「膣がんのステージ別」の症状・生存率はご存知ですか?【医師監修】
腟がんは、女性生殖器がんの1%程度しか発症しないまれながんです。
しかしながら、初期症状が見られないことが多いため、気がついたときには治療が困難になってしまっているという場合も起こり得る病気でもあります。
そのため、定期的な検診を受けることや体調の変化について敏感になることが必要です。
この記事では、このがんの基本的な知識だけでなく、ステージごとの特徴や症状・治療方法・予後について詳しく解説をします。
腟がんに関する正しい知識を身に付け、適切な対応ができるようになりましょう。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
腟がんとは?
腟がんは、女性の腟(膣)という生殖器の内壁に発生する悪性の腫瘍を指します。腟は子宮の下部から外部の外陰部までの筒状の部分で、腟がんはこの部位の上皮細胞から始まることが多いです。腟がんは、女性の生殖器がんの中ではまれな疾患であり、全がんの中での発生率は低いとされています。
腟がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染です。特に、HPVの中でも高リスク型と呼ばれるものが関与していることが知られています。また、発症が高齢者に多いことから、年齢もリスクファクターとして考えられています。
初期段階では症状がほとんど現れないため、定期的な婦人科検診が非常に重要です。子宮頸がん検診などの検査で見つかることもあるため、がん検診は積極的に受けるようにしましょう。早期発見・早期治療により、予後が大きく向上する可能性があります。
腟がんのステージ分類
腟がんのステージ分類は、がんの進行度や広がりを示すもので、治療方針を決定する際の重要な指標となります。各段階における適切な治療は異なるため、正確にどのような症状にいるのかを把握することは重要です。
その理解のためにも、以下では各ステージの特徴について詳しく解説をします。
ステージ1
ステージ1の腟がんは、腟の一部にのみがんが存在する状態を指します。
この段階では、がんは腟の内壁にのみ広がっている状態であり、他の組織や臓器への広がりは見られません。この段階において発見され、適切な治療を受けた場合には予後が良好とされています。
ステージ2
ステージ2は、がんは腟の周囲の組織に広がり始めていますが、まだ遠隔転移は見られない状態です。この段階でも早期治療が行われれば、良好な結果が期待できます。
ステージ3
ステージ3の腟がんは、隣接する臓器や組織、例えば子宮・膀胱・直腸などへの進行が見られる状態です。この段階では、治療の難易度が上がり、総合的な治療アプローチが必要となります。
ステージ4
ステージ4はさらにA期とB期に分けられます。ステージ4Aは、がんが腟の周囲の組織や臓器に深く広がっている状態です。
それに対して、ステージ4Bでは、がんが肺や骨などの腟から遠く離れた部位にまで転移している遠隔転移が確認される状態です。この状態では、がんが体の他の部位にも広がっているため、集中的な治療や痛みを和らげることを目的とした緩和ケアが中心となる場合があります。
腟がんのステージ別の症状
腟がんの症状は、がんの進行度やステージによって異なります。ここでは、腟がんのステージごとの主な症状を詳しく解説しましょう。
ステージ1の症状
ステージ1の腟がんは、初期段階であるため症状が出にくいことが特徴です。
しかし、一部の患者では、軽度の出血・不正出血・腟のかゆみや痛みを感じることがあります。多くの場合、これらの症状は他の婦人科的疾患と似ているため、注意が必要です。
ステージ2の症状
ステージ2では、がんが腟の周囲の組織に広がり始めるため、症状がより顕著になることがあります。がんが大きくなることによって腟の出血が増えたり、腟が圧迫されることによって排尿時の痛み・腟のしこりや腫れ・性交時の痛みなどが現れることがあります。
ステージ3の症状
ステージ3の腟がんは、隣接する臓器や組織への進行が見られるため、その影響でさまざまな症状が現れる点が特徴的です。具体的には、排尿障害・便秘・下腹部の痛みや腫れ・腰痛などの症状が現れることがあります。
また、腟からの悪臭のある分泌物が増加することもあります。
ステージ4の症状
ステージ4は、がんが体の他の部位にも広がっているため、全身的な症状が現れる段階です。例えば、疲労感・体重減少・食欲不振などの全身症状が現れることがあります。
また、がんが遠隔転移している場合、関連する臓器の症状も現れることがあります。
腟がんの治療
