「寝不足」で”血圧”はどう変化する?続いた時に注意すべき症状も医師が解説!

寝不足の時、血圧はどう変化するかご存知ですか?とき、身体はどんなサインを発している?メディカルドック監修医が病気のリスク・対処法など解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
寝不足と血圧の関係性とは?
寝不足と血圧には、深い関わりがあります。まずは寝不足だと血圧にどのような影響があるのかを押さえておきましょう。
睡眠不足とは?寝不足・徹夜の定義
睡眠不足とは、一般的に「心身ともに健康に過ごすために必要な睡眠が十分に取れていないこと」を指します。
成人の場合6時間未満の睡眠時間が続くと「睡眠不足」と判断される傾向があります。
これは、厚生労働省による「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で、成人は1日あたり少なくとも6時間以上の睡眠を確保するようにすすめられているためです。同ガイドでは、個人差があるものの、成人の適正な睡眠時間は6~8時間とされています。
また、「徹夜」という言葉に明確な定義は定められていませんが、一般的には「あること(仕事や勉強など)をして夜通し起きていること」や「眠らずに連続して起きていること」を指します。
また、必要な睡眠時間は以下のように季節や年齢によっても異なります。
| 睡眠時間と関係する要素 | どのように変化するか |
|---|---|
| 年齢 | 加齢によって必要な睡眠時間は徐々に短くなる |
| 季節 | 冬より夏の方が10~40分ほど短くなる |
ただし、実際に必要な睡眠時間は、体質や持病の有無などによっても異なります。布団に入ってから寝付くまでの時間によっても睡眠時間は異なるため、睡眠不足状態が慢性的に続く場合は医療機関で相談したり、睡眠時間を計測するアプリなどを利用したりするのもよいでしょう。
睡眠不足が血圧に与える影響
睡眠不足は、血圧の上昇に大きな影響を与えます。
一晩徹夜をするだけでも、血圧は通常よりも上がりやすくなります。本来、睡眠中は神経が「休息・リラックスモード」へ切り替わり、血圧は自然と下がるのが通常です。しかし、寝不足だとこの「リラックスモード」への切り替わりがうまくいかず、「活動・興奮モード」が続き、血圧が下がらなくなるのです。
健康な成人でも、1日徹夜をすると血圧が約10mmHg上がったという報告もあります。
この状態が慢性化すると、血管は常に緊張した状態となり、血圧が下がりにくくなります。
つまり、睡眠不足は短期的・長期的どちらの面でも高血圧のリスクとなるのです。
寝不足だと血圧の下の数値が上がりやすい?
寝不足の場合、上と下の血圧両方が高くなる可能性が高いと考えられます。
寝不足だと、神経が興奮状態のままになるため、夜の血圧が十分に下がりません。その結果、血圧が全体的に上がりやすくなります。
そのため、下が高い場合もあれば上が高くなることもあり、一概にはどちらが上がりやすいとは断言できません。
寝不足で血圧が上がる原因は?
