「胆嚢がんの生存率」はご存知ですか?ステージ別の生存率・原因も解説!【医師監修】
胆嚢(胆のう)がんは、胆嚢(胆のう)もしくは胆のう管にできた悪性腫瘍のことです。
初期段階では症状がほとんどなく、進行するとさまざまな症状が出ます。早期であれば胆嚢(胆のう)の切除により根治が可能です。
しかし進行度合いによっては、化学療法や放射線療法が必要になる場合もあります。
この記事では胆嚢(胆のう)がんの生存率とあわせ、発症する原因や検査方法・外科手術の方法を解説します。
気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
胆嚢(胆のう)がんとは?
胆嚢内の細胞が悪性化した状態を胆嚢がんと呼びます。胆嚢は肝臓の下に位置し、肝臓で分泌された胆汁を貯留する袋状の器官です。
胆嚢がんは、初期段階では症状がほとんど現れず、進行すると腹痛・黄疸・腹部膨満感などの症状が現れます。
胆嚢がんは進行が早いケースが多いため、定期的な健康チェックや胆嚢のエコー検査などの検査を受けることが重要です。
治療方法は、手術・放射線療法・抗がん剤による化学療法などがありますが、症状やがんの進行状況によって適切な治療方法が選択されます。
胆嚢(胆のう)がんのステージ別の生存率
胆嚢(胆のう)がんのステージは次のように分けられています。
- ステージ1:転移なし
- ステージ2:リンパ節の転移
- ステージ3:リンパ節・肝臓・胆管に転移
- ステージ4:リンパ節・遠い臓器・器官に転移
以下でそれぞれの生存率について解説します。
ステージ1:転移なし
胆嚢内にがんが限局しており転移がない場合はステージ1とされ、手術可能なことがほとんどであり、5年生存率は91.8%です。
ステージ2:リンパ節の転移
リンパ節に転移がみられる場合はステージ2とされますが、手術適応とされるケースが多いです。また5年生存率は64.8%とされています。
ステージ3:リンパ節・肝臓・胆管に転移
リンパ節・肝臓・胆管に転移がある場合はステージ3とされ、がんの大きさ・深達度・血管内への浸潤の有無などによって手術が可能か診断されます。
また5年生存率は51.8%です。
ステージ4:リンパ節・遠い臓器・器官に転移
リンパ節・遠い臓器・器官に転移がみられる場合はステージ4とされ、基本的には手術ができないと診断されます。
またステージ4はa期とb期に分けられ、a期の5年生存率は23.8%、b期の5年生存率は11.1%です。
胆嚢(胆のう)がんの原因
胆嚢がんの原因は明らかとなっていませんが、発生の危険因子には次の3つが挙げられます。
- 胆石症
- 胆嚢腺腫
- 膵胆管合流異常症
1つ目の胆石症とは胆嚢内に結石が発生することを指し、胆汁がうまく排出されない場合に起こる状態です。胆嚢内に結石が存在していることで、胆嚢の炎症や胆嚢壁の損傷につながり、胆嚢がんの一因となります。
2つ目の胆嚢腺腫とは、胆嚢内に腫瘤ができる病変です。がん化しやすいものの場合や、胆嚢腺腫が増大した場合に、胆嚢がんとなるリスクが高まります。
3つ目の膵胆管合流異常症とは、胆管と膵管が十二指腸の外壁で合流する先天性の疾患です。この疾患を有する患者は、胆嚢がんを合併する割合も高いとされています。
胆嚢(胆のう)がんの検査
胆嚢がんの検査には次の3つがあります。
- 血液検査
- 腹部超音波検査
- CT・MRI検査
以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。
血液検査
胆嚢がんに関連する数値である総ビリルビン・ALP・γ-GTPを確認できるものが、血液検査です。
胆嚢や胆管に障害をきたしている場合、これらの数値は上昇するため、数値が正常範囲内であるかの確認が胆嚢がんの早期発見につながります。
腹部超音波検査
腹部超音波検査では、腹部に当てたプローブによって経皮的に臓器の状態を観察できるため侵襲度が低く、検査時間も10分程度と短時間で済むことが特徴です。
胆嚢がんを発見することに役立つ一方で、空気を含む部分は観察しにくいため、転移の有無など体内を詳しく観察したい場合には他の検査も組み合わせて行う必要があります。
CT・MRI検査
CT検査とは造影剤を使用した撮影を行った後、コンピュータ上で体の断面を撮影した数枚の写真を複合して、画像に出力する検査です。
撮影した数枚の写真を連ねることで、患者体内の立体的な目視を可能にします。MRI検査とは専用機械にて体内を撮影し、磁力と電波を利用して、体内を画像化する検査方法です。
これらの検査は、腫瘍の広がりや大きさなどを画像として確認できることが特徴です。
胆嚢(胆のう)がんの治療方法
胆嚢がんの治療方法には次の3つがあります。
- 外科手術
- 抗がん剤
- 放射線
以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。
外科手術
