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「隠れ脳梗塞」の原因やなりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2024/11/14
「隠れ脳梗塞」の原因やなりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!

隠れ脳梗塞とは?Medical DOC監修医が隠れ脳梗塞の症状・原因・発症しやすい人の特徴・セルフチェック法・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

「隠れ脳梗塞」とは?

隠れ脳梗塞とは症状が全くでない脳梗塞のことであり、脳ドックなどで思いがけず発見されることがあります。前頭葉は思考や判断、感情のコントロール、運動などに関わる機能、後頭葉は視覚に関わる機能、側頭葉内側は記憶に関わる機能というように、脳の機能は部位・領域ごとで異なります。そのため、脳梗塞を発症すると手足が動かなくなったり(麻痺)、うまく話せなくなったり(構音障害・失語)、しびれなど感覚の異常がみられたり(感覚鈍麻・異常感覚)、視野が欠けたり(視野欠損)します。脳梗塞を発症した部位に応じた症状が出現しますが、機能的に重要性の高い部位でない場合や、脳梗塞の病変が小さい場合には症状がみられないことも少なくありません。このように症状がみられず偶発的に発見される脳梗塞を隠れ脳梗塞といいます。
Cardiovascular Health Studyでは隠れ脳梗塞がある人では、ない人と比較して年間の脳梗塞発症率が2倍になったとの報告があり、別の研究では隠れ脳梗塞があると脳卒中の発症リスクが4倍になったとの報告もあります。また認知症を合併するリスクが高くなることも報告されており、見つかった場合には注意が必要な疾患です。

「隠れ脳梗塞」と「脳梗塞」の違いは?

前述のように隠れ脳梗塞とは症状のない脳梗塞のことであり、症状の有無が主な違いとなりますが、隠れ脳梗塞と脳梗塞では治療方針にもやや違いがあります。
脳梗塞とは脳に血液を送る動脈に血栓などの塞栓物が詰まったり、動脈硬化や動脈解離により血管が狭くなったりすることで、脳細胞に十分な血流が送られずに脳細胞が壊死してしまう疾患であり、発症した場合には原因検索を行い、抗血栓療法(血液サラサラの薬)を含む病態に応じた再発予防が必要となります。
隠れ脳梗塞でも微小血管障害などの脳梗塞を起こすような背景があると想定され、今後に脳梗塞や認知症を発症するリスクが高くなるため、脳梗塞に準じたリスク評価や再発予防のための治療を行うことが望ましいと考えられていますが、抗血栓療法の有用性は確立されておらず、多くの場合は血圧管理などを中心とした治療を行うこととなります。

見落とされやすい脳梗塞の症状

隠れ脳梗塞は症状のない脳梗塞です。しかし、隠れ脳梗塞と判断された人の中には、実際は症状があったにも関わらず、自身・周囲が気づかずに隠れ脳梗塞と判断されていたケースもあります。
実際に脳梗塞による症状であったかどうかの判断はMRIなどの画像所見と合わせての評価が必要であり、脳神経内科や脳神経外科などの専門診療科でなければ、判断するには難しいと思われます。ここでは見落とされやすい脳梗塞の症状についてご説明します。

認知機能低下

脳梗塞の症状として最も見落とされやすい症状は認知機能低下です。認知機能低下は徐々に悪化していたとしても、本人・周囲ともに自覚しづらく、特に高齢者ではアルツハイマー型認知症や加齢性認知症などその他の原因でも認知機能の悪化は起こるため、脳梗塞の症状として気づかれにくくなりがちです。
ある日からおかしな発言がみられるようになった、物忘れがひどくなったなど、急性に認知機能が悪化して続く場合には脳梗塞の症状の可能性があり、注意が必要です。

歩行障害・軽度の麻痺

軽度の麻痺による歩行障害も見落とされることのある症状です。
高齢者では長距離歩行が難しいなど普段から歩行に対しての不安のある方が多く、発熱などにより歩行が困難になったことを経験されている方も少なくありません。
そのため、起床時などに下肢の脱力がみられた場合も年齢のせいと判断して脳梗塞を疑わない場合が少なくありません。
左右どちらかの脱力を自覚した場合には脳梗塞による症状の可能性があるため、注意が必要です。

隠れ脳梗塞の主な原因

隠れ脳梗塞は造影CTやMRIなどでは描出されない微小血管の障害を原因とする脳梗塞(ラクナ梗塞)が多いといわれており、高血圧が最大のリスク因子として知られています。
その他に2型糖尿病や高コレステロール血症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病、肥満などで発症しやすく、睡眠時無呼吸症候群、心房細動、慢性腎不全、軽動脈狭窄などで発症リスクが高くなるといわれています。

