「パーキンソン病の治療」で寝たきりを防ぐ鍵とは?症状と治療中の注意点も医師が解説!

パーキンソン病の治療法とは?メディカルドック監修医がパーキンソン病の治療法・治療で使用される薬・入院期間・治療期間・治療費用や何科へ受診すべきかなどを解説します。

監修医師:
神宮 隆臣(医師)
目次 -INDEX-
「パーキンソン病」とは?
パーキンソン病は、脳内のドパミン細胞が減少することで、運動機能に障害が生じる進行性の神経変性疾患です。主な症状には、手足の震え(振戦)、筋肉の硬直(筋強剛)、動作の遅れ(無動)、姿勢の不安定さ(姿勢保持障害)などがあります。
発症しやすい年齢は50〜60歳とされており、日本では平均寿命の延長および高齢者の増加に伴い、患者数も増加傾向にあります。なお、40歳以下で発症するものは若年性パーキンソン病と呼ばれています。
パーキンソン病の主な治療法
パーキンソン病に対する治療方法について詳しく解説します。
薬物治療
パーキンソン病の基本的な治療は薬物療法です。主に、脳内でドパミンに変換されるL-ドパや、ドパミンの働きを補助するドパミンアゴニストが使用されます。近年では、補助的な位置づけの薬剤が増えてきています。
薬物治療は基本的に外来で行われ、自宅で服用することが可能です。しかし、薬の調整やリハビリテーションと併用するために入院が必要となる場合もあります。
手術療法
薬の効果が不十分な場合には、手術が選択肢に入ります。
代表的な手術として、脳深部刺激療法(deep brain stimulation;DBS)があります。この手術では、淡蒼球や視床下核などの脳の部位に電極を埋め込み、微弱な電気を流すことで症状を抑えます。特に、運動症状や薬の副作用による異常運動(ジスキネジア)を軽減するのに効果が期待できます。
また、L-ドパ持続経腸療法として、胃ろうを造設し、ゲル状のL-ドパ/カルビドパ製剤を持続的に投与する方法もあります。
手術を行う場合は、通常脳神経外科で2~3週間程度の入院が必要となります。
リハビリテーション
薬物や手術に加えて、運動療法を取り入れることで症状の改善が期待できます。
リハビリは、日常生活の動作維持や運動能力の向上を目的とし、患者の状態に合わせたトレーニングが実施されます。パーキンソン病の際に生じる、小声になる症状に対してリハビリテーションすることもあります。
リハビリテーション入院が可能な病院もあり、通常2~4週間程度の期間で実施されることが多いです。
MRガイド下集束超音波治療
近年、脳の神経核を熱凝固させるために超音波を照射する経頭蓋MRガイド下集束超音波治療(magnetic resonance-guided focused ultrasound therapy:MRgFUS)という手法が開発されました。これは、約1000本の超音波ビームを頭の外から標的に集中的に当て、温度を上昇させて凝固させるものです。頭蓋骨に穴を開ける(穿頭)が不要であり、DBSと異なり、刺激装置を体内に埋め込む必要がありません。薬物治療があまり効かないパーキンソン病の振戦症状に対して効果が示されています。現在では、保険適用ともなっています。DBSと違い、片側しか治療できないことや不可逆的変化で治療後に調整できない点などに注意が必要です。
磁気刺激療法・修正型電気痙攣療法
パーキンソン病の治療は、薬物療法や手術療法、リハビリが中心です。しかし、近年磁気刺激療法や修正型電気痙攣療法などについて研究が進んでいます。
例えば、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation (rTMS)によって、運動症状やうつ症状の改善に有効であるとする報告があります。しかし、これは保険適用外となります。効果や副作用について、さらなる検討が必要とされています。
パーキンソン病の治療で使用される薬
薬物治療はパーキンソン病の治療の中心です。使用されるさまざまな薬剤について詳しく見ていきましょう。
L-ドパ(レボドパ)
