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「尿蛋白が出やすい人におすすめの食事」はご存じですか?原因や注意点も医師が解説!

 公開日:2025/11/20
「尿蛋白が出やすい人におすすめの食事」はご存じですか?原因や注意点も医師が解説!

尿蛋白が出やすい人におすすめの食事は?メディカルドック監修医が尿蛋白が出やすい主な原因や考えられる病気や対処法などを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

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尿蛋白とは?

尿蛋白とは、尿の中に通常より多くの蛋白がみられる状態です。通常は、1日あたり150mg以上の蛋白が尿中にみられることはありません。しかし、さまざまな原因から尿に蛋白が多く出てしまうことがあります。高血圧や腎炎、糖尿病などで尿蛋白がみられることがあり、早めに気が付くことで腎臓病が悪化する前に治療を開始することができます。

尿蛋白とは?

尿蛋白とは、尿に通常以上に蛋白が漏れ出てしまっている状態です。通常であれば、尿の中には蛋白はほとんどなく、1日に150mg未満ですが、腎臓の糸球体や尿細管などが障害されると蛋白が尿に漏れ出てしまう様になります。軽度では症状がないことが多いです。しかし、尿蛋白量が増加すると、血液中の蛋白濃度が低下し、浮腫が起こりやすくなります。

尿蛋白は何の検査で調べる?

尿蛋白の有無についての検査は、試験紙法で行われます。この検査で、尿蛋白の濃度を測定し、結果を(-)~(4+)で表します。試験紙法で尿蛋白濃度が±の場合は、おおむね15mg/dL以上です。しかし、尿が濃縮されている場合には正常でも±~+と判定されることもあります。一般的に±以上では再検査がすすめられます。または、尿の定量検査で尿蛋白の実際の濃度を測定し、尿中のクレアチニンの濃度との比で一日当たりの尿蛋白の推定量を測定するのが一般的です。この蛋白量が150mg/dLを超えた場合、尿蛋白が陽性と判断されます。

尿蛋白が検出された人はどんな病気のリスクがある?

尿蛋白が持続して陽性と判断された場合、腎臓病である可能性が高いです。尿蛋白が陽性の場合、糸球体腎炎や膠原病、生活習慣病(高血圧や糖尿病など)、多発性骨髄腫などの病気に伴う腎臓病の可能性があります。診察での所見や、血液検査や尿沈渣などを含めた精密検査を基にどのような原因が考えられるか判断します。最終的には、腎生検を行い病理検査での所見で原因が分かることも多いです。 しかし、このような病気ではなくとも、一時的に蛋白尿がみられることもあるため注意をしなければなりません。尿検査の際に、発熱や激しい運動、蛋白の過剰摂取をしている場合には尿蛋白が陽性となる事もあります。このような場合には、考えられる原因を取り除き、再度尿検査をして判断しましょう。また、随時尿では尿蛋白陽性でも早朝尿では陰性となる体位性蛋白尿であることもあります。体位性蛋白尿は一般的に予後が良好で治療は不要であり、経過観察をすることが多いです。

発熱時・激しい運動後の尿検査

風邪などで体調不良時や発熱時には尿蛋白が出やすいです。また、激しく運動した直後にも尿蛋白が出やすくなります。このため、健康診断などで尿検査をする場合には、体調が悪い時を避けた方が良いでしょう。また、尿検査をする前に激しい運動をしないように注意をしましょう。 尿検査で陽性と診断され、このようなことが疑われる場合には再検査を受けることをおすすめします。

脱水状態での尿検査

脱水の場合、尿は濃縮尿となります。尿蛋白の濃度も濃縮されて濃くなっているため、尿蛋白は陽性となりやすいです。水分をしっかりと摂取して脱水を防いで検査を受けましょう。

月経中の女性の尿検査

生理中は、尿に経血が混ざってしまうことが多いです。見た目ではわからなくとも、尿潜血や蛋白が陽性となる事が多いです。なるべく月経前後での尿検査は避けましょう。もし、健康診断が月経と重なってしまう場合には、その旨を健診機関に話してみましょう。

