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「食道がんのステージ別の症状」はご存知ですか?生存率も医師が徹底解説!

 公開日:2023/11/24
「食道がんのステージ別の症状」はご存知ですか?生存率も医師が徹底解説!

食道がんのステージとは?Medical DOC監修医が食道がんのステージ別の症状・余命・生存率や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

丸山 潤

監修医師
丸山 潤(医師)

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群馬大学医学部卒業。群馬県内の高度救命救急センター救急科及び集中治療科に2022年まで所属。2022年より千葉県の総合病院にて救急総合診療科および小児科を兼務。乳児から高齢者まで幅広い患者層の診療に努める。
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター

「食道がん」とは?

食道は胸部にある筒状の消化管であり、口と胃をつなぎます。食道がんは食道にできる悪性腫瘍であり、一番内側の粘膜から発生します。食道がん患者は男性の方が多く、飲酒や喫煙などが危険因子とされています。初期は無症状のことが多いのですが、進行するにつれてさまざまな症状を来します。食道がんのステージはCTや胃カメラ、食道造影などの画像検査を行うことで診断されますが、ステージが進行するにつれて生存率が下がる傾向にあります。健診を定期的に受け、何か異常があればすぐに病院に受診することが大切です。

食道がんのステージ別の症状

食道がん・ステージ0の症状

ステージ0の食道がんとは、がんが粘膜内にとどまっており、リンパ節転移を来していないもののことをいいます。
多くの場合、自覚する症状はなく、健診の胃カメラやバリウム造影で発見されます。
治療はがんが小さければ内視鏡治療が可能ですが、がんが大きく内視鏡治療が難しければ手術や化学放射線治療、放射線治療から選択されます。まずはなるべく早く、消化器内科、もしくは消化器外科に相談してください。

食道がん・ステージ1の症状

ステージ1の食道がんとは、がんが粘膜下層までにとどまっており、リンパ節転移を来していないもののことをいいます。
粘膜下層とは食道の内側から2番目の層で、粘膜のすぐ外側の層のことです。無症状のことが多いですが、飲み込んだときに喉や胸に違和感があったり、しみるような痛みを感じたりすることがあります。治療は基本的には手術を行いますが、全身状態が悪かったり、重い併存疾患があったりしてリスクが高いと判断される場合には、化学放射線治療、放射線治療から選択されます。早期に消化器内科、もしくは消化器外科への相談が必要となります。

食道がん・ステージ2の症状

ステージ2の食道がんは、がんが更に広がり、リンパ節に転移している場合もあります。
がんが大きくなるにつれて、飲み込んだときの痛みが強くなったり、固い食べ物や大きな食べ物が喉につかえるような感覚を覚えたりすることがあります。治療は基本的には手術ですが、手術の前もしくは後に化学療法を行うことが多いです。手術に耐えられないと判断された場合には、化学放射線療法や化学療法、放射線療法を行います。早期に消化器内科、もしくは消化器外科への相談が必要となります。

食道がん・ステージ3の症状

ステージ3の食道がんは、ステージ2より更に大きくなりますが、画像診断上では手術での切除が可能なものをいいます。
症状はさらに強くなり、軟らかい食べ物や液体でもつかえ感が出ることがあります。そのため食事量が減ってしまい、またがん自体の進行によっても体重が減少していきます。治療はステージ2と同様に術前化学療法を行った上での手術が基本ですが、手術に耐えられない場合には、化学放射線療法や化学療法、放射線療法を行います。症状に心当たりがある場合には、早期に消化器内科、もしくは消化器外科へ受診することが必要です。

食道がん・ステージ4の症状

ステージ4の食道がんとは、がんが手術で切除できないほど広がってしまったものや、遠隔転移を来してしまったものをいいます。食事中でなくても胸痛や背部痛を自覚するようになったり、体重が更に減少したりします。食べ物が全く通過しなくなるほどがんが大きくなってしまうと、食べることができなくなり、食後すぐに嘔吐してしまいます。頸部食道(喉の近くの食道)にがんがある場合には、神経ががんに侵され嗄声(声のかすれ)を自覚することもあります。また遠隔転移がある場合には、転移した臓器に応じた様々な症状が出現します。治療は患者の全身状態に応じて、化学放射線療法や化学療法、放射線療法を行います。消化器内科の受診が必要ですが、食事が摂ることができない状態の場合は緊急性が強いため、すぐに救急に受診する必要があります。

食道がんのステージ別の余命・生存率

がんはステージが低いほど、生存率が高くなり根治できる可能性が高くなります。5年生存率とは、患者の病気が診断されてから、もしくは治療を受けてから5年後の生存率を表しており、がんの生存率を測る指標としてよく用いられています。

