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「脳卒中の手術」は”成功しても完全回復”しない?費用・後遺症・予防のコツも医師が解説!

 公開日:2026/03/24
「脳卒中の手術」は”成功しても完全回復”しない?費用・後遺症・予防のコツも医師が解説!

脳卒中の手術内容とは?メディカルドック監修医が脳卒中の手術内容・費用・手術後の後遺症を解説します。

㮈本 悠嗣

監修医師
㮈本 悠嗣(医師)

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【経歴】
奈良県立医科大学医学部卒業後、市立奈良病院で初期臨床研修を修了。神戸市立医療センター中央市民病院救急科専攻医、同院脳神経外科専攻医を経て、2024年大阪大学大学院脳神経外科専攻に進学。救急専門医、脳卒中専門医、脳神経血管内治療専門医、脳神経外科専門医。救急医療から脳神経外科領域まで幅広い診療経験を積む。脳卒中や脳血管障害の高度専門治療・研究に従事し、患者さん一人ひとりに寄り添った医療の提供を目指している。

「脳卒中」とは?

脳卒中は、脳の血管に異常が生じることで脳組織が障害を受ける疾患の総称です。ちなみに、卒中という言葉は、「卒然にして中たる」という意味で、“突然襲われる”、“突然発症する”という意味です。脳卒中は、日本人の死因第4位、要介護の第1位を占める重要な疾患であり、発症後は迅速な診断と適切な治療が必要となります。
脳卒中は大きく分けて「虚血性脳卒中」と「出血性脳卒中」の2つに分類され、それぞれ異なる病態と治療法があります。

虚血性脳卒中とは?

虚血性脳卒中は、脳の血管が詰まることで脳組織への血流が途絶え、酸素や栄養が供給されなくなることで起こる脳卒中です。全脳卒中のうちの四分の三を占め、一般的には「脳梗塞」と呼ばれます。脳梗塞が起こる原因により「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」に分類され、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、心房細動などが主な危険因子となります。生活習慣病を背景とするものから、心房細動などの自覚症状がないものなど原因は多岐にわたります。中でも心原性脳塞栓症は、その名の通り、心房細動など心臓が原因となりますが発症時の症状が比較的重く、いわゆるノックアウト型の病状で、後遺症も重くなりがちです。自覚症状がない心房細動などについては心電図などの検診異常を拾い上げる必要があり、高齢になって検診にいかれない方でも可能であれば検脈、自分で自分の脈を測ることで気づくこともありオススメです。

出血性脳卒中とは?

出血性脳卒中は、脳の血管が破れて出血することで起こる脳卒中です。全脳卒中の約25%を占め、「脳出血」と「くも膜下出血」に大別されます。脳出血は脳実質内での出血、くも膜下出血は脳表面を覆っている“くも膜“という膜の下にあるスペースである、”くも膜下腔“での出血を指します。高血圧が最も重要な危険因子であり、その他に脳動脈瘤、脳動静脈奇形、抗凝固薬の使用なども原因となります。生活習慣病の上達も大事ですが、血のつながった方にくも膜下出血の方がおられる場合には遺伝の影響があるとも言われております。そのため、ご心配な方であれば、脳ドックなどを受けていただき、脳動脈瘤の発見および破裂の予防につなげることが大事と考えられます。

虚血性脳卒中の手術内容

機械的血栓回収療法

機械的血栓回収療法は、脳の太い血管に詰まった血栓を物理的に除去する手術です。カテーテルを用いて血管内から血栓を回収する血管内治療で、発症から8時間以内(条件により24時間以内)に行うことで高い効果が期待できます。通常は、局所麻酔下で、太ももの付け根の動脈からカテーテルを挿入し、脳血管まで到達させて血栓を回収します。入院は必須で、通常2-4週間程度の入院期間が必要となります。発症からの時間と症状の重症度が大事になってきます。発症早期であればあるほど症状の改善に寄与することがわかっているので、受診について迷うような症状でも医師への相談が大事になってきます。特に、大きな血管が詰まったときの症状として、片麻痺、失語、意識障害、偏視などの症状が典型的ですのでそういった危険な症状がある場合にはより早急な対応が必要になります。