胆嚢がんに対する基本術式は胆嚢摘出術ですが、転移の有無・がんの広がり・がんの大きさなどによって様々な術式を組み合わせて行います。
以下では次の4つの術式を解説します。
- 胆嚢摘出術
- 胆嚢摘出術と肝床切除術を組み合わせた術式
- 拡大右肝切除術
- 拡大右肝切除術と肝外胆管再建術
1つ目の胆嚢摘出術とは胆嚢のみを取り除く手術です。この術式はがんが胆嚢内に限局している場合に選択され、胆嚢炎や胆石症などに対しても行われます。
2つ目の胆嚢摘出術と肝床切除術を組み合わせた術式では、胆嚢の摘出に加え、胆嚢がんが浸潤している肝臓の一部も取り除く手術です。がんが胆嚢内に限局せず、肝臓の一部まで広がっている場合に選択されます。
3つ目の拡大右肝切除術は胆嚢とともに肝右葉(肝臓の右側部分)も切除する方法です。胆嚢がんが肝右葉に広がっているものの、胆管への浸潤はみられないケースで選択されます。
4つ目の拡大右肝切除術と肝外胆管再建術は、拡大右肝切除と一緒に胆管の切除と胆道の再建を行う手術方法です。胆管を切除した場合には胆道の再建が必要となるため、胆嚢がんが胆管まで広がっている場合に行われます。
抗がん剤
抗がん剤を使用する治療方法は化学療法と呼ばれ、がん細胞の成長や転移を抑えるための治療方法です。
化学療法には全身化学療法と局所化学療法の2種類があります。全身化学療法は抗がん剤の体内への投与により、薬剤が血液中を循環して体内に広がるため、全身的に治療できることが特徴です。
特にがんが進行しているケースで用いられ、がん細胞の成長や転移を抑える効果をもたらします。一方で局所化学療法とは、抗がん剤をがん細胞が存在する部位へ直接投与する方法です。
そのため、抗がん剤をがん細胞へ直接投与する局所化学療法は、胆嚢がんの転移等が無い場合の治療に向いています。しかし抗がん剤は正常組織も攻撃するため、副作用が強い点も特徴です。
主な副作用は以下の通りです。
- 貧血
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 便秘
- 口内炎
- 不整脈
- 末梢神経障害
- 腎機能障害
- 血圧低下
- 脱毛
このように抗がん剤治療での副作用は多岐にわたるため、十分に副作用への対策を行った上で治療を進めることが重要です。
放射線
放射線による治療はがん細胞の消失に放射線を用いる治療方法で、外照射と腔内照射の2種類があります。
外照射とは体表面から放射線を当てる方法です。一方で腔内照射とはシーズ・ワイヤ・カテーテルをがんの発生位置に直接留置し、がん細胞へ放射線を照射する方法です。
どちらの方法を選択するかは、胆嚢がんの広がりや転移の有無などによって、変わります。
「胆嚢(胆のう)がんの生存率」についてよくある質問
ここまで胆嚢がんの原因・検査方法・外科手術の方法などを紹介しました。ここでは「胆嚢(胆のう)がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
完治する可能性はありますか?
胆嚢がんは手術をすることで完治を望めます。早期のがんであれば胆嚢のみ切除ですが、進行するがんであれば、胆嚢と周辺の臓器と切除する範囲が広くなります。手術を伴うため長期的な入院生活になり患者さんの負担は大きくなりますが、胆嚢がんを切除できれば完治する可能性はあります。
かからないための予防方法はありますか?
胆嚢がんに限らず、がんの予防は毎日の生活態度を見直すことです。胆嚢がんに限らず、がんの予防は毎日の生活態度を見直すことです。禁煙・節酒・栄養バランスを考えた食事・運動・体重管理・感染症の検査を受け適切な治療や対策をするなどを日頃から守ることで、がんになりにくい身体を目指せます。
編集部まとめ
胆嚢がんは進行してから様々な症状が現れることの多いがんです。
また進行して転移がみられると治療の難易度も上がり、生存率にも影響するため、早期の発見が非常に大切です。
気になる症状がある場合は、迷わず病院を受診しましょう。
胆嚢(胆のう)がんと関連する病気
胆嚢(胆のう)がんと関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血液系の病気
詳しく検査をするまで他の病気と見分けがつきにくいため、気になる症状がある方はまずは内科を受診しましょう。
胆嚢(胆のう)がんの症状と関連する症状
胆嚢(胆のう)がんの症状と関連する症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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- 体全体に熱っぽさがある
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胆嚢にできた悪性腫瘍は見つかった際には進行している場合が多いため、当てはまる症状がある場合は早めに病院を受診しましょう。