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「くも膜下出血の主な3つの症状」はご存知ですか?初期症状も医師が解説!

 更新日:2024/01/19
「くも膜下出血の主な3つの症状」はご存知ですか?初期症状も医師が解説!

くも膜下出血の症状とは?Medical DOC監修医がくも膜下出血の症状・初期症状や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

プロフィールをもっと見る
医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

「くも膜下出血」とは?

くも膜下出血は、成人例のほとんどは脳動脈瘤の破裂によって発症します。多くの場合、一度発症してしまうと社会復帰が難しくなることが知られています。
このような危ない病気だと聞いたことがあっても、実際にどのような症状が現れるか、経過をたどるかということは、なかなか想像がつかないのではないでしょうか。
実は、発症後すぐに行う治療だけではなく、発症後から2週間以内はとても慎重な入院管理をする必要があり、さらに発症後1-2ヶ月程度にはまた症状が悪化して手術を要することもあります。
つまり、発症時点と、発症後2週間以内と、発症後1-2ヶ月程度という3つの大きな山を乗り越えて、やっとひと段落というイメージです。
この記事では、発症の前兆、発症時、直後から慢性期までの症状について解説いたします。

くも膜下出血を発症した時の代表的な症状

くも膜下出血の発症時には、頭痛や嘔気・嘔吐、意識消失がよく見られる症状です。
これらのいずれかの症状が出現する場合も、全ての症状が出現する場合もどちらもあります。
発症時には、本人は身動きが取れないくらいに辛い症状となることもあるため、すぐに救急車を呼んで脳神経外科のある病院を受診するようにしましょう。

突然の激しい頭痛

代表的な症状は、突然の激しい頭痛です。バットやハンマーで殴られたような痛み、などと表現されますが、これまで経験したことのない激しい頭痛が急に起こることが特徴です。頭痛のあった時刻を、何時頃ではなくて、「何時何分にあった」というように明確に覚えている患者さんもいらっしゃいます。
もともと頭痛持ちであっても、いつもの頭痛とは異なって感じる場合がほとんどです。
この激しい頭痛に、嘔気・嘔吐を伴うことも、意識を失ってしまうこともあります。
市販の鎮痛薬だけではなく、医療機関で処方される鎮痛薬もこの頭痛には効きません。

嘔気・嘔吐

くも膜下出血の発症時に頭痛はなくて、急に嘔気や嘔吐のみが出現することもあります。
他に胃腸炎の症状がなくて、食中毒など何か思い当たるエピソードもない場合には候補の一つにはなるかもしれませんが、この嘔気・嘔吐の症状だけでくも膜下出血を診断することは難しいと思われます。市販のはき気止めがある場合には、一度服用してみても良いでしょう。くも膜下出血を発症している場合には十分な効果は得られないと思います。
人間ドックで脳動脈瘤を指摘されている場合や、家族の方でくも膜下出血を発症した方がいる場合には、くも膜下出血を発症する確率は高まるので、突然の嘔気や嘔吐が現れた場合には、病院受診も検討してください。

意識障害

激しい頭痛がありその後に意識状態が悪くなる場合は、くも膜下出血を疑う典型的なエピソードです。周囲の方がいればすぐに対応できるのですが、一人でいる場合は救急車を呼ぶことが困難となってしまう可能性もあります。

くも膜下出血の前兆となる初期症状

くも膜下出血の前兆が起きた際に、早めに治療を行うことで発症して重篤な状態に陥ることを予防することが可能です。

頭痛や嘔気・嘔吐

くも膜下出血の前兆で、軽い頭痛、嘔気・嘔吐などを自覚することがあります。これは微小出血といって、脳動脈瘤から少しだけ出血するために起こると考えられています。
脳ドックなどで未破裂脳動脈を指摘されている場合には注意しておいたほうが良いでしょう。特に、これまで風邪や疲れなどで経験したことのある頭痛とは雰囲気の異なる頭の痛みであれば、一度脳神経内科や脳神経外科で相談することをお勧めします。

瞼が上がらない、見えづらい

未破裂脳動脈瘤のサイズが大きくなっていくにつれて動脈瘤が破れてしまう可能性が高まりますが、それとともにその大きな動脈瘤の発生部位によっては脳神経が圧迫されることがあります。
圧迫される脳神経が目に関係する神経(動眼神経)である場合には、瞼が重くてあがらない(目が開きづらい)、見えづらい(ものが二重に見える)などのような症状が現れます。
この場合には、動眼神経へのダメージを緩和する目的と、脳動脈瘤の破裂、つまりくも膜下出血の発症を予防する目的で、すぐに手術治療を行う必要があります。緊急性が高い状態ですので、脳神経外科のある救急病院を受診するようにしてください。

くも膜下出血の発症後1−2ヶ月間の経過

冒頭で説明したように、くも膜下出血は、発症後すぐに行う治療だけではなく、発症時点と、発症後2週間以内と、発症後1-2ヶ月程度という3つの山を乗り越える必要があります。
発症時には、脳動脈瘤の破裂の場合には脳動脈瘤に対するクリッピング術(開頭手術)やコイル塞栓術(カテーテル手術)を行い、脳動脈瘤の再破裂を予防します。
発症後から2週間以内は、脳血管が縮んで細くなる(攣縮する)ことによって脳梗塞を発症する可能性の高い時期であるため、この脳梗塞を防ぐために連日各種薬剤の投与や血圧、頭蓋内圧などの細かい管理を行います。
2週間が経って一息ついたかと思いきや、発症後1-2ヶ月程度で水頭症を発症し認知症のような症状が出現することもあり、この場合には手術を行うことで水頭症の症状が改善します。

