目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 健康診断
  4. 「眼底検査の結果の見方」はご存じですか?緑内障を含む発見できる病気も医師が解説!

「眼底検査の結果の見方」はご存じですか?緑内障を含む発見できる病気も医師が解説!

 公開日:2025/09/24
「眼底検査の結果の見方」はご存じですか?緑内障を含む発見できる病気も医師が解説!

眼底検査の結果の見方をご存じですか?メディカルドック監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

プロフィールをもっと見る
2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

眼底検査とは?

眼底検査の結果の見方を知っていますか?この検査では、目の奥にある網膜や視神経、血管の状態から、さまざまな病気を見つけることができます。この記事では、眼底検査でわかることや主な所見の意味、考えられる病気、再検査が必要な場合の目安、そして受ける際の注意点まで解説します。 健康診断や人間ドックで異常を指摘されても、「症状がないから大丈夫」と自己判断して放置するのは危険です。結果の意味を正しく理解し、必要に応じて早めに眼科を受診することが、目の健康と視力を守りましょう。

眼底とは?

眼底は、瞳孔の奥にある目の内側の組織の総称で、網膜や視神経乳頭、網膜血管などが含まれます。網膜は光を感じ取る細胞(視細胞)が並び、入ってきた光を電気信号に変えます。視神経乳頭は、その電気信号を脳へ送る視神経の出口部分です。網膜血管は酸素や栄養を網膜に届け、不要な老廃物を運び出します。このように眼底は、視覚情報を受け取り脳に伝えるための構造が集中しており、その状態を調べることで目の病気や全身の病気の徴候を直接確認できます。

眼底検査は健康診断で受けられる?

眼底検査は、すべての健康診断に含まれているわけではありません。多くの場合、40歳以上や生活習慣病のリスクが高い人を対象にした人間ドックや特定健診のオプションとして行われます。若年層の一般的な会社健診には含まれないことが多く、希望する場合はオプションとして追加申し込みが必要です。健康診断以外でも、眼科クリニックや総合病院の眼科で検査を受けられます。糖尿病や高血圧などの持病がある場合は、内科から眼科へ紹介されるケースもあります。費用は、健康診断のオプションとして受ける場合は2,000〜5,000円程度が一般的です。保険診療で行う場合は3割負担で数百円〜1,000円程度となります。

眼底検査で何が分かる?

眼底検査では、網膜や視神経、網膜血管などの状態を直接確認できます。これにより、以下のような異常や病気の兆候を発見できます。
  • 網膜の異常:網膜剝離、網膜裂孔、網膜出血など
  • 視神経の異常:視神経乳頭の陥凹拡大(緑内障のサイン)など
  • 血管の異常:動脈硬化、高血圧性変化、糖尿病性網膜症による毛細血管障害
  • 黄斑部の異常:加齢黄斑変性、黄斑上膜など
さらに、網膜血管は全身の血管状態を反映するため、高血圧や糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病の進行度を把握する手がかりにもなります。そのため、眼底検査は目の病気の早期発見だけでなく、全身の健康管理にも役立ちます。

眼底検査とあわせて受けた方が良い目や血液の検査はある?

眼底検査で異常が疑われた場合やリスクが高い場合は、次のような検査をあわせて受けると診断精度が高まります。
  • 眼圧検査
  • 視野検査
  • 光干渉断層計(OCT)検査
  • 蛍光眼底造影
また、全身の病気が関係している可能性がある場合は、血液検査(血糖値やHbA1c、脂質、腎機能など)も同時に行うと、原因の特定や治療方針の決定に役立ちます。

眼底検査の流れと注意点

眼底検査は短時間で行える検査ですが、散瞳の有無や撮影方法によって受け方や注意点が異なります。ここでは、検査の具体的な手順と、受ける前に知っておきたいポイントを解説します。検査後に困らないためにも、事前に流れと注意事項を押さえておきましょう。

眼底検査の流れ

眼底検査は、以下の手順で行われます。
  • 問診:既往歴、症状の有無を確認します。
  • 瞳孔を開く(散瞳)または無散瞳カメラの使用:点眼薬で瞳孔を広げる方法と、瞳孔を広げずに撮影できる機器を使う方法があります。
  • 眼底撮影または直接観察:眼底カメラや眼底鏡で、網膜や視神経、血管を観察、撮影します。
  • 結果説明:医師が画像を見ながら異常の有無や程度を説明します。必要に応じて追加検査や再検査の案内があります。
検査自体は数分程度で終わりますが、散瞳を行った場合は薬の効果が切れるまで5〜6時間ほどかかります。

