「心電図検査で異常があると言われたら」?原因と考えられる病気などを医師が解説!
公開日:2025/09/29

心電図検査で異常があると言われたら?メディカルドック監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきかを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
心電図検査とは?
まずは、心電図検査とはどのようなものなのか、さらにその流れについて解説します。心電図検査とは?
私たちの心臓は、電気的な信号が右心房にある洞房結節から心筋全体に伝わることで、心房がまず収縮し、次に心室が収縮します。この電気信号がどのように心臓全体に伝わるのかを、皮膚の表面からも測定し、グラフとして描出することができます。これが、心電図と呼ばれるものです。 中でも、特に標準12誘導心電図というものは、一般的に心電図検査として人間ドックや一部の特定健康診査、定期健康診断時の実施項目となっています。そして不整脈や心筋の異常などの循環器のスクリーニング検査として、さまざまな情報が得られる検査です。心電図検査の流れは?
心電図検査を受ける際には、胸や手首、足首の皮膚が見えるように衣服や下着をずらし、ベッドに仰向けになります。 次に、両手首と両足首に4カ所、胸に6カ所の電極を検査技師などの医療従事者が取り付け、心電図を記録します。 心電図の検査自体は3〜5分ほどで終了します。心電図検査の注意点は?
心電図検査を受ける際、検査室に急いでやってきた方など、運動した後すぐの方は5分以上休んでから測定します。 また、ストッキングを履いている方は脱ぐ必要があるでしょう。 下着はずらして測定するため、可能であれば女性の場合にはブラジャーなどは脱いで検査がスムーズに進むでしょう。心電図検査の種類
心電図検査には、以下のような種類があります。安静時心電図
安静時心電図は、12誘導心電図とも呼ばれています。検査を受ける方は仰向けに横になり、じっとしている間に検査は終わります。 12誘導心電図は心臓全般における、最も基本的な検査です。両方の手足4カ所と、胸の6カ所の計10個の体表面の電極から、12の誘導を描き出します。12誘導心電図は、心疾患のスクリーニングに役立ちます。また、突然死との関連があるとされる左室肥大、脚ブロック、ST-T変化、T波の異常など、さまざまな所見の検出に有用です。運動負荷心電図
運動をして心拍数を上げた状態の心電図変化をみる検査のことを、運動負荷心電図といいます。 トレッドミルというベルトコンベアを歩く動作や、自転車エルゴメータという固定式自転車をこぐことで運動負荷をかけます。そして、心拍数を上げた状態で記録します。運動中に起こる狭心症などの検出に有効です。ホルター心電図
携帯型心電計を装着し、24時間心電図を記録します。日常生活中の発作的な不整脈や自覚症状との関係を調べたいときに行われます。心電図検査で指摘される主な所見
心電図検査で「異常」とされる場合、以下のような所見がよく見られます。| 所見 | 意味、病気など |
|---|---|
| 洞不整脈 | 軽度の不整脈。特に治療は不要なことが多い。 |
| 洞徐脈・洞頻脈 | 脈が異常に遅いあるいは早い状態。重症な場合や症状がある場合は精密検査が必要。 |
| 電気軸異常 | 左脚ブロックが疑われる場合は、経過観察・再検査が必要。 |
| ST変化(上昇・低下) | 虚血性変化や心膜炎などが疑われる場合は、精密検査が必要。 |
| 心房細動 | 心房が正常なリズムで拍動していない状態。精密検査が必要。 |
| 心室性期外収縮 | 多発している、多形性である、あるいは息切れなどの自覚症状がある場合は精密検査が必要。 |
健康診断の心電図の種類は?安静時心電図検査の特徴
健康診断で一般的に行われる心電図検査は、標準12誘導心電図検査です。受診者の負担も少なく、さまざまな情報が得られるという特徴があります。 人間ドックなどのオプションで、負荷心電図やホルター心電図を受けることができる場合もあります。健康診断で心電図検査で異常を指摘されたら何科を受診すべき?
基本的には、循環器内科を受診するのが適切です。心電図の波形を正しく読んだ上で、必要な精密検査や治療につなげるためには、心臓と血管の専門医の判断が不可欠です。心電図検査の再検査費用は?