寝不足は、さまざまな原因によって血圧を上昇させます。ここでは、そのうち「自律神経の乱れ」「ホルモンバランスの変化」「腎臓の機能低下」の3つを解説します。
自律神経の乱れ
寝不足になると、「交感神経」の活動必要以上に活発になり、自律神経のバランスが崩れて血圧が上がりやすくなります。
自律神経には、活動・興奮モードの「交感神経」と、休息・リラックスモードの「副交感神経」があります。健康な状態では、人は毎日以下のようなサイクルを繰り返しています。
| 夜間 | 日中 | |
|---|---|---|
| 優位になる自律神経 | 副交感神経 | 交感神経 |
| 血圧 | 下がる | 上がる |
しかし、寝不足になると、交感神経から副交感神経への切り替えがうまくできません。その結果、自律神経のバランスが崩れて血圧のコントロールが難しくなるのです。
ホルモンバランスの変化
寝不足は、ホルモンバランスの変化による血圧の上昇にも影響しています。
寝不足によって上昇する可能性のある、血圧上昇に関わるホルモンをいくつか紹介します。
・カテコールアミン(ノルエピネフリンなど):交感神経を興奮させ、血管を収縮させる
・コルチゾール:ストレスに対抗するため分泌され、血圧も上昇させる
・ナトリウム調節ホルモン(アルドステロン):腎臓に作用し、ナトリウムを体内にためることで血圧を上昇させる
通常、身体はさまざまなホルモンの分泌が複雑に関係しあって、体調を維持しています。しかし、寝不足によってこのバランスが崩れると、血圧を上昇させるホルモンの影響が強くなり神経が「興奮・緊張状態」に傾くため、血圧が上がりやすくなります。
腎臓での塩分排泄機能の低下
寝不足は、腎臓が持つ「余分な塩分を体外に捨てる機能」を低下させることでも、血圧を上昇させます。これに関わるのが、先ほど紹介した「アルドステロン」というホルモンです。
通常、腎臓は体内の塩分濃度を一定に保つため、余分な塩分(ナトリウム)を尿として排泄しています。しかし、寝不足が続くとアルドステロンの分泌が増加し、腎臓に対して「塩分を排泄せず、体内に溜め込むように」という指令が出されます。
塩分には水を引き付ける性質があるため、塩分が増えると体の水分量も増加します。その結果、全身を流れる血液(水分)の量が増え、血管にかかる圧力が強くなり血圧が上昇するのです。
睡眠障害があると高血圧になりやすい?
十分な睡眠がとれずに睡眠障害になると、血圧が上がりやすくなります。睡眠障害には「不眠症」「むずむず足症候群」「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」などさまざまな種類があります。寝不足をまねくという意味ではどれも血圧上昇につながりますが、とくに影響しやすいのは睡眠中に空気の通り道が狭くなって呼吸がしにくくなる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、何かしらの要因があって高血圧になる「二次性高血圧」のもっとも多い要因とされています。
呼吸がうまくできないと、体内の酸素が不足したり、呼吸を強めようとして身体が胸を大きく動かそうとしたりします。その結果、交感神経の強い緊張やホルモン分泌のバランス変化が起こり、血圧が上昇します。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群があると、昼間に加えて夜の血圧も上がりやすいのが特徴です。
ご家族から夜のいびきや呼吸の停止を指摘されたことがある、日中の強い眠気がある方は、かかりつけの内科や呼吸器内科での相談も検討してみましょう。
寝不足が続いたときに注意すべき症状
寝不足が続いたときに注意すべき症状を、5つ紹介します。
朝の血圧の上昇
寝不足が続くと、朝の血圧が上がりやすくなります。
血圧は、夜間に日中より10~20%下がり、朝方から日中にかけて上昇するのが通常の変動リズムです。しかし寝不足の人は、夜間に血圧が十分に下がりきらず、毎日の血圧の変動リズムが乱れがちです。
血圧の変動リズムが乱れていると、血管や臓器のダメージが大きくなり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まることがわかっています。
疲れの蓄積
寝不足だと、本来睡眠によって回復する疲れが取れずに朝や翌日まで残りがちです。さらに、自律神経のバランスが崩れると「疲れ」以外にさまざまな症状が起こることがあります。
疲れの蓄積によって起こりやすい症状は、以下のとおりです。
