「認知症の原因」となる可能性の高い食べ物はご存知ですか?医師が解説!
認知症の原因とは?Medical DOC監修医が認知症の原因・種類・急激に進む原因・食べ物や予防法などを解説します。
監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。
目次 -INDEX-
「認知症」とは?
認知症とは、記憶力や判断力、思考能力、情報処理能力などが低下して、日常生活に支障が出ている状態を指す病名です。
認知症では一般に運動機能は保たれますが、外出先で道に迷う、大切なものをなくしてしまう、家族を含めて周囲の人とよく衝突してしまうなど、いろいろな問題が生じます。病気が進行すると自宅での生活が困難となってしまうことも少なくありません。
実際に認知症は高齢者の介護が必要になる原因疾患の第一位であり、認知症を理由にグループホームや有料老人ホームに入所している人も多くいます。
日本国内では高齢化を背景に認知症の方が増えており、2025年には認知症の有病者数は約700万人(有病率:20%程度)といわれています。非常に身近な病気である認知症について詳しく解説いたします。
認知症の種類
認知症は、記憶力の低下が主体となる「アルツハイマー型認知症」、幻視があり、認知機能の変動が目立つ「レビー小体型認知症」、性格が変わり、非常識な行動をとりやすくなる「前頭側頭型認知症」、脳梗塞を原因で発症する「血管性認知症」などに分類されます。
認知機能が低下する原因には、その他にも脳脊髄液の流れが悪くなることによる水頭症や、ビタミン欠乏、アンモニアの貯留、環境要因などによるせん妄などさまざまなものがありますが、今回は認知症の代表的な4つの病気について解説します。
下記で説明する症状が疑われる場合には、家族同伴で、脳神経内科や脳神経外科、精神科、認知症外来を受診してください。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症とは、変性したアミロイド(アミロイドβ)やタウというたんぱく質が脳に蓄積することで発症する認知症で、最も有病率の高い認知症です。
昔の記憶は比較的保たれますが、直近の記憶(即時記憶、短期記憶)が失われやすいという特徴があります。予定を忘れてしまう、物をよくなくす、同じ話をよくする、同じものを繰り返し買ってきてしまうなどの症状がみられます。
初期には記憶力以外にはほとんど障害はなく、身なりを整えたり、状況に応じた対応をしたり、仕事をこなしたりすることは問題なくできます。そのため、本人も認知症であるという自覚がないことが多く、物を置いたことや、予定を立てたこと自体を忘れてしまいます。そのため、物をなくした場合には「誰かに盗られた!」、予定を忘れた場合には「そもそもそんなことは聞いていない!」と、周囲の人とトラブルになることも少なくありません。
脳血管型認知症
脳血管型認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により発症する認知症です。
脳血管性認知症の特徴は、ある時から突然に認知機能が低下することといわれています。
脳の障害を受ける場所によって、会話が成り立たない、計算ができない、ぼんやりとして反応が鈍い、などとさまざまな症状がみられます。
急激に認知機能が悪化した場合には、迅速な治療でさらなる認知機能の悪化を防いだり、部分的に改善させたりすることが期待できるため、すぐに医療機関を受診してください。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、α-シヌクレインというタンパクの蓄積が発症に関与する認知症です。その場に存在しない人が見えること(幻視)や、寝相が悪くなること(レム睡眠行動異常)、注意力の低下、日によって過度に眠くなるあるいはぼんやりすること、などが特徴です。動作の緩慢さや関節の動きの固さなどの症状(パーキンソニズム)がみられることもあります。
早期には仕事の能率が低下したり、ケアレスミスが増えたり、自動車の運転に支障(標識の見落す、道に迷うなど)をきたしたりなどの症状がみられます。車の運転が危なくなってきたなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、タウやTDP-43、FETというたんぱく質が発症に関与する認知症です。
行動変異型と原発性進行性失語症という2つのタイプに分かれます。
行動変異型の症状は、欲しいなと思ったものを持ち去ってしまう、公共の場で排尿をしてしまうなどの非常識な行動をとるなど、周囲への関心が乏しくなる一方で、特定の時間に散歩をするなど特定の行動にこだわってしまうことが特徴的です。
原発性進行性失語症では、うまく言葉を話せなくなったり、単語の理解が困難になったりと失語の症状が出現し進行していくことが特徴的です。
行動変異型は窃盗や強制猥褻などの問題行動をしてしまう一方で、本人は自分の異常な行動に自覚がないことも多く、周囲とも衝突しやすいため、特に注意が必要です。原発性進行性失語も症状の進行とともに意思疎通が取りづらくなり、介護が難しくなります。
認知症の主な原因
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症は脳実質に特定のタンパクが蓄積してしまうことが要因であり、各タンパクが蓄積してしまう原因については遺伝的な関与が示唆させていますが、十分な解明ができていません。まだ十分にわかっていないことも多いのですが、これまでに報告されている原因について解説いたします。
遺伝的な要因
