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「前立腺がん手術後の注意点」はご存知ですか?食事面での注意点も医師が解説!

 公開日:2025/11/10
「前立腺がん手術後の注意点」はご存知ですか?食事面での注意点も医師が解説!
前立腺がん手術後の注意点とは?Medical DOC監修医が前立腺がん術後の再発率や食事面での注意点・合併症などを解説します。
石川 智啓

監修医師
石川 智啓(医師)

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2013年名古屋大学医学部卒。初期研修修了後、JCHO中京病院泌尿器科、小牧市民病院泌尿器科、名古屋大学医学部附属病院泌尿器科を経て、現在水野内科クリニックで勤務。日本泌尿器科学会専門医、da Vinci Surgical System コンソールサージャン・サーティフィケートの資格を有する。

「前立腺がん」とは?

前立腺がんは、男性に特有の臓器である前立腺に発生する悪性腫瘍です。 日本の患者数は、最近40年間で約30倍に増えており、いまや肺がんや胃がん、大腸がんと並ぶ男性の主要ながんの一つです。 前立腺がんの治療方針を決定する際には、がんの進行度や悪性度、PSA(前立腺特異抗原)の値、患者さん本人の体力や希望などを勘案します。 治療方法としては、監視療法、手術療法、放射線治療、薬物療法などがあります。 手術療法の適応は、がんが前立腺にとどまる段階である限局性から、前立腺の外側までがんが及んでいる進行性のがんまでと幅広いです。進行の度合いに応じ、前立腺のみを切り取る場合と、その周辺のリンパ節も含めて切り取る場合があります。 前立腺がんの場合、開腹での手術や腹腔鏡下での手術が行われます。最近ではロボット手術も増えています。 今回の記事では、前立腺がんの手術について、その後の注意点なども解説します。

前立腺がん手術後に入院は必要?

はい。前立腺がんの手術は、前立腺とその周囲の組織を切除し、膀胱と尿道をつなぎ合わせます。基本的には全身麻酔で行われるため、術後は一定期間の入院が必要です。8〜10日ほどの入院期間が想定されますが、術後の回復の度合いなどによってかわってくることもあります。

前立腺がん手術後の再発率

前立腺がんに対し、完全に治すことを目的とした根治的治療後の再発としては、2つのタイプがあります。一つめは、CTやMRIなどの画像診断で再発した部位が同定できる臨床的再発、もう一つはPSA値によって定義される生化学的再発(BCR)があります。BCRとは、PSAがしっかりと下がりきらない場合や、一旦下がってもまた数値が上昇してくる場合を指します。 具体的には、根治的な手術後1ヶ月以上経過した時点でのPSA値が0.2ng/mL未満の場合、PSA再発はなしと定義されています。一方、その後2〜4週間あけて想定したPSAが2回連続して0.2ng /mLよりも高い値となった場合、PSA再発したとみなされます。 また、そもそも術後一度もPSAが0.2ng /mL未満に下降しなかった場合は、手術日の時点で再発と判定されています。 日本では、限局性、つまり早期の前立腺がんに対する手術後のPSA再発率は、約25%であったとする報告があります。 一方、局所進行性の前立腺がんの場合、5年後に再発しない割合(非再発率)は45〜59%、10年で43〜51%とも報告されています。 前立腺がんの手術後の再発率には、手術の前のPSAの値や、悪性度、精嚢への浸潤、手術して切り取った病変の端にもがんがあった(断端陽性)などが関与していると考えられています。 BCRとなり、画像診断などからがんがもともとあった部分やその周辺に再発したと考えられるケースでは、救済治療が考慮されます。方法としては、集中的に放射線を当てる(定位放射線治療(SRT)などがあります。

前立腺がん手術後の注意点

前立腺がんに対する手術後には、以下のような点に気をつけると良いでしょう。

発熱などの感染の兆候

退院したあとに、38℃以上の熱が出る、傷口が赤くなる、膿や汁が出てくるといった症状は、術後の感染症を示唆しているかもしれません。早めに受診をするようにしましょう。また、尿のしづらさや排尿時の痛み、腹部の膨満感や吐き気なども注意が必要な症状です。膀胱と尿道のつなぎめに異常が出ていたり、腸閉塞が起こっていたりする可能性もあります。

下半身のむくみ

リンパの流れが一時的に悪くなることで、下半身のむくみが生じることがあります。 それほど多くみられる症状ではありませんが、手術してから3ヶ月以内に起こることが多いとされています。 退院してから最初の外来受診までは、運動は散歩程度の軽いものにとどめ、ランニングやサイクリングなどの激しい運動は控えるようにしましょう。 下半身にむくみがあり、症状が強い場合にはマッサージ指導を受け、弾性ストッキングの着用などの対応を要します。

