「急性骨髄性白血病の原因」はご存知ですか?検査法や治療法も解説!【医師監修】
急性骨髄性白血病(AML)は意外とよく聞く病名かもしれませんが、原因は何かをご存知でしょうか。
実は原因の多くは未だわかっていません。しかし、近年では遺伝子の異常により発症しやすいのではといわれています。
本記事では急性骨髄性白血病(AML)の原因・検査・治療法について詳しく解説します。
発症リスクについてのメカニズムもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
急性骨髄性白血病(AML)の原因
大部分の急性骨髄性白血病(AML)は原因不明とされています。
しかし、細胞分裂を繰り返していく過程で遺伝子の異常が起こり、発症すると考えられています。原因として考えられているのは以下の4つです。
- 放射線の被曝
- 化学物質の曝露
- 生まれつきの遺伝子異常
- ウイルス感染
それぞれ詳しくみていきましょう。
放射線の被曝
原因として考えられている1つ目は放射線の被曝です。
原子爆弾の投下・原子発電所の事故などの後は急性骨髄性白血病(AML)が多く発症したという統計があります。これは放射線が拡散されて、多くの人が多量の放射線を浴びてしまったからだと考えられています。
また、他の被曝として考えられるのはがん患者さんの放射線療法を受けた場合です。これは医学の進歩に伴い、放射線療法を受けながら長期にわたって闘病する患者さんが増えたためとも考えられています。
放射線療法を受けた後に発症した白血病は二次性白血病(治療誘発性白血病)と呼ばれ、その多くが急性骨髄性白血病(AML)です。
化学物質の曝露
2つ目は化学物質の曝露です。化学物質として挙げられる代表的なものは、ベンゼンです。合成洗剤・染料・農薬などの合成原料として使用されるだけでなく、ガソリンにも含まれています。
厚生労働省の報告では、ベンゼンが骨髄で毒性を発揮させることで発がん性を引き起こした結果、急性骨髄性白血病(AML)として現れるとされているのです。
また、長期に渡り抗がん剤を使用した化学療法の後にも発症する場合があるといわれています。これは先述と同様に二次性白血病(治療誘発性白血病)と呼ばれています。
生まれつきの遺伝子異常
3つ目の原因は生まれつき遺伝子に異常がある場合です。遺伝子が異常を起こす原因は不明ですが、染色体異常・遺伝子変異によって発症すると考えられています。
特にダウン症などの染色体異常を起こす先天性疾患では、急性骨髄性白血病(AML)を発症する場合が多いことがわかっています。
ウイルス感染
4つ目はウイルス感染が考えられています。白血病の中には HTLV-1というウイルス感染が関与して発症する成人T細胞性白血病があります。 しかし、急性骨髄性白血病(AML)の場合ではウイルス感染によって発症するというその関与については、明らかになっていないのが現状です。
放射線の被曝が急性骨髄性白血病(AML)の発症リスクとなるメカニズム
放射線の被曝を受けると体内でどのような変化が起こり、急性骨髄性白血病(AML)を発症するのでしょうか?
発症するメカニズムとしては主に以下の2つが挙げられます。
- 放射線が細胞を傷つける
- 傷ついた細胞が遺伝子異常を起こす
それぞれを詳しく説明します。
放射線が細胞を傷つける
細胞核の中にある遺伝子の本体DNA(デオキシリボ核酸)が放射線の照射を受けると、DNAの一部が傷ついてしまう場合があります。
ヒトが細胞分裂を行うには、DNAを傷なく複製し、分裂の際に複製したDNAを新しい細胞へ格納する必要があります。
しかし、放射線を何度もまたは多量に浴びると、このDNAが直接傷つくだけでなく細胞内の活性酵素の働きを強くして、さらにDNAを傷つけてしまうのです。
傷ついた細胞が遺伝子異常を起こす
DNAが大量の放射線によって傷つけられると細胞が分裂を起こせなくなり、その細胞は遺伝子異常を起こしたり、死滅してしまいます。
死滅した細胞や遺伝子異常が起こってしまった細胞はがん化してしまうリスクがあり、結果的に急性骨髄性白血病(AML)のリスクを高めてしまうのです。
急性骨髄性白血病(AML)の原因を探る検査方法
急性骨髄性白血病(AML)の原因はどのようにして調べるのでしょうか?
