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「フレイルを予防する」には何をすれば良いかご存じですか?特徴も医師が解説!

 公開日:2025/10/21
「フレイルを予防する」には何をすれば良いかご存じですか?特徴も医師が解説!

フレイルの予防法をご存知でしょうか?メディカルドック監修医が予防の他に主な原因や症状、何科へ受診すべきかなどを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

フレイルとは?加齢による予備能力低下に注意

フレイルとは、加齢に伴って心や体が弱くなり、ちょっとした病気やケガでも元の状態に戻りにくくなっている状態です。自立と介護が必要な状態の狭間にあると考えられます。フレイルは可逆的であり、適切な介入を行うことで自立状態に戻ることが可能です。フレイルは、生命予後に影響し、入院のリスクとなります。フレイルを予防することで、自立した生活を長く続けられ、健康寿命を延ばすことができると考えられます。 フレイルを予防するには、身体的要因・精神的要因・社会的要因の3つの面に気を付けることが大切です。

身体に現れるフレイル

身体に現れるフレイルの1つとして、サルコペニアが挙げられます。 サルコペニアとは、加齢に伴う筋肉量の減少と筋力の低下している状態です。体を支える筋力が低下することで、歩行スピードが遅くなったり、体を支えることが困難となり、転倒しやすくなったりします。「最近手足が細くなった」「椅子から立ち上がりにくい」「歩く速度が遅くなった」などの症状に気がついたときには早めに改善する必要があります。 また、筋肉だけではなく、加齢に伴い体の臓器の機能も衰えていきます。心臓や呼吸器、腎臓、消化器などさまざまな臓器の機能が低下していきます。

精神・気持ちに現れるフレイル

フレイルは、認知機能の低下や抑うつ症状などの精神・心理的な要因が併存していることが少なくありません。軽度認知機能障害(MCI)は可逆的であり、適切な環境調整などの介入を行うことで健常な状態に戻ることもあります。MCIを放置することで、介護が必要な状態や認知症に進行するリスクが高く、注意が必要です。予防として、適切な栄養状態を保つことや、運動をすること、社会的孤立を防ぐことも有効です。物忘れなど気になるようになった場合には、早めにかかりつけ医へ相談をしてみましょう。 また、認知症以外にもうつ症状や意欲低下、不安などの精神症状を認めることもあります。「意欲がなくなった」「閉じこもりがちになっている」など今までと違う症状がある場合には、精神科や心療内科で早めに相談をすると良いでしょう。

その他社会的なつながりに現れるフレイル

身体的な要因、精神的な要因の他に、社会的な要因がフレイルの要素となっています。孤食、社会的孤立、閉じこもりといったものが社会的フレイルです。 「独居」「援助者がいない」「相談をする人がいない」「社会的活動がない」などがあてはまった場合、社会的フレイルであると言えます。 社会的孤立があると認知症の進行につながり、閉じこもりがちになる事で身体的フレイルも引き起こします。社会的フレイルを防ぐために、周囲のコミュニティと関わり、社会生活に参加することが介護状態の進行や認知症の進行を防ぐことにつながり、とても重要です。

フレイルの原因は?

フレイルの発生にはさまざまな原因が関与していると考えられます。臨床的な因子、生活習慣因子、社会的因子、生物学的因子などです。臨床的な因子として、慢性疾患、低栄養、肥満、認知障害、うつ傾向などが挙げられます。生活習慣因子としては、運動不足、タンパク質の摂取不足、喫煙、アルコール多飲などがあります。社会的因子は高齢、独居などです。生物学的因子は慢性的な炎症やホルモン異常、微量栄養素の欠乏などと考えられています。 これらの中で改善が可能な因子、たとえば栄養状態の改善や運動不足の改善、社会生活への参加などに対して介入し、改善することでフレイルの進行を防ぐことができると考えられます。

フレイルの評価基準とは?

