「急性骨髄性白血病の生存率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】
「急性骨髄性白血病」と聞くと不治の病というイメージがあるかもしれません。発症する方が少ないこともあり、どのような病気か知らない方も多いでしょう。
死亡率の高い病気ですが、診断・治療法の進歩により寛解が期待できるようになりました。では実際のところ、どれほどの生存率があるのでしょうか。
この記事では急性骨髄性白血病の生存率について、症状・治療法と併せて解説します。早期発見のポイントもご紹介しているので参考にしてみてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
急性骨髄性白血病とは?
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の病名自体はよく知られているでしょう。ではどのような病気であるかはご存じでしょうか?正しく理解するために、まず急性骨髄性白血病とは何かについて解説します。
白血病は血液のがん
白血病とは骨髄の中で血球を作り出すもとになる造血幹細胞の遺伝子に異常が起き、腫瘍化した白血球細胞が骨髄・血液中に増殖する血液のがんです。造血幹細胞は白血球・赤血球・血小板といったあらゆる血液細胞に成長できます。
そのため1個の造血幹細胞が変異すると、全ての血液細胞の生成を阻害します。白血病は大きく分類すると、急性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病(ALL)・慢性骨髄性白血病(CML)・慢性リンパ性白血病(CLL)の4種類です。その中で最も割合の多い症例が急性骨髄性白血病です。小児患者さんにも多く、日本では1年間で約100〜200人のお子さんが発症しています。
正常な機能を持たない細胞が過剰に増殖
急性骨髄性白血病では正常な機能を持たない白血球細胞を含むがん細胞が早いスピードで過剰に増殖してしまいます。「急性」とついているのはそのためです。治療しないままでいると白血病細胞は増加し続け、正常な血液を生成する力が抑制されることにより正常な血液細胞が著しく減少します。
骨髄に細い針を刺して骨髄検査を行い、骨髄の中に白血病細胞が多く存在していることが認められると、進行スピードに応じて急性骨髄性白血病と診断されます。遺伝子の変異がきっかけで起こる病気ですが、原因は明らかになっていません。遺伝性も見られず、予防するのは非常に難しいといえます。
急性骨髄性白血病の生存率
白血病は血液のがんであるため、その後に白血病細胞が増殖したり転移したりする可能性から完治という見方はしません。治療によって病気を抑えることができていることを「寛解(かんかい)」と呼びます。そして再び白血病細胞が生じることがない状態を「完全寛解」といいます。
急性骨髄性白血病の臨床試験の結果によると、寛解した患者さんのうち4年生存率予測は42%、その後病気を発症しない無病生存率は35%です。寛解率だけで見れば60歳以下の患者さんは80%、60歳以上の高齢者でも65%が寛解するとされ、急性骨髄性白血病も治癒が見込まれるようになりました。
小児の急性骨髄性白血病の場合はさらに高い寛解率が得られ、全体の約60〜70%が長期生存することが明らかになっています。急性骨髄性白血病は進行が早いため、すぐに治療が必要となります。治療開始が早いほど寛解・生存率を上げることができるため、早期発見が重要な課題です。
急性骨髄性白血病の症状は?
急性骨髄性白血病は血液異常からくる症状が見受けられます。一見何でもないような症状から始まる可能性があるため、異変には敏感であるべきです。ここからは急性骨髄性白血病で見られる6つの症状をご紹介します。ご自身もしくはご家族に次のような症状がないか確認してみましょう。
感染症にかかりやすくなる
体内に侵入した細菌などの異物を排除する役割を担う正常な白血球が減少すると、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなるという特徴があります。免疫力低下は体が無防備で弱っている状態です。健康な人には害がないような細菌・カビ・ウイルスなどの病原体にも感染しやすくなってしまいます。
特に敗血症・肺炎にかかるケースが多く見られます。一度感染症にかかると治りにくいのも免疫力の低下が原因です。
貧血
体内において酸素は細胞が正常に機能するために欠かせません。その酸素を運搬する働きを担っているのが赤血球(ヘモグロビン)です。急性骨髄性白血病では赤血球も減少し、酸素が十分に運搬されず体が酸欠を起こすので貧血の症状が現れます。
さらに、貧血に伴う症状としてだるさ・めまい・頭痛も引き起こします。よく息切れをしたり疲れやすかったりするのも貧血によるものかもしれません。
発熱
正常な白血球が減少し感染症にかかりやすくなる影響から、発熱の症状も見られます。急性骨髄性白血病で起こる発熱の場合、白血球の中にある顆粒球の一種である好中球数が減少してしまう好中球減少症を伴う発熱の可能性が考えられるでしょう。
主に37.5度以上の発熱であり、38.0度以上の高熱が出るケースもあるため注意が必要です。
骨の痛み
前述したように急性骨髄性白血病は骨髄に白血病細胞が増殖する病気です。このことが要因で骨・関節に痛みを感じる方も見受けられます。
とりわけ肋骨・胸骨のように心臓に近い箇所の骨が異様に痛むのであれば、急性骨髄性白血病である確率は高まるでしょう。
歯肉などからの出血
