「認知症」は口が臭い人ほどなりやすい 口臭と認知症リスクの関連性が調査で明らかに

東京医科歯科大学大学院らの研究グループは、秋田県横手市における11年間の追跡調査をもとに、口臭と認知症の発症リスクの関連を調査しました。研究結果は、アルツハイマー病や認知症に関する研究を扱う学術誌「Journal of Alzheimer’s Disease Reports」に掲載されています。この内容について本多医師に伺いました。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
研究グループが発表した内容とは?
東京医科歯科大学大学院らの研究グループが発表した内容を教えてください。
本多先生
東京医科歯科大学大学院らの研究グループは、秋田県横手市でおこなわれた11年間の追跡調査をもとに、口臭と認知症の発症リスクとの関連性を検討しました。2005~2006年にかけて、56〜75歳の1493人が歯科健診と自己申告調査を受け、その後2016年までの介護保険データを用いて認知症の発症を追跡しました。結果として、追跡期間中に96人(6.4%)が認知症を発症し、特に重度の口臭を持つグループではその割合が20.7%と高かったことが判明しました。
統計分析の結果、口臭のない参加者と比較して、重度の口臭を持つ参加者の認知症発症リスクは3.8倍高く、逆確率加重Coxモデルを用いた感度分析では、このリスクが4.4倍に上昇しました。この研究の結果から、口臭が認知症のリスク因子となる可能性が示唆されました。口臭は口腔内の細菌バランスの乱れや歯周病と関連があり、炎症を引き起こすことで全身の健康に影響を及ぼすことが考えられます。また、社会的交流の低下による認知機能の低下も一因となる可能性があります。
ただし、その一方で口臭と認知症の因果関係を直接証明したわけではなく、ほかの生活習慣や健康状態が影響を及ぼしている可能性もあるため、さらなる研究が求められます。
研究テーマになった疾患とは?
今回の研究テーマに関連する認知症について教えてください。
本多先生
認知症は、脳の病気や障害により認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。65歳以上では、約5人に1人が認知症になると予測されており、高齢化が進む日本では重要な課題です。
認知症には種類があり、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」が代表的です。アルツハイマー型認知症は脳神経の変性によるもので、血管性認知症は脳梗塞や脳出血が原因です。レビー小体型認知症は幻視や運動障害、前頭側頭型認知症は言語障害や行動変化が特徴です。初期段階では軽度認知障害(MCI)がみられ、早期発見と予防的対応が重要とされています。
認知症の治療には薬物療法と非薬物療法があり、症状の進行を遅らせることが目標です。適度な運動や社会活動が予防に有効とされ、早期対応が本人や家族の負担軽減につながるでしょう。
研究内容への受け止めは?
日本の東京医科歯科大学大学院らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。
本多先生
認知症を発症するとご本人はもちろん、家族への負担の大きい疾患です。今回の研究で口臭と認知症リスクの因果関係が報告されました。歯周病リスクや社会的活動の低下による説明もできますが、様々な要素が絡み合っている可能性もあるため、今後の研究結果が待たれます。
編集部まとめ
今回紹介した研究で、口臭と認知症リスクの関連が示唆されました。歯周病や口臭は、単なる口の問題ではなく、全身の健康や認知症リスクにも影響を与える可能性があります。日頃の口腔ケアを大切にし、健康な生活習慣を意識することで、将来のリスクを減らすことができるかもしれません。定期的な歯科受診や適切なセルフケアを習慣にしましょう。