「胃がんのステージ別の症状・余命・生存率」はご存知ですか?医師が解説!
胃がんのステージとは?Medical DOC監修医が胃がんのステージ別の症状・余命・生存率や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんは胃にできるがんのことをいいます。
胃は食道から続く袋状の臓器です。口から食べた食物をある程度胃にためておき、更に胃が動くことで食物はさらに細かく砕かれ、消化液と混ざることで消化されていきます。胃で消化された食物は、少量ずつ腸へ送られることで更に吸収されていきます。胃は腸からの食物の逆流を防ぐとともに、腸へ食物を送る量の調節も行っています。
胃がんは、胃の粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序に増殖することで発症します。胃の粘膜は内側より粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜と5つの層に分かれており、胃がんは内側より外側に広がっていき(この広がりのことを深達度と言います)、漿膜を超えると胃の近くにある肝臓・膵臓・大腸にがんが転移していきます。それ以外にも、血液やリンパの流れに乗って遠く離れた場所にも転移することがあります。胃がんのステージは、がんがどの層にあるのか、リンパ節転移があるかどうかで異なります。
胃がんはかつて日本人においてがんによる死亡原因第1位でしたが、2021年における部位別がん死亡率では男性では肺がん、大腸がんに続き第3位、女性で第5位と順位は下がりましたが、依然として高い順位を保っています。
また胃がんの発生と関わっている感染症として、ヘリコバクター・ピロリ菌への感染が知られています。ヘリコバクター・ピロリ菌が胃に感染すると、慢性胃炎の状態を引き起こし、慢性胃炎の状態が長く続くことで胃がんが発生するといわれています。
胃がんのステージ別の症状
胃がん・ステージ1の症状
早期の胃がんの多くは無症状です。一部の人には食欲不振、胸やけ、胸の不快感、げっぷ、吐き気などの症状がみられることがあります。胃がんの早期はほとんど症状がみられないため、定期的に胃がん検診などを受診することが必要です。
胃がん検診では、バリウム検査や内視鏡での検査が行われます。気になる症状がある場合には、胃内視鏡検査を行っている消化器内科への受診をお勧めします。胃内視鏡には、口から行う内視鏡(経口内視鏡)や鼻から行う内視鏡(経鼻内視鏡)があり、内視鏡時の苦痛の感じ方が違います(一般的に経鼻内視鏡のほうが苦痛が少ないといわれています)。病院によってどちらの内視鏡で検査を行うかは異なるので、病院のホームページなどで確認をしてください。口から内視鏡検査を行う場合、苦痛を伴うことがあります。この苦痛を和らげるため、検査の際に鎮静(睡眠薬の投与)を行う場合もあります、鎮静を行った場合にはその日1日自動車などの運転ができないため、鎮静の有無も病院に確認したほうが良いでしょう。
胃がん・ステージ2の症状
食欲不振、胸やけ、胸の不快感、げっぷ、吐き気などの症状がみられることがあります。胃内視鏡検査を行っている消化器内科、もしくは消化器内科がある総合病院への受診をお勧めします。
胃がん・ステージ3の症状
食欲不振、胸やけ、胸の不快感、げっぷ、吐き気などの症状がみられることがあります。さらに、胃がん部分から出血することにより貧血の症状や黒い便が出ることがあります。
胃内視鏡検査を行っている消化器内科、もしくは消化器内科がある総合病院への受診をお勧めします。貧血の症状や、黒い便が出ることがあれば必ず主治医へ伝えるようにしてください。
胃がん・ステージ4の症状
ステージ3と同様に食欲不振、胸やけ、胸の不快感、げっぷ、吐き気などの症状がみられることがあります。また胃がん部分から出血することにより貧血の症状や黒い便が出ることがあります。ステージ4ではがんが胃以外の臓器にも転移している状態なので、転移した臓器によりさまざまな症状が出現することがあります。例えば、肺転移なら呼吸苦、肝転移なら肝機能低下などが見られます。
受診先については胃内視鏡検査を行っている消化器内科、もしくは消化器内科がある総合病院への受診をお勧めします。
胃がんのステージ別の余命・生存率
胃がん・ステージ1の余命・生存率
ステージ1の5年生存率:82.0%
ステージ0は胃の粘膜のごく浅い部分でがんがとどまっていますが、ステージ1では粘膜下層もしくは固有筋層という筋肉の層までがんが達していることが違いになります。ステージ0でもステージ1でもリンパ節への転移はありません。