血小板は主に出血を止める役割を担っています。急性骨髄性白血病を発症すると血小板が減少するため、出血しやすくなってしまいます。
たとえば歯肉の出血・鼻血は初期の段階から見られる症状です。また、症状が重い患者さんであれば脳をはじめ重要な臓器から出血することもあります。
青あざ
怪我をしたときにできる青あざは、衝撃によって血管が破れ内出血することによって生じます。これは時間とともに血が止まって治るため心配はいりません。
ところが急性骨髄性白血病では血小板の減少により出血が止まりにくくなり、多少の圧迫・負荷で青あざができやすくなります。
急性骨髄性白血病の治療法
治療法が進歩したことにより、以前は治癒が難しかった急性骨髄性白血病も治療・寛解が込める病気となってきました。そこで急性骨髄性白血病に有効な2つの治療法を解説します。ご自身が発症した場合にどのような治療法を行うのかをご確認ください。
寛解導入療法
急性骨髄性白血病の治療の基本は寛解導入療法で始まります。これはシタラビン(Ara-c)・アントラサイクリン(イダルビシン・ダウノルビシンなど)の併用療法です。簡単にいえば抗がん剤治療のことで、骨髄中に増殖する白血病細胞を減少させ寛解を目指す治療法となります。
臨床試験では寛解導入療法を行うことにより、60歳未満の患者さんのうち60~80% が完全寛解したことから非常に有効な治療法として広く用いられています。
地固め療法
寛解導入療法を行った後、次の治療法として用いられるのが地固め療法です。これは寛解導入療法で用いなかった抗がん剤を複数回投与する治療法です。寛解導入療法によって顕微鏡などで確認できなくなるまで白血病細胞が小さくなったとしても、まだ白血病細胞が残っている可能性があります。
そこでさらに化学療法を続けることで白血病細胞を徹底的に叩き、完全寛解率を上昇させるのです。基本的にはこれらの寛解導入療法・地固め療法が行われるケースが多いですが、患者さんの状態によっては造血幹細胞移植が行われる場合もあります。
急性骨髄性白血病の早期発見のポイントは?
急性骨髄性白血病は慢性の白血病に比べて進行が早いため、寛解を目指すには早期発見をして速やかに治療を始める必要があります。早期発見のポイントは急性骨髄性白血病の初期症状を見逃さないことです。とはいえ特徴的な症状はなく、多くの場合風邪に似た症状といわれます。
風邪であれば医療機関にかからず自宅で療養して治す患者さんも多いでしょう。そのため、急性骨髄性白血病の発見が遅れてしまうことがあります。風邪のような症状に加えて疲れやすかったり出血することが増えたりしているなら医療機関を受診してみてください。女性であれば生理不順も考慮に入れるべきです。
自覚症状がなく、健康診断によって発症に気づく患者さんも多いです。早期発見のために定期的な健康診断・血液検査を行うことをおすすめします。
急性骨髄性白血病についてよくある質問
ここまで急性骨髄性白血病の生存率について紹介してきました。ここでは「急性骨髄性白血病」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
急性骨髄性白血病は再発する可能性はありますか?
中路 幸之助(医師)
治療を施して寛解が得られたとしても、再発することがあります。過去の症例から見ると、寛解を得た患者さんでさえ全体の約30%の方が再発しているのが現状です。さらに治療終了後3〜5年以内に再発しやすいといわれています。急性骨髄性白血病が再発するとその後の生存率は30%程度に留まっています。完全寛解と診断された後も定期的な検診・経過観察を行い、引き続き予後を慎重に見きわめることが重要です。
治療の副作用について教えてください。
中路 幸之助(医師)
急性骨髄性白血病の化学療法に用いられる抗がん剤の目的は増殖する細胞を壊すことです。そのため、正常細胞の細胞分裂にも作用してしまいます。よく知られている副作用は脱毛です。また吐き気・嘔吐・便秘・下痢・アレルギー反応などさまざまな副作用が表れる場合があります。さらに抗がん剤の種類によっては性腺障害をもたらし、内分泌障害・不妊に至る患者さんも見られます。
編集部まとめ
今回は急性骨髄性白血病の生存率をはじめとする病態について解説しました。治癒する可能性があることがわかり希望を持てた方もいるでしょう。
早期発見をして適切に治療を進めていくなら、以前と変わらない生活を送ることも不可能ではありません。そのためには日頃の体調チェックが大切です。
ご自身またはご家族で気になる症状・異変があるという方は、1人で悩まずなるべく早く医療機関に相談してください。
急性骨髄性白血病と関連する病気
「急性骨髄性白血病」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 急性リンパ性白血病
- 慢性骨髄性白血病
- 慢性リンパ性白血病
白血病には急性骨髄性白血病のほかにも以上のような種類があり、さらに患者さんによってさまざまなタイプに分類されます。その中でも急性骨髄性白血病は進行スピードが早いため、定期的な検診を行って早期発見・早期治療で寛解を目指しましょう。
急性骨髄性白血病と関連する症状
「急性骨髄性白血病」と関連する症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
急性骨髄性白血病の症状は風邪と似ていることから見過ごされやすいものです。歯肉の出血・頭痛なども慢性的に経験している方は放置する傾向にあります。いつもとどこか違う、またはこれらの症状が長引いていると感じたならぜひ早めに医療機関を受診してください。