「フレイルとサルコペニア」の違いは何かご存じですか?それぞれの特徴を医師が解説!
公開日:2025/10/14

フレイルとサルコペニアの違いはご存知でしょうか?メディカルドック監修医が主な症状や原因、違いや対策について解説します。

監修医師:
岩佐 沙弥(医師)
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【経歴】
山口大学医学部卒業。初期研修医終了後、整形外科医として勤務。現在はリハビリテーション医学を専門とし、幅広い疾患による障害の治療を行っている。地域の医療に携わってきた経験が長く、現在も地域のクリニックに勤務。一人一人の生活に合った運動や食事の提案を行えるよう心がけている。
【資格】
医学博士、整形外科専門医、リハビリテーション科専門医・指導医、日本医師会認定産業医、障害者スポーツ医
山口大学医学部卒業。初期研修医終了後、整形外科医として勤務。現在はリハビリテーション医学を専門とし、幅広い疾患による障害の治療を行っている。地域の医療に携わってきた経験が長く、現在も地域のクリニックに勤務。一人一人の生活に合った運動や食事の提案を行えるよう心がけている。
【資格】
医学博士、整形外科専門医、リハビリテーション科専門医・指導医、日本医師会認定産業医、障害者スポーツ医
目次 -INDEX-
- フレイルとは?加齢による虚弱・総合的な機能低下
- サルコペニアとは?筋肉量減少・筋力低下による身体能力の低下
- フレイルとサルコペニアの違いは?
- フレイルとサルコペニアを予防するには?
- フレイルとサルコペニアに共通する予防法
- フレイル予防には運動・身体機能以外の改善策も必要
- フレイルやサルコペニアの危険性は何歳から意識すべき?
- フレイルやサルコペニアが気になる場合、何科で相談できる?
- 「フレイルとサルコペニア」で気をつけたい病気・疾患
- 「フレイルとサルコペニア」の正しい対処法・改善法は?
- 「フレイルとサルコペニア」についてよくある質問
- まとめ
- 「フレイルとサルコペニア」で考えられる病気
- 「フレイルやサルコペニア」と関連する症状・関連する症状
フレイルとは?加齢による虚弱・総合的な機能低下
フレイル(Frailty)とは、加齢に伴い、心身の活力が低下し、外部からのストレス(病気、怪我など)に対する脆弱性が高まった状態を指します。身体的な衰えだけでなく、精神的・社会的な側面も含む、多面的な概念です。フレイルは、早期に発見して適切な介入を行い対策すれば、健康な状態に戻ることが可能とされています。フレイルの症状
フレイルは、さまざまな側面から現れることがあります。たとえば、身体的な衰弱として、筋肉量の減少(サルコペニア)、意図しない4.5kg以上の体重減少、握力の低下、歩行速度の低下、疲れやすいといった症状が見られます。これらは、フレイルを診断するための重要な指標となります。また、活動意欲の低下や、抑うつ状態、無気力な状態になるなどの精神的な落ち込みもフレイルの一部と考えられています。 さらに、外出が減り、友人や家族との交流が少なくなることもフレイルの兆候です。社会的なつながりの希薄化により、心身の機能低下がさらに加速する悪循環に陥ることがあります。記憶力や判断力の低下、新しいことを学ぶ意欲の減退といった認知機能の低下もフレイルと関連しています。フレイルの原因
フレイルの原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って生じます。年齢を重ねることで身体機能が自然に低下する加齢がまず挙げられます。特に、ホルモンバランスの変化や、炎症性サイトカインの増加が関与していると考えられています。また、身体を動かす機会が減る運動不足は、筋肉量や筋力の低下を招きます。食事量が減ったり、偏った食事を続けたりする低栄養も原因の一つです。このような加齢に伴う変化に加えて、心不全などの慢性的な病気を持っていることによって、筋肉量や筋力が減少するサルコペニアになります。サルコペニアのような身体機能の低下に加えて、友人や家族との交流が少なくなり社会的な孤立や、精神的・認知的な機能低下が加わり、フレイルが起こってしまいます。サルコペニアとは?筋肉量減少・筋力低下による身体能力の低下
サルコペニア(Sarcopenia)は、加齢に伴う筋肉量と筋力の低下、それに伴う身体能力の低下を特徴とする症候群です。フレイルの構成要素の一つであり、特に身体的な虚弱に深く関わっています。サルコペニアは、身体の活動を制限し、転倒や骨折のリスクを高めることから、フレイルの進行を加速させる重要な要因と考えられています。サルコペニアの特徴
サルコペニアの主な特徴は、身体機能の低下です。歩く速度が遅くなる、階段を上るのがつらくなる、立ち上がりにくいなどの症状が見られ、特に移動能力の低下が顕著です。筋力低下によりバランスを崩しやすくなるため、転倒リスクの増加も大きな問題です。身体機能の低下により、外出や趣味の活動が困難になり、生活の質の低下にもつながります。サルコペニアの原因
サルコペニアの原因もまた、複数の要因が絡み合っています。筋肉細胞は加齢とともに数が減少し、再生能力も低下するため、加齢が最も大きな原因となります。また、身体を動かさないと筋肉はどんどん衰えていく運動不足、そして筋肉の維持・生成に必要なタンパク質やエネルギーが不足する低栄養も、サルコペニアを加速させます。最後に、糖尿病や腎臓病、がんなどの疾患もサルコペニアを引き起こす原因となることがあります。フレイルとサルコペニアの違いは?
