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「肝臓がんの余命」はご存知ですか?ステージ別の治療法も医師が徹底解説!

 更新日:2023/10/26
「肝臓がんの余命」はご存知ですか?ステージ別の治療法も医師が徹底解説!

肝臓がんの余命とは?Medical DOC監修医が肝臓がんのステージ別余命・検査・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。

丸山 潤

監修医師
丸山 潤(医師)

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群馬大学医学部卒業。群馬県内の高度救命救急センター救急科及び集中治療科に2022年まで所属。2022年より千葉県の総合病院にて救急総合診療科および小児科を兼務。乳児から高齢者まで幅広い患者層の診療に努める。
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター

「肝臓がん」とは?

肝臓にがんができると「肝臓がん」と呼ばれます。
アルコールや薬剤の解毒する、栄養を吸収できるかたちに変える、といった重要な役割を担っている肝臓。しかし「沈黙の臓器」と呼ばれ、異常があってもはじめのうちは自覚症状が出にくいのが特徴です。
日本で起きる肝臓がんの90%以上は、肝細胞ががん化した「肝細胞がん」であるため、ここでは「肝細胞がん」について説明していきます。
肝細胞がんの原因として、ウイルスなどによる炎症や肝硬変が影響していると言われています。このような病気から肝臓のはたらきが落ちると黄疸、むくみ、かゆみ、だるさなどの症状が現れます。
肝細胞がんは、がんがいくつあるのか、大きさがどれくらいなのか、肝臓の中にある血管などまでがんが広がっているかという項目を用いて、ステージを4つに分けています。
ここからはステージごとの余命と症状や治療についてご説明していきます。

肝臓がんの余命

がんの進行度は「ステージ」で分類され、肝細胞がんは4つのステージに分類します。
がんが進行するほど数字が大きくなります。
日本肝癌研究会によると肝細胞がんのステージ分類は
腫瘍が1つに限られる
腫瘍の大きさが2㎝以下
脈管(門脈、静脈、胆管)にひろがっていない
という3項目が当てはまるかどうかと、リンパ節転移があるか、遠隔転移があるかで分類します。

  • ステージ1は①②③すべてが当てはまり、リンパ節・遠隔転移がともにない
  • ステージ2は3項目のうち2項目が当てはまり、リンパ節・遠隔転移がともにない
  • ステージ3は3項目のうち1項目が当てはまり、リンパ節・遠隔転移がともにない
  • ステージ4はさらにAとBに分類され
  • ステージ4Aは3項目すべての項目が当てはまらず、遠隔転移がない(リンパ節転移は問わない)
  • ステージ4Bは3項目すべての項目が当てはまらず、遠隔転移がある

という、分類になります。

肝臓がん・ステージ1の余命

ステージ1は腫瘍が一つで大きさは2㎝以内、脈管(門脈、静脈、胆管)リンパ節にがんが広がっていない状態です。
この状態の余命(5年相対生存率:がんを発症した患者のうち5年後に生存している人数が、健康な人で5年後に生存している人数に比べてどのくらいの割合か)は、63.0%です。
肝細胞がんはステージごとの症状の区別が難しく、全く症状がない人もいれば、肝細胞がん以前に起こっている肝硬変の影響で黄疸やむくみなどの症状が強く出ている人もいます。
気になる方は健康診断や人間ドッグで、まずは腹部超音波検査、血液検査を受けましょう。必要であれば医療機関に紹介され、CT・MRIなどの画像検査、腫瘍マーカーの検査を受けます。
治療としては、肝臓の切除かラジオ波焼灼療法が選択されます。

肝臓がん・ステージ2の余命

ステージ2はリンパ節転移や遠隔転移はないものの、腫瘍が2つ以上あるか、腫瘍の大きさが2㎝より大きいか、脈管(門脈、静脈、胆管)にまで広がっているかのどれかひとつが当てはまります。この状態の余命(5年相対生存率)は、45.2%です。
ステージ1同様、症状の個人差が大きいです。まだこの頃は自覚症状に乏しい人もいれば、全身のだるさを認める人もいます。
気になる方はステージ1と同様に健康診断や人間ドッグで、まずは腹部超音波検査、血液検査を受けましょう。必要であれば医療機関に紹介され、CT・MRIなどの画像検査、腫瘍マーカーの検査を受けます。
治療は、肝臓の切除のほかに、腫瘍が大きい、もしくはたくさんある場合に、そのがんに栄養を送っている動脈に栓をする塞栓術、肝動脈に直接抗がん剤を注入する動注化学療法、全身への抗がん剤投与などが状態によって選択されます。

肝臓がん・ステージ3の余命

ステージ3はリンパ節転移や遠隔転移はないものの、腫瘍が2つ以上あるか、腫瘍の大きさが2㎝より大きいか、脈管(門脈、静脈、胆管)にまで広がっているかのうち2つが当てはまります。この状態の余命(5年相対生存率)は、16.0%です。
お腹の中に水がたまる腹水や黄疸といった症状が現れる人がいます。白目の部分(眼球結膜)や皮膚が黄色いような場合は消化器内科を受診し、検査を受けましょう。
検査はステージ1・2と同様、まずは血液検査や腹部超音波検査、必要であればCT・MRIなどの画像検査、腫瘍マーカーの検査です。

肝臓がん・ステージ4の余命

ステージ4は腫瘍が2つ以上あり、腫瘍の大きさが2㎝より大きく、脈管(門脈、静脈、胆管)にまで広がっている状態で、リンパ管への転移と人によっては肝臓以外の場所にも転移を認めている状態です。この状態の余命(5年相対生存率)は、4.4%と非常に低いです。特に遠隔転移のあるステージⅣBは根治治療の見込みがほぼないため、がん末期であると言えます。
遠隔転移がある場合、お腹の中に水がたまる「腹水」や「黄疸」といった症状のほかに、肺に転移すれば呼吸困難を、脳に転移すれば手足の麻痺などを引き起こす可能性があります。治療はがんの状態に合わせて抗がん剤投与や肝移植、緩和ケアなどが選択されますが、高齢者であると肝移植の適応になりません。

