「セロトニンが不足」すると現れる症状はご存知ですか?顔つきの変化も医師が解説!

セロトニンが不足すると現れる症状とは?メディカルドック監修医がセロトニンの働き・不足する原因・生まれつき少ない原因・不足しやすい人の特徴・顔つきの変化・不足すると発症しやすい病気などを解説します。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。
目次 -INDEX-
「セロトニン」とは?

セロトニンは、脳内で情報のやり取りを行う「神経伝達物質」の一つです。気分や不安、睡眠、食欲、痛みの感じ方などに関わるため、一般的に「幸せホルモン」と呼ばれることもあります。
ただし、医学的には、セロトニンは「幸せを作る物質」という単純なものではありません。私たちの心身の状態は、セロトニンだけでなく、ドパミン、ノルアドレナリン、GABA、グルタミン酸など多くの神経系や、ホルモン、生活習慣、ストレス、遺伝など複数の要因が組み合わさって決まります。
そのため、「セロトニンが不足すると必ずうつ病になる」といった単純な因果関係ではなく、セロトニンの働き(シグナル)のバランスが崩れることが、不調に関与する可能性がある、という理解が現実に近いと思われます。
セロトニンはどこから分泌されるの?

「脳の物質」というイメージが強いセロトニンですが、実は体内では腸(消化管)で作られる量が圧倒的に多いことが知られています。体内のセロトニンの多くは腸で合成され、血液中では血小板が取り込んで保持します。脳内に存在するセロトニンは全体の一部(およそ1〜2%程度)とされます。
・腸のセロトニン:消化管の運動(蠕動)などに関与
・血液(血小板)のセロトニン:血管や止血などに関与
・脳のセロトニン:気分・不安・睡眠・痛みなどの調節に関与(脳幹の縫線核などが重要)
ここで大切なのは、腸で作られたセロトニンそのものは、脳へ直接届かないという点です。脳には「血液脳関門」があり、セロトニンは基本的に通過できません。つまり、精神の安定などに関わる脳内のセロトニンは、脳内で合成される必要があるということです。
セロトニンの働き

セロトニンは心だけでなく、体の機能維持にも深く関わっています。代表的な5つの働きを解説します。
感情を安定させる(メンタルバランス)
セロトニンは、気分の落ち込みや不安、イライラなどの感情の波に関わる神経ネットワークの調整に関与します。セロトニンの働きが整っていると、感情が極端に振れにくくなり、気持ちの切り替えがしやすくなることがあります。
ストレスへの抵抗力を高める
ストレス反応には、扁桃体など情動に関わる脳領域が関与します。セロトニンはこれらの活動の調整に関わるため、働きが乱れると不安が強くなったり、緊張が抜けにくくなったりすることがあります。
睡眠リズムを整える(メラトニンの材料)
セロトニンは、睡眠ホルモンとして知られるメラトニンの材料(前駆体)です。日中の光環境や生活リズムが乱れると、睡眠の質やリズムに影響が出ることがあります。
姿勢・活動性に関わる
「背すじが伸びない」「動くのがおっくう」などの変化は、セロトニン単独というより、睡眠不足・抑うつ・ストレス・体力低下など複数要因の結果として現れやすい症状です。セロトニンは覚醒や意欲に関わる神経系とも関連するため、バランスが崩れると「元気が出ない感じ」につながることがあります。
痛みを調整する(鎮痛作用)
脳には痛みを調整する「下行性疼痛調節系」があり、セロトニンはこの調節に関与します。ただし、重要なのは、セロトニンは状況や部位、受容体によって痛みを抑える方向にも、増強する方向にも働き得る点です。慢性痛ではこの調節バランスが崩れていることもあります。
セロトニンが不足すると現れる症状

「セロトニン不足」という言葉は便利ですが、実際にはセロトニンの量そのものより、「働き(シグナル)のバランス」が乱れている状態を指して語られることが多いです。
そのうえで、現れやすい症状を「心」「体」「見た目」に分けて紹介します。
心の症状:イライラ・不安・意欲低下
・理由もなく不安になる、落ち着かない
・些細なことでイライラする、怒りっぽくなる
・何をしても楽しくない、やる気が出ない
・集中力が落ち、ミスが増える・先延ばしが増える
これらはセロトニンだけが原因とは限りませんが、睡眠不足やストレスが続くと悪化しやすい症状です。
体の症状:不眠・原因がはっきりしない不調
・寝つきが悪い/途中で目が覚める/朝早く目覚める
・日中の眠気、だるさ
・頭痛や肩こり、胃腸の不調などが続く
こうした症状は自律神経の乱れやストレス、うつ・不安、生活習慣などでも起こります。検査で大きな異常がないのに不調が続く場合は、心身両面から評価することが大切です。
見た目の症状:疲れて見える・表情が硬い
「セロトニン不足で顔がこうなる」と断定できる所見はありません。ただし、睡眠不足・疲労・ストレス・抑うつ状態が続くと、次のように“そう見える”ことがあります。
・表情がこわばる、笑顔が出にくい
・目つきが鋭く見える/逆にぼんやりして見える
・姿勢が丸くなり、元気がなさそうに見える
もし、片側の顔が下がる、急なろれつ不良、片目が開きにくい、二重に見える、手足のしびれなどが伴う場合は、脳卒中や神経疾患など緊急性があることもあるため、早めに医療機関へ相談してください。
セロトニンが不足する原因

