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「甲状腺がんの症状」はご存知ですか?原因についても解説!【医師監修】

 公開日:2024/02/27
「甲状腺がんの症状」はご存知ですか?原因についても解説!【医師監修】

「甲状腺」といわれても、どこにあってどのような働きをする臓器なのかすぐにわからない方も多いのではないでしょうか。

甲状腺とはのどぼとけの下にある蝶が羽を広げたような形の臓器のことです。体の新陳代謝を促進する働きがある「甲状腺ホルモン」を分泌しています。

この記事ではその甲状腺のがんについて、症状や原因とどのような検査をするのかなどを解説します。合わせて甲状腺がんに関してよく聞かれる質問も載せているので参考にしてください。

久高 将太

監修医師
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)

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琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。

甲状腺がんとは

甲状腺にできた腫瘍を甲状腺結節と呼びます。腫瘍には良性と悪性がありますが、悪性のものが甲状腺がんです。甲状腺がんには大きく分けて2つの種類があります。1つは、甲状腺の細胞ががん化する原発性甲状腺がんです。
もう1つは、体のほかの部位で発育したがんが甲状腺に転移して起きるために転移性甲状腺がんと呼ばれています。原発性甲状腺がんは、さらに「乳頭がん」「濾胞がん」「髄様がん」「未分化がん」「悪性リンパ腫」に分かれます。乳頭がんは顕微鏡で見た時に乳頭状の構造に見えることから乳頭がんと名づけられたがんです。
日本のように海藻をよく食べる地域(ヨード充足地域)では、甲状腺がんのうち90%以上が乳頭がんといわれています。女性が発症する割合が多く、年代は10代~80代と幅広いです。甲状腺の周囲の臓器に浸潤することもありますが、一般的に成長が遅いことが特徴です。濾胞がんは甲状腺がん全体の中で、約5%の割合となります。
乳頭がんと同じく年齢を問わず起き、どちらかというと女性が発症することが多い傾向です。髄様がんは甲状腺ホルモンを作り出す濾胞細胞からできる乳頭がんや濾胞がんと異なり、カルシトニンという物質を分泌する傍濾胞細胞から発生するがんで、甲状腺がん全体の1~2%と発生率が低めになります。
未分化がんは全体の1~2%と発生率はまれですが、予後があまりよくなく進行も割と早めなことが特徴です。65歳以上に多く、男女比はほぼ1対1と他の甲状腺がんと比べて男性の割合が比較的多くなっています。悪性リンパ腫はリンパ球由来の悪性腫瘍です。未分化がんと同様に発生率はそれほど高くありませんが、高齢者が多く発症する傾向があります。

甲状腺がんの症状

甲状腺がんでは具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。一般的にあまり症状がないといわれていますが、進行するとのどの違和感・嗄声・誤嚥などが起きることがあります。
以下で具体的に見ていきましょう。

のどの違和感

腫瘍ができることでのどが圧迫され、ものを飲み込むときに違和感を覚えることがあります。

嗄声

甲状腺がんが声帯を動かす反回神経や気管・咽頭に広がっていくと、声が嗄れることがあります。咳が出たり、さらに進行すると呼吸困難を引き起こしたりすることもあるのです。

誤嚥

がんが食道に浸潤すると、ものを飲み込むときの違和感に加えて嚥下障害を起こすこともあります。

甲状腺がんの原因

甲状腺がんの原因については実ははっきりわかっていません。しかし、いくつかの要因が関連付けられているのでご紹介します。まず、チェルノブイリ事故で確認された放射線被ばくとの関連です。
自然界に多く存在するヨウ素とは異なる種類のヨウ素が甲状腺に取り込まれると甲状腺がんを発症することが多くなります。被ばく年齢が低いほど発症のリスクが高くなる傾向があります。また、髄様がんにおいては約30%が遺伝性のもので、残りの70%が遺伝と関係のない散発性です。
遺伝性かそうでないかは、血液からDNAを抽出して監査することで鑑別できます。なお、甲状腺の病気の1つである橋本病に罹患していると悪性リンパ腫を発症しやすいという報告もありますが、橋本病の人が必ずしも悪性リンパ腫を発症するわけではありません。

甲状腺がん以外の頭頸部がんの種類

頭頸部は首から上の部分で、目と脳以外のすべての領域のことです。ここでは甲状腺がん以外で頭頸部にできる「口腔がん」「咽頭がん」「喉頭がん」「上顎洞がん」について解説します。

口腔がん

口腔内は歯以外は粘膜に覆われています。そのため口腔がんのほとんどは、この粘膜組織から発生する扁平上皮がんになります。口腔がんの種類は舌がん・歯肉がん・頬の内側にできる頬粘膜がん・上あごにできる硬口蓋がんなどさまざまです。
女性より男性がかかる割合が高く、60歳~70歳代の発症が多い傾向があります。

咽頭がん

空気や食べ物の通り道であるのどは「咽頭」と「喉頭」からなり、空気は咽頭から喉頭・気管・肺へと流れ、食べ物は咽頭から食道・胃へと流れます。この咽頭部分にできるのが咽頭がんです。
咽頭がんはできる部位によって「上咽頭がん」「中咽頭がん」「下咽頭がん」に分かれます。発症要因は過度の喫煙と飲酒です。さらに上咽頭がんに関してはEBウイルス、中咽頭がんはパピローマウイルスの感染も関与していると考えられています。

