「メラノーマの症状」はご存知ですか?見分け方も解説!【医師監修】
皮膚がんの一種にメラノーマという病気があります。皮膚の一部が悪性化する病気です。しかし、ほくろと似ているので見逃されることがあります。
このように表現すると見つけにくい病気だと思う人もいるかもしれません。しかし、症状や特徴などを知っていると見つけやすくなるでしょう。
本記事ではメラノーマの症状についてご紹介します。検査方法・ほくろとの見分け方についても解説するので参考にしてください。
監修医師:
高藤 円香(医師)
目次 -INDEX-
メラノーマとは?
メラノーマは皮膚がんの一つで、日本語では悪性黒色腫といいます。
和名に「黒」という文字が入っていることからもわかるかもしれませんが、メラノーマに罹患すると患部が黒く変色します。
名前の由来は皮膚細胞の一種であるメラノサイトから来ており、この細胞が悪性化して腫瘍になるのでメラノーマと呼ばれるようになりました。
悪性度が高く、進行も極めて早いという特徴があります。
手術などの治療を行っても、再発・転移することが多いのもメラノーマの代表的な特徴です。
以前は日本人の罹患率は低いとされていました。しかし、死亡率は40年間で4倍に増加しています。
発症ピークは30~50代と60~70代の2つに分かれていますが、若い人の発症が多く報告されているのが現状です。
皮膚細胞の一種が悪性化すると説明しましたが、粘膜・目にできることもあります。
メラノーマの症状は?
メラノーマにはわかる人が見ればそれと気づく症状があります。
その主な症状は下記の2つです。
- 褐色から黒色のしみがあらわれる
- 腫瘤や潰瘍ができる
ただし、これらの症状でメラノーマかもしれないと考えるのは専門的な知識がある場合に限られます。
後述で解説しますが、初期の段階ではほくろと似ているからです。
ここでは、上記2つの症状について解説するので、参考にしてください。
褐色から黒色のしみがあらわれる
メラノーマは和名で悪性黒色腫と呼ばれますが、実際には褐色から黒色のしみがあらわれます。
初期の段階では褐色・茶色が多いでしょう。
病状が進むにつれて色が濃くなり、最終的には黒色に変化します。ただし、これはメラニン色素を生成する場合の症状です。
まれにメラニン色素がほとんどないメラノーマもあります。その場合は色に変化がみられないこともあるので注意が必要です。
仮に色に変化があったとしても淡い紅色になる程度でしょう。
腫瘤や潰瘍ができる
変色するのは初期症状の段階です。症状が進むと変色した部分は腫瘤・潰瘍になります。
メラノーマの診断を行う際にも、腫瘤・潰瘍の有無を確かめるので重要な症状といえるでしょう。
ただし、メラノーマに罹患すれば必ずこれらの症状があらわれるとは限りません。変色の症状しか認められないケースもあります。
しかし重要な診断条件の一つとして採用されているので、自己診断の際にも目安にすると良いでしょう。
メラノーマの検査方法
メラノーマの罹患が疑われると、必ず行われる検査があります。その検査は下記の2つです。
- ダーモスコピー検査
- 生検
これらは確定するためにも重要な検査とされています。
多くの病院で行われている方法といえるでしょう。それぞれの検査について内容・特徴も含めて解説するので参考にしてください。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピー検査とは、ライトつきの拡大鏡を使用して行う検査です。
ほくろ・しみをこれで調べると色素・分布などの情報から罹患の有無がわかります。
見た目では判断しにくいものも、メラノーマかそうではないかがわかるので早期発見も可能です。
メラノーマは罹患から拡大まで早くて再発率も高いので、早期の発見と治療が重要と考えられています。
この検査はその一役を担っているといって良いでしょう。
生検
ダーモスコピーで確定判断が難しい場合は、生検検査を行います。
メラノーマが疑われる場合、部分生検は転移を助長する危険性を高めると考えられ、避けられて来ましたが現在は速やかに拡大切除するバックアップ体制を整えた上で行われています。
ただしダーモスコピーで確定診断ができる場合は、生検が省略されることも多いので注意してください。
確定診断のために必須とされている検査ではありません。
また、疑われる部分が小さい場合は、全摘して生検を行う場合もあります。
ほくろとの見分け方は?