L-ドパは体内でドパミンに変換されます。そして、ドパミン不足を補うことで症状を改善します。パーキンソン病の運動症状に対して、最も高い効果を示すとされています。日本では、L-ドパ/カルビドパ配合剤とL-ドパ/ベンセラジド配合剤の2種類が利用可能です。
効果が強いことが大きな利点ですが、長期使用によってウェアリングオフ(効果の減衰)やジスキネジア(不随意運動)が現れることがあるため、適切な投与量の調整が重要です。
ドパミンアゴニスト
ドパミン受容体を直接刺激し、ドパミンの不足を補う作用がある薬です。日本では8種類の薬が承認されており、プラミペキソールやロピニロールが代表的です。貼付剤の剤形が設定されている薬剤もあり、経口摂取が不安定な方も使うことができます。
L-ドパより効果は穏やかですが、突発的な眠気(突然眠りに落ちる症状)が副作用として現れることがあります。そのため、服用中は自動車の運転を控えるよう指導されています。
MAO-B(モノアミン酸化酵素B)阻害薬
MAO-B阻害薬(セレギリン・ラサギリン)は、脳内でドパミンを分解する酵素のMAO-B働きを抑制する薬です。脳内のドパミン濃度を維持することで、運動症状の改善に寄与します。
L-ドパと併用することでその効果を延長させることが可能。しかし、ジスキネジアの悪化がみられることもあるため、慎重な調整が求められます。
COMT(カテコール-O-メチル基転移酵素)阻害薬
COMTは、L-ドパを分解する酵素の一つです。COMT阻害薬(エンタカポン・オピカポン)は、この酵素の働きを抑えることで、L-ドパの効果を持続させ、ウェアリングオフを軽減する目的で使用されます。
COMT 阻害薬はL-ドパと併用することで薬の持続時間が延びるため、効果の変動を抑え、より安定した治療が可能になります。
抗コリン薬
抗コリン薬は、アセチルコリンの作用を抑制することで、振戦(手足の震え)を軽減する効果が期待される薬剤です。パーキンソン病の治療法として長年使われてきましたが、認知機能に影響を与える可能性があるため、高齢の方や認知機能が低下している患者には注意して使用する必要があります 。
パーキンソン病の入院期間
基本的にパーキンソン病は外来通院で治療を行います。しかし、入院で治療を行うこともあります。パーキンソン病の入院期間は、治療の内容によっても異なります。
薬物調整目的の場合、1〜2週間の入院でリハビリテーションも同時に行われることがあります。
DBS手術の場合、2〜3週間程度の入院が必要になることがあります。
一度このような入院をしたのちは、外来通院で刺激調整や薬物調整を行なっていきます。また、術後にも、定期的に刺激検査のための入院が必要となる場合もあります。
パーキンソン病の治療期間
治療薬の研究開発の進歩によって、パーキンソン病の方もそうでない方と同じくらいの平均寿命が得られるようになってきています。そのため、パーキンソン病に対しては、生涯にわたって治療をすることが必要です。そして、病状の進行に応じて、治療の見直しをしていくことになります。
パーキンソン病の治療費用
パーキンソン病の治療費用は、使用する薬剤やパーキンソン病の重症度、手術を行うかどうかによっても異なります。
日本で、パーキンソン病の治療に関連する医療費について調べた研究があります。
その研究では、パーキンソン病による外来受診費は、平均約2〜6万円であり、重症度が高くなるほど費用が高くなる傾向がありました。そして、外来医療費の多くは薬剤費が占めており、約1〜4万円となっていました。
手術に関しては、脳刺激装置埋込術は片方の場合65,100点(約70万円)、電極装置が約170万円となります。これに入院費用などが加わり総計200〜300万円程度となると考えられます。
こうした費用に関しては保険診療となるため、加入している医療保険によって負担割合は異なります。また、難病医療費助成制度の対象となる場合もあります。
患者さんそれぞれの病状や年齢などによって、どれくらいの治療費用がかかるかは変わってきます。自己負担額の詳細は、病院の医療相談窓口や自治体の窓口などで確認しましょう。
パーキンソン病治療中の注意事項
パーキンソン病治療中には、以下のことに注意しましょう。
転倒予防
