「三叉神経痛の前兆となる2つの初期症状」はご存知ですか?原因も医師が解説!
三叉神経痛の初期症状とは?Medical DOC監修医が三叉神経痛の初期症状・原因・セルフチェック法・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。
目次 -INDEX-
「三叉神経痛」とは?
三叉神経痛は発作的に顔面に激痛を起こす病気です。日本では1年間に人口10万人あたり4〜10人程度の発症率で、男性よりも女性に多い傾向があり、50歳以降に発症しやすくなるといわれています。
三叉神経痛は、歯を磨く、顔を洗う、などの日常の何気ない動作がきっかけとなって、顔面の感覚を脳に伝える神経(三叉神経)が刺激されて突然痛みが出現します。
三叉神経は文字通り、脳内では神経が3つの枝に分かれており、顔面の感覚を司っています。三叉神経第1枝は目やおでこ付近の感覚を、三叉神経第2枝は頬や上顎付近の感覚を、三叉神経第3枝は下顎付近の感覚をそれぞれ担当しています。
通常は片側の顔面の痛みであり、短時間でおさまる痛みではありますが、特定の動作を行うと何度でも繰り返すため、日常生活に支障をきたしてしまいます。
今回は、この三叉神経痛の症状や原因などを中心に説明します。
三叉神経痛の前兆となる初期症状
三叉神経痛の多くは突然発症するといわれていますが、鈍い痛みや歯の痛みといった症状が現れてから、とても激しい痛みが出現するというケースもあります。
歯の痛み
食事をする、冷たい水を飲む、歯磨きをするといった動作の際に、下顎にある神経が刺激を受けて歯の痛みを起こすことがあります。
歯科を受診して実際に虫歯や歯周炎などが見つかった場合には、適切な歯科治療がなされても歯の痛みが改善されず、三叉神経痛が疑われるというケースは散見されます。
顔の鈍い痛み
頬や歯、顎に鈍い痛みが発作的に感じられることがあるといわれています。違和感を感じて過ごしているうちに、典型的な三叉神経痛の症状である激しい痛みを感じる、というような経過が見られることがあります。
三叉神経痛の主な原因
三叉神経に対する血管による圧迫
三叉神経痛の主な原因には、脳の深部で三叉神経が周囲の血管(動脈)から圧迫を受けていることが挙げられます。
長期間にわたり動脈から圧迫されることで、三叉神経を保護する膜(神経髄鞘)がダメージを受けてしまいます。すると、神経に異常な電気活動が起こって激しい痛みを生じさせると考えられています。
頭部MRI検査を行うことで、問題となっている血管は見つかる場合がほとんどです。三叉神経からこの血管を数mmだけ移動する脳外科手術を行うことで、痛みは改善することが期待できます。
このように根治的な治療として脳外科手術が考慮されますが、神経を圧迫する原因と考えられた血管が三叉神経に何の影響も与えていない場合や、実際に手術を行った場合に事前のMRI検査では予想していなかった別の原因が見つかる場合もあります。
脳腫瘍
三叉神経は脳神経の中では太めの神経です。脳の深部(脳幹部)から顔面まで走行していくのですが、三叉神経の存在するどこかの場所に腫瘍が発生すると、三叉神経は圧迫されてダメージを受けます。あるいは三叉神経が腫瘍化してしまうこともあり、これらは三叉神経痛の原因となります。
治療は、原因となっているこの脳腫瘍を摘出する手術です。どの程度症状が改善するかは腫瘍の種類や状況によってケースバイケースですので担当医から説明を受けてください。
腫瘍によって神経の圧迫が取れれば三叉神経の機能は元通りになって神経痛の症状は改善されます。しかし、腫瘍が三叉神経の髄鞘へダメージを与えており、三叉神経が正常ではない状態になってしまっている場合には、腫瘍を摘出しても三叉神経痛の症状が解消されない可能性もあります。
膠原病やがん転移など
・どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点、緊急性
三叉神経痛は脳内の病気だけが原因になるというわけではありません。
