨です。しかし、他の骨への遠隔転移や広範囲にわたる肺転移がある場合は、治療は困難とされています。
骨肉腫の原因
骨肉腫の発症原因は複雑で多岐にわたりますが、主要な要因は遺伝子変異です。以下で詳しく解説します。
遺伝的要因:
Li-Fraumeni症候群:がん抑制遺伝子であるp53遺伝子(TP53遺伝子)の変異によって引き起こされる疾患です。この遺伝子変異は、骨肉腫を含むさまざまながんの発症リスクを高めます。
RB1遺伝子の変異:網膜芽細胞腫の原因となるRB1遺伝子の変異も、骨肉腫の発症と関連があります。網膜芽細胞腫は主に乳幼児に発症するがんですが、それに罹患した方は、骨肉腫のリスクが高いとされています。
放射線治療・化学療法の影響:
放射線治療や化学療法(抗がん剤)を受けた方は、遺伝子異常がなくても骨肉腫を含む2次がんを発症するリスクが高まるとされています。特に放射線治療の量が多い場合、リスクはさらに高まります。照射後肉腫として、放射線治療をした箇所から骨肉腫が発生することもあります。
骨肉腫の特徴的な痛みについて
骨肉腫の特徴的な症状のひとつは、発生部位における痛みと腫れです。骨肉腫は、60〜70%の割合で大腿骨やすねの骨、特に膝関節に近い部分で発生します。次に多い発生部位は、肩に近い上腕骨です。痛みは最初、運動時や体重をかけたときに感じる程度です。この段階では、痛みは比較的軽微であり、運動による通常の疲れや損傷と間違えられることもあります。
骨肉腫が進行するにつれて、痛みは安静時にも感じるようになり、夜間にも痛むことがあります。この痛みは徐々に強くなり、持続的な性質を持つことが多いです。
肉腫が発生した部位は腫れることがあり、痛みとともに徐々に腫れが強くなることが一般的です。腫れによって周囲の組織に圧迫を及ぼし、さらに痛みを増加させる可能性があります。これらの症状があらわれた場合は、速やかに医療機関での診断を受けることが重要です。
骨肉腫の特徴的な症状
骨肉腫の特徴的な症状について、以下で詳しく解説します。
腫れ、痛み
骨肉腫は、初期段階では症状が明らかにならないことがありますが、進行するにつれて、腫瘍の発生場所で特徴的な症状があらわれます。最初は、運動時にのみ痛みを感じることが多く、日常活動による一時的な不快感と誤解されることがあります。病気が進行するにつれ、運動していないときでも痛みが生じ、夜間にも痛むことがあります。痛みは徐々に悪化し、例えば足を引きずって歩くなど、歩行に影響を与えるほどになることもあります。
骨折
骨肉腫は骨を弱くし、ときには非常に脆くなるため、軽微なけがや衝撃で骨折を引き起こすことがあります。骨肉腫の症状には、痛みや腫れが含まれることが多いですが、これらは他の一般的な疾患と間違えられることもあります。重要なのは、骨肉腫が疑われる場合、早期に医療機関で診断を受けることです。特に、骨肉腫によって引き起こされる骨折は、治療を複雑にし、予後に影響を与える可能性があります。正式な診断が下されるまでの間、大腿骨や脛骨などの骨への負担を避けるために安静を保つことが推奨されます。また、日常生活での松葉杖の使用など、骨折を防ぐための対策が重要です。
アルカリフォスファターゼ(ALP)の上昇
ALPは、人体内に広く分布している酵素で、特に肝臓、胆道、骨に多く存在します。ALPの血液検査は、これらの組織に関連した病態を診断するのに役立ちます。例えば、肝臓疾患、胆道障害、特定の骨の病気などでALPの値が上昇することがあります。骨肉腫の場合、ALPのレベルが重要な診断指標の1つとなります。骨肉腫は骨を破壊し、新しい骨組織の形成を促すため、これがALP値の上昇につながることがあります。したがって、骨肉腫の診断や治療過程において、ALPの値は非常に重要です。
肺に転移
骨肉腫における肺転移は、その進行と管理において非常に重要な側面です。骨肉腫の患者の約10~20%は、診断時にすでに肺への転移があるとされています。初期段階では、肺転移は多くの場合無症状で、その存在が認識されにくいことがあります。しかし、転移が進行すると、呼吸障害の症状があらわれることがあります。
呼吸障害
肺転移が進行すると、さまざまな呼吸障害があらわれることがあります。これには咳、息切れ、胸痛、血痰(血液を含む痰)などの症状が含まれます。これらの症状は、転移したがん細胞が肺組織を侵害し、肺の機能を低下させることによって引き起こされます。骨肉腫における主な死亡原因は、肺転移による呼吸不全です。これは、転移した癌細胞が肺の機能を著しく妨げるために起こります。早期発見と治療が重要であり、定期的な画像診断により肺転移の有無を確認することが、骨肉腫の治療戦略の重要な部分です。
