「レビー小体型認知症で突然死する前兆症状」はご存知ですか?医師が徹底解説!
レビー小体型認知症で突然死する前兆にはどんな症状がある?Medical DOC監修医がレビー小体型認知症で突然死する前兆・発症しやすい人の特徴・原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
神宮 隆臣(医師)
目次 -INDEX-
「レビー小体型認知症」とは?
レビー小体型認知症は、その名の通り認知症を引き起こす病気のひとつです。レビー小体が脳や神経に蓄積することで発症するといわれています。明確な治療法はなく、症状を和らげる治療を行います。
認知症の代表例でありアルツハイマー型認知症に比較して、物忘れが目立たないこともあります。そのかわり、認知機能が変動することがあります。加えて、幻視や睡眠中の異常行動、手足の筋緊張が高まって、動かしにくくなるなどの症状が併発します。
幻視は、まるでそこに居るような、鮮明な幻視であることが主です。
睡眠中の異常行動は、レム睡眠行動異常症といいます。正常のレム睡眠では、脳は活発に働いていますが、体には指令伝わらず、休んでいる状態を維持しています。この時に我々は夢を見ます。レム睡眠行動異常症では、体への指令が伝わってしまい、叫んだり、体が動いたりしてしまいます。レビー小体型認知症の発症よりも前から出現していることがあります。
手足の筋緊張が高まって、動かしにくくなる症状は、パーキンソン病に代表されるパーキンソニズムという症状群です。レビー小体型認知症もパーキンソン病に関連する病気とされています。
レビー小体型認知症で突然死する前兆症状
レビー小体型認知症で突然死することは稀ですが起こりえます。原因は特定されていませんが、想定される前兆症状をお話していきます。総じて病状の進行に伴うものです。
起立性低血圧
レビー小体型認知症が進行してくると自律神経症状が目立つようになります。自律神経症状の中でも起立性低血圧は目立ちやすい症状です。いわゆる“立ちくらみ”のことで、通常は長時間寝たり、座ったりと同じ姿勢をとった後に、急に立ち上がることで生じます。血圧が下がることで、目の前が暗くなったり、気分が悪くなったり、めまいがしたりなどの症状が起こります。レビー小体型認知症が進行した時の起立性低血圧は、通常よりもひどいことが多いです。立ち上がるだけでなく、寝た状態から座ったりするだけでも症状がでたり、意識を失うほどの強い症状がでることがあります。症状が出たときは、まず支えて倒れないようにしましょう。そのうえで安全な場所に横にしましょう。可能であれば足をあげるように、布団などを足の下に敷きこむとより効果的です。
通常の起立性低血圧は水分量や塩分量の調整で対処できます。しっかりと水分摂取を励行し、また、塩気の多い食べ物を多めに摂るようにしてください。それでも、レビー小体型認知症に伴う起立性低血圧の症状が改善しない場合は、内服薬が必要になる場合もあります。対処しても症状を繰り返す場合は、かかりつけの先生へ相談しましょう。
呼吸状態の悪化
レビー小体型認知症では、呼吸器系にも影響がでることがわかってきました。通常、血液中の二酸化炭素が増えてくると、呼吸数を増やして対処する仕組みが備わっています。レビー小体型認知症では、血液中の二酸化炭素上昇に対する反応が低下しています。さらに、呼吸数に変化がでます。睡眠時無呼吸症候群のような睡眠呼吸障害も併発します。呼吸の調整もうまくいかなくなってしまいます。睡眠時無呼吸症候群のような症状であれば家族などが気づくこともありますが、ゆっくり進む症状の場合は無症状のことも多く注意が必要です。二酸化炭素上昇の反応が低下している場合は、病院で動脈血液ガス分析が必要になります。かかりつけの先生へご相談ください。
レビー小体型認知症の症状である幻視やパーキンソニズム自体の進行
レビー小体型認知症と突然死の関連は分かっていないことのほうが多いです。推定されている原因は次に示しますが、症状自体の進行にも注意を払うとよいでしょう。幻視がひどくなり、日々悩むことになります。パーキンソニズムも進行してくるため、体の動かしにくさがでてきます。そのため、日常生活も制限されるようになってきます。外出には車椅子が必須になったり、さらに進行すると、寝たきりになったりする方もいらっしゃいます。
こういった症状の進行には即座に対応することは難しいでしょう。進行は通常ゆっくりです。症状に合わせて脳神経内科や精神科の先生にご相談ください。急激に症状が悪くなったときは別の病気が併存している可能性もありますので、その場合は救急外来などへ相談してもよいでしょう。
レビー小体型認知症で突然死する原因
前述のように、レビー小体型認知症で突然死する原因は完全には特定されていません。ここではかかわっているのではないかと推測されている原因を3つ述べます。