やせ型の子どもの尿検査

やせ型の子供では、横になって安静にしているときには異常がないにも関わらず、起きると蛋白尿がみられることがあります。これは、立位をとった時にやせ型のために腎臓が圧迫されることで蛋白尿が出ると考えられています。このように起立しているときのみ蛋白尿が出ることを体位性蛋白尿と呼び、これを診断するためには早朝尿では蛋白が陰性であることを確認することが大切です。このような子供の体位性蛋白尿は成長とともに改善するため、治療や生活の制限などは一般的に必要ありません。

尿蛋白が出やすい人におすすめの食事は?

尿蛋白が出やすい・腎臓をケアしたい人の食事療法と栄養素

尿蛋白が持続的に出ている、いわゆる慢性腎臓病では、その病状に合わせた食事療法がすすめられます。一般的には、尿蛋白が出ているだけでGFR(糸球体濾過量)が低下していない場合には、適切なカロリー摂取と減塩のみ勧められます。さらに腎臓病が進行し、GFRが60未満となると、蛋白制限が加わることが多いです。 しかし、例外としてネフローゼ症候群を示す場合には蛋白制限を加える場合もあります。 これらの栄養療法の詳細をお話しします。

尿蛋白が出やすい人の腎臓にいい主食の工夫

腎臓病の場合には、カロリー不足となる事も腎臓病が進行する要因となります。このため、1日の推奨カロリーは体重当たり25~35kcalです。腎臓病を進行させないためには、カロリー不足も、カロリー過剰も良くありません。適切なカロリー摂取をしましょう。

朝食・夕食をしっかり食べる

間食などを食べすぎると、糖尿病など生活習慣病のリスクとなります。生活習慣病は腎臓病の原因として最も多くなっています。間食を控え、三食をしっかり食べるようにしましょう。また、高齢者ではエネルギーが不足していることも多いです。食事をしっかりとるようにすることも大切です。

塩分やタンパク質の過剰摂取に注意する

塩分を制限することにより腎尿細管の負荷を軽減することができます。そのため腎臓病の場合、減塩がすすめられます。1日当たり6g未満の塩分摂取としましょう。 また、タンパク質は分解されると尿素や窒素となり、これを腎臓で排泄する際に負担がかかったり、老廃物が蓄積してしまいます。そのため、腎機能の低下が進行した腎臓病では、病状の進行を防ぐためにたんぱく制限が必要です。それぞれのステージでの蛋白摂取の推奨量は以下の様になっています。自分の現在の状態が分からない場合には主治医に確認すると良いでしょう。
ステージ(GFR) たんぱく量(g/kgBW/日) 食塩(g/日)
ステージG1~2(GFR ≧ 60) 過剰を控える < 6.0
ステージG3a(GFR 45~59) 0.8~1.0
ステージG3b(GFR 30~44) 0.6~0.8
ステージG4(GFR 15~29) 0.6~0.8
ステージG5(GFR < 15) 0.6~0.8
ネフローゼ症候群 0.8
ただし、年齢やそのほかの病態により蛋白制限を緩めることもあるためご自身に合った食事療法について確認してみましょう。

香辛料やレモンなどの酸味を活用する

腎臓病の食事は、減塩食のため味気なく感じて食欲が低下することも少なくありません。塩分のかわりに香辛料やレモンなどの酸味を加えて食欲を維持しながら、減塩をすすめましょう。

尿蛋白が出ている・腎臓病リスクがある人に食事以外でおすすめの対処法は?

尿蛋白が出ている腎臓病の方でも、腎機能の低下が無ければ通常通りの生活で特に運動の制限はありません。生活習慣病の合併も多いことから適度な運動はむしろ勧められます。しかし、尿蛋白量が多いネフローゼ症候群や腎機能が低下している場合には激しい運動は制限されたり、安静が必要な場合もあります。詳しくは病態により変わるため、主治医に確認しましょう。 また、十分な睡眠をとり、ストレスがかからないように生活することはとても大切です。リラックスできるように、環境を整え十分な休息をとるようにしましょう。

尿蛋白が出ていて注意が必要な場合とは?