高血圧

高血圧はこれまでの複数の疫学研究で隠れ脳梗塞の最大のリスク因子として報告されています。また、薬物療法を含む積極的な医療介入を行い、血圧を120/80mmHg未満とすることで、隠れ脳梗塞や心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントの発症リスクが低くすることができるといわれています。

糖尿病・高コレステロール血症・メタボリックシンドローム

糖尿病や高コレステロール血症のある方、メタボリックシンドロームの方では隠れ脳梗塞を持つ方の割合が多いことがしられています。
糖尿病や高コレステロール血症などにより動脈硬化が進むと高血圧も合併しやすくなり、慢性腎不全や頸動脈狭窄などのその他のリスクとなる疾患も発症しやすくなります。また、肥満などにより睡眠時無呼吸症候群となれば、さらに心血管イベントのリスクが高まります。
バランスの取れた適度な食事、適度な運動などを行い、生活習慣を適切に保つことが重要です。

心房細動

心房細動は脳梗塞の大きな要因の一つであり、隠れ脳梗塞の原因になることもあります。心臓には全身から血液を受け取る右心房、肺に血液を送り出す右心室、肺から血液を受け取る左心房、全身に血液を送り出す左心室がありますが、心房細動では全身や肺から血液を受け取る心房が痙攣してしまうような状態となり、心房内に血液が滞留して血栓(血の塊)を作りやすくなります。この血栓がちぎれて飛んでいくことで脳血管を閉塞して脳梗塞を発症します。
心房細動の出現時には頻脈となって動悸を自覚することも多いですが、自覚症状がない場合もあるため、注意が必要です。

隠れ脳梗塞になりやすい人の特徴

隠れ脳梗塞は前述のように生活習慣病、特に高血圧のある方で発症しやすいことが知られています。塩分摂取量が多い、偏った食生活や過食をしている、運動をあまりしない、肥満があるなどの人では高血圧や糖尿病などの生活習慣病を罹患している可能性も高く、隠れ脳梗塞も発症しやすいと考えられます。

塩分摂取が多い

隠れ脳梗塞の一番の危険因子は高血圧であり、塩分摂取量が多いと高血圧となりやすく、隠れ脳梗塞のリスクが高くなります。減塩の調味料を使う。ラーメンなどのスープはあまり飲まないなど、出汁や酢などの食塩以外での味付けを行うなど、6-8g/日を目標とした減塩を心がけましょう。

メタボリックシンドローム・肥満

メタボリックシンドローム、肥満の人では隠れ脳梗塞を発症しやすいことが報告されています。メタボリックシンドロームや肥満の方では糖尿病や高コレステロール血症などの生活習慣病も併発していることが多く、また末梢性睡眠時無呼吸症候群も併発しやすいため、隠れ脳梗塞に限らず、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントのリスクも高くなります。
食事は食べすぎずに適量とし、適度な運動を行うことが重要です。

喫煙をしている

喫煙が隠れ脳梗塞の要因となることも報告されています。喫煙量が増えるにしたがって隠れ脳梗塞も増えることも指摘されており、喫煙者では早期の禁煙が望ましいと考えられます。

健康診断を受けていない、高血圧などを放置している

高血圧は隠れ脳梗塞の一番のリスク要因とされており、高血圧の状態が続くことで発症しやすくなります。適切な血圧管理を行うことで隠れ脳梗塞の発症や悪化のリスクを下げることができると言われています。
健康診断を定期的に受け、高血圧が指摘される場合には生活習慣の改善とともに適切な治療を受けるようにしましょう。

隠れ脳梗塞のセルフチェック法

隠れ脳梗塞は症状がないことが特徴の脳梗塞であり、見つけるためには脳ドックなどで頭部の画像評価を行う必要があります。隠れ脳梗塞はセルフチェックで気づくことは困難ですので、ここでは気づきづらい脳梗塞の症状やそのセルフチェック法について説明します。
気になる症状がある場合には脳神経内科や脳神経外科を受診しましょう。

記憶力や情報処理能力の低下

記憶力や情報処理能力などの認知機能の変化は見落とされやすい症状の一つです。クロスワードや数独などの知育パズルを解く、カレンダーなどを見ずに予定を思い出してみるなどで、情報処理能力や記憶力をチェックすることができます。急にパズルが解けなくなったり、記憶力が落ちたりした場合には脳梗塞の可能性があります。