手足の筋力低下、しびれ、しゃべりづらさ

発症後2週間以内の脳血管攣縮期(脳の血管が縮んで細くなる時期)には、脳梗塞の症状がいつでも起こる可能性があります。脳の血管が縮んで細くなると、その部分の脳血流が途絶えて脳梗塞を発症し後遺症が生じてしまうため、なんとしてもこれは避けたいのです。
血管を広げる作用のある内服薬や点滴薬を投与したり、適切な血圧管理や頭蓋内圧管理を行ったり、ありとあらゆる手を尽くして治療します。
ただし、それでも手足の筋力低下、しびれ、しゃべりづらさなどの脳梗塞を疑う症状が一瞬でも出現することがあります。この場合には、すぐにカテーテル治療を行い、縮んで細くなった血管の場所を特定して、その血管だけをカテーテルで選んで血管拡張薬(血管を拡げる作用のある薬)を流し込む手技を行います。症例によっては連日連夜この治療を必要とすることもあるのと、3週間くらいまで脳血管攣縮期が続くこともあるため、この時期は治療担当の脳神経外科医にとって非常に緊張する期間です。

ぼーっとしている、物忘れする、うまく歩けない

発症後1-2ヶ月程度の時期には、正常圧水頭症という病気が起こりやすくなります。ぼーっとしたり転びそうになってしまったり、おしっこが間に合わなかったりというような症状が現れることがあります。くも膜下出血の発症から3ヶ月以上経過した後に発病するケースもあります。
もともと頭蓋内では、脳組織周囲に脳脊髄液という透明な液体が絶えず循環して入れ替わっています。この脳脊髄液が大量に溜まって脳が圧迫される状態を水頭症といいます。
くも膜下出血では、脳脊髄液が吸収されるシステムがうまく働かなくなり、正常圧水頭症を発症しやすいと言われています。
正常圧水頭症は治る認知症として知られています。手術によって頭蓋内に溜まった水を腹部などに排液するルートを作る手術(シャント手術)を行うと認知症の症状が改善します。現時点で治療効果の高い薬物療法はありません。

すぐに病院へ行くべき「くも膜下出血の症状」

ここまではくも膜下出血の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

経験したことのない突然の激しい頭痛がある場合は、脳神経外科へ

繰り返しの説明にはなってしまいますが、初めて経験する突然の激しい頭痛が、最も多いくも膜下出血の症状です。頭痛に加えて嘔気・嘔吐や意識状態の悪化が見られる場合には、くも膜下出血である可能性が高まります。
このような症状を認めた場合には、ためらうことなくすぐに救急車を呼んで脳神経外科のある病院を受診するようにしてください。

受診・予防の目安となる「くも膜下出血」のセルフチェック法

  • ・経験したことのない突然の激しい頭痛がある場合
  • ・頭痛の後に意識を失った場合
  • ・頭痛と嘔吐が急に出現した場合

「くも膜下出血の症状」についてよくある質問

ここまでくも膜下出血の症状を紹介しました。ここでは「くも膜下出血の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

軽いくも膜下出血の症状について教えてください。

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

病院では、くも膜下出血の発症時の状態を重症度で分類して、発症後の経過の予測を行って治療します。軽度(軽いくも膜下出血)の場合には、これまで経験したことのない突然の激しい頭痛や嘔気・嘔吐がみられます。なお、中等度の場合には意識を失うこともあり、重度の場合には、意識状態が非常に悪くなります。
他にも経過の予測を行う指標はいくつかあり、これらを総合的に判断をして治療します。

高齢者がくも膜下出血を発症した場合、どのような症状が現れますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

高齢者も若年層もほとんど症状に差はありません。頭痛と嘔気・嘔吐、意識障害の全てかいずれかの症状が現れます。

編集部まとめ

くも膜下出血を発症した多くの人が何らかの後遺症を持つことが多いのは、発症時だけではなく、発症後1-2ヶ月もの間、乗り越えるべき危ない時期があるためです。持病やもともとの体力の問題などのために、経過が良くないと残念ながら救いきれないこともあります。
そのような事態にはならないように、発症したらすぐに病院を受診することはもちろん、発症を予防することが重要です。生活習慣病の発症予防や悪化予防、定期的な脳ドックを受けること、未破裂脳動脈の治療を受けることなどで、脳の健康を保つようにしていきましょう。

「くも膜下出血の症状」と関連する病気

「くも膜下出血の症状」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経外科の病気

くも膜下出血の原因は年齢で大きく異なり、小児では脳動脈奇形といった先天的な血管病変の破裂が大半を占めます。一方で成人では脳動脈瘤の破裂が原因のほとんどです。
なお、頭部打撲でも打撲の衝撃が強い場合には、脳血管が出血してしまいくも膜下出血(外傷性くも膜下出血)を起こす場合もあります。外傷性くも膜下出血では脳梗塞の症状を出現することは少ないのですが、1ヶ月以上経過して正常圧水頭症を発症することはあります。

「くも膜下出血の症状」と関連する症状

「くも膜下出血の症状」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 頭痛
  • 意識状態の悪化
  • 手足の麻痺
  • 手足の痺れ
  • 喋りづらさ
  • 歩きづらい
  • 尿もれ

発症時と、発症後2週間以内と、発症後1ヶ月頃(以降)とは出現する症状が異なります。発症後1ヶ月間程度は入院していることも多いので、症状の変化があまりわからないかもしれませんが、日々の症状変化を気にしながら脳神経外科では治療をしています。

この記事の監修医師