・頭痛
・一時的な動悸・めまい
・だるさ
寝不足によってこれらの症状が出ている方は十分な休息をとり、回復しない場合は内科・循環器内科の受診を検討しましょう。
心血管疾患のリスク増加
寝不足は、以下の理由から命に関わる心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを増加させます。
・自律神経のバランスを崩す
・血圧を上げる
・高血圧以外の生活習慣病(糖尿病・脂質異常症)リスクを上げる
・肥満リスクを上げる
・血管の炎症につながる
なお、交代制勤務の職に就いている方は、睡眠のリズムや質が低下しやすく、交代制でない勤務の方よりも心血管系疾患の発症リスクが1.15倍に増加するという報告もあります。
肥満・糖尿病のリスク増加
寝不足はホルモンバランスを乱し、肥満や2型糖尿病の発症リスクも高めます。
睡眠時間が短くなると、食欲を抑制するホルモン「レプチン」の分泌が減少し、食欲を増進するホルモン「グレリン」の分泌は増加します。「寝不足だとドカ食いしやすくなる」というのは、このホルモンバランスの乱れによるものです。この状態は、おもに以下2つの仕組みによって糖尿病のリスクを高めます。
| 仕組み | メカニズム |
|---|---|
| 寝不足によって糖尿病のリスクが直接上がる | 寝不足により、体内で分泌されている血糖値を下げるホルモン「インスリン」の効きが悪くなり、血糖値が上昇しやすくなる |
| 寝不足によって起こる「食べすぎ」が原因で糖尿病リスクが上がる | 食べすぎによって摂取カロリーが過剰になり、血糖値が上昇する ・食べすぎによる肥満によってインスリンの効きが悪くなる |
肥満は、血圧を上げる要因の一つでもあります。寝不足は直接血圧を上げるだけでなく、肥満や糖尿病リスクの上昇にも関わるのです。
精神疾患のリスク増加
寝不足は心の健康にも大きな影響を与え、以下のような精神疾患のリスクを高めるおそれがあります。
・うつ病:気分の落ち込みや不安、食欲不振などが続く状態
・不安障害:強い不安によって日常生活に支障をきたす状態
精神疾患の方は不眠があらわれやすく、寝不足になりがちです。また、現在不眠がある方は、そうでない方よりも将来的にうつ病になりやすいという報告もあります。
慢性的な寝不足はうつ病をはじめとする精神疾患のリスクを高めます。すでに気分の落ち込みや食欲低下などが続いている方は、精神科や心療内科への相談も検討してみてください。
医療機関への受診する目安となる寝不足・血圧の関連症状とは
寝不足だと全体的な体調が悪くなりやすく、どの程度の体調で受診すべきか迷う方も少なくありません。ここでは、受診の目安となる体調について解説します。
家庭での血圧が高い状態が続いている場合
寝不足による体調悪化を感じていなくても、家庭での血圧が135/85mmHg以上の日が続いたら注意が必要です。
ただし、そのときの体調や血圧の数値によっても異なるため、「こうなったら受診すべき」という明確な基準は定められていません。ただし、以下のような場合は、自覚症状がなくてもできるだけ早く受診することをおすすめします。
・安静にしていても上の血圧が180mmHgを超えている
・定期的に内科にかかっておらず、医師の指導を受けていない
なお、寝不足によって血圧が高いと考えられる日は、血圧の記録に「寝不足(○時間睡眠)」のように記載しておくと、診察時の参考になります。受診先はかかりつけの内科や循環器内科です。
あらわれると危険な症状がある場合
血圧が高くて以下のような症状がある場合は、血圧の急激な変動や脳、心臓などへの影響が出ているおそれがあります。
できるだけ早く、内科や循環器内科を受診しましょう。
| 症状 | 可能性のある状態 |
|---|---|
| ひどい頭痛・頭が重い感じ | 高血圧の悪化 |
| 動悸・脈の飛び | 不整脈・心不全 |
| 激しい胸の痛み 呼吸の苦しさ |
心筋梗塞 |
| 片側の手足の麻痺・力が入らない 言葉が出ない |
脳梗塞 |
とくに脳梗塞や心筋梗塞は、どれだけ早く治療を開始できるかが治療の結果を大きく左右します。症状があらわれたら救急車を呼び、できるだけ早く治療を開始しましょう。
「寝不足」で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「寝不足」が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
睡眠障害・不眠症