頚動脈内膜剥離術(CEA)

基本的には急性期に行う治療ではなく、脳梗塞の“予防のための”手術です。この手術は、頚動脈の狭窄部分を外科的に切開し、動脈硬化により厚くなった内膜とプラークを除去する手術です。全身麻酔下で頚部を切開し、頚動脈を露出させて狭窄の原因となっている内膜を剥離除去します。手術時間は4-5時間程度で、術後は集中治療室での管理が必要です。入院期間は通常1-2週間程度となります。この治療を行う前に、治療適応を判断するために、検査入院なども必要となってきます。

頚動脈ステント留置術(CAS)

頚動脈ステント留置術は、狭窄した頚動脈にステント(金属製の筒状の器具)を留置して血管を拡張する血管内治療です。局所麻酔下で太ももの付け根からカテーテルを挿入し、頚動脈の狭窄部位にステントを留置します。先程のCEAに比べて侵襲が少なく、高齢者や手術リスクの高い患者にも適応可能です。入院期間は通常1週間程度です。CEA同様術後の管理が厳密に必要となる方もおられるのでそのような場合にはより長い期間の入院が必要となることもあります。

バイパス術(外頚動脈内頚動脈吻合術)

バイパス手術は、頭皮の血管(浅側頭動脈)と脳表面の血管(中大脳動脈)を吻合し、新たな血流路を作る手術です。もやもや病や主幹動脈の慢性閉塞などで適応となります。全身麻酔下で開頭手術を行い、顕微鏡下で血管吻合を行います。手術時間は4-6時間程度で、術後は集中治療室での管理が必要です。入院期間は2-3週間程度となります。こちらも術前の検査や治療適応も含めて検査入院が多くは必要となってきます。脳の血流の評価やつなぐ血管の情報などを丁寧に調べて手術を行います。

開頭外減圧術

広範囲な脳梗塞により脳浮腫が生じ、頭蓋内圧が上昇した場合に行う救命的手術です。脳実質は、頭蓋骨に囲われており、脳の体積は年齢性の萎縮に伴って減少しますが、脳梗塞が起こり、脳の浮腫が起こると、体積が一時的に増加します。それに伴い頭蓋骨内で脳梗塞に陥っていない脳を圧迫し、生命の危機にさらされることが起こります。その際に、頭蓋骨の一部を除去して脳の圧迫を解除します。全身麻酔下で通常の開頭手術よりも大きく開頭し、硬膜を切開して脳の膨張による重要な脳の部分である脳幹に対する圧迫を防ぎます。除去した頭蓋骨は後日再建手術で戻します。生命予後の改善が期待できますが、重度の後遺症が残ることも多く、リハビリなどを含めると入院期間は数か月に及ぶことがあります。また、脳卒中ガイドラインでの高い推奨としては年齢が18~60歳で発症からの48時間以内の方を対象とされており、機械的血栓回収療法と同様に発症から手術加療までの時間が制限されている点に注意が必要です。

出血性脳卒中の手術内容

開頭血腫除去術

脳出血に対する開頭血腫除去術は、頭蓋骨を開いて脳内の血腫を直接除去する手術です。脳出血と言っても全例に適応になるわけではなく、出血の部位や出血量および患者さんの意識状態などを考慮して手術を行います。全身麻酔下で開頭し、顕微鏡下で慎重に血腫を吸引除去します。出血源の止血も同時に行います。手術時間は2-4時間程度で、術後は集中治療室での管理が必要です。入院期間は通常1-2か月程度となります。後遺症が残る場合も多く、リハビリ期間を要することが多いです。

内視鏡的血腫除去術

内視鏡を用いて小さな開頭創から血腫を除去する低侵襲手術です。全身麻酔下で小開頭を行い、内視鏡を挿入して血腫を吸引除去します。開頭血腫除去術に比べて手術侵襲が少なく、回復も早い傾向があります。適応は限定的ですが、高齢者や全身状態の悪い患者にも施行可能です。入院期間は通常1-2ヶ月程度です。