眼底検査の注意点

眼底検査を受ける際には、以下の点に注意が必要です。
  • 散瞳後の運転は禁止:瞳孔を開く薬を使った場合、4〜6時間ほどはピントが合いにくく眩しさも強くなるため、車やバイク、自転車の運転はできません。検査当日は公共交通機関や送迎を利用しましょう。
  • まぶしさ・視界のぼやけへの備え:検査後は明るい場所でまぶしさを感じやすく、近くが見えにくくなります。サングラスや帽子を持参するとまぶしさを軽減できます。
  • 持病や服薬の申告:糖尿病や高血圧などの持病、内服薬、アレルギーの有無は必ず事前に伝えてください。使用する薬や造影剤に影響することがあります。
  • 妊娠・授乳中の注意:散瞳薬や造影剤を使う場合、安全性の観点から事前申告が必要です。
これらを事前に理解しておくことで、検査をスムーズに受けられ、検査後の不便も最小限に抑えられます。

眼底検査の結果の見方

眼底検査の結果には、網膜や視神経、血管などの状態を示す所見が記載されます。所見の内容や分類の数値によって、病気の有無や進行度、治療や再検査の必要性が判断されます。ここでは、代表的な所見や分類の例、注意すべき異常、さらに精密検査や再検査が必要なケースとその対応について、具体的に解説します。

眼底検査の結果・所見の例

眼底検査の結果には、網膜や血管、視神経などの異常を示す所見と、その程度を表す分類が記載されます。代表的なものは以下の通りです。
●動脈硬化性変化(Scheie〈シェイエ〉分類)
S0〜S4の5段階で評価され、数字が大きいほど血管の動脈硬化が進行しています。
●視神経乳頭の異常
陥凹拡大(視神経の中心が深くなる)が見られる場合は、緑内障の可能性があります。
●黄斑部の異常
加齢黄斑変性や黄斑上膜では、中心視力低下やゆがみの原因となります。
中には放置すると短期間で視力に重大な影響を及ぼす可能性があります。

眼底検査で精密検査・再検査が必要な結果の例

眼底検査で異常が見つかった場合、その内容や程度によっては追加の検査や早急な対応が必要になります。また、再検査では下記の検査を追加で行うことがあります。
  • 視野検査
  • 光干渉断層計(OCT)検査
  • 蛍光眼底造影
  • 血液検査
基本的には眼科医がいる医療機関で行いますが、健診施設で異常を指摘された場合は、紹介状を持って眼科を受診するとスムーズです。受診までの期間は、異常の内容によって大きく異なります。例えば、網膜剝離の疑いや大量の網膜出血がある場合は、即日あるいは数日以内の受診が必要です。軽度の動脈硬化性変化や初期の緑内障の疑いなどは、数か月以内の経過観察で対応できることもあります。異常が軽度に見えても、放置すると進行して視力低下や失明につながることがあるため、早めの受診と適切な精密検査が重要です。

「眼底検査」で発見できる病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「眼底検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

緑内障

緑内障は、視神経が徐々に傷つき、視野が狭くなっていく慢性の眼の病気です。現在、日本での成人の失明原因第1位となっています。原因としては眼圧の上昇が代表的ですが、正常な眼圧でも発症することがあります。進行はゆっくりで、初期には自覚症状がほとんどないため、知らないうちに障害が広がることも少なくありません。治療は点眼薬による眼圧コントロールが基本で、必要に応じてレーザー治療や手術が行われます。早期発見と適切な管理により悪化を防ぐことができるため、定期的な検査が大切です。

網膜剝離

網膜剝離は、網膜が剥がれ、光を正しく感じ取れなくなる病気です。原因としては網膜に裂け目ができる裂孔原性網膜剝離が最も多く、強度近視や加齢、外傷などが原因となります。初期症状として、視野に光が走るように見える光視症や、黒い点や糸くずが飛んで見える飛蚊症の症状がみられます。治療はレーザー光凝固や網膜復位手術が行われ、早期対応が視力予後を左右します。

白内障

白内障は、水晶体と呼ばれる目の中のレンズが濁り、視界がかすむ、まぶしい、二重に見えるなどの症状を引き起こす病気です。主な原因は加齢で、その他にも糖尿病、外傷、薬の副作用(ステロイドなど)が関係します。進行を根本的に止める薬はなく、見え方に支障が出た場合は濁った水晶体を人工レンズに置き換える手術が行われます。

黄斑上膜・黄斑変性

黄斑上膜は、網膜の中心にある黄斑部に薄い膜が張り、網膜が引っ張られることで物がゆがんで見える病気です。加齢や網膜血管の病気、炎症などが原因となります。黄斑変性は、同じく黄斑部が障害され、視力の低下や中心が暗く見える症状が出る病気で、加齢に伴う加齢黄斑変性が代表的です。治療は、黄斑上膜では膜を取り除く手術、黄斑変性では抗VEGF薬の硝子体内注射や光線力学的療法が行われます。

