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「子宮頸がんのステージ別・生存率」はご存知ですか?症状についても医師が解説!

 公開日:2024/01/23
「子宮頸がんのステージ別・生存率」はご存知ですか?症状についても医師が解説!

子宮頸がんのステージとは?Medical DOC監修医が子宮頸がんのステージ別の症状・余命・生存率や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

「子宮頸がん」とは?

子宮は上部の袋状の「子宮体部(たいぶ)」と、子宮の入口 にあたる「子宮頸部(けいぶ)」に分けられ、この子宮頸部にできた悪性腫瘍のことを子宮頸がんと言います。
早期に発見すれば比較的治療しやすく、予後(病気や治療の今後の見通しのこと)の良い
がんですが、進行すると子宮の切除が必要になって妊孕性(妊娠・出産する能力)を保つのが難しくなることもある病気です。もちろん末期まで進行すれば命を落とすこともあります。
以下で子宮頸がんのステージ別の症状について解説します。

子宮頸がんのステージ別の症状

子宮頸がん・ステージ1の症状

ステージ1は、がんが子宮頸部に留まっている状態です。症状は、月経中でないのに性交時に出血がある、においを伴う茶色い帯下(おりもの)、匂いを伴う粘液が多く出る、といったものがあります。
ご自身でできる対処法は特にありません。またこれらの症状が見られた際は、早急に婦人科を受診しましょう。早期発見、早期治療が治療の鍵になります。救急受診するほどの緊急性はありませんができるだけ早い日程で受診してください。

子宮頸がん・ステージ2の症状

ステージ2は、がんが子宮頸部を超えて広がっているものの、周囲の組織(骨盤壁や膣壁の下部1/3)には達していない状態です。
ステージ2と同様に、普段は見られることのない不正性器出血や、匂いを伴う帯下(おりもの)などが特徴的です。症状からステージ1か2か、という判断はつきません。
ステージ1と同様に、ご自身でできる対処法はないので、早急に婦人科を受診しましょう。

子宮頸がん・ステージ3の症状

ステージ3は、がんが膣壁の下部1/3まで広がっているもの、骨盤壁まで達しているもの、がんが水腎症や無機能腎の原因になっているもの、近接したリンパ節(骨盤リンパ節やの傍大動脈リンパ節)転移が見られるもの、とされています。ステージ1/2で紹介した女性器に関連した症状に加えて、より多様な症状が見られます。
がんが尿路を圧迫することによって排尿に問題が生じたり、リンパ節に転移したことでリンパ液の流れが悪くなって脚のむくみが出現したり、骨盤や下腹部、背中に鈍い痛みを自覚する場合もあります。
これまでのステージと同様に、できるだけ早く婦人科を受診しましょう。

子宮頸がん・ステージ4の症状

ステージ4は、子宮と隣り合う臓器である膀胱や直腸の粘膜まで浸潤したもの(IV A期)、もしくはさらに遠くの臓器(肝臓や肺など)に遠隔転移したもの(IV B期)、とされています。
ステージ3まで紹介した症状に加えて、転移した臓器に由来する症状や、進行したがんに特徴的な全身症状がみられます。例えば、肺転移によって息苦しさを自覚する、腹膜転移(腹膜播種)によって腹水が溜まる、などの症状です。また全身症状とは、非常に強い疲労や体重減少、食欲不振などを指します。
このような症状が現れた際は、直ちに専門医に相談することをお勧めします。

子宮頸がんのステージ別の余命・生存率

子宮頸がん・ステージ1の余命・生存率

ステージ1の5年生存率(治療してから5年後に生きている人の割合)は94.9%です。
ステージ1のうち、I A期という比較的進行していない子宮頸がんの場合は、子宮頸部円錐切除術という手術が行われます。妊孕性(にんようせい:妊娠・出産する能力)に一部影響はあるものの、子宮の多くの部分を残すことができる方法です。
この手術で腫瘍組織を厳密に調べ(組織診)、その結果に基づいてその後の治療方針を決定していくことになります。
具体的には、妊孕性を温存したい場合は

  • ・厳重に経過観察
  • ・広汎子宮頸部摘出術(子宮体部と卵巣を残して、子宮頸部やそのほか子宮を支える靭帯組織などは摘出する)+骨盤リンパ節郭清

といった方針があります。
また妊孕性を温存しない場合は、単純子宮全摘術(開腹して子宮と卵巣、卵管を摘出する)や準広汎子宮全摘術(子宮、卵巣、卵管に加えて、子宮を支える組織の一部も摘出)、放射線治療といった方針があります。どの治療方針にするかは、個人の背景や組織診の結果をもとに、専門医と十分に相談して決定しましょう。専門科は産婦人科です。
完治する可能性もありますが、どのステージでも再発する可能性はありますので、治療後も継続的な通院は必要です。