軽微な脱力

脱力が軽微な場合には症状に気づけない場合があります。手足を挙上・保持して手足が下がってこないか、普段通りに歩行ができるか、話し方はおかしくないかなどを確認しましょう。左右のどちらかのみに脱力がある場合、症状が突然出現した場合には脳梗塞の可能性があります。

構音障害・失語

普段からあまり会話する機会が少ない方は、話しにくさや声がうまく出せないなどの症状があっても気づかないことがあります。家族や友人と電話するなど、周囲の方との交流を増やすことが望ましいですが、文章を音読する、発声練習をするなどにより、声がうまく出せるか、音のゆがみがないかなどをセルフチェックすることができます。

隠れ脳梗塞を予防する方法

減塩・適切な量のバランスのとれた食事

隠れ脳梗塞の一番のリスクは高血圧です。アジア人では特に塩分を摂取することで血圧が高くなる人(食塩感受性高血圧)が多いとされており、隠れ脳梗塞の予防には1日6-8gを目標とした減塩が重要です。また、肥満や糖尿病、高コレステロール血症などの生活習慣病も隠れ脳梗塞のリスクであり、適切な量のバランスのとれた食事を行うことで隠れ脳梗塞を予防することができます。

適度な運動

1日30分以上のウォーキングなどの適度な運動は肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防になるとともに、隠れ脳梗塞の予防にもなります。また、筋力や骨量の維持などにも役立ち、特に高齢者においては運動機能を維持するためにも重要ですので、転倒などに気を付けつつ積極的に取り組みましょう。

禁煙

喫煙は肺を傷害して慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因になったり、動脈硬化を悪化させる要因になったりするだけでなく、隠れ脳梗塞も増加させることが知られています。1日に喫煙する本数が多いほど、喫煙している期間が長いほど隠れ脳梗塞は発症しやすくなるとの報告もあり、喫煙している場合には早期の禁煙が望ましいです。

「隠れ脳梗塞」についてよくある質問

ここまで隠れ脳梗塞などを紹介しました。ここでは「隠れ脳梗塞」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

隠れ脳梗塞は何人に一人の割合で発症するのでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

島根県で行われた研究では隠れ脳梗塞は40歳未満ではほとんど見られず、年代ごとの発症率は40歳代で5%程度、50歳代で10%程度、60歳代で20%程度、70歳代で30%程度と加齢に従ってほぼ直線的に増加すると報告されています。50歳を越えたら10人に1人以上の割合で隠れ脳梗塞を発症していることから、症状がなくとも脳ドックなどで検査を受けることが良いでしょう。

隠れ脳梗塞はMRI検査で発見することはできるのでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

はい、その通りで、隠れ脳梗塞はMRI検査で発見することができます。一方で、CT検査はMRI検査と比べて濃度分解能が劣るので、隠れ脳梗塞を見つけられない可能性があります。

編集部まとめ

隠れ脳梗塞はその病気自体には症状はありませんが、隠れ脳梗塞がある方では脳卒中の発症率が4倍、認知症の発症率が2倍になるとの報告があり、注意が必要な病気です。
脳ドックなどでの画像検査で偶然発見されますが、40歳以降で発見されることが多くなり、50歳代では10人に1人、60歳代では5人に1人で発見されます。高血圧などの生活習慣病のある方で発見されやすく、発見された場合も血圧コントロールなどの適切な治療を受けることで、隠れ脳梗塞の増加や脳卒中、認知症の発症を予防することが可能です。40歳を越えたら脳ドックなどを定期的に受け、早期発見・早期治療を心掛けることが重要です。

「隠れ脳梗塞」と関連する病気

「隠れ脳梗塞」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内科の病気

脳神経内科・脳神経外科の病気

  • 一過性脳虚血発作
  • 内頚動脈狭窄症

循環器内科の病気

  • 心房細動

隠れ脳梗塞がある場合には脳卒中や認知症の発症率が高くなる可能性があるため注意が必要です。高血圧などの生活習慣病のある方で見つかりやすいのですが、血圧コントロールなどの適切な治療を受けることで、隠れ脳梗塞の増加や脳卒中、認知症の発症を予防することもできると言われています。

「隠れ脳梗塞」と関連する症状

「隠れ脳梗塞」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

隠れ脳梗塞、というくらいなので自覚する症状はほとんどないと思いますが、振り返れば軽く症状が出現していたということもあるかもしれません。脳梗塞は再発予防が重要ですので、もし隠れ脳梗塞が見つかったら、脳梗塞再発や他の病気の発症予防にしっかりと対策をしていくようにしましょう。

この記事の監修医師