睡眠障害とは、睡眠に関するさまざまな病気のことです。睡眠障害のなかで一番多いのは、十分な睡眠の量や質を確保できない「不眠症」です。
以下に、睡眠障害の種類や特徴をまとめました。
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| 不眠症 | 健康を維持するために必要な睡眠時間の量や質が低下し、生活に支障をきたす状態 |
| 過眠症 | 日常に過剰な眠気が起こる状態 |
| 睡眠時随伴症 | 睡眠中に起きる「寝ぼけ行動」のこと |
不眠症は抱える問題によって、「入眠障害(寝つきが悪い)」「中途覚醒(何度も目が覚める)」「早朝覚醒(朝早く目覚めてしまう)」の3種類に分けられます。原因は人によって異なり、ストレスや生活習慣、睡眠環境などのケースもあれば、睡眠時無呼吸症候群、むずむず足症候群などの他の睡眠障害による不眠のケースもあります。
不眠症の治療には、眠りやすくする生活習慣の指導や持病の治療、睡眠薬の処方などがおこなわれます。
「布団に入っても寝付けない」「眠れなくて日中の活動に支障が出る」などの状態が続く場合は、かかりつけの内科もしくは精神科・心療内科などへ相談してみましょう。
高血圧
高血圧とは、心臓が血液を全身に送る際に動脈にかかる圧力が、正常値よりも高い状態です。自覚症状がないケースが多いのですが、放置すると動脈硬化や脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などのリスクが高まるため治療が必要です。
医療機関で測る血圧が140/90mmHg以上または家庭で測る血圧が135/85mmHg以上の場合に、「高血圧」と診断されます。
高血圧の治療法は、生活習慣の改善と血圧を下げる薬(降圧薬)の服用です。
減塩、運動、減量、節酒、禁煙、十分な睡眠の確保などをおこない、薬が処方された場合は医師の指示を守り正しく服用します。
家庭で測る血圧が常に135/85mmHg以上であったり、健康診断で血圧の異常を指摘されたりした場合は、内科や循環器内科を受診しましょう。
心筋梗塞
心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が血栓(血の塊)で詰まり、酸素や栄養が行き届かなくなり心筋が壊死する病気です。高血圧や脂質異常症、糖尿病、喫煙、そして極度の寝不足を含むストレスなどが心筋梗塞の発症リスクを高めます。
心筋梗塞になると、締め付けられるような胸の痛みや苦しさ、首や肩などの痛みが突然あらわれます。
心筋梗塞は、発症からどれだけ早く治療を開始できるかがその後の予後に大きく関わります。突然胸の痛みや圧迫感が起こり、安静にしても治まらない場合はすぐに救急車を呼び専門的な治療を受けられる医療機関を受診しましょう。
脳卒中
脳卒中とは、脳の血管に関わる以下3つの病気の総称です。
| 病名 | どのような病気か | 治療法 |
|---|---|---|
| 脳梗塞 | 脳の血管が詰まって血液が行きわたらなくなり、その先の脳細胞のはたらきが悪くなる病気 | ・血栓を溶かす/取り除く治療(t-PA療法/脳血管内治療など) ・血栓を防ぐ ・脳の炎症を鎮める ・脳のむくみをやわらげる |
| 脳出血 | 脳の血管が破れる病気 | ・血圧を下げる ・脳のむくみをやわらげる ・場合によっては手術による出血治療 |
| くも膜下出血 | 脳の表面にある血管にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂し、「くも膜」という薄い膜の内側に出血する病気 | ・脳動脈瘤の入り口を閉鎖し、血液が流れ込むのを防ぐ(クリッピング術) ・血管からカテーテルを入れ、動脈瘤内をプラチナ製のコイルで埋める(コイル塞栓術) |
どの病気も、どれだけ早く発見して治療を始められるかが生命や後遺症などの予後を大きく左右します。
脳卒中の危険因子は、高血圧や肥満、喫煙、飲酒などです。寝不足が続くと血圧が上がりやすいため、とくに高リスクの方は十分な睡眠をとることも大切です。
突然の頭痛やめまい、片側の手足や顔の麻痺、言葉が出ないなどの症状が出た場合はすぐに救急車を呼び、専門的な治療ができる脳神経外科を受診しましょう。
糖尿病
糖尿病は、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの働きが足りず、血液中の糖分が多い状態が続く病気です。のどの渇きや体重減少などがあらわれることもありますが、症状が出ないケースも少なくありません。