心電図検査で異常を指摘され、循環器内科などで再検査を受けることとなった場合、実施する検査によって費用は異なります。健康保険が適用される場合がほとんどと考えられます。 3割負担の場合、安静時心電図検査では数百円程度、ホルター心電図では5,000円程度、負荷心電図では1000円程度となります。また、心臓の超音波検査は、3000円程度となります 。 これらに、初診料などが加わってくることもあります。再検査の費用を詳細に知りたい場合は、検査を受けようとする医療機関にあらかじめ確認しておくとよいでしょう。心電図検査で異常を指摘された時の注意点
以下のような点には注意が必要です。心電図検査で異常を指摘されても放置や自己判断はしないこと
「症状がないから大丈夫」と自己判断で放置するのは危険です。心電図の異常の中には、症状が出にくいものの、重大な疾患につながる、あるいは示唆しているものもあります。心電図の異常指摘の他にも症状がある場合は早めに受診
以下のような症状がある場合は、すぐに循環器内科の受診を検討しましょう。・動悸や胸痛
・息切れやめまい
・一時的な意識消失(失神)
これらのような症状がある場合は、重篤な不整脈や心筋梗塞などの病気の可能性があります。
心電図検査で異常が指摘された人が見直すべき生活習慣
心電図検査で異常を指摘される場合、背景に高血圧がある方もいます。そのような際には、生活習慣を見直すことが大切です。食塩の量を制限する、アルコールは適切な量にするなどの食生活の見直しが大切です。また、肥満にならないように適度に運動する、睡眠不足にならないようにする、などが効果的と考えられます 。心電図検査で異常があると言われたら気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「心電図検査の異常」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。不整脈
不整脈は、心臓のリズムが乱れる疾患の総称です。特に生命にかかわらないものもありますが、心房細胞などを放置すると血栓による脳梗塞などを引き起こすこともあります。症状がなくても、精密検査が重要です。循環器内科を受診しましょう。診断の際には、12誘導心電図での再検査や、ホルター心電図、心エコー検査などが施行されます。心房細動の場合、治療方法としては薬物療法やカテーテルアブレーションなどがあります。心膜炎
心膜炎は、心臓を包む膜である心膜に炎症が生じたものです。ウイルスなどの病原体への感染や自己免疫疾患などが原因となります。原因が不明のものもあります。胸痛や動悸、発熱、運動時の息切れなどが症状として現れることがあります。また、心臓の収縮が妨げられるため、心臓の脈がうまく打てなくなり、ゆっくりになる洞不全症候群[香木3] の原因となる場合があります。心電図検査や心エコー、カテーテル検査などで検査していきます。原因によって治療法は異なりますが、抗炎症薬や抗生物質、抗真菌薬などが必要になることもあります。心臓の周りに液がたまる心嚢液貯留という状態になると、心タンポナーデにいる可能性があります。これは緊急を要するため、カテーテルなどで水を抜く処置が行われるケースもあります。心筋症
心筋症は、心臓の筋肉である心筋が何らかの原因で障害を受ける病気の総称です。心臓が全身に血液を送りだすことが難しくなり、心不全症状が起こります。さまざまな種類がありますが、不整脈原性右室心筋症(ARVC)/不整脈原心筋症(ACM)では、QRS波の異常が見られることがあります。また、肥大型心筋症(HCM)やたこつぼ心筋症ではT波がマイナスになることが多いとされています。特発性の拡張型心筋症では、心室期外収縮(PVC)や非持続性の心室細動(VT)が認められる率が高いとされています。治療法は心筋症の種類と重症度によって異なります。薬物療法のほか、外科的埋め込み型デバイスや心臓手術が行われる場合もあります。重症心筋症の患者の中には、心臓移植が必要となる場合もあります。心臓弁膜症
心臓内には、血液を一方向に流し続ける弁が4つあります。僧帽弁(左心房と左心室の間)、三尖弁(右心房と右心室の間)、大動脈(左心室と大動脈の間)、肺動脈(右心室と肺動脈の間)があります。心臓弁膜症には、弁が狭くなる(狭窄)、逆流する(逆流)、あるいは弁が伸びて柔らかくなり、しっかりと閉じなくなる(逸脱)などの種類があります。治療法には、薬物療法、弁修復、または弁置換術があります。心房細動の発症に関わる因子の一つとして知られています。「心電図検査で異常があると言われた」ときの正しい対処法・改善法は?
心電図検査で異常があると言われた際には、放置せずに医療機関を受診することが大切です。心臓の精密検査・再検査をどのくらいすぐに受けるべき?
異常がわかった後、1〜2週間以内には循環器内科での精密検査を受けましょう。心室細動など、できれば早急に精密検査が必要なものもあります。心電図検査をはじめに受けた医療機関の指示に従うようにしてください。心臓に負担をかけないおすすめの食べ物や飲み物はあるか?
心房細動など心臓に負担がかかる原因として、高血圧や糖尿病、肥満、高尿酸血症、喫煙、飲酒などの要因が知られています。そのため、減塩をまずは意識してみましょう。お酒の飲み過ぎも避けましょう。1日日本酒1合程度とし、週に1日以上は休肝日を設けましょう。また、野菜や果物を積極的にとることも大切です。1日あたり、野菜の小鉢で5−6杯を目指してみましょう。くだものは、1日あたりバナナ1本・オレンジ1個を目安にすると良いでしょう。そして、禁煙と太りすぎないように適切なカロリー摂取も重要となります。なお、持病がある方については、どのような食事が良いのかについては、主治医と相談のうえで決めるようにしてください。心電図に異常が見つかったら気をつけたほうが良い生活習慣はある?
心電図に異常があり、拡張型心筋症などと診断され、心不全の症状が強い際には運動制限を要する場合があります。 ただし、症状が改善し安定したら、有酸素運動を定期的に行うことで生活の質が上がることが知られています。心電図異常があった際、その原因によって運動をどれくらい行ってもよいのかは異なります。きちんと精密検査を受け、本当に病的なものなのか病気だとしてどのようなものかを調べてもらうことが重要です。「心電図検査で異常があると言われた」ときのよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「心電図検査で異常があると言われたら」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
心電図検査で異常が見つかっても症状がなければ病院を受診しなくて良いでしょうか?
木村 香菜 医師
いいえ。健康診断などの心電図検査で異常があり「要精密検査」となった場合、受診が必要です。循環器内科を受診しましょう。
心電図検査で不整脈がわかった場合、投薬で治療できますか?
木村 香菜 医師
はい。不整脈にはさまざまなものがありますが、それぞれに対して治療法があります。例えば、脈が早い場合には、心拍数を低くするような薬を処方されるケースもあります。また、心房細動がある場合には、血栓予防のため、血液が固まりにくくするような抗凝固薬が処方されるでしょう。