アルツハイマー型認知症ではアミロイドβの生成、凝集、または除去を変化させる遺伝子の変異やアポリポタンパク質Eにイプシロン4対立遺伝子を持っていることが発症に関与するといわれています。
レビー小体型認知症ではSNCA遺伝子やAPP遺伝子の変異が、前頭側頭型認知症ではMAPT遺伝子やGRN遺伝子などの変異が発症に関与するといわれています。
生活習慣病
高血圧や脂質異常症、2型糖尿病などの生活習慣病は動脈硬化のリスクとなるとともに、アルツハイマー型認知症や脳血管認知症の発症リスクを増加させます。
また、身体活動量が少ないことや肥満もアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症のリスクを増加させることが知られています。規則正しい生活、食事療法(塩分を控えることやバランスを考慮した食事を取ること)に加え、適度な運動も積極的に行うようにしましょう。
頭部外傷
交通事故などの強い頭部外傷で脳挫傷やくも膜下出血などを起こした場合に認知機能は低下します。また、転倒などによる軽度の頭部打撲を繰り返した場合でもアルツハイマー型認知症を発症しやすくなる、認知機能が低下しやすくなることが報告されています。
ラグビーやアメリカンフットボール、ボクシングなど頭部に衝撃が加わるスポーツを行っている場合には注意が必要です。
認知症が急激に進む原因
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などでは、一般に年単位でゆるやかに症状が進行します。
しかし、生活環境の変化や強いストレス、ビタミン欠乏など、その他の要因による認知機能の低下が加わった場合には認知機能が急激に低下することがあります。ここでは認知機能が急激に低下する要因についてご紹介します。
生活環境の変化
施設への入所や病院への入院など、生活環境が変化した場合に認知機能が急激に悪化することがあります。新たな生活環境に順応できないことによるせん妄や適応障害、うつ病、行動が制限されることによる自信の喪失など、さまざまな要因が関与します。
行動する機会の減少、楽しみの喪失
退職などによってやりたいこと、やるべきことが失われ、外出機会や社会的な交流が少なくなることで認知症が一気に進んでしまうことがあります。
新しい刺激が減ることや、自身の役割を失うこと、楽しみがなくなることで活動意欲が低下することは、認知機能低下の要因になると考えられます。
考える機会の減少
人と交流する機会が減少したり、介護を受けるようになったりすることで、自分で考える機会が減ってしまい、認知症が一気に進んでしまうことがあります。
認知機能も筋肉と同じく、普段から繰り返し使うことで、機能を維持することが可能です。自身が安全に行える範囲のことは自分で行うこと、デイケアなどで周囲との交流をしつつ楽しく活動する機会を作ることが重要です。
薬剤の作用・副作用
認知症は進行すると、怒りっぽくなったり、眠れなくなったりすることが多く見られます。生活に支障がでる症状の場合には、抗精神病薬や睡眠導入剤を使用することも少なくありません。これらの薬剤は活動性や認知機能の低下につながることがあり、注意が必要です。
また、認知症の治療薬(ドネペジルやメマンチンなど)を使用している場合には、これらの薬を中止することで認知症が一気に進んでしまうことがあります。
不眠症/日中の眠気
疲れが溜まっていたり、夜に寝付けなかったりした場合には、日中の強い眠気により、反応が鈍くなったり、認知機能が低下したりすることがあります。
ぼーっと過ごしてしまうと、頭を使う機会が減少するため、それにより認知症が一気に進んでしまうことがあります。
体調の悪化
高熱が出るなど体調が悪化した場合には、活動意欲がなくなり、ぼんやりとしてしまうことがあります。また、倦怠感などで動けなくなってしまうことをきっかけに認知機能低下が急激に進行してしまうことがあるため、日ごろから体調管理に注意が必要です。
食欲不振・低栄養
食欲不振などにより栄養状態が悪化した場合に認知機能が急激に進む場合があります。
ビタミンB1やB12などのビタミン欠乏や、亜鉛や葉酸などの微量元素の欠乏により認知機能低下が急激に進行する場合があります。欠乏した栄養を補充することで認知機能が改善することもあるため、急激な認知機能低下を認めた場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
認知症の原因となる可能性の高い食べもの
地中海食などは認知症になりにくい食事として知られており、糖質や動物性脂肪を控え、食物繊維の多い食習慣は望ましいとされています。そのため、特定の食べ物の摂取が認知症の発症に大きく影響するというわけではないですが、たくさん摂取することを控えた方がよいとされている食べ物はあります。食事はバランスよく摂取することが大事であり、完全に除去する必要はありませんが、以下のものについては控えるとよいでしょう。
ラード、肉の脂身
牛や豚などの肉の脂身にはトランス脂肪酸が多く含まれます。トランス脂肪酸を多く摂取すると血中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が増加し、動脈硬化が悪化する要因となります。動脈硬化は脳血流の低下や脳梗塞を引き起こし、認知機能を悪化させる原因となります。
バターやマーガリン
バターやマーガリンにも動物由来の脂質が多く含まれており、トランス脂肪酸は多く含有しています。日常的に使用することも多い食品であり、摂取量が多くならないように注意が必要です。
菓子パン
