「片頭痛の原因」はご存知ですか?予防に有効な食べ物・飲み物も医師が解説!
片頭痛の原因とは?Medical DOC監修医が片頭痛の原因・症状・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。
目次 -INDEX-
「片頭痛」とは?
片頭痛は、日本の成人の約8.4%が悩まされている頭痛疾患です。特に20代~40代の若年層の女性に多く、ズキンズキンと拍動するような頭痛が現れます。
寝込むほどの強い痛みが出現して動けなくなったり、ひどい頭痛が出現したら困るために予定を立てづらくなったりしてしまうなど、日常生活に大きな支障をきたす病気として知られています。
頭痛発作時の痛みを取る治療と頭痛発作を予防する対策法・治療をうまく組み合わせることで、片頭痛をコントロールすることが重要です。2021年より片頭痛に対する予防薬である抗CGRP関連薬が国内で処方可能になり、有効性の高い予防治療を受けられるようになっています。片頭痛が慢性化してしまうと頭痛を改善させることがとても難しくなるため、一人で悩まず早めに専門家に相談することをお勧めします。
今回は片頭痛の原因・症状・予防法について解説していきます。
片頭痛の主な原因
片頭痛が起こるメカニズムの全容はいまだ明らかにされていません。代表的な3つの仮説を紹介しますが、現在は三叉神経血管説が有力視されています。
血管説
血管説とは、片頭痛は脳血管の収縮と拡張によって引き起こされるという考え方です。
この血管説で中心的な役割を担う物質はセロトニン(5-HT)です。
ストレスなどのなんらかのきっかけによって、血小板からセロトニンが血液中に放出されることがあります。この放出されたセロトニンの作用で、頭蓋内外の血管の収縮が起こり脳の血流が低下すると、閃輝暗点のような片頭痛発作の前兆が起こるといわれています。その後、セロトニンが分解されると血管の拡張が生じ、血管に炎症や浮腫が起こり激しい頭痛を引き起こす、と考えられています。
神経説
神経説とは、頭痛が起こる原因は神経側の問題であるという考え方で、脳の神経細胞の活動異常(大脳皮質拡延性抑制 = CSD; cerebral spreading depression)が原因であるという仮説です。
これは、片頭痛の予兆として、疲労感やあくびなどの視床下部や視床の機能異常がみられることがありますが、これは画像解析研究から神経細胞の活動異常であることが示唆されています。
三叉神経血管説
三叉神経血管説とは、血管説に三叉神経(顔面や頭部、硬膜などの感覚を司る脳神経)の関与が加わったような仮説であり、現在有力視されています。
何らかの刺激により頭蓋内血管(主に硬膜の血管)に分布する三叉神経終末繊維が刺激され、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)やサブスタンスP、ニューロキニンAなどの血管に作用する物質が過剰に放出されます。これにより血管は過剰に拡張して、血管透過性が亢進し血管周囲に炎症が起こり、三叉神経を介して脳に痛みとして伝わると考えられています。
片頭痛の主な症状
片頭痛発作には、予兆期、前兆期、頭痛期、寛解期、回復期を経て正常状態へと戻る、という時間経過が見られます。それぞれの症状について説明します。
あくびや集中力低下、イライラ
これからなんとなく頭痛が起こりそうと感じる時期を予兆期といい、片頭痛発作の数時間から数日前の段階に出現すると言われています。
具体的には、情緒不安定になる、気分がすぐれない、あくびを繰り返すなどさまざまなものあくびや疲れやすい、集中できない、気分がすぐれない、イライラする、食べ過ぎてしまう、体がむくむ、首や肩がこる、光や音が過敏に感じる、などといった多彩な症状がみられます。
閃輝暗点
前兆期がない人もいますが、典型的な前兆は閃輝暗点などの視野障害です。
閃輝暗点は、約20~30%の方に片頭痛の前兆として現れることがあります。閃輝暗点とは、視界の一部がチカチカあるいはギザギザした光が見えたり、視野の一部が見えなくなったりする状態が10〜30分間程度みられることをいいます。このような目の異常が起こった後に頭痛が出現するというのが典型的な前兆を伴う片頭痛です。
この閃輝暗点だけがあって頭痛が現れないこともありますが、脳の血管が収縮することによって症状が出現することや脳卒中のリスクともいわれているため、眼科や脳神経内科、脳神経外科、頭痛外来への受診をお勧めします。
拍動性の頭痛
頭痛がみられるのが頭痛期です。
片頭痛の典型的な頭痛は、こめかみから目の周囲にズキンズキンと脈打つような痛みです。痛みは片側とは限らず両側に出る場合もあります。
片頭痛の前兆がある場合もない場合もありますが、発作的に痛みが出現して4時間から72時間持続します。日常的な運動や階段の上り下り、咳などで症状が悪化することもあり、寝込む必要があるなど日常生活に支障が出ることもあります。吐き気や嘔吐の症状や、音や臭い、光などに対して過敏になる症状を伴うこともあります。このような特徴的な頭痛が何度も繰り返す場合には片頭痛の可能性が非常に高いです。
眠気や疲れ
・どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点、緊急性
頭痛症状がおさまってくると寛解期や回復期に入ります。
眠気や食欲低下、疲労感、うつ状態、躁状態などの症状が数日間続くこともあります。
片頭痛の予防法
自分の頭痛の特徴を知る
どのような際に頭痛が出るのか、自分の頭痛の特徴を知っておくことは頭痛の予防に役立ちます。
痛みのきっかけには、悪天候、季節の変わり目、寝すぎ、寝不足、眩しい光、苦手な匂い、不快な音、飲酒、チョコレートやチーズの摂取などが挙げられます。ストレスだけではなく、ストレスから解放されたこともきっかけになります。女性の場合はホルモンバランスの影響など月経周期も関係することがあります。