尿検査・健康診断で継続的に尿蛋白の陽性が出ている

尿蛋白がみられた場合でも、一過性であれば問題ありません。先に解説したように、風邪などの体調不良、発熱などの影響や、激しい運動による蛋白尿の可能性もあるからです。しかし、何度か尿検査を行い尿蛋白が持続して出ている場合には注意が必要です。腎臓内科を受診して相談をしましょう。

高血圧や糖尿病などの基礎疾患がある

高血圧や糖尿病がある場合、腎臓の障害を起こしやすいです。この場合、尿蛋白が出ていることは腎臓の障害が進行しているサインであると考えられます。血圧をコントロールし、また血糖値をコントロールすることで腎障害の進行を抑制することができます。まず、このような生活習慣をもっている場合、生活習慣病をしっかりと治療して管理することが非常に大切です。

むくみ・尿の異常などの自覚症状がある

尿蛋白が多く出ている場合、血液中の蛋白濃度が低下することがあります。この場合、下腿を中心にむくみがみられやすくなります。進行すると、体や顔もむくむことも少なくありません。また、尿蛋白が多くなると、尿が泡立つこともあります。しかし、尿の泡立ちは蛋白尿が出ていなくともみられることもあるため、泡立ちが気になる時には尿検査を受けてみましょう。また、血尿がみられる場合、尿が赤くなったり、ピンク色に見えるたりすることもあります。このような尿の色の変化がある場合には早めに尿検査を行い、調べるようにしましょう。

「尿蛋白が出やすい」で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「尿蛋白が出やすい」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

糖尿病

糖尿病とは、インスリンの作用不足により慢性的な高血糖状態をきたす病気です。高血糖が持続すると血管が傷害され、さまざまな合併症がみられるようになります。この合併症のうちの1つが、糖尿病関連腎臓病です。糖尿病関連腎臓病を合併するようになると、まず微量アルブミン尿がみられるようになり、さらに進行すると蛋白尿が多く出るようになって、徐々に腎機能が低下するようになります。 現在、新規の透析導入患者のうち糖尿病が原因となり透析導入となる方が最も多くなっています。糖尿病関連腎臓病を予防するためにも、糖尿病の治療を早めに行いしっかりと血糖値のコントロールを続けるようにしましょう。

慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病(CKD)とは、蛋白尿や腎臓の形態異常もしくは、腎機能の低下(糸球体濾過量GFR60ml/min/1.73m2未満)が3か月以上持続している状態のことを言います。CKDは高齢者になるほど頻度が増えます。とくに、近年は糖尿病、高血圧、高尿酸血症などの生活習慣病が原因となるCKDの割合が多いです。生活習慣病は早期に治療を行い、血糖値や血圧、尿酸値などをしっかりとコントロールすることで発症を予防することが可能です。CKDは一旦進行すると、改善することは難しいため、早めに治療し、予防しましょう。

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群とは、尿蛋白が多く漏れ出ることで血液中の蛋白濃度が低くなり、むくみやすくなっている状態です。診断基準としては尿蛋白量が1日3.5g以上が必須となっています。そのほかに低アルブミン血症(3.0g/dL以下)または、低蛋白血症(6.0g/dL以下)も第二の必須条件です。また、浮腫や脂質異常症が参考所見となります。 このネフローゼ症候群は糸球体腎炎や糖尿病関連腎臓病などさまざまな病気が原因でおこります。ネフローゼ症候群となった場合の治療は、原疾患により異なるため、尿蛋白やむくみがみられる場合、早急に腎臓内科を受診しましょう。