フレイルの基準はいくつかありますが、よく使用されている評価方法として、フレイル基準(改訂版J-CHS)があります。5つの項目の中で3つ以上当てはまるとフレイル、1~2つでフレイルの前段階と判断します。以下の5つが判定に用いる項目です。当てはまるものが無いか、確認してみましょう。

歩行速度の低下

普段の歩行スピードが秒速1.0m未満(5m歩くのに5秒以上かかる)である。目安として、横断歩道を青信号でわたり切れるかどうかで、判断してみるのも良いでしょう。

疲れやすい

最近2週間で理由がなく、疲れたと感じる。

活動性の低下

軽い運動、体操などや定期的な運動・スポーツなどを週に1回もしていない。

筋力の低下

握力が男性で28kg未満、女性で18kg未満となる。一つの目安として、ペットボトルのフタや瓶のフタを開けるのが困難となっている場合には気をつけましょう。

体重減少

食事制限をしていないにも関わらず、半年で体重が2kg以上減っている。

フレイル予防の3つの柱とは?

フレイルが進行すると介護が必要となる危険性が高くなります。早期にフレイルに気が付き、早めに適切な介入をして進行を防ぐことが重要です。フレイルの予防にはいかに上げる3つの柱が重要です。

バランスの取れた食事

高齢者は低栄養状態である事、タンパク質の摂取が不足している事が少なくありません。主食・主菜・副菜をバランスよく摂取することが非常に大切です。特にタンパク質の摂取が不足することで、筋肉量の減少がすすみさらにフレイルが進行することもあるため気をつけましょう。 また、3つの柱に「口腔ケア」を加えた4つの柱とすることもあります。口腔ケアは口腔機能を適切に保つことが、食事の十分な摂取につながります。また、うまくしゃべれなくなることで周囲とのコミュニケーションを避けることにもつながり、社会性の低下が起こることもあります。このような点から、普段から歯磨き、歯科受診をして口腔機能が悪化しないように気を付けましょう。また、必要であれば義歯を使用することも大切です。

体操などの適度な運動

身体の筋力やバランス機能を保つためにも、普段から適度な運動を行うことが大切です。筋肉トレーニング、有酸素運動、バランス運動などを組み合わせながら、運動をして身体的フレイルとならないようにしましょう。 まず最初は、1分程度の片足立ち(周囲につかまるものがある場所で行い、転倒しないようにしましょう。)やつかまりながらのスクワット、周囲の散歩などから始めても良いでしょう。

社会の参加

社会的な孤立を防ぐためにも、地域の活動や趣味のサークル、ボランティア活動などに参加することも良いでしょう。周囲からの孤立を防ぐことで、心身の健康や認知症の予防にもつながります。認知機能などに不安があり、予防をしたいなど相談をするために地域の包括支援センターで相談をすることも良いでしょう。

フレイルは何歳から発症していくのか?

フレイルは何歳から発症するという明確な年齢はありません。しかし、フレイルの発症は主に65歳以上の高齢者で多くみられ、年齢が上がるほどその割合は増加していきます。65歳~69歳では2.3%程度であったフレイルの割合は、85歳以上では30.3%程度まで上昇します。

フレイルが気になるときは何科で相談できる?

フレイルが気になる時、どのような点が気になるのかにより相談する診療科は異なります。身体的な部分で気になる場合には、関節痛などが中心であれば整形外科、そのほかは内科のかかりつけ医が良いでしょう。認知機能や精神的な面で気になる場合には、精神科や認知症外来、内科のかかりつけ医にまず相談をしてみましょう。社会的な面が気になるのであれば、周囲の家族、役所、包括支援センターもしくはかかりつけ医に相談をしても良いと思います。 大切なことは、自分や家族だけで抱え込まずに専門機関へ相談をしてみましょう。

「フレイル」で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「フレイル」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

ロコモティブシンドローム

骨・関節・筋肉などの運動器の障害により、立ち上がったり歩いたりすることがしづらくなった状態を「ロコモティブシンドローム」と言います。ロコモティブシンドロームがすすむと、介護が必要な状態となる事が多いです。ロコモティブシンドロームは、変形性膝関節症や骨粗しょう症、腰痛などさまざまな病気から動きづらくなったり、加齢によって筋力が低下したりすることが原因となります。「階段の上り下りがきつい」「長く歩き続けられない」「横断歩道を青信号で渡り切れない」などの症状が当てはまる場合、注意が必要です。筋力を維持するためのトレーニングを始めましょう。歩いて買い物に行くなど少しずつでも運動をする機会を取り入れると良いでしょう。 ロコモティブシンドロームが進行して、自覚症状が出るようになった状態が身体的フレイルです。