肝臓がんのステージ別・検査・治療法

肝臓がんの余命ごとの状態について説明してきました。
ここからはステージ別の治療内容や具体的な入院期間、その後のフォローについてご説明していきます。

肝臓がん・ステージ1の検査・治療法

治療は、肝臓の切除かラジオ波焼灼療法が選択されます。
肝切除術を受ける場合には消化器外科に入院し、手術を受けます。
多くの場合は、手術の前日に入院し、夜から絶食となります。翌日肝切除の手術を受けて、経過に問題がなければ約5日前後で退院します。
ラジオ波焼灼療法を受ける場合には消化器内科に入院します。
治療を受ける前日に入院し、治療を受ける日は朝から絶飲食となります。治療後数時間ベッド上で安静にし、経過に問題がなければ約5日前後で退院します。
再発を早期発見するため、治療後は3~6か月ごとの検査のための通院が必要です。

肝臓がん・ステージ2及びステージ3の検査・治療法

治療は、肝臓の切除やがんに栄養を送っている動脈に栓をする塞栓術、肝動脈に直接抗がん剤を注入する動注化学療法、全身への抗がん剤投与などが状態によって選択されます(図1)。
図1

肝細胞がんの状態と治療の選択

ステージ2及びステージ3の場合は上図にある「治療」のうち、左から4つのどれかが選択されます。治療法を選ぶ時の基準はステージングの基準と異なるため、上図のフローを参考に個別で治療方法を決めていきます。もし肝機能(肝予備能)が低い場合はさらに肝移植も検討されます。
肝切除術を受ける場合には消化器外科に入院し、手術を受けます。
多くの場合は、手術の前日に入院し、夜から絶食となります。翌日手術を受けて、経過に問題がなければ約5日前後で退院します。
肝動脈塞栓術を受ける場合には消化器内科に入院し、治療を受けます。
多くの場合は、治療の前日に入院し、翌日の朝絶食となり治療を受けます。経過に問題がなければ約7日前後で退院します。
動注化学療法を受ける場合には消化器内科で治療を受けます。
入院するか、外来通院するかはその方の状態や、がんの状態、病院の方針などから決定します。
抗がん剤(分子標的薬)投与を受ける場合も消化器内科で治療を受けます。内服薬であるため外来通院で治療を行えますが、副作用がつらいなど状態によっては入院となることもあります。
肝移植を受ける場合には移植外科のある病院で治療を受けます。移植前の検査入院も必要となります。実際に肝移植を受けるときは約3か月の入院が必要です。
再発を早期発見するため、治療後は3~6か月ごとの検査のための通院が必要です。

肝臓がん・ステージ4の検査・治療法

治療はがんの状態に合わせて抗がん剤投与や緩和ケアなどが選択されます。緩和ケアを受ける場合には病院に通院もしくは入院します。今まで通っていた医師のもとに通院/入院をする場合もありますが、緩和ケア外来への通院もしくは緩和ケア病棟へ移動といった形で緩和ケア科の医師が主体となり、緩和ケアに重点をおいて療養することもあります。自宅で療養する場合には訪問診療や訪問看護を利用してケアを受けます。

「肝臓がんの余命」についてよくある質問

ここまで肝臓がんの余命などを紹介しました。ここでは「肝臓がんの余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肝臓がんの余命1ヶ月にはどんな症状が現れますか?

丸山 潤医師丸山 潤(医師)

余命一ケ月頃の症状は、肝機能の著しい低下により強い黄疸や、むくみ、お腹にも水がたまることでおきる強いお腹の張り感、激しいかゆみや腹痛がおこります。
肝臓はもともと、体にとって毒のあるものを代謝して体の外に出す機能を持っているため、この機能がおちることにより、脳に毒が溜まり「肝性脳症」と呼ばれる症状が現れることもあります。この状態になると認知症のような症状が出現したり、昏睡状態に陥ってそのまま命を落としたりする可能性があります。

肝臓がんを発症し、黄疸や腹水の症状が現れた場合、余命はどれくらいでしょうか?

丸山 潤医師丸山 潤(医師)

腹水や黄疸がどの程度なのかで状態はさまざまです。肝機能が落ちると腹水や黄疸が出現しますが、それだけで肝臓がんの状態をはかることは難しいため、医師の診察を受けましょう。

編集部まとめ

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。そのため肝細胞がんの初期には症状が乏しいことも多く、なかなか受診まで至りません。しかし、肝機能の低下があれば症状が無くても定期的な健康診断でも気づくことができます。血液検査や負担の少ない腹部超音波検査で評価ができるため、何か気になる症状がある場合はお近くの消化器内科のクリニックにご相談ください。

「肝臓がんの余命」と関連する病気

「肝臓がんの余命」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

肝臓系の病気

腎臓系の病気

  • 腎臓がん

肝臓の病気は進行してから気づくことも多く、日頃の健康診断が気づくきっかけになります。お腹の腫瘤や黄疸の症状を認める場合には早めの受診をお勧めします。

「肝臓がんの余命」と関連する症状

「肝臓がんの余命」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

症状があるときにはその症状が「いつから」「どこに」「どの程度」あったのか記録を取っておくと受診するときに医師に伝えやすくなります。
症状が続く、悪くなっている、範囲が広がっていると思うときにはお近くの医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師