心血管系イベント
レビー小体型認知症では、前述のように自律神経が障害され、様々な症状がでてきます。前述のように起立性低血圧で、血圧が異常に低下することがあります。通常では、心拍数を高めたりして、できるだけ起立性低血圧の症状が出ないように調節されています。しかし、自律神経が障害されると、心拍数の調整もうまくいきません。さらに、心血管の障害、例えば、冠動脈という心臓を栄養する血管が狭くなっている状態などが併存すると、血圧低下などにより血液の循環不全に陥ります。結果として、心臓の血流が足りなくなったりすることで、突然死をきたすことがあるのではないかと推測されています。
前述の起立性低血圧の項を参考に対応してください。加えて、胸の痛みや違和感、動悸などを感じる方は、一度循環器内科を受診して、チェックを受けていただくのもよいでしょう。
呼吸器系イベント
これも、前兆症状の部分で触れていますが、レビー小体型認知症では、呼吸機能の障害も併発します。呼吸の状態が悪くなると、酸素が足りなくなるとともに、二酸化炭素が血液中に溜まってきます。通常では、酸素、二酸化炭素ともに感知する機能があり、呼吸数を増やしたりすることで対応しています。
しかし、レビー小体型認知症では、この機能が低下しているため、二酸化炭素が溜まってきても呼吸数などが変わりません。さらに睡眠時無呼吸症候群のような睡眠呼吸障害を併発すると、一気に低酸素、高二酸化炭素血症となります。すると、意識の状態が悪化し、最悪の場合、そのまま呼吸状態が悪化し、死に至ります。睡眠中であれば変化に気づくのが遅れ、突然死とされることもあります。
前述していますが、心配な方は、一度かかりつけ医などで動脈血液ガス分析を受けてみましょう。
また、飲み込みが障害されると、むせこんでしまいます。窒息により突然死をきたす可能性もあります。さらに、誤嚥性肺炎により、徐々に状態が悪化し死に至る可能性もあります。飲み込みにくさを自覚されているかたは、かかりつけの先生や言語聴覚士、栄養士などと相談し、食事の形態を工夫するようにしましょう。
薬剤関連イベント
レビー小体型認知症は、高齢者に多い認知症を引き起こす疾患です。高齢であればあるほど、内服薬は多いことが想定されます。高齢者でよく処方されている睡眠剤は、前述の呼吸状態が悪化している場合は、致命的な作用をきたすことがあります。
さらに、降圧薬や抗不整脈薬などを複数飲んでいると、血圧が下がりすぎたり、脈が極端に変化したりすることがあります。結果として、循環器系の副作用の引き金になりえるでしょう。
内服薬が多い状態をポリファーマシーといい、認知機能を低下させるなどの様々な副作用を引き起こすと知られています。可能な限り、薬剤を調整して、内服薬の数を減らしたほうが良いです。内服する機会が多ければ多いほど、むせこんでしまうリスクも上がってしまいますので、レビー小体型認知症においても注意が必要です。内服薬が多い方は、配合錠の利用や同一目的で使用している薬剤の一本化などをかかりつけの先生へご相談ください。
このように、レビー小体型認知症における突然死は、単独の要因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って起こっていると推測されています。一つの面からではなく、多面的に治療を進めていくことが肝要です。
レビー小体型認知症を発症しやすい人の特徴
レビー小体型認知症を発症しやすい人の特徴を述べていきます。
高齢
レビー小体型認知症はその名の通り、認知症を引き起こす疾患です。そのため、ほかの認知症関連の疾患と同様に、年齢が上がれば発症しやすくなります。特に60歳を超えると発症しやすいとされています。さらに78歳を超えて発症したレビー小体型認知症は、より進行が早いとされます。そのため、発症から死亡までの期間も短いです。
誰しも年齢には抗うことはできませんので、レビー小体型認知症において起こりえる症状に気を付ける必要があります。気になる症状が出たときは早期に脳神経内科や精神科などの認知症外来を受診してください。
男性
レビー小体型認知症においては性別による違いも報告されています。レビー小体型認知症は男性が1.5倍多く発症します。さらに、レビー小体型認知症の男性が女性よりも進行がはやいです。なぜ性差があるのかに関しては様々な議論があります。男性のほうが頭部の外傷を受けやすかったり、労働環境などにより神経にかかわる毒素に暴露されやすかったりすることが一因とされます。さらに、ホルモンの性差も関わっているといわれます。
中年以降の男性は、レム睡眠行動障害やパーキンソニズムといった症状に注意して生活する必要があります。
不安症やうつ病
不安症やうつ病といった精神症状も関連があることが分かっていました。