原因となるものは個人差の大きいものです。どのような時に痛みがあったのか、痛みの性状はどうだったか、どんな痛み止めを使ったか、薬は効いたのか、などを頭痛日誌につけてみましょう。長期間ではなくても1−2ヶ月間つけることで、傾向は捉えられて予防対策に役立てることができます。
また、受診する際にもこの頭痛日誌があると、医師側としても診断や治療にもとても役立つのでオススメしています。
マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10
頭痛予防に有効な栄養素には、マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10などが挙げられます。
マグネシウムが多く含まれる食材は、海藻や大豆製品、玄米、ナッツ類などです。
ビタミンB2は肉や魚、牛乳、ほうれん草などに多く含まれます。
コエンザイムQ10は、肉類や魚介類に多く含まれています。サプリメントとして摂取するのも良いでしょう。
これらには重篤な副作用がないので、積極的に食生活の中に取り入れてみましょう。
適量のカフェイン、ナツシロギク
コーヒーや紅茶などのカフェインを含んだものは片頭痛の症状を軽くさせる効果があります。カフェインは血管を収縮させる効果があるので、頭痛がきそうだと思った際に早めに飲むと良いかもしれません。ただし、カフェインを摂り過ぎるとカフェインの効果が切れた際に頭痛が起こってしまう可能性があるので、飲み過ぎないように注意しましょう、
ナツシロギクはハーブの一種でありフィーバーフューとも呼ばれています。
脳の血管を収縮させるセロトニンの放出を抑える働きなどがあり、頭痛を和らげる効果があると言われています。ただし、妊娠中や授乳中の方は避ける必要がありますのでご注意ください。
予防薬の使用
基本的には薬を使わなくて済むのならば、それに越したことはありません。
ただし、セルフケアでも頭痛が改善しない場合には期間限定でも良いので、医療機関で相談して予防薬を使うことをお勧めします。
片頭痛の予防薬には、飲み薬と注射薬があります。基本的には飲み薬を試して改善しない場合に、注射薬を使います。
片頭痛予防の飲み薬は抗てんかん薬や抗うつ薬、ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬などの循環器系の薬を用います。これらの薬の予防効果は個人差が大きいのですが、他の薬との飲み合わせや、副作用対策について考慮する必要があります。
片頭痛予防の注射薬は抗CGRP関連薬ですが、こちらは痛みのメカニズムである三叉神経血管説に基づいて作られた薬であることが特徴です。飲み薬と比べると薬価は高いのですが、片頭痛予防の有効性は高いことからぜひ一度試してほしい薬です。
仕事などで忙しくて医療機関に来院することが難しい場合には、自己注射も可能なので外来で相談してください。
「片頭痛の原因」についてよくある質問
ここまで片頭痛の原因などを紹介しました。ここでは「片頭痛の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
女性が片頭痛を発症する原因はどんなことが考えられますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
片頭痛が出現するきっかけはさまざまですが、女性特有のものでは、女性ホルモンのバランスが乱れることが挙げられます。月経関連症候群の症状の一つとして片頭痛が現れることもあります。
男性が片頭痛を発症する原因はどんなことが考えられますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
片頭痛を発症する原因には、低気圧、寝すぎ、寝不足、ストレス、飲酒など多彩なものが考えられます。男性特有の原因はないと思います。
片頭痛の人が控えた方がいい食べ物を教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
頭痛の出るきっかけには個人差があるので、控えた方がいい食べ物については一概には言えません。飲酒、チョコレートやチーズ、香辛料の摂取などがきっかけになる人はいます。予防策として、自分の頭痛の特徴をよく知ることが重要です。
編集部まとめ
片頭痛は若年層に多く日常生活に支障をきたす頭痛です。継続的な頭痛に対する悩みがある場合には、片頭痛であるかどうかを医療機関で診断してもらうのが良いでしょう。もし片頭痛であれば、セルフケアや治療など適切な対処法を身につけることが重要です。
現在は、有効な片頭痛予防薬も開発されていることから、慢性的な頭痛のある生活に我慢せず、頭痛に悩まされない生活を目指すことも可能となっています。お近くの脳神経内科、脳神経外科、頭痛外来で一度相談してみてください。
「片頭痛の原因」と関連する病気
「片頭痛の原因」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
片頭痛は特徴的な症状があるとはいえ、頭痛の原因となる病気はたくさんあるため、症状だけで診断することは難しいです。診察だけではなく頭部MRI検査で頭蓋内に問題がないことを確認するなど、他の病気の存在がないことを踏まえて診断していきます。
「片頭痛の原因」と関連する症状
「片頭痛の原因」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- ズキンズキンとする頭痛
- 目がチカチカする
- ニオイが気になる
- 眩しさが気になる
- 音が頭に響く
- 耳鳴りがする
- 天気の悪い日に頭痛がする
- 季節の変わり目に頭痛がする
原因は天気や音、光などの外部環境、ストレスなどの精神的な問題、疲れやホルモンバランスなどの身体的な問題など多岐にわたります。頭痛がどのような時に起こるのか、どのような症状が出るのか、といった自分の頭痛の特徴を知ることは重要です。