骨肉腫の治療方法
骨肉腫の治療方法には、どのようなものがあるのでしょうか?以下でそれぞれ詳しく解説します。
薬物療法
薬物療法は、再発率を大幅に下げ、治癒率を向上させることが可能になっており、通常2~3ヶ月の薬物療法の後に手術をします。手術で腫瘍の広範囲切除と骨再建をし、その後さらに数ヶ月間の薬物療法を追加します。このアプローチにより、腫瘍を縮小し、手術の成功率を高められます。骨肉腫治療に使われる主な薬剤には、メトトレキサート、シスプラチン、アドリアマイシンがあります。これらは、がん細胞の成長を抑制したり、がん細胞を直接破壊したりする効果が期待されています。また、イホスファミドを加えることもあります。これらの薬剤は、欧米でも日本でも同様に用いられています。
薬物療法は効果的とされていますが、一方で副作用も報告されており、吐き気、嘔吐、全身のだるさ、口内炎、白血球減少による感染症リスクの増加などが含まれます。シスプラチンは腎障害や聴力障害を、アドリアマイシンは心臓障害を引き起こすリスクがあるため、定期的な検査が必要です。
放射線治療
腫瘍の大きさや位置によっては、広範囲の腫瘍切除をすることが困難な場合があり、その場合、放射線治療は手術の補助として使用されることがあります。これには、手術前に腫瘍のサイズを縮小させる目的で実施される場合や、手術後に残存した腫瘍細胞を排除するために使用される場合が含まれます。特に、脊椎や骨盤などの難しい部位に発生した骨肉腫の場合、広範囲切除が困難であるため、粒子線治療が選択されることがあります。粒子線治療は、陽子線や重粒子線(炭素イオン線など)を使用し、高い精度で腫瘍に放射線を照射する治療法です。これにより、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えられます。
支持療法
がんの治療において、支持療法は非常に重要な役割を果たします。がんそのものや、その治療に伴うさまざまな身体的、心理的、社会的な問題に対処することを目的としています。支持療法は、がんの診断から治療、そして回復の過程全体にわたって提供されます。支持療法の主な目的は以下の通りです。
症状の管理:がんやその治療によって生じる痛み、吐き気、疲労、食欲不振などの症状を軽減します。
副作用の軽減:化学療法、放射線療法、外科手術などがん治療に伴う副作用や合併症を予防し、管理します。
心理的サポート:がん診断や治療に伴う不安、ストレス、抑うつなどの心理的問題に対応します。
社会的サポート:がん患者とその家族が経験する社会的な問題、例えば職場や学校での対応、将来に対する不安などをサポートします。
再発した時の治療法
がんの再発治療は、再発の場所、以前実施された治療、患者の全体的な健康状態など、多くの要素に基づいて個別に決定されます。治療の選択は、がんの種類、再発の程度、患者の個々の状況に密接に関連しています。以下で詳しく解説します。
肺への局所的な転移:肺に限定された少数の転移巣がある場合、外科的切除術が基本的な治療法となります。このアプローチは、転移巣を物理的に除去することにより、がんの拡散を防ぐことを目指します。
肺への多数の転移やその他の部位への再発:肺への広範囲での転移や他の部位への再発がある場合は、薬物療法が主に実施されます。これには、化学療法や標的療法、免疫療法などが含まれ、再発したがん細胞を制御し、症状を軽減することを目的としています。
再発時期と治療:治療後すぐに再発する場合は、治療がより困難になることがあります。これは、がん細胞が初期の治療に耐性を持っている可能性があるためです。一方で、1年から2年後など、比較的長い時間が経過した後の再発の場合は、治療に対する反応がよく、治癒する可能性もあります。
骨肉腫の検査方法
骨肉腫の検査方法には、どのようなものがあるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
レントゲン検査:レントゲンは、骨肉腫によって引き起こされる特徴的な骨破壊(虫食い状の破壊)や新たな骨の形成を検出するのに有用とされています。虫食い状や地図状、浸透状の骨変化は、骨肉腫や他の骨腫瘍を示唆する所見です。
CT検査:CTは、骨破壊の詳細な評価を提供し、レントゲン画像では見えにくい微妙な変化を検出します。また、骨肉腫と診断された場合、全身のCT検査で肺転移やリンパ節転移の有無を調べます。