腟がんの主な治療方法は、外科手術・化学療法・放射線治療の3つの方法です。これら3つの治療方法のうちどの治療方法が適切となるかは、がんのステージ・進行度・患者の健康状態などによって異なります。
ここでは、外科手術・化学療法・放射線治療の3つの治療方法について詳しく解説をします。
外科手術
外科手術は、がん細胞を物理的に取り除く方法です。初期の腟がんであれば、局所的にがん組織を切除することで治療が可能です。進行した場合や、がんが大きくなっている場合は、広範囲の組織を切除する必要があります。
進行したステージの腟がんの場合、隣接する臓器(膀胱や直腸など)の一部や全てを切除することも考慮されることがあります。ただし、ステージ3以降において、手術が用いられることはまれです。
化学療法
化学療法は、抗がん剤を使用してがん細胞を攻撃する治療方法です。抗がん剤は、がん細胞の成長や分裂を阻害する作用があります。
化学療法は、手術や放射線治療と併用されることが多く、がんの再発や転移を防ぐために使用されることもあります。また、がんを完治させることを目的に治療するのではなく、痛みを和らげるために治療を行う緩和ケアにおいて用いられる治療法です。
放射線治療
放射線治療は、高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を破壊する治療方法です。放射線によって、がん細胞のDNAを損傷させ、がん細胞の成長や分裂を阻止します。
放射線治療は、ステージ1からステージ4のどの段階でも用いられ、外科手術の前後・手術が困難な場合・化学療法と併用して行われることが多いです。
腟がんの予後
腟がんの予後は、早期に発見され、適切な治療が行われた場合には良好とされています。ただし、発見の時期・ステージ・治療の方法・患者の一般的な健康状態などによって予後は大きく変わります。
例えば、各ステージでの5年後生存率は下記のとおりです。
- ステージ1:75%〜95%
- ステージ2:50%〜70%
- ステージ3:30%〜50%
- ステージ4:0%〜20%
このように、ステージ1では5年後生存率は75%以上となっているのに対して、ステージ4では、20%に達していません。このように、ステージが進むにつれて予後が悪くなっていくため、早期発見・早期治療を行うことが重要です。
腟がんについてよくある質問
ここまで腟がんのステージ分類・ステージ別の症状・治療などを紹介しました。ここでは「腟がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腟がんは予防できますか?
腟がんの主な原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)感染を予防するために、HPVワクチン接種を心がけましょう。日本において小学校6年生から高校1年生は公費負担で接種が可能です。早期の段階で接種することで、高いワクチン効果が期待できます。
腟がんは再発しますか?
膣がんは治療を行っても、再発の可能性があります。多くは2年以内に再発が確認されていますが、5年過ぎても再発が報告されているケースもあります。再発は骨盤内に生じることが多いです。再発後の方針は、再発した時期や行っていた治療方法などから判断し決定します。
編集部まとめ
腟がんは、腟の内壁に発生する女性特有のがんです。
女性生殖器がんの1%程度しか発症しないまれながんではあるものの、初期症状がないことが多く、発見が遅れると予後も悪くなってしまうため油断はできません。
ステージ1では5年後生存率が75%以上と高い生存率であるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。そのため、定期的な婦人科検診を受けるようにしましょう。
腟がんと関連する病気
「腟がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの病気も、腟がんと同様に、早期発見・早期治療が重要です。なにか異常を感じたら怖がらずに、病院の診察を受けることが重要です。
腟がんと関連する症状
「腟がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 出血
- 性交時の痛み
- 腹痛や腰痛
- 排尿時の痛み
- 腟内のしこり
- 便秘
これらの症状は、がんだけでなく、他の婦人科系の疾患にも見られることがあります。これらの症状に少しでも心当たりがあれば早めに病院に行き、相談しましょう。腟がんは早期発見・早期治療が非常に重要です。