主な検査方法は以下の2つです。
- 血液検査
- 骨髄検査
それぞれを詳しく説明します。
血液検査
血液検査で主に確認することは、白血球数の異常や赤血球・血小板数の減少などです。
急性骨髄性白血病(AML)の場合は、白血球数は増加するだけでなく減少する場合もあり、白血球の一種である好中球の減少がよくみられます。また、芽球と呼ばれる未熟な血液細胞の異常も確認します。
芽球は白血病細胞である可能性が高いとされる場合が多いのです。ただし、血液検査において原因を探ることはできません。あくまでも診断においての検査としての位置づけとなります。
骨髄検査
骨髄検査は血液検査で急性骨髄性白血病(AML)が疑わしい場合の確定診断で行われ、骨髄穿刺(骨髄を採取する)・骨髄生検(骨髄組織を採取する)とがあります。
骨髄検査では確定診断の他に、病型を分類するためにも行われます。異常細胞の形状・性質を詳しく調べて分類するのです。
また、遺伝子異常・染色体の異常についてもあわせて詳しく調べます。骨髄検査も血液検査と同様、原因が探れるわけではありません。
しかし、異常細胞を詳しく調べて分類することで、原因となるものを考えていくことがさらに可能となるでしょう。
急性骨髄性白血病(AML)の治療法
急性骨髄性白血病(AML)の治療法は主に次の2つです。
- 化学療法
- 造血幹細胞移植
下記ではこれら2つの治療法について紹介します。
化学療法
急性骨髄性白血病(AML)の治療は患者さんの健康状態にあわせて行われます。患者さんの健康状態がよい場合は化学療法が行われます。
まずはじめに行うのは、抗がん剤を使った化学療法です。白血病細胞が確認できず、血球値が正常となる完全寛解を目指します。
しかし完全寛解となっても安心はできません。体内には白血病細胞が残っているため、地固め療法・維持療法などの化学療法を繰り返し行います。
繰り返し行うことで根治を目指すのです。治療を中断すると、再発する可能性が高くなります。根治するまで治療を続けることが大事です。
造血幹細胞移植
化学療法だけでは治すことが難しい場合、造血幹細胞移植が検討されます。骨髄・末梢血幹細胞・臍帯血などから造血幹細胞を採取し、移植する治療法です。
ドナーは血縁者か、日本骨髄バンクが仲介してくれた非血縁者のどちらかです。経過が順調な場合、移植後2~3週間でドナーの血液細胞が増えていきます。
ただし、生着不全・拒絶などの反応が出る場合もあります。患者さんの免疫細胞が、ドナーの造血幹細胞を受け入れない場合があるのです。
その場合は同じドナーもしくは違うドナーから再移植が必要になることがあるでしょう。
急性骨髄性白血病(AML)の原因についてよくある質問
ここまで急性骨髄性白血病(AML)の原因・治療法などを紹介しました。ここでは「急性骨髄性白血病(AML)の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
予防法はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
急性骨髄性白血病(AML)を予防する方法はありません。急性骨髄性白血病(AML)を発症する原因がはっきりとしていないためです。強いてあげるのなら、禁煙です。喫煙は遺伝子異常を引き起こす原因といわれています。骨髄性白血病患者さんには喫煙者が多いこともわかっています。喫煙は肺がん・食道がんなどを発症するリスクが高いです。
急性骨髄性白血病は完治しますか?
甲斐沼 孟(医師)
急性骨髄性白血病(AML)の治療において、「完治」という言葉は使いません。白血病細胞がなくなり、血液機能・全身状態が回復した状態を「治癒」といいます。この状態が5年以上続けば再発の可能性は低いといわれています。
編集部まとめ
ここまで急性骨髄性白血病(AML)を発症する原因や治療法について解説してきました。
急性骨髄性白血病(AML)を発症する原因は明確にはなっていませんが、放射線の被曝・化学物質の曝露・遺伝などが原因ではといわれています。
このように原因がはっきりとしないため、予防は難しいです。しかし早めに治療することで、治癒する可能性は高いです。
急性骨髄性白血病(AML)では発熱・倦怠感などの症状が初期症状として出ます。少しでもおかしいなと感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
急性骨髄性白血病(AML)と関連する病気
「急性骨髄性白血病」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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白血病は、リンパ性・骨髄性のようにがん化する場所で分けることができます。進行スピードでも分けられ、ゆっくりと白血病細胞が増殖する白血病は「慢性」、急激に増殖する白血病は「急性」に分けられます。
急性骨髄性白血病(AML)と関連する症状
「急性骨髄性白血病」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
急性骨髄性白血病(AML)と関連している症状として、これらが挙げられます。血液細胞が正常に作られなくなるため、免疫機能が低下したり出血したりしやすくなります。