「肝臓がんで痛みを感じる場所」はご存知ですか?症状・治療法も解説!【医師監修】
肝臓がんは罹患すると予後が悪いイメージを持っている人も多いと思います。
特に「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓では、初期の肝臓がんにおける自覚症状がほとんどないため、進行した状態でがんが見つかることも少なくありません。
では、実際に肝臓がんで痛みを自覚する場合は、痛みを感じる場所はどこでしょうか。
この記事では肝臓がんの痛みの場所・症状・治療法について解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
肝臓がん(肝細胞がん)で痛みを感じる場所
肝臓がん及び肝細胞がんで痛みを感じるのは、一定以上がんが進行した状態で自覚する場合が多いです。痛みを感じる場所として多いのは、腹部に痛みを感じるケースが多いとされています。
特に肝臓が位置する右上腹部に痛みが出現することが多く、肝臓がんの大きさに伴って痛みも感じやすいとされています。痛みの他に圧迫感を覚える患者さんもいるため、必ずしも痛みだけが症状だと捉えないでおきましょう。
進行具合によっては、痛みや圧迫感に加えて倦怠感やむくみ、黄疸を症状として自覚する例もあります。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど初期は無症状で、健康診断で肝臓がんが見つかるケースも多いのです。
肝臓がんと胆道がんで感じる痛みの違いについて
肝臓がんと胆道がんでは痛む場所が異なるのです。肝臓がんの場合は右上腹部に痛みが出現することが多いとされていますが、胆道がんの場合右脇腹やみぞおちに痛みを感じる方もいます。
特に、右側の季肋部痛として訴えられるケースから、胆道がんが発見されることもあるのです。共に初期症状は自覚することが少なく、進行して痛みを自覚するといわれています。
ただし、胆石や胆嚢炎を併発している場合は初期でも強い痛みを感じることがあります。また、胆道がんの症状は痛みの他に、発熱や黄疸がよく見られる症状です。
痛み以外の肝臓がんの症状
肝臓がんの痛みは上腹部に感じることが多いですが、痛み以外にも症状が出現します。特に肝臓がんの患者さんが訴えられる症状は以下の3つです。
- むくみ
- 黄疸
- 倦怠感
いずれも肝臓がんの初期症状として自覚することは少なく、進行してから症状を自覚するケースも多いのです。また、肝炎や肝硬変などを併発し肝機能低下によって症状が現れることも少なくありません。
むくみ
肝臓がんが進行すると、肝機能低下に繋がります。その結果、水分と塩分のバランスが崩れてしまい下半身に体液が溜まることから足のむくみを症状として自覚することが多いです。
肝臓がんの直接的な症状というよりは、肝臓がんに伴う肝機能低下によって引き起こされると理解しておきましょう。
黄疸
肝臓がんを発症している時点で、慢性肝疾患を患っていることが多いです。その場合、外見上は皮膚や目が黄色い状態になる黄疸を自覚する人もいます。
ただし、黄疸の症状があるから肝臓がんということではなく、胆石症や胆管炎なども疑われるでしょう。また、胆道がんによって胆管内が狭窄することで黄疸をきたす場合もあります。
倦怠感
肝臓がんの初期症状として全身の倦怠感や疲労感を覚えるケースもあります。肝機能が低下することで倦怠感を引き起こすといわれていますが、同時に食欲不振や貧血、黄疸などを併発して肝臓がんを疑うことが多いのです。
肝臓がんの治療方法
肝臓がんの治療方法を選択する際には、がんの進行度合いを精査し決定する必要があります。加えて、転移の有無や肝予備能を踏まえたうえで、治療方法を選択すべきです。
本記事では肝臓がんの患者さんに選択肢として考えられる以下7つの治療方法を解説します。ご自身や家族が発症した際の知識として理解しておきましょう。
ラジオ波焼灼療法
ラジオ波焼灼療法は侵襲性が低く、がんを制御しながら肝機能も温存できる治療方法です。皮膚の上から針をがんに直接刺し、針から高熱を与えることでがんを焼くとイメージしてください。
穿刺に伴う痛みは少なからずありますが、手術と比較すると低侵襲な治療です。繰り返し治療可能であり、手術と同程度の効果も期待できます。
塞栓療法
肝臓がんに栄養を送っている動脈を薬剤によって塞栓させ、がん自体を壊死させる治療方法です。鼠けい部や手首の血管からカテーテルを挿入し、肝動脈まで到達させ治療を行います。
肝臓がんのがん細胞はほとんどが肝動脈から栄養と酸素を受け取っているため、特定の肝動脈を塞栓させます。がん細胞以外の正常な肝細胞は、門脈から栄養や酸素を受け取るため正常な部分が壊死する心配はありません。