開頭クリッピング術

くも膜下出血の原因となった脳動脈瘤に対し、開頭してチタン製のクリップで動脈瘤の頚部を閉塞する手術です。全身麻酔下で開頭し、顕微鏡下で動脈瘤を露出させ、クリップで動脈瘤を閉塞します。確実な治療効果が期待できる標準的治療法です。手術時間は3-6時間程度で、術後は集中治療室での厳重な管理が必要です。入院期間は通常2~3週間となります。

コイル塞栓術

カテーテルを用いて脳動脈瘤内にコイルを充填し、動脈瘤を閉塞する血管内治療です。全身麻酔下で太ももの付け根からカテーテルを挿入し、脳動脈瘤内にプラチナ製のコイルを詰めて血流を遮断します。開頭手術に比べて侵襲が少なく、高齢者や全身状態の悪い患者にも適応可能です。入院期間は通常1~2週間程度です。

脳室ドレナージ術

脳出血やくも膜下出血により水頭症を合併した場合に行う手術です。局所麻酔下で頭蓋骨に小さな穴を開け、脳室内にドレナージチューブを挿入して髄液を体外に排出します。緊急的に頭蓋内圧を下げることができ、意識レベルの改善が期待できます。その後の根本的治療までの橋渡し的治療として重要です。入院期間は原疾患の治療期間に依存します。

脳卒中の手術費用

脳卒中の手術費用は、術式や入院期間、使用するデバイス(ステントやコイルなど)によって大きく異なります。一般的に、カテーテル治療や開頭手術は数百万円単位の医療費がかかりますが、日本では「高額療養費制度」が適用されるため、個人の所得に応じた自己負担限度額以上の支払いは免除されます。具体的な費用については、各医療機関の窓口で確認することが重要です。

脳卒中の手術後の後遺症

運動麻痺

脳卒中後の最も一般的な後遺症で、手足の筋力低下や完全麻痺が生じます。損傷部位により片麻痺(半身の麻痺)となることが多く、日常生活動作に大きな支障をきたします。リハビリテーションにより改善する可能性はありますが、完全回復は困難な場合が多いです。発症後は早期からのリハビリテーション開始が重要で、装具や福祉用具の活用も必要となります。脳出血などの患者さんは特に、発症時にすでに脳実質が損傷を受けてしまっており、それにより様々な症状を呈して救急搬送されます。その際に、よく手術をしたら治りますか?という質問を受けますが、基本的に脳実質のダメージは永続的に残ることが多く、我々脳神経外科医が手術をするということはその多くが後遺症は残るけれども命は助かるように手術することが多く、仮に手術が僕らにとって成功に終わっていても、症状が完全に回復するものでではないということを知っておいてほしいです。

言語障害

失語症(言葉が理解できない、話せない)や構音障害(ろれつが回らない)などの言語障害が生じることがあります。左脳の言語中枢が障害されると失語症となり、コミュニケーションに大きな支障をきたします。言語聴覚士によるリハビリテーションで改善が期待できますが、完全回復は困難な場合もあります。家族の理解と協力、代替的コミュニケーション手段の活用が重要です。運動麻痺同様、症状を助けるような器具を用いながら日常生活に慣れていくことが多いのですが、この症状も生活の質を大きく下げうる後遺症とされています。

高次脳機能障害

注意力、記憶力、判断力などの認知機能が低下する障害です。様々な機能の障害が含まれており、人間の能力と猿などの動物との能力との差の部分と言えるかと思います。言葉の使用や道具の使用、感情の表出や伝達、計算や描画など様々な機能が含まれています。他の後遺症と違って、外見上は分かりにくいため他人には理解されにくい「見えない障害」とも呼ばれ、社会復帰の大きな障害となります。リハビリテーションや認知訓練により一定の改善は期待できますが、完全回復は困難です。環境調整や代償手段の活用、周囲の理解とサポートが不可欠となります。