フレイルとサルコペニアは密接に関連していますが、その違いを理解することは重要です。 サルコペニアは「筋肉量の減少」という身体的な側面を指すのに対し、フレイルはサルコペニアに加え、精神的・社会的な要素も含む、より広範な概念です。例えるなら、サルコペニアは車の「エンジン」の機能低下、フレイルは「エンジン」だけでなく、「ハンドル」や「タイヤ」、そして「運転手の精神状態」も含めた車全体の総合的な不調です。 フレイルは早期に介入することで健康な状態に戻すことが可能です。筋肉量を完全に元に戻すことは難しい場合もありますが、サルコペニアも適切な運動療法や栄養療法によって筋肉量や筋力は改善し、進行を遅らせることが可能です。フレイルとサルコペニアを予防するには?
フレイルとサルコペニアは、日々の生活習慣を見直すことで、その進行を遅らせ、予防することが可能です。以下に、具体的な予防法を解説します。フレイルとサルコペニアに共通する予防法
フレイルとサルコペニアには共通の予防策があり、どちらにも効果を発揮します。まずはこれらの対策から取り組んでいきましょう。バランスの取れた食事
筋肉や骨を健康に保つためには、バランスの取れた食事が不可欠です。筋肉の材料となるタンパク質を毎食意識して摂りましょう。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などがおすすめです。また、偏った食事ではなく、主食・主菜・副菜を揃え、多様な食材を摂るように心がけることで、食事量の維持も意識できます。品目が多く、彩りの良い食卓が、フレイルやサルコペニアを防ぎます。体操などの適度な運動
適度な運動は、筋肉量を維持し、筋力を向上させるために最も効果的な方法です。筋肉トレーニングとして、スクワットや座って腿上げをするなど、無理のない範囲で筋肉に負荷をかける運動を取り入れましょう。難しい方は、簡単な体操や地域で行われている体操に参加するのも良いです。また、ウォーキング、水中ウォーキング、自転車などの有酸素運動を週に3回以上、30分以上行うとさらに効果的です。週3回行うことが難しい場合は、「できる時に行う」を続けていき、なるべく頻度を増やすという意識で行いましょう。口腔ケア
口腔機能の低下は、食事量が減ったり、偏食になったりする原因となり、低栄養を招きます。しっかり噛めるように、歯科医に定期的に診てもらい、義歯の調整などを行いましょう。また、舌や唇を動かす口腔体操を行うことで、食事を安全に摂るための機能を維持できます。フレイル予防には運動・身体機能以外の改善策も必要
フレイルの予防は、身体的な側面だけでなく、精神的・社会的な側面の改善も重要です。心身ともに健康であること、人との交流を行うことを目指しましょう。社会の参加
外出機会を増やし、地域活動や趣味のサークルに参加するなど、人と交流する場を積極的に持ちましょう。市役所などで地域の体操やイベントを案内していることもありますので、一度聞いてみることをお勧めします。新しいことに挑戦することで脳の活性化にもつながるため、一石二鳥です。精神的ケア
ゆううつな状態や何もしたくないという無気力感が続く場合は、一人で抱え込まず、かかりつけ医やカウンセラーに相談することも大切です。まずは、周りの人に相談するでも構いません。相談先がわからない場合は、お住まいの地域にある地域包括支援センターや自治体が設けている相談窓口などにお電話や足を運んでみてください。フレイルやサルコペニアの危険性は何歳から意識すべき?
フレイルやサルコペニアは、一般的に65歳頃から増加すると言われています。しかし、その原因となる筋肉量の減少は、40歳代から始まるとされています。そのため、高齢者だけの問題ではなく、若い頃から運動習慣や栄養に意識を向けることが大切です。特に50歳を過ぎたら、日々の生活習慣を見直し、予防を意識することが大切です。フレイルやサルコペニアが気になる場合、何科で相談できる?