下半身が赤く腫れる

リンパの流れが悪くなり、リンパ浮腫が生じた際、下肢蜂窩織炎(かしほうかしきえん)や下肢静脈血栓症が起こることがあります。 下半身がむくみ、赤みや腫れも伴う場合にも、早めに手術を受けた病院を受診しましょう。

前立腺がん手術後の食事面での注意点

前立腺がんの手術後でも、基本的には入院前と同じような食事をとることができます。ただし、以下のような点については気をつけるようにすると良いでしょう。

飲酒は控える

最初の外来受診まで控えるようにしましょう。担当の先生と相談のうえ、飲酒を再開するかどうかを決めると良いでしょう。

水分をしっかりととる

水分摂取は、尿路感染症や便秘予防のために重要です。 1日1.5-2L程度とることが勧められます。

バランスの良い食事

がん全般の発生予防のためには、禁煙や節酒、バランスの良い食事、適度な運動、感染予防などが有効とされています。 これらは前立腺がんの再発防止に特化したものではありませんが、他のがんの予防のためにも気をつけるようにしましょう。 前立腺がん発症予防に対して効果が期待される成分として、大豆中のイソフラボン、緑茶中のカテキン、トマト中のリコペンなどがあります。

前立腺がん手術後の合併症

前立腺がん術後の合併症として、以下のようなものが知られています。

尿失禁

前立腺は、排尿を調節している尿道括約筋ととても近いところにあります。そのため、がんが広がっている場合などには手術によって尿道括約筋が損傷を受けてしまうケースがあります。尿道括約筋がうまく働かなくなると、尿道がゆるみ、咳をしたときやいきんだ際などに尿漏れが起こる場合がみられます。 尿失禁は、通常は半年以内に9割程度の方に改善がみられます。しかし、なかには長時間続く方もいます。そのため、排尿日誌をつけ、排尿の量とパッドに漏れた量、1日に使用したパッドの数を記録しておくことが大切です。もし尿失禁が続き、日常生活に支障をきたす場合は、人工尿道括約筋の埋め込み術などの方法もあります。

男性機能障害

手術によって、勃起障害や射精障害、性欲の減退などといった、男性機能障害が生じやすくなります。手術の際に、性機能を司る神経が傷つけられることでこれらの症状が起こります。 症状に関する詳細な問診、血液検査や尿検査などによって治療方針を決定します。 勃起障害に対しては、精神療法や薬物療法などで治療を試みます。 また、前立腺がんの手術で精管という部分が切断されます。そのため、手術のあとは射精ができなくなります。一方で、射精の感覚は残存することもあります。 妊娠を希望する場合は、事前に精子を採取し人工授精をする方法や、術後に精巣内から精子を採取し体外受精する方法などが検討されます。

鼠径ヘルニア

手術後、2〜3年ほど経ってから、鼠径(そけい)ヘルニアになる方もいます。 鼠径ヘルニアは、足の付け根部分である鼠径部から、腸などの臓器が皮膚の下まではみ出してしまう状態を指します。仰向けになる、押すなどでも元に戻ることが多いです。しかし、なかには腸が元に戻らなくなる嵌頓(かんとん)という状態になることがあります。そのため、治療が望ましいと考えられています。

「前立腺がんの手術後」についてよくある質問

ここまで前立腺がんの手術後について紹介しました。ここでは「前立腺がんの手術後」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

前立腺がん手術後の仕事復帰はどれくらいでできるのでしょうか?

石川 智啓石川 智啓 医師

職場復帰の時期については、患者さんの体調や元々の仕事の内容によって幅をもって考慮することが望ましいでしょう。通常は、2〜3週間は自宅で静養する方が多いでしょう。 体力や合併症の有無によって個人差が大きいので、必ず主治医と相談するようにしましょう。 無理に早期復帰をせず、医師と相談しながら段階的に復帰しましょう。

編集部まとめ

今回の記事では、前立腺がんの手術に際して知っておきたい注意点や合併症などについて解説しました。前立腺がんの手術後は、一定期間の入院や排尿・性機能の変化、生活習慣の見直しが必要です。再発リスクはゼロではないため、定期的なPSA検査を続けるとともに、食生活の改善や適度な運動が重要です。尿失禁や勃起障害といった合併症に悩まされる方もいます。しかし、医師や専門スタッフと相談しながら適切な対応を取ることで、術後も生活の質を保つこともできるでしょう。

「前立腺がん」と関連する病気

「前立腺がん」と関連する病気は5個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

泌尿器科の病気

これらの病気は、前立腺がんと同様の症状が現れることがあります。

「前立腺がん」と関連する症状

「前立腺がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

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前立腺がんは早期の段階ではほとんど症状がない場合もありますが、進行すると上記のような症状が出現するケースがあります。

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