サルコペニア

サルコペニアとは、加齢による筋肉量の減少と筋力の低下を意味します。65歳以上の高齢者の15%程度がサルコペニアであると言われています。筋肉量は40歳ごろをピークに徐々に低下し、70歳を超えたころから自覚症状がみられることが多いです。若いころと同じように筋力を維持することは難しいですが、栄養状態を改善し、運動をすることで筋力や筋肉量の改善を期待することができると言われています。介護が必要な状態とならないためにも、「手足が細くなった」「椅子から立ち上がりにくくなった」などの症状がある時には、早めに気を付けることが大切です。気になる症状がある場合には、まずかかりつけ医に相談をしてみましょう。

認知症

現在日本では、65歳以上の人口が約3割と高齢化が進んでいます。65歳以上の高齢者の中で認知症の方は約12%程度と言われています。また、認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)の人が約16%程度と言われ、合わせると約3割程度が認知機能に関わる症状がある事が報告されています。 認知症は誰でもなり得る状態です。様々な病気により脳の働きが変化し、記憶や判断力などの認知機能が低下してしまい、社会生活に支障が出た状態を認知症と言います。 認知症の発症は、生活習慣病に関連していることが分かっています。バランスの良い食事や適度な運動を行うことで認知症を予防しましょう。 また、軽度認知障害の段階や早期の認知症で適切な環境の調整などの介入を行うことで、認知症の進行を緩やかにすることができると分かっています。物忘れが多くなったなど気になる症状がある場合には、かかりつけ医もしくは認知症外来などで相談をしてみましょう。

「フレイル」の正しい対処法・改善法は?

フレイルではないかと気になった場合、まず周囲へ相談することは大切です。かかりつけ医と相談して、病気などの影響はないかも確認しましょう。また、フレイルの進行を予防するためにも、バランスの良い食事、適度な運動、社会活動への参加はとても大切です。体を健康に保つためにも、睡眠を十分にとり、ストレスをためずリラックスできる環境づくりを整えましょう。

「フレイル」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「フレイル」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

フレイル予防の4つの柱も聞きますが、3つの柱のほかに何がありますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

フレイルの3つの柱の他に「口腔ケア」を合わせて4つの柱とすることもあります。口腔ケアを行い、口腔機能を保つことは、栄養状態の改善のためにも大切です。このほかにもしゃべりにくくなることで社会活動に参加しづらくなり、閉じこもりやすくなることも考えられます。バランスの良い食事、適度な運動、社会活動への参加とともに口腔ケアを行いましょう。

フレイルはどのくらい進行した状態でも予防が可能ですか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

フレイルとは、自立と要介護状態の中間の状態で、介入により自立に戻すことができる可逆的な状態とされています。もちろん、状態がかなり進行している場合には、自立まで戻りにくい可能性はありますが、適切な介入により自立へ戻ることが可能と考えられます。

まとめ フレイルが気になるときはかかりつけ医へ相談

フレイルとは、身体的、精神的、社会的な面での障害により日常生活に支障が出ている状態です。適切な介入により自立へ戻ることも可能ですが、進行すると要介護状態となる事も多いです。なるべく早期にフレイルを発見し、適切な介入(バランスの良い食事、適度な運動、社会活動への参加など)を行うことで進行を防ぐことができます。気になる症状がある場合、引きこもり気味で相談する場所がない場合にはかかりつけ医や地域包括支援センターなどで早めに相談をしてみましょう。

「フレイル」で考えられる病気

「フレイル」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

整形外科系の病気

脳神経系の病気

内科系の病気

  • 低栄養
  • 肥満

精神科系の病気

上記に挙げたものがフレイルを起こしうる病気、状態の一部です。さまざまな病気がフレイルを起こしうると考えられます。身体的な機能の低下、物忘れやうつ傾向などの精神的な症状がみられた場合には早めにかかりつけ医に相談をしましょう。

「フレイル」と関連する症状・関連する症状

「フレイル」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 歩くのが遅くなる
  • 疲れやすい
  • 運動などをしていない、するのが億劫となっている
  • 重い荷物が持てなくなった
  • ペットボトルのフタがあかない
  • 体重が減った
  • 人とほとんど会っていない、話していない
これらの症状がある場合、フレイルかもしれません。かかりつけ医に相談をするか、地域の包括支援センターなどで相談してフレイルと進行させないようにしましょう。

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