放置すると過剰な糖分によって血管が傷み、視力や腎機能の低下、手足のしびれ、不眠、場合によっては心臓の異常などがあらわれます。
糖尿病の治療の基本は、生活習慣の改善です。食生活の改善や適度な運動、禁煙などをおこないます。寝不足だと、食欲を制御するホルモンのバランスが崩れて食べ過ぎやすいため、十分な睡眠を心がけることも欠かせません。生活習慣の改善で良くならない場合は、血糖値を下げる薬を使用します。
健康診断で血糖値の異常を指摘された、のどがひどく渇き、体重が減ってきたなどの場合は早めに内科、糖尿病内科を受診しましょう。
うつ病
うつ病とは、脳の神経伝達物質がうまくはたらかず、意欲の低下や強い不安、食欲低下や不眠などが続く病気です。詳細な原因は分かっていない部分もありますが、精神的ストレスや身体的ストレス、環境の変化などが関係して起こる方が多く見られます。
うつ病の治療法は、脳の神経伝達物質のはたらきをととのえる抗うつ薬を飲む「薬物療法」や、対話による治療である「支持的精神療法」などです。不安が強ければ抗不安薬、眠れない場合は睡眠薬などを使うこともあります。
気分の落ちこみや布団に入っても眠れない状況などが続く場合は、精神科や心療内科で相談してみましょう。
寝不足の正しい対処法・改善法は?
寝不足は、正しいセルフケアによって改善するケースもあります。無理のない範囲で、できることから始めてみましょう。
規則正しい就寝・起床を心がける
睡眠不足を解消する基本は、「睡眠時間の確保」と「睡眠リズムの一定化」です。
成人の場合、6~8時間の睡眠時間を確保し、できるだけ毎日同じ時間に就寝・起床することを心掛けます。休日に朝寝坊や長い昼寝をする「寝だめ」をしても、睡眠を溜めることはできません。体内時計がずれる原因にもなるため、できる限り毎日同じ時間に就寝・起床するのが望ましいです。
睡眠のリズムが整うと、疲れが取れやすくなり、日中の眠気も改善しやすくなります。
睡眠の質の低下や睡眠時間の減少をまねく夜更かしや不規則な就寝時間はできるだけ避け、規則正しい生活を心がけましょう。
生活習慣の見直し
寝不足の改善には、就寝・起床時間を一定にすることに加え、基本的な生活習慣を見直すことも欠かせません。
具体的には、以下のポイントを心がけるのがおすすめです。
| 内容 | 具体例 |
|---|---|
| 運動習慣を身につける | ・有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・水泳など)、筋力トレーニング(ダンベル運動・スクワットなど)がある ・1日60分程度おこなうのが望ましいが、少しずつでも良いので習慣化するとよい ・日中~就寝の2~4時間前の運動が有効 |
| 食生活に注意する | ・朝食をしっかり摂る ・就寝前の夜食・間食は控える ・塩分は控えめにする ・バランスのよい食生活を心掛ける |
| カフェインの過剰摂取を避ける | ・カフェインの1日摂取量は400mg(コーヒー700cc程度)を超えないようにする ・夕方以降の摂取は控える |
| 節酒・禁煙する | ・寝酒はやめる ・大量や毎日の飲酒は避ける ・喫煙は控える(禁煙) |
これらの生活習慣は、寝不足だけでなく高血圧の改善にも効果が期待できます。できることからはじめてみてください。
「寝不足と血圧」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「寝不足と血圧」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
眠れない日が続いた場合、血圧はどのように変化するのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
眠れない日が続くと、寝ている間に血圧が下がらず、日中も高い状態が続きやすくなります。個人差はありますが、朝の血圧が高くなる可能性は高いでしょう。
最近は眠っている間も数時間おきに自動で血圧を測れる血圧計も市販されています。お持ちの血圧計に機能がある場合は、測ってみるのも一つの方法です。
なお、夜間の血圧を正確に把握したい場合は、「24時間自動行動下血圧測定」という検査をおこない、日中から夜間まで30~1時間おきの血圧変化を1日かけて測定することもあります。ただし、この検査を行える医療機関は限られているためこの検査ができるか、検査の適応があるかは事前に問い合わせをすると良いでしょう。
睡眠不足だと血圧が上がりやすいと聞きました。改善するには何科を受診すべきですか?