例えば、混合性結合組織病という膠原病では、10%の人が三叉神経痛を合併すると言われています。頬や顎の領域にしびれ感が出現することが多いといわれています。
また、脳腫瘍ではなく、体内のどこかにできた腫瘍(がん)が脳内へ転移して三叉神経痛を引き起こすこともあります。
このような場合には、原因疾患の治療と三叉神経痛のどちらの治療も必要となるので、まずは主治医に相談して方針を決めていくのが良いと思います。
歯や副鼻腔の炎症
歯や副鼻腔の病気が原因となることもあります。
特に、歯や顎が痛いということで虫歯を疑って歯科を受診して虫歯に関する治療が終わっても痛みが治らないということで、三叉神経痛が判明するというケースはときおり経験します。
また、上の歯のすぐ上の位置には上顎洞という鼻の周囲にあるスペース(副鼻腔)があり、この部分の炎症(上顎洞炎)が起こる場合にも、三叉神経痛を生じることがあります。
原因不明
画像検査や血液検査など、他の全身的な病気を疑っていろいろと検査を行っても三叉神経痛の原因がわからない場合もあります。
前述の疾患以外にも、片頭痛、頚部神経痛、帯状疱疹後疼痛、舌咽神経痛など他の痛みを生じる病気が関与していることも考えられます。
疑わしい病気に対する薬や鎮痛薬などを使って治療へ反応するかどうか、治療を行いながら三叉神経痛であるという診断を行うこともあります。
すぐに病院へ行くべき「三叉神経痛の初期症状」
ここまでは三叉神経痛の初期症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
突然、顔や歯に激痛が走る場合は、脳神経内科・脳神経外科へ
三叉神経痛は急に発症することが多いのですが、一般的な鎮痛薬が効きません。三叉神経痛の痛みに悩む期間が長くなると日常生活への支障は大きいため、早く診断して治療をしていくことが重要です。
歯に響くような痛みのある場合には、虫歯を疑って歯科を受診することが多いでしょう。虫歯がない場合には他の原因を探すことになりますが、実際に虫歯があればその治療をすることになります。虫歯を治すこと自体は必要ですが、三叉神経痛が原因の痛みであった場合には虫歯の治療をしても痛みは改善しません。
定期的な歯科検診を行ない、虫歯を普段からない状態にしておくことも重要です。また、短時間の急な激痛を繰り返す場合には、三叉神経痛の可能性も疑ってみましょう。
受診・予防の目安となる「三叉神経痛の初期症状」のセルフチェック法
- ・顔に急な激痛が走った場合
- ・顔に鈍い痛み・しびれがある場合
- ・虫歯はないのに歯の激痛がある場合
三叉神経痛を予防する方法
現時点で予防法として確立されたものはありません。
三叉神経痛に対する治療が、再発予防になるという意味合いはあるため、治療法とともに解説します。
薬物療法
三叉神経痛は、神経組織の異常な電気信号が原因となっていることが多いため、この電気活動を抑える薬が使われます。一般的な鎮痛薬では効果はありません。抗てんかん薬であるカルバマゼピンや、神経障害性疼痛に用いるプレガバリンなどの薬剤が効果的です。
これらは頓服で用いる鎮痛薬というよりは、予防的に服用する薬であるため、継続的に薬の服用をする必要があります。
起床時と寝る前の1日2回服用することが多いと思いますが、薬の服用をしっかり続けることと洗顔や食事、歯磨きなどの動作を起床時から1−2時間行わないことで、三叉神経痛の激しい痛みの出現頻度が減る方もいらっしゃいます。
これらの薬は効果が出るまで用量を増やして対応することがありますが、カルバマゼピンには薬疹や肝機能障害の副作用が、プレガバリンには眠気やめまいなどの副作用が出現することもあるため注意が必要です。新たな薬を開始した時や薬を増やした際に症状がある場合には担当医へ相談してください。
外科治療
薬物療法で痛みをコントロールできない場合には、神経ブロック療法や手術治療などの外科治療が考慮されます。