不安症は、レビー小体型認知症を患っていない方に比べて、レビー小体型認知症の患者さんが7.4倍多いといわれます。男性のレビー小体型認知症では、実に60%もの人が不安症を患っています。また、レビー小体型認知症の前駆症状としてパニック発作を含めた不安症が生じることもあります。
うつ病もレビー小体型認知症の患者さんで増えています。レビー小体型認知症を患っていない方に比べて、6倍多いといわれます。認知症の症状をきたす代表であるアルツハイマー型認知症と比較しても、レビー小体型認知症におけるうつ病は特徴的です。年を取ってから発症するうつ病は、不安症と同様に、レビー小体型認知症の危険因子です。さらに、うつ病が、レビー小体型認知症の初期症状として出現する可能性もあります。
不安症やうつ病と診断されている方は、レビー小体型認知症の症状に注意する必要があります。困っていることがあれば、精神科や脳神経内科で認知症診療を行っている医療機関を受診ください。
レビー小体型認知症を予防する方法
残念ながら確実に認知症を予防する方法は分かっていません。レビー小体型認知症においても同様です。そのため、この項ではレビー小体型認知症の予防に良い可能性がある方法を述べていきます。
身体活動を行う
レビー小体型認知症を含む認知症の大規模な調査では、低強度(買い物などの歩行や簡単な家事など)や中強度(時速4km以上の速さで歩行や集中して行う掃除など)を行うと、運動習慣がない方に比べて、認知機能低下に予防効果があるとされています。さらに、高強度(ランニングや水泳、ウエイトを用いた筋力トレーニングなど)の運動は、低強度に比べて、認知症の発症予防効果があります。運動習慣がない方は、簡単な低強度の運動から習慣づけていきましょう。
アルコールを摂取する
レビー小体型認知症の方を調査するとアルコールを摂取しない方が多いようです。そのため、アルコールを摂取する習慣のある方は、レビー小体型認知症の発症を予防できる可能性があります。ただし、アルコールを大量に摂取すると健康被害も出現します。無理に飲めない方がレビー小体型認知症を予防するために摂取したり、大量に飲酒することを励行したりするものではありません。アルコールを摂る際は、適量を適度に楽しむよう心がけましょう。
カフェインを摂る
意外かもしれませんが、カフェインを摂るとレビー小体型認知症の発症リスクを低減することができる可能性があります。レビー小体型認知症の患者さんを調べるとカフェインを摂る習慣がないかたに多く発症していました。そのため、お茶やコーヒーなどのカフェインを含む飲料を摂る習慣を身に着けるとレビー小体型認知症の発症を予防できるかもしれません。
「レビー小体型認知症で突然死」についてよくある質問
ここまでレビー小体型認知症で突然死などを紹介しました。ここでは「レビー小体型認知症で突然死」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
レビー小体型認知症の末期症状について教えてください。
神宮 隆臣 医師
レビー小体型認知症における末期とは定義が難しいです。進行してしまった場合の症状は、本文中にもありますが、認知機能が極端に低下します。さらにパーキンソニズムにより体の自由も奪われ、介助が必要になることがあります。起立性低血圧などの自律神経障害により、複数の障害が出現し、命に関わることもあります。
レビー小体型認知症を発症し、寝たきり状態になった場合の余命はどれくらいでしょうか?
神宮 隆臣 医師
残念ながら、レビー小体型認知症を発症し、寝たきり状態になってからの余命は分かっていません。レビー小体型認知症の症状が出現してからの平均寿命は5年前後とする報告もあります。また、認知症全体でいえば、寝たきり状態になると6か月以内の死亡を予測する因子とされます。発症からの時間経過と寝たきり状態になってからの経過時間を参考にしてください。
編集部まとめ
レビー小体型認知症において突然死は稀ですが、時折生じます。症状の進行に合わせて起こるものと推測されています。認知症症状、パーキンソニズム、自律神経などの周辺症状などそれぞれの進行に注意して療養するようにしましょう。
「レビー小体型認知症」と関連する病気
「レビー小体型認知症」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
脳神経内科の病気
- アルツハイマー型認知症
- パーキンソン病
- 多系統萎縮症
- 進行性核上性麻痺
中高年以降の新規の不安症やうつ病に要注意!
「レビー小体型認知症」と関連する症状
「レビー小体型認知症」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
レビー小体型認知症の症状が出現する前に寝ている間に叫んだり、体が動いたりする症状が出る場合があります。症状があるときは一度脳神経内科へご相談ください。
参考文献