嚥下障害

食べ物や飲み物を飲み込む機能が障害され、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。重度の場合は経管栄養や胃瘻造設が必要となることもあります。言語聴覚士による嚥下訓練で改善する可能性はありますが、高齢者では回復が困難な場合も多いです。食事形態の工夫、姿勢の調整、口腔ケアの徹底などが重要となります。

感覚障害

触覚、痛覚、温度覚などの感覚が低下または消失する障害です。しびれや異常感覚を伴うこともあります。感覚障害自体は生命に直接関わりませんが、外傷や熱傷のリスクが高まります。先程の高次機能障害同様、他人には症状が理解されにくい障害であること、また永続的に症状が残存することが多く、完全回復は困難な場合が多い後遺症です。特に、視床痛と言って脳の視床という部分の脳梗塞や脳出血の後遺症として挙げられる感覚障害の一種では、日常動作でどんなことをしているときであっても気になるような痛みが一生患者さんを悩ませるとされています。これは、他人にはわからない症状で、なおかつ患者さんの生活の質を大きく下げる後遺症として有名で、いろいろな鎮静薬を使用して困っておられる方が多くおられます。また、感覚障害への対策としては視覚での確認や保護具の使用、環境整備などの工夫が必要となります。

「脳卒中の手術」についてよくある質問

ここまで脳卒中の手術などを紹介しました。ここでは「脳卒中の手術」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

脳卒中を発症し、手術ができないことはありますか?

㮈本 悠嗣医師㮈本 悠嗣(医師)

はい、脳卒中を発症しても手術ができない場合があります。主な理由として、①発症から時間が経過しすぎている場合(虚血性脳卒中では治療可能時間を超過していると治療のメリットよりデメリットが上回ることが多いです)、②全身状態が極めて不良で手術に耐えられない場合、③脳の損傷が広範囲で手術効果が期待できない場合、④出血傾向が強く手術リスクが高い場合、⑤高齢で認知症などの合併症がある場合などが挙げられます。このような場合は、保存的治療(薬物療法やリハビリテーション)が中心となります。

まとめ

脳卒中は迅速な診断と適切な治療により、予後が大きく改善する可能性がある疾患です。手術療法は脳卒中治療の重要な選択肢であり、病型や病態に応じて様々な手術法が選択されます。しかし、手術を行っても元の状態に戻るということはなく、術後に後遺症が残ることが多く、長期的なリハビリテーションが必要となります。脳卒中の発症予防が最も重要であり、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの危険因子の管理、禁煙、節酒、適度な運動、バランスの良い食事など、生活習慣の改善が不可欠です。また、脳卒中を疑う症状(顔面麻痺、腕の脱力、言語障害など)が現れた場合は、一刻も早く救急要請することが、良好な転帰につながります。また、くも膜下出血に関しては、家族歴がある方(血縁のある方の二人以上に動脈瘤があるかたなど)の頭部MRIでの動脈瘤の検索などは可能であれば行っていただくとより効果的な予防ができると考えています。

「脳卒中」と関連する病気

「脳卒中」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

内科系の病気

脳神経系の病気

脳卒中は脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に大きく分けられます。これらの脳卒中の発症には、脳内の病気や生活習慣病など様々な病気が関連しています。

「脳卒中」と関連する症状

「脳卒中」と関連している、似ている症状は12個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

脳卒中のサイン

  • 突然の激しい頭痛
  • 片側の手足が動かない
  • 片側の手足がしびれる
  • 顔の動きが悪い
  • ろれつが回らない
  • 言葉が出にくい
  • ふらつき
  • ぼんやりとしている
  • 片方の目が見えにくい
  • 視野が欠ける
  • 飲み込みづらい

これらの症状は、脳卒中以外の病気でも見られることがありますが、特に突然現れた場合は脳卒中の可能性を疑い、すぐに病院を受診することが必要です。

参考文献

  • 脳卒中治療ガイドライン 2021 [改訂2025]

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