神経ブロックは、三叉神経痛で痛みを起こしている神経の周囲に薬液を注入することや、高周波熱凝固と言って神経に熱を加えることで感覚神経の働きを鈍くしてしまう治療です。
手術治療は、頭蓋骨に穴を開けて、三叉神経を圧迫している血管の移動や、腫瘍を除去する操作を行う治療です。手術であるため5−10%程度の何らかの合併症が起こるリスクがありますが、薬物治療や神経ブロック治療などと異なり、根本的な治療であることから三叉神経痛が改善できる可能性が高い治療です。
放射線治療
上記の治療方法で効果がない場合や手術を行うことが難しい場合には、ガンマナイフという放射線治療も考慮されます。
三叉神経の根元に放射線をピンポイントであてることで神経の働きを弱めることで痛みを軽減するという効果があります。手術と異なり入院せずに外来治療で行うことができ、皮膚炎や脱毛などの副作用は少ない治療ですが、痛み症状の根本的な治療ではないことや治療効果が得られるまでに数週間から数ヶ月間かかるというデメリットもあります。
「三叉神経痛の初期症状」についてよくある質問
ここまで三叉神経痛の初期症状などを紹介しました。ここでは「三叉神経痛の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
三叉神経痛になりやすい人の特徴を教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
男性よりも女性にやや多く発症するといわれており、年齢は50歳以降に多いといわれています。
また、動脈硬化も三叉神経痛になりやすい要因の一つとして考えられています。
三叉神経を圧迫する原因となっている血管の多くは、脳の深部にある動脈です。動脈硬化によって血管の蛇行や屈曲などの変化が起こり、近くにある三叉神経を圧迫してしまう可能性が考えられています。
高血圧や脂質異常症などの生活習慣病は動脈硬化を進行させる原因になります。生活習慣病の発症や悪化を防ぐために、食事や運動などを見直して健康的な生活習慣を心がけるようにしましょう。
三叉神経痛は自然と治るのでしょうか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
三叉神経痛は自然に治ることが少ないと思います。激しい痛みによって日常生活に支障をきたすことが多いため治療することをお勧めします。また、三叉神経痛の原因を調べた際に、脳腫瘍などのような放置しておくと致命的になってしまう病気も見つかることもあるため、脳神経内科や脳神経外科を受診して頭部MRI 検査を受けるようにしてください。
編集部まとめ
三叉神経痛は、急に顔の激しい痛みが起こり日常生活に大きな支障をきたす病気です。もっとも痛む場所が顔面ではなくて歯であると虫歯を疑うこととなり、三叉神経痛に気がつくまで時間がかかってしまうこともあります。一般的な鎮痛薬を使っても痛みが改善しないため、早めに脳神経内科や脳神経外科を受診して専門的な治療を受けることをお勧めいたします。
「三叉神経痛の初期症状」と関連する病気
「三叉神経痛の初期症状」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
歯科・口腔外科の病気
耳鼻科の病気
脳神経内科・脳神経外科の病気
- 片頭痛
- 頚部神経痛
- 舌咽神経痛
- 帯状疱疹後疼痛
- 原発性脳腫瘍
- 転移性脳腫瘍
膠原病内科の病気
脳内の血管が三叉神経を圧迫するために起こることが多いのですが、全身のいろいろな病気が原因となることもあります。
「三叉神経痛の初期症状」と関連する症状
「三叉神経痛の初期症状」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 鈍い顔面の痛み
- 虫歯がないのに歯が痛い
- 虫歯を直したがのに歯が痛い
初期症状がない場合も多く、突然発症してしまうのも三叉神経痛の特徴の一つです。気になる症状がある場合には、早めに医療機関への受診をお勧めします。