喉頭がん

喉頭は気管と咽頭をつなぐ部分です。ここにできるのが喉頭がんで、がんができる場所によって「声門がん」「声門上部がん」「声門下部がん」に分かれます。
声門がんは頭頸部にできる他のがんに比べて転移することが少なく、反対に声門上部がんと声門下部がんは周辺のリンパの流れが豊富で、リンパ節に転移しやすいのが特徴です。

上顎洞がん

上顎洞は副鼻腔と呼ばれる鼻腔につながる4つの空洞の中で、頬の内側にある副鼻腔のことです。そしてここから発生するがんを上顎洞がんと呼びます。上顎洞がんは、副鼻腔がんの中で最も発症率が高いがんです。
喫煙や副鼻腔炎が発症要因として挙げられます。

甲状腺がんの検査

甲状腺がんを発見し、診断するために行う検査は次のようなものです。まず甲状腺の部分にしこりがないか、視診と触診を行います。次に血液検査ですが、甲状腺がんの場合は血液検査で発見することはほぼ不可能です。
ただし甲状腺がんの中でも髄様がんの場合は、CEAとカルシトニンという2つの腫瘍マーカーの両方が高い場合はがんが疑われます。また超音波検査(エコー検査)は甲状腺がんの診断において最も有効な検査方法です。
腫瘍の有無やサイズだけでなく、良性とがんとの区別や甲状腺がんのタイプまで推測できます。5~10分程度の所要時間で負担が少ないうえに放射線を使用していないため、妊娠中や授乳中の女性など体への負担や放射線被ばくが心配な方も安心して受けることが可能です。
超音波検査で甲状腺がんを疑うしこりが見つかった場合は、細胞診検査(穿刺吸引細胞診検査)を受けます。細胞診検査は超音波で甲状腺内部を確認しながらしこりに針を刺して細胞を採取し、その細胞を顕微鏡で見て良性か悪性化を判定する検査です。
細胞診検査は乳頭がん・髄様がん・未分化がんは高い確率で診断できますが、顕微鏡で見ても良性と悪性の区別がつきにくい濾胞がんは診断できません。濾胞がんに関しては、診断と治療を兼ねて手術で甲状腺を摘出し、組織検査を行う必要があります。また、甲状腺がんの周囲への広がりや肺や骨などに遠隔転移していないか確認するためにCT検査を行う場合もあります。

甲状腺がんについてよくある質問

ここまで甲状腺がんの症状や検査について解説してきましたが、ここでは甲状腺がんについてよくある質問をいくつかご紹介しましょう。

  

手術をした方がいい甲状腺乳頭がんについて教えてください

久高 将太医師久高 将太医師

甲状腺乳頭がんの場合は基本的に手術を行います。がんができている部位や大きさ、浸潤度合いによって、甲状腺の一部を摘出する場合とすべて摘出する場合があります。なお、がんの大きさが1cm以下で転移がない場合は手術を行わずに経過観察を行うことも可能です。

甲状腺がんの早期発見の方法について教えてください

久高 将太医師久高 将太医師

甲状腺がんはのどのしこりで気づくこともありますが、早い段階ではほとんど症状がありません。従って、定期健診や他の病気で受診した際に偶然発見されることがほとんどです。定期的に健康診断を受けることが大切といえるでしょう。

末期の甲状腺がんの症状はどのようなものですか?

久高 将太医師久高 将太医師

甲状腺がんが進行すると、ものを飲み込むときに痛みを感じる・声が嗄れる・呼吸困難・血の混じった痰が出るなどの症状が現れます。なお未分化がんの場合は甲状腺の腫れや痛み、発熱などの症状が現れ、さらに進行すると飲み込むときの痛み・呼吸困難・血痰などの他の甲状腺がん同様の症状が見られます。

編集部まとめ

今回は甲状腺がんの症状や検査方法などについて、甲状腺がん以外の頭頸部がんの種類も併せて解説しました。

甲状腺がんは症状がほとんどなく気づきにくい病気です。乳頭がんの場合は1cm以下で転移がなければ経過観察ですむこともあるので、定期的に検診を受けることをおすすめします。

また日常生活で飲み込みにくいなどの違和感を覚えている方は、なるべく早めに近くの病院に相談しましょう。

甲状腺がんと関連する病気

「甲状腺がん」と関連する病気は1個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 慢性甲状腺炎

橋本病とも呼ばれる慢性甲状腺炎に罹患していると悪性リンパ腫を発症しやすいといわれています。なお、慢性甲状腺炎にかかっている人が必ず悪性リンパ腫を発症するというわけではありません。慢性甲状腺炎は自己免疫疾患の1つで、甲状腺が正常に機能しなくなり、新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンの分泌が損なわれて体にさまざまな症状が現れる病気です。何か気になる症状がある時は内分泌科または耳鼻咽喉科を受診しましょう。

甲状腺がんと関連する症状

「甲状腺がん」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • のどの違和感
  • 嗄声
  • 誤嚥

甲状腺がんははっきりした自覚症状が出にくい病気です。上記のような症状が少しでも気になれば、早めに病院へ行き相談しましょう。甲状腺がんは早期に発見し、治療することが非常に大切です。

この記事の監修医師