膠原病

膠原病は、免疫システムの異常が起こり、自分の体を攻撃するようになってしまった状態です。自己免疫疾患とも呼ばれることもあります。代表的な病気としては、関節リウマチや全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などが挙げられます。 膠原病の症状は、それぞれの病気により異なるため、特徴的なものはありません。しかし、原因不明の発熱が持続したり、倦怠感が持続したり、体重が減少するなどの症状が膠原病でみられることが多いです。 膠原病の中には腎臓にも炎症を起こし、尿蛋白がみられる場合もあります。また、そのほかにもさまざまな臓器に障害がみられることも多いです。 膠原病を疑ったら、早めに治療を始めることで臓器の障害の進行を防ぐことができます。専門は膠原病内科です。早めに受診するようにしましょう。

腎硬化症

腎硬化症とは、高血圧を原因とする腎障害のことを指します。腎臓の血管に動脈硬化が起こり、糸球体などが障害され腎機能が徐々に低下するようになります。高齢者での透析導入は腎硬化症が原因の慢性腎不全であることが多いです。腎硬化症の進行を防ぐためにも、高血圧をコントロールし、減塩などの食事療法をすすめることが非常に大切です。高血圧の方では、かかりつけ医と相談ししっかりと血圧のコントロールを行いましょう。

「尿蛋白が出やすい人の食事」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「尿蛋白が出やすい人の食事」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

健診で尿蛋白が出たのですが食事の塩分がどのくらいまでなら腎臓に負担がかかりませんか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

健診で尿蛋白が出た場合、まず尿蛋白が持続して出ているか確認をする必要があります。もし、尿蛋白が持続している場合には、腎臓に負担がかからないように1日当たり6g未満の塩分制限を行うことがすすめられます。

尿タンパクが陽性で血圧が高めの人はどんな食事を意識すべきですか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

尿蛋白が陽性で、血圧が高い場合、まずは減塩食がすすめられます。1日当たりの塩分量を6g未満として食事療法を行いましょう。また、腎機能の低下もみられる場合には、蛋白制限が必要なこともあります。詳しくは主治医に確認をしましょう。

尿蛋白を改善する飲み物はありますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

残念ながら尿蛋白を改善する飲み物はありません。減塩をすすめて食事療法を行いましょう。尿蛋白を悪化させる飲み物として、たんぱくを過剰に摂取するプロテイン飲料が挙げられます。蛋白制限が必要なくとも、たんぱくの過剰摂取は勧められません。蛋白尿が出ている方では、プロテインの摂取は避けましょう。

まとめ 尿蛋白が出やすい人の食事はまず減塩!

尿蛋白が出ている場合、一過性のものでは問題がありませんが、持続する場合には腎臓病の可能性があります。腎臓病では、まず減塩を行うことで、腎機能低下の進行を防ぐことができるため、1日6g未満の塩分制限がすすめられます。尿蛋白を指摘されたら、まず減塩から気をつけましょう。 また、専門医を受診して腎機能低下などを伴う場合には蛋白制限が必要な場合もあります。それぞれの病態により制限の内容が異なりますので、まず主治医に確認しご自身に合った食事療法を実践しましょう。

「尿蛋白」の異常で考えられる病気

「尿蛋白」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

代謝内分泌系の病気

膠原病系の病気

  • 膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、血管炎など)

腎泌尿器系の病気

血液系の病気

その他の病気

  • 薬剤性
尿蛋白が出ていることは、腎臓に障害が起こっている状態であると考えられ、注意が必要です。また、尿蛋白の原因はさまざまであり、その原因により治療法は異なります。まず尿蛋白がみられたら、早めに腎臓内科を受診して相談をしましょう。

「尿蛋白」に似ている症状・関連する症状

「尿蛋白」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 体のむくみ
  • 尿が泡立つ
  • 尿が赤い
尿蛋白が出ていても、症状がないことが多いです。尿が泡立つ時、原因のすべてが尿蛋白ではありません。しかし、尿の泡立ちが尿蛋白の発見につながることもあります。気になる場合には早めに内科を受診して尿検査をしてみましょう。

この記事の監修医師