子宮頸がん・ステージ2の余命・生存率

ステージ2の5年生存率は79.4%とされています。
ステージ2の治療方針では、広汎子宮全摘術(膣、そして子宮周囲の組織も含めた広い範囲を全て摘出する、卵巣切除は個別に判断)という手術に加えて、放射線治療や、化学療法と放射線治療を組みわせて行う同時科学放射線療法などがあります。
広汎子宮全摘術の場合は、骨盤内のリンパ節も同時に摘出するリンパ節郭清も行うのが一般的です。がんを完全に切除できる可能性は高くなりますが、リンパ節を切り取ったことで生じるリンパ浮腫や、排尿の問題、性生活への影響といった問題はあります。放射線治療では、その副作用によって卵巣機能は失われてしまいますが、排尿に関してのトラブルや性生活への影響は、手術療法よりも軽いという報告があります。
どの方針で治療するかは、婦人科専門医とよく相談して決定してください。

子宮頸がん・ステージ3の余命・生存率

ステージ3の5年生存率は64%です。ステージ2との違いは、手術療法が推奨されない点です。ステージ3は、がんが広範囲に広がっているため手術で十分に切除できる可能性が下がるため、一般的に手術適応はないとされています。(手術を行ったとしても長期的な予後改善効果は認められないことが分かっています。)
治療は産婦人科及び放射線科が連携して、同時化学放射線治療が選択されることが一般的です。放射線治療単独よりも、化学療法も組み合わせる方がより有用であるという研究結果があるためです。ただし有害事象も多くなるため、これも担当医と相談しながら治療を進めていく必要があります。

子宮頸がん・ステージ4の余命・生存率

ステージ4は、子宮から離れた臓器にまで転移した状態になります。5年生存率は25.9%です。肝臓や肺に転移したり、胸水(肺のスペースに溜まった水)がたまることで、息苦しさが出ることがあります。
ステージ4のうちIV 期では同時化学放射線療法が推奨されます、一方遠隔転移を伴うIV B期では、患者の全身状態が良い場合は化学療法単独が行われます。また腫瘍関連合併症に伴う症状が強ければ、その原因部位に対して症状緩和を目的として放射線治療を行うこともあります。
腫瘍関連合併症とは、例えば

  • ・子宮傍(結合)組織にがんが浸潤して発生する水腎症・水尿管症
  • ・子宮頸部局所からの出血
  • ・腫瘍が浸潤した直腸からの消化管出血
  • ・浸潤した膀胱からの血尿
  • ・下腹部や脚の癌性疼痛

などがあります。これらの原因となる腫瘍に対して、根治ではなく症状を緩和する目的で放射線治療が選択されることもあります。当然ながら完治は難しいです。
またステージ4は、いわゆる「がん末期」という状態に移行しえます。そのような状態においては、がんの進行から生じるさまざまな症状をできるだけ取り除き、最後まで苦痛なく過ごせるような緩和治療も行われます。
現時点でどの治療を行うことができるのか、専門医の判断を仰ぎながら決定していくことを勧めます。

「子宮頸がんのステージ」についてよくある質問

ここまで子宮頸がんのステージを紹介しました。ここでは「子宮頸がんのステージ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

子宮頸がんのステージ3の治療法を教えて下さい。

馬場 敦志医師

同時化学放射線治療という、抗がん剤を用いた化学療法と放射線を用いた放射線療法を組み合わせた治療法です。

子宮頸がんのステージ4の治療法を教えて下さい。

馬場 敦志医師

患者さんの全身状態が良い場合は、化学療法を行う場合があります。また腫瘍そのものによる合併症の影響が強い場合は、緩和目的の放射線治療を行うこともあります。

編集部まとめ

子宮頸がんのステージに注目して解説いたしました。覚えておいていただきたいのは、ステージ1であっても、子宮頸部円錐切除術という手術が必要であること、そしてこの手術でも妊孕性への影響はあるということです。
妊孕性を損なわないためには、子宮頸がんにそもそもならないように、リスクはできる限り排除することが重要です。
そのためには

  • ・子宮頸がんワクチン接種
  • ・定期的な子宮頸がん検診の受診

を徹底することです。ワクチンが打てなかったとしても定期的な検診で、ステージ1のさらに前の段階(前がん病変の段階)で発見できれば、より低リスクで治療が行えます。
最後まで読んでくださった方々には、改めてこの2つの予防策を徹底していただけたらと思います。

「子宮頸がんのステージ」と関連する病気

「子宮頸がんのステージ」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

泌尿器科の病気

子宮頸がんのステージと関連する病気は上記が挙げられます。ただし子宮頸がんは、自覚症状から気づいて受診する、のでは遅すぎます。定期的な検診で早めに発見できるようにしましょう。

「子宮頸がんのステージ」と関連する症状

「子宮頸がんのステージ」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 性交時に血が出る
  • 下腹部が痛い
  • 匂いのあるおりものが出る

子宮頸がんのステージと関連した症状として上記が考えられます。自覚症状が出ている場合はすでにステージ1以降になっている可能性が0ではありません。早急に婦人科を受診しましょう。

この記事の監修医師