現代人の生活スタイルには、セロトニン系のバランスを乱しやすい要素がいくつもあります。
日光不足とリズムの乱れ
日照や生活リズムは、脳内のセロトニン機能や体内時計に影響する可能性が示されています。外に出る時間が少ない、昼夜逆転などが続くと、睡眠や気分の不調につながることがあります。
リズム運動の不足
ウォーキングなどのリズム運動は、気分や睡眠の改善に役立つことが多く、セロトニン系とも関連が指摘されています。忙しさで動く時間が減ると、不調が長引きやすくなります。
栄養不足(トリプトファン不足)
セロトニン合成には必須アミノ酸のトリプトファンが必要で、体内で作れないため食事から摂取します。極端なダイエットや偏食でタンパク質が不足すると、材料不足になり得ます。
慢性的なストレス
慢性ストレスは睡眠、食行動、活動量、ホルモンバランスなどを乱し、結果として気分や不安、痛みの感じ方にも影響します。
セロトニンが生まれつき少ない原因

遺伝的要因(セロトニントランスポーター遺伝子)
セロトニンの量を調節する「セロトニントランスポーター」というタンパク質の遺伝子には主に2種類のタイプがあります。「L型(Long型)」と「S型(Short型)」です。日本人には「S型」の人が多く、この「S型」を持つと、セロトニンの再利用効率が低く不安を感じやすく、うつ病にもかかりやすいとされ、かつて大きな話題となりました。
しかし、近年の大規模な研究では、強い相互作用があるとは言い切れないとする報告もあり、結論は一様ではありません。
性差(脳内合成能の違い)
脳科学の研究(PET検査を用いた研究など)によると、男性に比べて女性は脳内でのセロトニン合成能力(作るスピード)が低い傾向があることが示されています(男性の方が約52%高いという報告もあります)。そのため、女性はホルモンバランスの変化(月経、出産、更年期)と合わさって、セロトニン不足による不調を感じやすい傾向にあります。
幼少期のストレス(エピジェネティクス)
生まれ持った遺伝子だけでなく、育った環境も影響します。幼少期に強いストレスや愛情不足などの環境に置かれると、遺伝子のスイッチの入り方(エピジェネティクス)が変化し、大人になってからストレスに対して敏感になったり、セロトニン機能が低下しやすくなったりすることが研究で示唆されています。
セロトニンが不足しやすい人の特徴

屋内中心の生活・運動不足の人
外出が少ない、活動量が少ない生活が続くと、睡眠や気分のリズムが崩れやすくなります。まずは短時間でもよいので、日中の光と軽い運動を取り入れるのがおすすめです。
真面目で責任感が強い人
几帳面で責任感が強い人ほど、緊張が抜けにくく、休息が不足しがちです。ストレスが続くと睡眠が浅くなり、不安やイライラが増す…という悪循環に入ることがあります。
性格の問題ではなく、回復の設計(休息・睡眠・運動)が必要なタイプと捉えると改善しやすくなります。
偏った食事制限をしている人
セロトニンの材料となるトリプトファンはたんぱく質に含まれます。また、脳への取り込みは食事バランス(他のアミノ酸との比率や糖質摂取の影響)で変わり得ます。極端な糖質制限や単品食が続く場合は、体調に合わせて見直す価値があります。
セロトニンが不足すると顔つきはどうなっていく?

結論から言うと、「セロトニン不足に特有の顔つき」はありません。
ただし、睡眠不足・疲労・ストレス・抑うつが続くと、周囲から「そのように見える」変化が出ることがあります。
まぶたが重くなる・目が小さく見える
寝不足や疲れが続くと、目の開きが悪くなったり、目つきがきつく見えたり、ぼんやり見えたりすることがあります。目の症状は乾燥、眼精疲労、アレルギー、甲状腺疾患などでも起こるため、違和感が強い場合は眼科を受診して相談することも良いでしょう。
表情が乏しくなる
心身の余裕がなくなると、笑顔が減り、反応が薄く見えたり、表情が硬く見えたりすることがあります。これは「気合いの問題」ではなく、睡眠・ストレス・気分状態の影響として起こることがあります。
頬がたるみ、老けて見える
睡眠不足やストレスが続くと、むくみ、肌荒れ、姿勢の崩れなどが重なって“老けて見える”ことがあります。生活改善で戻ることも多い一方、急激な変化や左右差がある場合は、別の疾患が隠れていないか確認が必要です。
セロトニンが不足するとどんな病気になりやすい?

