「アルツハイマー型認知症の初期症状」はご存知ですか?原因についても医師が解説!
公開日:2024/06/21


監修医師:
上田 雅道(あたまと内科のうえだクリニック)
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福島県立医科大学医学部卒業。名古屋掖済会病院脳神経内科、豊橋市民病院脳神経内科、名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学、中部ろうさい病院神経内科医長を経て、あたまと内科のうえだクリニック院長に。医学博士。日本神経学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医、愛知県難病指定医、麻薬施用者免許、日本頭痛学会会員、日本認知症学会会員。
目次 -INDEX-
「アルツハイマー型認知症」とは?
アルツハイマー型認知症は認知症の中でもっとも多く、およそ65%をしめます。高齢者に多く、年齢とともに増えていきます。アルツハイマー型認知症の前兆となる初期症状
アルツハイマー型認知症では、新しいことを覚えられない、同じことを何度も聞き返す、年月日や曜日の感覚が不正確、意欲が低下する、といったことが初期にみられることがあります。記憶障害
新しいことを覚えられず、同じことを何度も聞き返すといった症状がみられます。新しい情報をすぐに忘れてしまうため、5分後にも同じことを聞くといったことがあります。 このような症状が続く時は、かかりつけの内科や脳神経内科を受診し、いつごろから症状が目立つようになったのか、または具体的なエピソードがあれば医師に伝えてください。時間の見当識
年、月、日、曜日についての感覚が不確かになります。 きょうが何日かわからない、曜日をまちがえる、といったことがあればかかりつけの内科や脳神経内科を受診してください。遂行機能障害
料理の準備やスーパーでの買い物でまちがえることが多くなります。以前はできていた料理の手順がわからなくなったり、失敗することがあります。スーパーに買い物に行っても必要な食材がわからなくなったり、不必要な食材を理由もなく買ってしまうことがあります。計画的な行動ができなくなってしまいます。 このようなことがあれば、かかりつけの内科や脳神経内科を受診してください。意欲の低下
自分から出かけようとしなくなったり、ぼうっとして過ごしてしまうこともあります。 一見すると、「うつ」と似ており、うつ病は高齢者にも多くみられる病気なので注意が必要です。うつ病であれば治療法が異なるので、しっかりと診察を受ける必要があります。精神科、かかりつけの内科や脳神経内科を受診してください。構成障害
複雑な図形を書き写すができなくなります。ふだんは図形の模写をすることはあまりないかも知れませんが、もの忘れの症状がみられた時は、図形の模写がどのくらいできるか確かめてみてもいいでしょう。思ったように図形を書くことができないときは、かかりつけの内科や脳神経内科を受診してください。アルツハイマー型認知症の主な原因
アルツハイマー型認知症の原因は完全には解明されていませんが、主な原因と考えられている要因は次の3つです。- ・アミロイドβという異常なタンパク質が脳にたまる。
- ・タウというタンパク質が異常な形になってたまる。
- ・ある遺伝子を持っていて、脳に異常なタンパク質がたまる。
脳の萎縮
アルツハイマー型認知症の症状が出始めたころには、海馬の萎縮がみられます。海馬は新しい情報を一時的に記憶しておく脳の領域と考えられています。海馬の機能が低下することでアルツハイマー型認知症では新しいことをすぐに忘れてしまうのです。海馬をふくめた側頭葉も早い段階で萎縮がみられます。CTやMRIで調べることができます。脳の血流の低下
アルツハイマー型認知症では脳の機能が低下することで、特定の領域の血流が低下している様子を脳血流シンチグラフィー検査で確認することができます。側頭葉や頭頂葉、後部帯状回などの領域で血流が低下しやすくなります。アミロイドの蓄積
脳にアミロイドβという異常なタンパク質がたまっている様子をアミロイドPETという検査で調べる方法があります。実際に検査できる病院は一部の施設に限られていて、保険の制約もあるため誰でも検査を受けられるというわけではありませんが、将来的には普及していく可能性があります。アルツハイマー型認知症になりやすい人の特徴
アルツハイマー型認知症は高齢者に多い病気であり、65歳ころから年齢とともに増えていきます。男性より女性に多くなっています。年齢
加齢はアルツハイマー型認知症のもっとも重要な要因です。厚生労働省の報告によると、65歳以上の高齢者では7人のうち1人が認知症 (アルツハイマー型認知症以外もふくむ)になっており、加齢とともに増加していきます。性別