菓子パンにはバターやマーガリンなどを多く含むものもあるため、注意が必要です。また、パンを含む穀物の過剰摂取は認知症のリスクを高めるとの報告があり、菓子パンは主に炭水化物や糖質で中心となるため、注意が必要です。穀物を過剰摂取している方は副菜をあまり食べておらず、その他の栄養素が不足していることが影響しているとも言われていますが、穀物の過剰摂取にも注意した方がよいでしょう。
過度な飲酒
過度な飲酒は脳の萎縮を引き起こすことが知られており、飲酒をする場合には節度を持って楽しみましょう。厚生労働省が推進する健康日本21では、アルコール摂取量の目安は純アルコールで1日20g程度とされており、飲酒量はビールではロング缶(500ml)1本、日本酒では1合程度に抑え、休肝日も作りましょう。
認知症の予防法
認知機能低下の予防には規則正しい生活をすること、バランスの取れた食事をすること、適度な運動することに加えて、「考える」「行動する」ことを日常的に行うことが重要です。また生活習慣病が認知症につながることも報告されており、高血圧や糖尿病、高コレステロール血症の予防や治療、禁煙、節酒も心がけましょう。
社会人活動への参加
認知症の予防には人と会話する、一緒に活動することがとても大切です。他人と一緒に行動することで責任感が生まれたり、活動意欲が改善したりすることが期待できます。また、単純に会話をするだけでも思い出したり、考えたりしながら話すことで認知症の予防につながります。
定年後再雇用制度を利用した勤務の継続や社会人サークルへの参加、町内会やボランティア活動への参加などを行い、社会的な交流を維持するように努めましょう。
適度な運動
ウォーキングなどの適度な運動は認知症の進行を抑えるだけでなく、肥満の予防や食欲の維持など、一般的な健康を維持するためにも重要です。
外出をすることで他者との交流の機会になったり、季節を感じたりできることも認知症の予防につながります。転倒や交通事故などに注意しつつ、散歩などを行うとよいでしょう。
知的活動
将棋やクロスワード、数独、パズルゲームなどの知的活動も認知機能の維持に有用です。知的活動はその人ごとに合ったレベルのものが望ましく、成功体験を積み上げることで継続する意欲や自信につながります。
生活習慣病の発症予防・悪化予防
生活習慣病の予防には食事療法(減塩、バランスの取れた食事、カロリー調整)や運動療法、禁煙や節酒などがあります。食事療法は塩化ナトリウム6g前後を目標とした減塩や野菜や果物なども取り入れたバランスの取れた食事、過度に食べ過ぎないことなどに意識して取り組みましょう。運動療法は軽く息がきれる程度の軽い運動(有酸素運動)を1日あたり30〜60分以上行うとよいでしょう。
「認知症の原因」についてよくある質問
ここまで認知症の原因などを紹介しました。ここでは「認知症の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
認知症になりやすい人の性格について教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
知的な活動や社会的な関わりが少なく、活動意欲に乏しい性格の人は認知症を発症するリスクが高いです。また活動的性格であっても、ボクシングやラグビー、アメリカンフットボールなどの接触スポーツで日常的に頭に衝撃を受けている方は、将来認知症に発症するリスクが高まるため注意が必要です。
認知症の罹患率が高い血液型や原因を教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
AB型の人で認知症の発症リスクが高いという報告はありますが、健康診断のデータベースを元に調べた研究では血液型ごとに認知症の発症率に違いがなかったという報告もあります。血液型が認知症にどの程度影響するかは、現時点ではまだわかっておりません。
編集部まとめ
認知機能は年を経るごとにさまざまな要因で低下します。認知症を発症した場合には生活に介助が必要となり、家族や介護者に負担をかけることになります。これは超高齢化社会を迎えている日本では誰もが直面するといっても過言ではない問題です。
認知症の発症を完全に予防することはできませんが、認知症に対する知識を持って予防や対策に努めていくことが重要です。
「認知症」と関連する病気
「認知症」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内科の病気
- 甲状腺機能低下症
- ビタミン欠乏症
脳神経科の病気
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
- 脳血管性認知症
- ウェルニッケ脳症
- 正常圧水頭症
- 慢性硬膜下血腫
認知症の原因及び治療法については多くの研究がなされていますが、アルツハイマー型認知症をはじめ多くの疾患で根本的な治療法が確立されていません。一方で、甲状腺機能低下症やビタミン欠乏症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫など、治る認知症も存在するので、気になる症状がある場合には早めに医療機関で相談してください。
「認知症」と関連する症状
「認知症」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 物忘れがひどい
- 性格が変わった
- 怒りっぽい
- 理解できない
- 判断できない
- 集中できない
認知症の症状では物忘れ以外にもさまざまあります。年齢を重ねると誰でも記憶力が低下するため、自分自身や家族も気づいていないことも少なくありません。