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「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」とは?特徴や検査の流れを医師が解説!

 公開日:2025/09/10
「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」とは?特徴や検査の流れを解説!

ピロリ菌検査のひとつ、尿素呼気試験法とはどのようなことをやるのでしょうか?検査の流れや注意点・発見できる病気を解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」とは?

H.pylori菌(ピロリ菌)は、胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因になることが知られています。 ここでは、ピロリ菌とはどのようなものなのか、感染の有無をチェックする検査にはどのようなものが、特に尿素呼気試験法について注目し、解説します。

ピロリ菌とは?

ピロリ菌の説明ピロリ菌は、胃の中に生息する細菌です。アンモニアの産生能を持っているため、強酸性の胃の中でも生き続けることができます。 いつ感染が起こるかについては、免疫機能が未熟な乳児期ではないかと考えられています。 ピロリ菌感染は、胃がんの最大の要因となります。そのため、ピロリ菌検査を早めに受け、胃がんのリスクを早期の段階で受けることが望ましいと考えられています。

ピロリ菌検査の種類

ピロリ菌検査の説明ピロリ菌感染の有無をチェックするための検査には、大きく分けると以下のようなものがあります。
・内視鏡で胃の組織を切り取り、その部位にピロリ菌が感染しているかどうかを調べる方法(迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法)
・内視鏡による検査が不要で、胃全体のピロリ菌感染を調べる方法(尿素呼気試験、血液や尿中の抗H.pylori抗体測定、便中H.pylori抗原測定)
特に、内視鏡検査を行わない検査は体への負担が少ないというメリットがあります。 その他の方法としては、血清ペプシノゲン(PG)測定などがあります。これは、血液の中のPGを測定し、胃粘膜の炎症の有無を調べることができます。血中の抗体検査と組み合わせ、胃がんのリスク評価をするABC検診も行われています。

尿素呼気試験法の特徴

尿素呼気試験法の説明尿素呼気試験法(UBT)は、微量の放射線を出す性質を持つ放射線同位体の13Cで標識した尿素を内服する検査です。もしも胃の中にピロリ菌が存在する場合には、ウレアーゼという酵素の活性によって、尿素が標識された炭素原子をもつ二酸化炭素(13CO2)とアンモニアに分解されます。この13CO2が消化管から血液の中に入り、最終的に吐く息(呼気)の中に排泄されます。二酸化炭素に含まれる、13Cがどれくらい増えているかを測定するのが、尿素呼気試験法です。 尿素呼気試験法は、内視鏡検査を行わずに検査ができ、体への負担が少ないというメリットがあります。また、感度や特異度ともに高く、検査の結果にも信頼がおけるという利点もあります。

尿素呼気試験法の基準値

基準値尿素呼気試験法の際には、ユービット®️錠とピロニック®️錠のいずれかが用いられます。それぞれ、結果を判定するまでの時間や、検査基準値が異なっています。ユービット®️錠100mgは、服用後20分の13Cの変化量が2.5‰以上増加した場合、H.pylori陽性と判定されます。なお、‰(パーミル)は0.1%と同じです。 ピロニック®️錠の場合は、13Cの測定方法によって基準となる数値や結果が異なります。
・質量分析法:服用10分後に呼気採取し、13Cの変化量が3.0‰以上の場合は、H.pylori
 感染陽性と判定
・赤外分光法:服用15分後に呼気採取し、13Cの変化量が6.0‰以上の場合は、H.pylori
 感染陽性
カットオフ値付近で陽性という結果の場合には、偽陽性の症例も報告されています。そのため、他の検査も行う、再検するなどが望ましいとされていますが、現状保険適用とはなっていません。 費用について、ユービット®️錠100mgの薬価は2,621.9円/錠、ピロニック®️錠100mgの薬価は1,894.2円/錠です。参考までに、ユービット®️による検査にかかる保険点数は、赤外分光法による検査実施料70点、判断料は150点です。なお、1点は10円に相当する計算です。 これらに、初診料などが加わります。詳細な金額は、あらかじめ検査を受ける医療機関などに問い合わせておくと良いでしょう。

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」

尿素呼気試験法の流れについて、解説します。

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」の前日の流れ

特に食事などについての注意はありませんが、胃薬や抗生物質を飲んでいると検査の結果が正しく出ない場合があります。事前に主治医に相談しておくようにしましょう。

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」の当日の流れ

尿素呼気試験法当日は、検査4時間ほど前から飲食はしないようにしましょう。 当日は、以下のような流れとなります。 空腹状態で、吐いた息を専用の袋に吹き込みます。 次に検査薬を1錠、噛まずに飲みます。 ユービット®️錠の検査の場合、20分ほど椅子に座った状態で安静にしておきます。最後に、もう一度吐いた息を専用のバッグに吹き込みます。 ピロニック®️錠の検査の場合、飲み込んだらうがいを2回ほどします。その後、左側を下にした体勢を5分ほど取り、その後は15分ほど座った姿勢をとります。 検査後は、特に飲食の制限はありません。