メラノーマと間違えられることが多いのがほくろです。
ほくろも褐色〜黒色をしているので、初期段階では見分けがつきにくいといえるでしょう。
ただし、見分けるポイントを知っていれば、自己診断はできるかもしれません。
主な注目ポイントは下記の4つです。
- 左右非対称か
- 輪郭がギザギザしているか
- 色むらの有無
- 色・かたさ・形の変化の有無
これだけ見てもわからないと思う人もいるかもしれません。
それぞれのポイントについて詳しく解説するので参考にしてください。
左右非対称かどうか
左右非対称かどうかは、ほくろと見分ける際に有効な方法です。
ほくろは円形・楕円形をしています。
真ん中にラインを引くと左右対称になっていることがわかるでしょう。
しかし、メラノーマは形が整いません。
いびつな形をしているので、ほくろと見分ける際のわかりやすい目安になります。
心配な人は、形をよく見てみると良いでしょう。
輪郭がギザギザしているかどうか
見分ける際には、輪郭にも注目してみましょう。
ポイントはギザギザしているかどうかです。
一般的なほくろは、境界線がはっきりしています。
なかには多少ぼんやりしているものもあるかもしれません。
しかし、メラノーマの場合は輪郭がギザギザしているのでその違いははっきりわかるでしょう。
仮にほくろの輪郭がはっきりしていないと感じられても、それだけで心配する必要はありません。
輪郭だけで判断できないからです。
ほかの注目ポイントも確認して判断しましょう。
色むらがあるかどうか
色むらの有無も、判断基準の一つです。
ほくろの場合は色むらがありません。
色は均一になっていることが一般的です。
しかし、メラノーマの場合は色むらがあります。
少し薄いというレベルではなく、一目見れば明らかに色むらがあるとわかるレベルです。
周りは黒いのに真ん中の一部分だけ肌色だったり、赤い色をしていたりします。
ほくろではこのような特徴は見られないので、比較的わかりやすい特徴といえるでしょう。
色・かたさ・形が変わるかどうか
ほくろとの見分け方にはさまざまな方法がありますが、その中でもとくに注目したほうが良いのは色・かたさ・形の変化です。
ほくろは一度確認できると、大きな変化はほとんど認められません。
一方メラノーマはびらんや潰瘍になるなど、変化を伴うことがあります。
最初はほくろだと思っていても、1〜2か月で色・形などが変化した場合にはメラノーマを疑ったほうが良いでしょう。
ほくろはこのような早いスピードで変化することはほとんどないからです。病院で診察を受けることをおすすめします。
メラノーマの治療方法
メラノーマを発症した場合、どのような方法で治療するのかを解説します。
悪性度が高いがんでもあるため、治療の仕方を知りたいと思っている人もいるかもしれません。
主な治療方法は下記の3つです。
- 手術
- 薬物療法
- 放射線療法
これらはほかのがん治療の際にも採用されているので、特別な治療ではないと感じる人もいるかもしれません。
それぞれの方法について解説するので参考にしてください。
手術
臓器などへの転移が確認されない場合は、手術で原発部位を取り除きます。
このとき、あわせて所属リンパ節も生検・郭清術を行うのが一般的です。
明確にリンパ節への転移がないとわかる場合には原発部位の手術だけになりますが、不確かな場合は悪性度の高さから並行して行われるでしょう。
薬物療法
手術での全摘が難しい場合には、薬物療法を行います。
使用される薬剤は、免疫チェックポイント阻害薬や、BRAF/MEK阻害薬など分子標的薬が一般的です。
この薬剤は簡単にいうと、免疫チェックポイント分子の働きを抑える効果があります。
免疫チェックポイント分子は、免疫の活性化を抑える効果があるいわゆるブレーキです。
この分子を抑えることで、免疫の効果が活性化してメラノーマを攻撃させます。
一般的ながんに対する薬物療法は、がんそのものへの攻撃が目的です。
しかし、メラノーマの場合には目的が異なる治療方法といえるでしょう。
放射線療法
放射線治療は、以前は効果が薄いといわれていました。
しかし、近年は免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物療法と併用することで効果があるとされています。
また脳への転移が認められる場合は、高い効果が認められているので行われる可能性はあるでしょう。
とはいえ、メラノーマの治療で効果が高いとされているのは手術・薬物療法です。
放射線治療は治療の効果を上乗せするために行われるケースが多いため、採用しない病院も存在します。
なお、重粒子線療法を行うこともあり、こちらは局所制御にはかなり有効です。治療を受ける際に医師の治療計画をよく聞いておきましょう。
メラノーマについてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここではメラノーマについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
メラノーマの悪性度について教えてください。
高藤 円香医師
メラノーマの悪性度は高いといえます。
その理由として進行度が早く、再発・転移の割合も高いからです。
全摘手術をしても早い段階で再発・転移が認められることもあります。
完治には早期発見が重要ですが、ほくろとの見分けがつかないこともあるため発見も遅れがちです。
この理由もメラノーマの悪性度が高いといわれている原因の一つといえるでしょう。
メラノーマが転移しやすいのはどの部位ですか?
高藤 円香医師
転移しやすいのはリンパ節です。
発症が確認された場合には、リンパ節への転移も疑って検査・治療を行います。
また脳・骨・肝臓などの臓器への転移もみとめられており、その頻度もほかの部位よりも多いといえるでしょう
編集部まとめ
メラノーマについて解説してきました。
ほくろとの見分けがつきにくいがんですが、チェックするポイントに注目して確認することで自己判断は可能です。
痛みのような目立った症状はないので、目視で確認するようにしましょう。
疑わしいと思った場合には病院へ行くことをおすすめします。
進行スピード・再発率なども高い特徴があるメラノーマです。
早期発見を意識して、診察を受けてください。
メラノーマと関連する病気
メラノーマと関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
皮膚科の病気
- 基底細胞がん
- 有棘(ゆうきょく)細胞がん
これらはメラノーマとあわせて「皮膚がん」と称されています。
実際には皮膚がんという病気はなく、メラノーマや上記2つを含めた皮膚にできるさまざまながんの総称です。
メラノーマと関連する症状
メラノーマと関連している、似ている症状は2個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 褐色~黒色のしみ
- 腫瘤・潰瘍
これらの症状は初期段階ではほくろに似ているため、見落とされがちです。
1〜2か月程度で大きさ・形などが急激に変化した場合には、メラノーマを疑ったほうが良いでしょう。