消化器内科において、内視鏡検査を行いがんが疑われる場所を観察し、がんの大きさや深さを確認します。より詳しくがんの進行度を確認したり、周囲の組織へ転移していないかを確認する目的で超音波検査(エコー検査)をしたり、CT検査・MRI検査を行うことがあります。場合によってはPET-CT検査が行われます。それ以外には生検といって内視鏡検査の際にがんを疑う部分の組織を採取し、それを顕微鏡で観察し、がんが存在するか・どんな種類のがんか確認します。
治療は内視鏡によるがんの切除、腹腔鏡による手術や開腹手術が行われます。内視鏡による治療は消化器内科が、手術は消化器外科が行います。
胃がん・ステージ2の余命・生存率
ステージ2の5年生存率:59.7%
リンパ節転移がなくてもステージ1よりがんの深達度が深い(漿膜下層や漿膜を超える)場合や、ステージ1と深達度は同程度でもリンパ節転移があるとステージ2になります。検査としてはステージ1と同じになります。内視鏡による処置は行われず、消化器外科にて腹腔鏡による手術、もしくは通常の開腹術が行われます。手術後に抗がん剤による術後補助化学療法が行われる場合があります。
胃がん・ステージ3の余命・生存率
ステージ3の5年生存率:37.5%
ステージ3はがんが漿膜下層や漿膜を超えるかつ、リンパ節への転移がある場合になります。
検査はステージ1と同じにあります。ただステージ3の場合は手術の前に抗がん剤による化学療法が消化器内科もしくは消化器外科にて行われ、その後消化器外科にて手術が行われる場合があります。また手術後に抗がん剤による術後補助化学療法が行われる場合もあります。
胃がん・ステージ4の余命・生存率
ステージ4の5年生存率:6.2%
胃から離れた臓器に転移がある場合、ステージ4となります。検査はステージ1と同じになります。治療法は消化器内科もしくは消化器外科にて抗がん剤による化学療法、放射線を用いた放射線療法、もしくは苦痛を緩和する対処療法が行われます。
治療によってがんやがんの転移の部分のコントロールが上手くいった場合には手術が検討される場合もあります。
「胃がんのステージ」についてよくある質問
ここまで胃がんのステージ別の症状や余命・生存率などを紹介しました。ここでは「大腸がんのステージ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
手術ができない胃がんのステージについて教えてください。
和田 蔵人 医師
肝臓などの他の臓器に転移があるステージ4の場合は、手術ができない場合が多いです。また一度胃がんの治療をし、再発した場合にも手術は難しくなります。さらにスキルス胃がんの場合には発見がされにくく、多くが腹膜播種という転移がある状態で見つかることが多いため、手術することが困難な症例が多いです。ただしステージ4であっても抗がん剤治療などでがんやがんの転移が小さくなった場合には手術を選択する場合もあります。
胃の3分の2以上摘出するのは、ステージいくつからでしょうか?
和田 蔵人 医師
ステージ2以降になると胃の3分の2以上を摘出することが多くなります。また胃がんの部位によっては胃をすべて摘出(全摘)する場合もあります。
編集部まとめ
胃がんは早期発見、早期治療により完治が見込める病気となっています。しかし、胃がんの症状には特徴的なものが少なく、日常生活ではなかなか気づくことができません。したがって定期的な検査を受けることが早期発見の要となるので、定期検診などで積極的に内視鏡検査などを受けることをお勧めします。また、ヘリコバクター・ピロリ菌への感染が胃がんを引き起こすことが分かっているので、定期検診やその他の機会にヘリコバクター・ピロリ菌の感染があるか検査することも検討してください。その他、ヘリコバクター・ピロリ菌を治療(除菌)した場合でも胃がんのリスクはあります。その場合には年1回の内視鏡検査をおすすめします。
「胃がんのステージ」と関連する病気
「胃がんのステージ」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
数日で軽快するようであれば様子見で良いことが多いのですが、症状が継続するようであればこれらの病気が隠れている可能性があります。
「胃がんのステージ」と関連する症状
「胃がんのステージ」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 食欲不振
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- 胸の不快感
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- 吐き気
- 黒色便
参考文献