女性は男性よりアルツハイマー型認知症のリスクが高くなります。厚生労働省の発表では65歳以上のどの年代においても女性の発症率が男性を上回っています。ライフスタイル
運動不足や社会活動が少ないとアルツハイマー型認知症のリスクが高くなる可能性があります。適度な運動習慣や社会とのつながりは重要といえそうです。すぐに病院へ行くべき「アルツハイマー型認知症の初期症状」
ここまではアルツハイマー型認知症の初期症状を紹介してきました。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。記憶障害を疑う症状がある場合は、脳神経内科へ
アルツハイマー型認知症の特徴である記憶障害がみられたら病院を受診しましょう。 新しいことを覚えられない、同じことを何度も聞いてしまう、といったことは特徴的です。かかりつけの内科、または脳神経内科で相談してください。意欲の低下、うつのような精神症状が目立つ場合は精神科を受診してみてください。 これらの症状がいつごろから目立つようになってきたのかも重要です。もし前日までは問題なかったのに、今日になって急に症状が出たという場合は、認知症のようにみえても脳出血や脳梗塞が原因だったということもあるのですぐに病院を受診してください。受診・予防の目安となる「アルツハイマー型認知症」のセルフチェック法
- ・記憶力の低下がある場合
- ・時間の見当識障害がある場合
- ・遂行能力の低下がある場合
アルツハイマー型認知症を予防する方法
アルツハイマー型認知症を完全に予防する方法はありませんが、運動習慣と社会活動を維持することでリスクを減らしていくことは重要です。運動
週に2回から3回、30分程度のウォーキングや軽い筋力トレーニングはアルツハイマー型認知症のリスク軽減効果を期待できます。心身のリラックス効果もあります。社会活動
家族や友人、地域の人との交流は重要です。家族や友人と出かけたり、地域の行事に参加することも重要です。 社会的なつながりがあることで孤立を防ぎ、精神的な健康を保つことができます。知的活動
読書やパズルゲームなど頭を使う活動で認知機能の低下を防ぐことが期待できます。 外国語の学習、楽器の練習など新しいスキルに挑戦することや、自分の趣味の活動も効果的です。「アルツハイマー型認知症の初期症状」についてよくある質問
ここまでアルツハイマー型認知症の初期症状などを紹介しました。ここでは「アルツハイマー型認知症の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
軽度のアルツハイマー型認知症の症状について教えてください。
上田 雅道 医師
軽度のアルツハイマー型認知症では、新しいことを覚えられない、同じことを何度も聞き返す、年月日の感覚が不確か、日常的な買い物や料理で失敗する、意欲が低下する、といった症状がみられやすいです。
アルツハイマー型認知症で一番多い症状はどんな症状ですか?
上田 雅道 医師
アルツハイマー型認知症の症状でもっとも多く、目立つ症状は新しいことを覚えられない、という症状です。
アルツハイマー型認知症の初期症状が現れるのは発症から何年後でしょうか?
上田 雅道 医師
アルツハイマー型認知症は、初期症状がみられるようになった時期を発症と考えるといいと思います。脳の中では、症状がみられる10年あるいは20年も前から変化が始まっていると考えられていますが、症状がない段階ではあまり気にしなくていいと思います。
編集部まとめ
アルツハイマー型認知症は新しいことを覚えられないといった記憶障害で発症することが多く、年齢とともに患者さんの数も増えていきます。症状の進行はゆっくりですが、完治させることはむつかしく、進行とともに生活に困難もみられるようになります。やがて家族の協力や社会福祉サービスの利用、介護や看護も必要になります。 アルツハイマー型認知症を発症してもはじめのうちは症状は軽く、進行もゆっくりなため病院を受診してするきっかけをつかみにくいこともあります。気になる症状がみられたら、早めに病院を受診しましょう。薬を使った治療で進行を遅らせることもあります。「アルツハイマー型認知症」と関連する病気
「アルツハイマー型認知症」と関連する病気は3個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。脳神経科の病気
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
- 血管性認知症
「アルツハイマー型認知症」と関連する症状
「アルツハイマー型認知症」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 記憶障害
- 意欲低下
- うつ
参考文献