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」の注意点

抗菌薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)、カルシウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)の内服中は偽陰性になることがあります。そのため、これらの薬は少なくとも2週間以上 中止することが望ましいです。 また、検査当日は絶食が必要ということにも注意しておきましょう。

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」で発見できる病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

胃炎

胃の粘膜に何らかの原因で炎症が起こった状態を胃炎といいます。ピロリ菌は胃の粘膜に感染し、胃炎(H.pylori感染胃炎)を引き起こします。 胃炎は一生涯続くことも多いです。萎縮性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫、胃過形成性ポリープなど、他の病気の温床にもなります。 ピロリ菌が感染していることが胃内視鏡検査で確認された場合、除菌療法の適応となります。 腹痛やみぞおちの不快感などの症状がみられる場合には、消化器内科を受診しましょう。

胃潰瘍

胃潰瘍は、胃の粘膜に深いえぐれ(潰瘍)ができてしまった状態です。ピロリ菌感染の他、ストレスや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)なども原因となります。 ピロリ菌感染による胃潰瘍の場合、ピロリ菌の除菌療法によって再発率が低下し、出血などの合併症も減少することがわかっています。 みぞおちの痛みや吐き気、食欲不振などが続くような場合には、消化器内科を受診しましょう。

十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍も、胃潰瘍と同様にピロリ菌感染によって引き起こされることがわかっている病気の一つです。腹痛の起こる時間として、胃潰瘍の場合には食後3〜4時間、十二指腸潰瘍の場合には空腹時に多いことが特徴です。 腹痛の他、出血があれば吐血や黒色便などの症状が現れることがあります。出血量が多いと判断される場合には、内視鏡的な治療も必要となります。また、穴が空いてしまう穿孔(せんこう)と呼ばれる状態になると、緊急で手術が必要となることもあります。 胃潰瘍と同様に、ピロリ菌感染が原因の場合は除菌によって再発や合併症のリスクを下げることができます。 腹痛や吐き気などの症状が続く場合は、一度消化器内科を受診しましょう。

胃がん

胃がんは、胃の粘膜の細胞ががん化したものです。ピロリ菌が胃の粘膜に感染することでピロリ菌の陽性者は、胃がんのリスクがそうでない方と比べて5倍になるという報告もあります 。 胃がんは初期段階では特に症状がないことも多いです。胃の痛みや不快感、違和感、吐き気、食欲不振などが代表的な症状ですが、胃潰瘍や胃炎などの症状とも似ています。進行すると体重減少や食事の際のつかえ感などが現れることもあります。 胃がんの治療法としては、内視鏡手術や開腹手術、薬物療法、放射線治療などがあり、進行の段階や患者さんの状態などによって適切に選択されます。 気になる症状がある場合には、消化器内科を受診しましょう。また、胃がん検診も定期的に受けるようにしましょう。

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」で異常と言われた場合の改善点は?

尿素呼気試験で陽性となった場合には、ピロリ菌感染が疑われる状況のため、消化器内科を受診して精密検査を受けるようにしましょう。胃カメラ(内視鏡)でチェックすることが多いかと思われます。 特に日常生活での注意点はありません。しかし、尿素呼気試験を受ける際には、結果が正確に出るように当日の絶食を守る、胃薬などの薬剤を飲んでいる場合にはあらかじめ主治医に相談するなどをしておきましょう。

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」についてよくある質問

ここまでピロリ菌検査の尿素呼気試験法を紹介しました。ここでは「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

ピロリ菌の呼気検査は正確ですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

呼気検査の感度(ピロリ菌感染がある場合に、陽性と判定される割合)は97.7〜100%、特異度(ピロリ菌感染がない場合に、陰性と判定される割合)は97.9〜100%とされています。つまり、感度特異度ともに高い検査のため、正確性が高い検査といえます。 ただし、薬剤による影響などによる偽陰性や、胃の粘膜の変化(腸上皮化生)による偽陽性など、検査の限界はあります。 全ての検査について当てはまることではありますが、完全に正確、間違いのない検査というものはないということは心に留めておいても良いでしょう。

ピロリ菌の呼気検査の結果が出るまで何日かかりますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

呼気検査の結果が出るまでの日数は、検査を受ける医療機関によっても異なります。一般的には数日から2週間程度で結果を知ることができるでしょう。病院によっては、院内で検査を行なっているところもあります。その場合には、当日結果が出ることもあります。

まとめ

今回の記事では、ピロリ菌検査の中でも負担が少なく簡単に行えるものの一つである尿素呼気試験について解説しました。ピロリ菌の感染の有無をチェックする検査にはいろいろなものがあります。それぞれに特徴があるので、場合によっては複数の検査を組み合わせることもあります。もしお腹に何らかの気になる症状がある場合には、早めに消化器内科を受診しましょう。

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」の異常で考えられる病気

「ピロリ菌検査の尿素呼気試験法」から医師が考えられる病気は15個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器内科系の病気

血液内科系の病気

内分泌内科系の病気

脳神経内科系の病気

この記事の監修医師