肝動注化学療法
肝細胞がんに流れ込む動脈に直接抗がん剤を注入し、がん細胞を死滅させる治療方法です。ピンポイントでがんに繋がる血流から抗がん剤を流し込めるので効率的に治療を進めることができます。
肝動脈に直接注入しますが、もちろん血流によって全身に抗がん剤が回ります。そのため、抗がん剤による副作用も出現しますが、化学療法に比べある程度の副作用は抑えることができるのです。
肝動注化学療法の多くは、抗がん剤を動注できるシステムであるリザーバーを皮下に埋め込みます。持続的に抗がん剤が注入され、効率的に治療を行えるでしょう。
化学療法
肝細胞がんは抗がん剤が効きにくいがんであるため、なるべく高濃度の抗がん剤で効率よく治療するために肝動注化学療法を治療法として選択する医師も多いでしょう。一方で近年では分子標的薬が開発され、肝細胞がんの予後も延長するとされています。
分子標的薬はがん細胞が新しい血管を新生するのを防ぎ、がん細胞への栄養や血流を途絶えさせる効果を期待できます。手術困難な患者さんへの治療法として選択されることもあるのです。
肝移植
肝移植は肝臓を全て取り出し、ドナーの肝臓を移植する治療方法です。
肝機能が悪く肝臓がんが進行している場合でも生存率が高まるとされています。ただし、肝移植を実施する際は「肝臓がんが3cm以内で3個以下であること」や「肝臓がんが単発で5cm以下であること」などのミラノ基準を満たすことが理想的です。家族や近親者の健康な肝臓を移植するケースが多いですが、まれに脳死肝移植も行われます。
肝切除術
内科的治療と比較すると再発リスクが抑えられ根治的であることから、肝切除を治療法として選択する症例もあります。
ただし、肝予備能が低い場合は術後に肝不全となるリスクがあるため、切除が充分に実施できないケースもあるのです。肝切除を行うケースは、がんが肝臓のみで3個以下の場合です。肝機能やがんの場所に合わせて緻密な計画を立てたうえで切除を行います。
放射線療法
内科的治療や外科的治療が困難な場合に放射線療法を治療法として選択する場合があります。特に高精度な体幹部定位放射線治療は、がんの形に合わせて集中的に放射線を照射できるため、ピンポイントでがんにアプローチ可能です。
また、正常組織への影響も抑えることができます。さらに、近年では粒子線治療も選択肢の一つとして挙げられます。一般的な放射線治療よりもより集中性が高く局所的に制御されるため、その分効果も期待できるでしょう。ただし、実施施設が限られるため主治医への相談が必要です。
肝臓がんの痛みの場所についてよくある質問
ここまで肝臓がんの痛みの場所・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「肝臓がんの痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肝臓がんの初期症状を教えてください
甲斐沼 孟(医師)
肝臓がんの場合、肝臓辺りが痛くなりますか?
甲斐沼 孟(医師)
肝臓自体は痛みを感じる神経のない臓器であることから、肝臓そのものが痛むことはありません。ただし、肝臓がんが進行すると圧迫感とともに痛みが現れるケースが多いです。進行して痛みを感じる場所は右上腹部で、肝臓の辺りが痛みます。
編集部まとめ
今回は、肝臓がんの痛みに関連して症状や治療方法を解説しました。肝臓がんは初期症状を自覚するケースは少なく、さまざまな症状を併発して発覚する患者さんもいます。
症状を自覚する頃には、肝臓がんが進行していることもあるのです。定期的な健康診断や慢性肝疾患の治療が肝臓がんの早期発見・早期治療に繋がります。
今回ご紹介した症状に当てはまる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
肝臓がんと関連する病気
「肝臓がん」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 原発性肝がん
- 転移性肝がん
一般的に、原発性肝臓がんというと「肝細胞がん」のことを指します。その他にも、肝臓内の胆管にがんが発生する「肝内胆管がん」があります。治療法が異なることから、がんの種類を精密検査によって区別する必要があるのです。
肝臓がんと関連する症状
「肝臓がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 痛み
- 食欲不振
- 全身倦怠感
- 黄疸
- むくみ
- 貧血症状
- 腹部圧迫感
初期の肝臓がんでは症状を自覚するケースは少なく、症状が現れる頃には進行している症例も多いです。定期的な健康診断を行って、早期発見・早期治療に繋げましょう。