MRI検査:MRIは、腫瘍の性状やその周囲の組織との関係を詳細に評価します。これにより、腫瘍の広がりや手術計画に重要な情報が得られます。
骨シンチグラフィまたはPET検査:骨の代謝や破壊の状態を評価し、腫瘍活動の広がりを調べます。PET検査は、より詳細な代謝情報を提供し、骨シンチグラフィに取って代わる傾向にあります。
血液検査:骨肉腫ではALPのレベルが高くなることがありますが、これは骨の代謝亢進によるもので、必ずしも骨肉腫を意味するわけではありません。
生検:最終的な診断を確定するためには、生検が必要です。これには針生検と切開生検の2つの方法がありますが、骨肉腫の場合、十分な組織を採取できる切開生検が推奨されます。
「骨肉腫」についてよくある質問
ここまで骨肉腫の痛みや特徴を紹介しました。ここでは「骨肉腫の痛みや特徴」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
骨肉腫を予防する方法はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
骨肉腫の予防に関しては、特定の原因が明確に分かっていないため、確実な予防法は存在しません。しかし、早期発見とリスクの軽減に向けた一般的なアプローチはいくつかあります。以下で詳しく解説します。
定期的な健康診断:特に、成長期の子どもや若者においては、定期的な健康診断を受けることが重要です。これにより、腫れや痛みなど骨肉腫の初期症状が早期に発見される可能性があります。
生活習慣の見直し:健康的な生活習慣を心がけることも、全体的な健康を維持し、がんリスクを軽減するのに役立ちます。バランスの取れた食事、定期的な運動、禁煙、節度ある飲酒などが重要です。
遺伝的リスクの評価:遺伝的な要因が関与する場合、遺伝カウンセリングや遺伝子検査を受けることで、個々のリスクを評価し、必要に応じた監視計画を立てられます。
特定の環境因子への注意:放射線照射の歴史がある方や特定の化学物質に曝露される可能性のある方は、これらのリスク因子から可能な限り遠ざかることが望ましいです。
骨肉腫になりやすい人の特徴はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
骨肉腫になりやすい方の特徴を理解することは、リスクの評価や早期発見に役立ちます。以下に挙げる要素は、骨肉腫のリスクを高める可能性があると考えられています。
特定の遺伝子変異:骨肉腫の発症には遺伝子の変異が関与しています。これらの遺伝子は、細胞の成長と分裂を制御する役割を持ちます。
遺伝性がん症候群:リー・フラウメニ症候群、遺伝性網膜芽腫の遺伝性がん症候群は、骨肉腫を含むさまざまながんのリスクを増加させます。
年齢:骨肉腫は特に若年層に発症しやすく、10代の後半に発症が多いと報告されています。
性別:男性は女性よりも骨肉腫になりやすいとされています。
放射線への露出:医療用の放射線治療を受けた方は、骨肉腫のリスクが高まる可能性があります。これは、放射線がDNAにダメージを与え、がんの発生に寄与するためです。
化学物質への露出:一部の化学物質への長期的な露出も、骨肉腫のリスクを増加させると考えられています。
編集部まとめ
ここまで、骨肉腫の痛みや特徴についてお伝えしてきました。
骨肉腫の痛みや特徴についてまとめると、以下の通りです。
⚫︎まとめ
- ・骨肉腫は、骨に発生する悪性腫瘍の一種で、若者に多い疾患である
- ・骨肉腫の痛みは、60〜70%の割合で大腿骨やすねの骨、特に膝関節に近い部分で発生する
- ・骨肉腫の症状には、痛みや腫れがあり、ほかには骨折や呼吸障害なども含まれる
「骨肉腫」と関連する病気
「骨肉腫」と関連する病気は1個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
整形外科の病気
- 軟骨肉腫
骨肉腫と同じような症状をおこす病気もこれほどあります。なかなか自己判断は難しいので、症状が続く場合はぜひ一度医療機関を受診してください。
「骨肉腫」と関連する症状
「骨肉腫」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 関節の腫れ
- しこり
- 骨折
- 熱感
- 呼吸困難
これらの症状が当てはまる場合には、骨肉腫などの異常の有無を確認するべく、早めに医療機関を受診しましょう。