フレイルやサルコペニアの兆候に気づいた場合は、まずはかかりつけ医に相談しましょう。運動機能の低下が顕著な場合は、整形外科やリハビリテーション科が専門となります。低栄養が疑われる場合は、内科で相談するのも良いでしょう。「フレイルとサルコペニア」で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「フレイルとサルコペニア」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。ロコモティブシンドローム
運動器(骨、関節、筋肉、神経など)の衰えが原因で、歩行や立ち上がりなどの移動機能が低下した状態がロコモティブシンドロームです。サルコペニアもロコモティブシンドロームの一部と考えられています。加齢や運動不足が主な原因となりますが、運動療法が中心となり、筋肉トレーニングやバランス訓練、ストレッチなどを継続的に行うことが重要です。歩く速度が遅くなった、片足立ちが5秒以上できない、階段を上るのがつらいなど、移動に不安を感じ始めたら、整形外科やリハビリテーション科に相談しましょう。かかりつけ医に相談するのも良いでしょう。認知症
様々な原因で脳の神経細胞が破壊され、記憶力や判断力などが低下し、日常生活に支障をきたす状態が認知症です。フレイルやサルコペニアは、認知症のリスク因子であると考えられています。認知機能の低下を遅らせる薬物療法や、脳を活性化させるリハビリテーションなどが行われます。物忘れがひどくなった、同じ話を繰り返す、日付や時間がわからなくなるなど、認知機能の低下を疑う症状が見られたら、早めにかかりつけ医、もしくは精神科、神経内科、脳神経外科などに相談しましょう。「フレイルとサルコペニア」の正しい対処法・改善法は?
フレイルは身体的・精神的・社会的な要素が複雑に絡んでいます。ご自身の生活の質を上げるという意識で、少しずつ運動や食事を見直し、交流を行っていくと良いでしょう。 身体的な衰えを感じる場合は、運動習慣を身につけることが第一です。ただし、無理な運動は怪我の原因となるため、自分の体力に合わせて無理のない範囲で行いましょう。精神的な落ち込みには、趣味やボランティアなど、楽しめることを見つけて積極的に取り組むことが大切です。また、社会的な孤立を感じる場合は、友人や家族とのコミュニケーションを意識的に増やすようにしましょう。 規則正しい睡眠を心がけ、質の良い睡眠を確保しましょう。また、好きな音楽を聴く、湯船にゆっくり浸かるなど、自分に合った方法でストレス緩和やリラックスする時間を作り、心の健康を保ちましょう。 積極的に摂ると良い栄養素として、筋肉の材料となるタンパク質を毎食摂りましょう。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などがおすすめです。また、骨の健康に不可欠なビタミンD・カルシウムは、きのこ類や魚、乳製品、小松菜などに多く含まれます。活動のエネルギー源となる炭水化物も不足しないように適量を摂りましょう。そして、脱水は身体機能の低下を招くため、水分をこまめに補給することが大切です。 ご病気を持たれている方は、かかりつけ医と相談し、持病のコントロールを行うこともフレイルの予防に繋がりますので、通院は定期的に行いましょう。「フレイルとサルコペニア」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「フレイルとサルコペニア」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
フレイルやサルコペニアが進行すると寝たきりや認知症になる可能性がありますか?
岩佐 沙弥 医師
はい、その可能性はあります。フレイルは、健康と要介護状態の中間地点に位置する状態です。適切な対策を講じなければ、身体機能がさらに低下し、寝たきりや認知症へと進行するリスクが高まります。早期発見と早期介入が重要です。
サルコペニアになりやすい人の特徴を教えてください
岩佐 沙弥 医師
高齢者、慢性疾患(糖尿病、腎臓病など)を抱えている方、食が細い方、運動習慣がない方などがサルコペニアになりやすい傾向にあります。
フレイルやサルコペニアは何歳頃から意識的な予防が必要ですか?
岩佐 沙弥 医師
筋肉量の減少は40歳頃から始まると言われています。しかし、特に50歳を過ぎたら、意識的に予防に取り組むことが大切です。
まとめ
フレイルとサルコペニアは、決して避けられない老化現象ではありません。日々の生活習慣を見直し、適度な運動、バランスの取れた食事、社会とのつながりを意識することで、その進行を遅らせ、健康な状態を維持することが可能です。 もし、ご自身やご家族がフレイルやサルコペニアの兆候に気づいたら、決して一人で悩まず、かかりつけ医や専門医に相談してください。早期の対策が、将来の健康な生活を守る鍵となります。「フレイルとサルコペニア」で考えられる病気
「フレイルとサルコペニア」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。内分泌・代謝系の病気
精神系の病気
その他の病気
- がん
「フレイルやサルコペニア」と関連する症状・関連する症状
「フレイルやサルコペニア」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する病気
- つまずきやすくなった
- 椅子から立ち上がりづらい
- 痩せて手足が細くなった
- 重い荷物が持てない