パーキンソン病の方は、姿勢保持障害によって転びやすい状態になっていることがあります。また、パーキンソン病になってからしばらくすると、足のすくみが問題となる場合があります。こうした症状による転倒によって骨折するリスクが高まります。床に物を置かない・手すりを設置するなどの対策をとりましょう。
誤嚥対策
食べ物や飲み物が誤って気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といいます。むせることなどが原因となります。誤嚥によって、肺炎(誤嚥性肺炎)を起こさないような工夫が大切です。例えば、ゆっくりとよく噛んで食べるようにすることや、食べ物にとろみをつけることなどがあります。
便秘対策
パーキンソン病の方は、便秘になりやすいです。そのため、便秘予防が重要です。食物繊維を適度にとり、水分補給を心がけるようにしましょう。それでも改善が乏しいときは、病院で相談し、内服治療をしましょう。それでも排便のコントロールが難しいこともあります。排便は、週に2回以上あるように気をつけましょう。
運動
運動も健康を維持するために必須です。1日8000歩を目安に散歩したり、ストレッチをしたりすることがあります。歩数などは自分の体調や体力に合わせて調整しましょう。転倒に気をつけながら、適度な運動を心がけましょう。
服薬管理
パーキンソン病治療においては、運動、睡眠、食事、薬が基本事項となります。
服薬は治療の中でも特に重要です。特に、パーキンソン病の方は複数の薬を内服していることもあります。飲み忘れを防ぐために、タイマーの利用も良いでしょう。長期間にわたり自己中断すると悪性症候群という重篤な副作用を来すこともあるので、自己判断で中止しないように注意が必要です。
「パーキンソン病の治療」についてよくある質問
ここまでパーキンソン病の治療などを紹介しました。ここでは「パーキンソン病の治療」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
パーキンソン病を発症してから、どれくらいで寝たきりになりますか?
神宮 隆臣 医師
パーキンソン病は進行性の病気で、患者さんごとに進行の速さは異なります。しかし、平均余命は一般の方より2〜3年短いと言われています。ただし、高齢者の方は脱水や栄養障害などが起こりやすいので気をつける必要があります。過去には発症してから5年で寝たきりになると言われていましたが、現在では効果的な治療が開発されてきました。適切な治療とリハビリによって、一般の方と同じくらいに長期間自立した生活を送ることは可能となってきています。
まとめ
パーキンソン病は進行性の神経疾患ですが、適切な治療により生活の質を維持することができるようになってきました。治療の中心は薬物療法で、必要に応じてDBS手術も選択肢となります。生活習慣の改善やリハビリが、症状の進行を遅らせるために重要です。
「パーキンソン病」と関連する病気
「パーキンソン病」と関連する病気は14個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
脳神経内科系の病気
- 進行性核上性麻痺
- 大脳皮質基底核変性症
- 多系統萎縮症
- 薬剤性パーキンソニズム
- 脳血管性パーキンソニズム
- レビー小体型認知症
- アルツハイマー病
- ハンチントン病
パーキンソン病に関連する病気としては、パーキンソン病でみられる症状(パーキンソニズム)を示すものや、パーキンソン病に合併しておこるものがあります。
「パーキンソン病」と関連する症状
「パーキンソン病」と関連している、似ている症状は20個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
パーキンソン病のサイン
- 振戦
- 筋強剛
- 無動
- 姿勢保持障害
- 小刻み歩行
- すくみ足
- ジスキネジア
- ウェアリングオフ
- 嗅覚低下
- 幻視
- 幻覚
- 倦怠感
- 小声
- 書字障害
- 体の痛み
- ヨダレが出やすい
パーキンソン病は運動症状だけでなく、非運動症状も多くみられるため、総合的な治療・ケアが重要です。