糖尿病性網膜症

糖尿病性網膜症は、長期間の高血糖によって網膜の細い血管が障害され、出血や浮腫、新生血管の発生などを引き起こす病気です。初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると視力低下や失明の原因となります。治療は血糖コントロールが基本で、進行例ではレーザー光凝固や抗VEGF薬の硝子体内注射、硝子体手術が行われます。糖尿病と診断された時点から眼科での定期的な検査が推奨され、異常が見つかった場合は早期の治療が重要です。

眼底に異常があった場合の治療法は?

眼底に異常が見つかった場合の治療は、原因となる病気や異常の程度によって異なります。緑内障では、点眼薬による眼圧コントロールが基本で、効果が不十分な場合はレーザー治療や手術を行います。糖尿病網膜症や網膜裂孔では、レーザー光凝固で異常な血管や裂け目を処置し、進行を防ぎます。加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫などの黄斑部疾患では、抗VEGF薬の硝子体内注射が有効です。網膜剝離や硝子体出血など重度の病変では、硝子体手術で網膜の復位や出血の除去を行います。さらに、高血圧や糖尿病といった全身疾患が関係している場合は、内科的治療と生活習慣の改善を並行して行うことが重要です。

「眼底検査の結果の見方」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「眼底検査の結果の見方」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

眼底検査で異常を指摘された場合、考えられる病気は何でしょうか?

栗原 大智栗原 大智 医師

眼底検査で異常が指摘された場合に考えられる病気には、緑内障、糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、加齢黄斑変性、網膜剝離、網膜静脈閉塞症などがあります。これらはいずれも視力低下や失明の原因となる可能性があり、早期発見と適切な治療が重要です。また、網膜や血管の所見から動脈硬化や高血圧、糖尿病など全身疾患の存在や進行度が推測されることもあります。

眼底検査で再検査を指示された場合、いつまでに受診すればよいでしょうか?

栗原 大智栗原 大智 医師

異常の内容によって緊急性が異なります。網膜剝離の疑いや大量の出血などが疑われる場合は即日〜数日以内に受診する必要があります。糖尿病網膜症や加齢黄斑変性など進行性の疾患は1〜2週間以内、軽度の動脈硬化や初期緑内障疑いなどは数か月以内の経過観察となる場合があります。

高血圧の場合、眼科の眼底検査と眼圧検査は同時に受けるべきですか?

栗原 大智栗原 大智 医師

高血圧は血管や視神経に影響を与えるため、眼底検査で血管の状態を確認すると同時に、眼圧検査で緑内障のリスクも評価することが望ましいです。特に40歳以上の方は、両方を併せて行うことで目の健康状態をより正確に把握できます。

眼底検査で高血圧性変化と動脈硬化性変化がどちらも所見ありの場合手術が必要ですか?

栗原 大智栗原 大智 医師

これらの所見は血管の状態を反映しており、基本的には手術ではなく薬物療法や生活習慣の改善による全身管理が中心です。ただし、進行によって網膜出血や血管閉塞などを起こした場合は、レーザー治療など眼科的処置が必要になることがあります。

眼底検査の結果が異常なしであれば緑内障の可能性は低いですか?

栗原 大智栗原 大智 医師

眼底写真だけでは早期の緑内障を見逃すことがあります。視神経乳頭の変化が明らかでなくても、視野検査やOCT検査で初期段階の異常が見つかることがあるため、家族歴やリスク因子がある場合は追加検査が推奨されます。

まとめ 眼底検査結果の見方を知って早期発見につなげましょう

眼底検査は、目の奥の状態を直接確認できるだけでなく、高血圧や糖尿病など全身の病気の兆候を把握する手がかりにもなる重要な検査です。結果の見方を知っておくことで、健康診断や人間ドックで異常を指摘された際に、その意味を理解しやすくなり、早めの対応につなげることができます。自覚症状がなくても異常が見つかることは珍しくなく、「見えているから大丈夫」と判断して放置するのは危険です。定期的な眼底検査と、異常があった際に早期に受診することで、視力と目の健康を守りましょう。この記事がその一助になれば幸いです。

「眼底検査」の異常で考えられる病気

「眼底検査」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

眼科の病気

眼底検査は、視力低下や失明につながる病気を早期に見つけるための重要な検査です。自覚症状がなくても異常が見つかることがあり、早期受診が視力を守るために重要です。

この記事の監修医師