食道がん・ステージ0の余命・生存率

ステージ0の食道がんの5年生存率は、80-90%です。ステージ0は最もステージが低いため、根治できる可能性も高いです。治療はまず消化器内科で内視鏡的に切除ができるか検討します。内視鏡治療はESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という方法で行います。食道の粘膜下層に薬液を注入してがんを浮かび上がらせて切除する方法で、侵襲が低く患者の負担が小さいのが特徴です。しかしがんが大きすぎると、食道狭窄を来すことがあり、手術などの他の方法が選択されます。

食道がん・ステージ1の余命・生存率

ステージ1の食道がんの5年生存率は、80%程度であり、ステージ0よりはやや低下します。治療は基本的には消化器外科で手術を行い、内視鏡治療の適応はありません。手術方法はがんがある部位(頸部食道か胸部食道か)によって異なります。また、施設によっては胸腔鏡や腹腔鏡を用いて手術を行うこともあり、患者の状態をみながら最適な方法で手術が行われます。一方で全身状態が悪く手術に耐えられない場合には、消化器内科で化学放射線療法や放射線療法が行われます。

食道がん・ステージ2の余命・生存率

ステージ2の食道がんの5年生存率は、60%程度です。手術に耐えられる場合にはステージ1と同様に消化器外科での手術が選択されますが、手術の前もしくは後に化学療法を行うことが多いです。全身状態が悪く手術に耐えることができないと判断される場合、化学放射線療法ができるのであれば、根治を目指して化学放射線療法を行います。化学放射線療法もできないと判断される場合には、化学療法や放射線療法を単独で行います。化学療法や放射線療法は消化器内科で行われます。

食道がん・ステージ3の余命・生存率

ステージ3の食道がんの5年生存率は、40-60%程度です。治療の選択方法は基本的にステージ2と同じですが、ステージが進行する分根治できる可能性は低くなります。ステージ2と同様に手術を行う場合には消化器外科で、化学療法や放射線療法は消化器内科で行います。

食道がん・ステージ4の余命・生存率

ステージ4の食道がんの5年生存率は10-30%であり、手術での切除が不可能で根治を見込める可能性は低くなります。遠隔転移を来しておらず全身状態が良ければ、化学放射線療法や、化学療法、放射線療法が行われます。完全奏功(画像上がんが完全に消失した状態)が得られれば、治療を一旦終了し経過観察できることもあります。遠隔転移を来している場合にも全身状態が良ければ化学放射線療法や化学療法、放射線療法を行います。しかし、根治を目指すことは困難であるため、がんの進行を遅らせることや症状の緩和が目的となります。全身状態が不良で余命が短いことが予想される場合には、症状緩和を目的にして対症療法を行うことになります。

「食道がんのステージ」についてよくある質問

ここまで食道がんのステージを紹介しました。ここでは「食道がんのステージ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

食道がんが転移しやすい部位について教えて下さい。

丸山 潤医師丸山 潤(医師)

がんの転移には血行性転移とリンパ行性転移があります。食道がんの場合、血行性転移で肝臓や肺、骨に転移を来しやすいといわれています。リンパ行性転移は、がん周辺のリンパ管にがん細胞が侵入し、リンパの流れによってリンパ節に転移を来します。頸部、胸部、腹部など、さまざまな部位のリンパ節に転移を来すことがあります。

編集部まとめ

食道がんは最初は無症状ですが、ステージが進行するにつれて症状が重くなっていき、生存率も低下していくため、予防や早期発見に努めることが大切です。飲酒や喫煙は食道がんの発生リスクを高めるため、なるべく控えた方が良いとされています。胃カメラやバリウム造影などの定期健診も受けるようにしましょう。また、症状に心当たりがある場合には、速やかに医療機関を受診するようにしてください。

「食道がんのステージ」と関連する病気

「食道がんのステージ」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

  • 食道潰瘍
  • 食道扁平上皮がん
  • 食道腺がん(バレット食道がん)

喉・胸・背部の痛みや、食事のつかえ感、嘔気・嘔吐、声のかすれ等の症状がある場合には、病気が隠れている可能性があります。速やかに医療機関を受診してください。

「食道がんのステージ」と関連する症状

「食道がんのステージ」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

喉・胸の痛みや、食事のつかえ感、嘔気がある場合には、逆流性食道炎や食道潰瘍などの良性疾患の可能性もありますが、食道がんが隠れている可能性があるため、早期の受診をお勧めします。症状に改善を認めなかったり、背部の痛みや嘔吐、声のかすれなどの症状が出たりした場合には速やかに医療機関を受診する必要があります。

参考文献

  • 食道癌診療ガイドライン2022年度版(日本食道学会)

この記事の監修医師

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