うつ病・うつ状態
セロトニン不足との関わりで最も知られる病気がうつ病です。脳内のセロトニンが低下すると気分を安定させることが難しくなり、意欲の低下や深い抑うつ気分が続くようになります。セロトニンの不足だけが原因ではありませんが、大きな誘因の一つです。治療には抗うつ薬(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が世界的によく用いられており、脳内セロトニン濃度を高めることで症状の改善を図ります。
日常でできる対策としては、規則正しい生活や軽い運動、十分な休養が重要ですが、重いうつ状態の場合は薬物療法やカウンセリングが必要になります。精神科・心療内科を受診し、専門医の診断のもと適切な治療を受けましょう。
睡眠障害(不眠症・概日リズム睡眠障害)
セロトニン不足は睡眠障害のリスクも高めます。不眠症では夜間に十分眠れない状態が続きますが、セロトニンが低いとうつや不安が誘因となって入眠困難や中途覚醒が起こりやすくなります。また昼夜逆転の生活リズムになる概日リズム睡眠障害や、過眠傾向(夜間長く寝ても昼間に強い眠気が出る)もセロトニン機能の乱れと関連します。
対処法は、生活習慣の改善です。朝起きたら日光を浴びて体内時計をリセットし、適度に身体を動かす習慣をつけましょう。寝る前の強い光や刺激を避け、睡眠環境を整えることも重要です。
それでも不眠が続く場合は、睡眠外来や精神科で相談してみてください。不眠の背後にうつ病など他の疾患が隠れているケースもあるため、専門医に評価してもらうことが望ましいです。
不安障害・パニック障害
セロトニン不足は不安障害(全般性不安障害など)やパニック障害とも関係があります。不安や恐怖を和らげるセロトニンが不足すると、ちょっとしたきっかけで強い不安発作やパニック発作を起こしやすくなります。動悸、息切れ、めまい、発汗など激しい症状が突発的に起こるパニック障害では、脳内のセロトニン神経機能の低下が関与しているとされています。
治療には、うつ病と同様に抗不安薬やSSRIが有効で、発作を予防したり不安感を和らげたりします。
症状が軽い段階では深呼吸法や認知行動療法などで対処可能な場合もありますが、日常生活に支障が出るようなら精神科での治療を検討してください。
「セロトニンの不足」についてよくある質問
ここまでセロトニンの不足について紹介しました。ここでは「セロトニンの不足」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

セロトニンをたくさん出す方法はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
一気に増やす魔法はありませんが、「朝の光」と「リズム運動」が最強のスイッチです。朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びましょう(15分〜30分)。そして、「歩く」「階段を使う」「よく噛んで食べる」といったリズム運動を意識してください。ガムを噛むだけでも脳への刺激になります。これを毎日続けることで、脳のセロトニン神経が鍛えられます。
セロトニンを増やす食べ物について教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
セロトニンの材料となる「トリプトファン」、合成を助ける「ビタミンB6」、そして脳への取り込みを助ける「炭水化物」の3つをバランスよく摂ることが大切です。これらを効率よく含んでいるのがバナナです。また、朝食に「ご飯(炭水化物)+納豆・味噌汁(大豆製品:トリプトファン)+焼き魚(ビタミンB6)」という和食メニューを摂ることは、理にかなった最強のセロトニン食と言えます。
セロトニンが不足しているかどうかのセルフチェック法を教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
以下の項目に当てはまるものが多いほど、セロトニン不足の可能性が高いと考えられます。
・朝起きたとき疲労感が強く、すっきり目覚められない。
・夜型生活になりやすく、昼夜逆転ぎみである。
・日中に日光を浴びる時間が極端に少ない。
・運動習慣がなく、ほとんど体を動かさない。
・イライラしやすく、ちょっとしたことで怒りがちになる。
・集中力が続かず、物事に注意が向けられない。
・疲れやすく、常に体がだるい感じがする。
該当項目が多い方は、生活習慣の改善(朝の光、運動、食事など)をぜひ試してみてください。
まとめ
セロトニンは、気分・不安・睡眠・痛みなどに関わる重要な神経伝達物質です。ただし「セロトニン不足=病気」と単純に決まるわけではなく、生活リズム、ストレス、睡眠、栄養、体質など複数要因の影響で働き(バランス)が乱れることで不調が出やすくなります。
不調を感じたら、まずは「起床時刻を固定する」「朝の光を取り入れる」「日中に少しでも歩く」「タンパク質を含む食事を整える」といった基本から始めてみてください。それでも改善しない、または日常生活に支障が出るほどつらい場合は、一人で抱え込まず、精神科・心療内科・睡眠外来などで専門的な評価を受けましょう。
「セロトニン」と関連する病気
「セロトニン」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
セロトニンの不足や過剰は、心の安定や睡眠、自律神経のコントロールに大きな影響を及ぼします。
「セロトニン」と関連する症状
「セロトニン」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 朝すっきりと起きられない
- 理由もなく不安やイライラを感じる
- 姿勢が悪くなり、猫背気味である
- 表情が乏しい
- まぶたが重いと言われる
- 痛みを感じやすくなった
- 休日は家から出ず、太陽を浴びない
これらはセロトニン不足をセルフチェックできる方法の一つです。多く当てはまる場合にはセロトニン不足の可能性があるので、まずは生活リズムを整えてみてください。それでも改善しない場合や、身体的な症状が強い場合は、早めに専門医に相談することをお勧めします。
参考文献