伊藤 陽子(医師)
血圧が気になる場合、かかりつけの内科があればかかりつけへ、とくになければ近所の内科や循環器内科を受診するのがよいでしょう。医療機関では、血圧や持病の有無、生活状況などからどのような治療が必要かを判断します。
また、睡眠不足が「睡眠時無呼吸症候群」という眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりする病気が原因で起きている場合は、呼吸器内科や睡眠専門外来に紹介されることもあります。
受診時は、就寝時刻と起床時刻、昼寝の有無や時間、日中の眠気の有無などの睡眠状況や、家庭で測定した血圧の数値を記録したものを持参すると、診察がスムーズです。
寝不足が悪影響を及ぼす更年期高血圧とはどんな病気ですか?
伊藤 陽子(医師)
更年期高血圧は医学的な用語ではないものの、閉経前後の時期の女性に起こる高血圧のことです。
更年期になると、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が低下します。エストロゲンは血圧上昇を抑える効果があるため、分泌が低下することにより血圧が上がりやすくなります。
また、この年代に起こりやすい肥満やコレステロール値の異常も、血圧上昇に関わる可能性があるとされています。
さらに、更年期はホルモンバランスが安定せず、自律神経のバランスが崩れやすかったり、不眠やイライラ感、うつ症状が出やすくなったりします。そのため、エストロゲン分泌の低下による高血圧に加えて、不眠やイライラ感などによっても血圧が上がりやすくなるのです。
血圧のコントロールは内科が専門ですが、更年期障害と呼ばれるほてり、イライラ、不眠、不安などがつらい場合は婦人科の受診も検討してみてください。
まとめ 寝不足が続いて血圧が高くなったら内科を受診しよう!
寝不足が続くと、自律神経やホルモンのバランスが崩れ、血圧が上がりやすくなります。血圧が高い状態は、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などの命に係わる病気のリスクを高めるため、十分な睡眠をとり、血圧を適切な数値にコントロールすることを心がけましょう。
血圧に不安がある場合の受診先は、内科や循環器内科です。また、うつ病をはじめとする精神疾患や睡眠時無呼吸症候群が原因となって寝不足になっている場合は、精神科や心療内科、呼吸器内科なども受診先となるでしょう。
寝不足は、血圧だけでなく、糖尿病や心臓、脳の病気などのリスクを高める重大な問題です。できることから少しずつ生活を見直し、質・量ともに十分な睡眠をとるように心がけましょう。
「血圧と寝不足」で考えられる病気
「血圧と寝不足」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
寝不足をともなう高血圧を放置すると、脳心疾患のリスクが高まります。早めに生活習慣を見直し、血圧が下がらない、体調が改善しないなどの場合は受診を検討しましょう。
「血圧と寝不足」の関連症状
「血圧と寝不足」から医師が考えられる症状は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 頭が痛い
- めまいがする
- ふらつく
- 動悸がする
寝不足で血圧が高いと、頭痛やめまい、動悸などが起こりやすくなります。休息によって改善する場合もありますが、続く場合は早めの受診を検討しましょう。




