「女性が尿潜血陽性と診断される原因」はご存知ですか?医師が徹底解説!
公開日:2025/05/22

女性の尿潜血の原因とは?Medical DOC監修医が考えられる病気・対処法・予防法などを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
目次 -INDEX-
尿潜血とは?
尿潜血とは、試験紙を用い、尿にヘモグロビンが検出されるかを調べる検査です。この検査で陽性(1+以上)の場合に尿潜血陽性と診断します。尿潜血陽性と診断された場合、本当に尿に血が混ざっているのかを詳しく検査します。沈査と言って、顕微鏡で実際に尿を見て、赤血球を認めるかどうかで血尿を判断します。尿沈査試験法にて、400倍に拡大した視野で尿中赤血球が5個以上認めた場合に「顕微鏡的血尿」といい、見た目も尿が赤く、尿1Lあたりに血液1mL以上含むものが「肉眼的血尿」です。女性が健康診断などで尿潜血陽性と診断される原因
女性が健康診断などの尿検査で尿潜血陽性と診断された場合、どのような原因が考えられるでしょうか?男女ともに、腎炎や膀胱がんなどの悪性疾患、結石などが原因となり尿潜血が陽性となります。また、このほかに女性の場合、月経血が混ざったり、婦人科系疾患からの不正出血が出たりすることで尿潜血が陽性となる事もあります。 また、女性では膀胱炎により血尿がみられることも少なくありません。このように尿潜血陽性である場合、多くの病気が考えられ、何科を受診するか迷うこともあるかもしれません。 迷う場合には、尿潜血のみであればまずは泌尿器科、蛋白尿もある場合には内科もしくは腎臓内科を受診してみましょう。月経
女性では、周期的に月経で出血があるためこの前後の日程で尿検査を行った場合、尿潜血が陽性となる可能性が高いです。見た目では、血が混ざっていないように感じても少量でも経血が混入すると潜血陽性となる事もあるため、月経前後数日は尿検査を避けるべきです。子宮からの出血
子宮からの出血、例えば子宮がんなどの疾患がある場合に尿に血が混ざり、尿潜血陽性となることも少なくありません。特に少量の出血の場合、尿からの出血なのか、子宮からの出血なのか自分でもわからないことも多いです。尿潜血が陽性となり、腎臓や尿路の異常がみられなかった場合には婦人科系の異常がないか調べることも大切です。膀胱炎
女性の場合、尿道口から膀胱までの尿道の距離が近いこともあり、膀胱内に細菌が入りやすく膀胱炎をおこしやすいです。頻尿、残尿感、排尿時痛などがある場合、膀胱炎を起こしているかもしれません。まず家庭でできることとしては、水分を多く摂ることです。目安としては1日2L以上の水分をとった方が良いでしょう。それでも症状が治まらない場合には、泌尿器科、内科を受診して相談しましょう。「女性の尿潜血」で気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「女性の尿潜血」に関する病気を紹介します。 どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。 ここではMedical DOC監修医が、「女性の尿潜血」に関する病気を紹介します。 どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。膀胱炎
女性では尿道口から膀胱までの尿道が短いため、逆行性に細菌が膀胱内に入りやすいです。このため、膀胱炎をおこしやすいと言われています。残尿感、排尿時痛、頻尿とともに血尿がみられることが多いです。時には、真っ赤な肉眼的血尿を認め、驚いて受診される方も少なくありません。このような症状があり、膀胱炎が疑われたら、まずは水分を多くりましょう。それでも症状の改善がなければ、泌尿器科・内科を受診することがすすめられます。治療としては、抗生剤を内服することが多いです。 膀胱炎がさらに進行すると、腎盂腎炎を併発することもあり注意が必要です。腰痛や発熱がみられた時には要注意です。早めに泌尿器科を受診しましょう。子宮がん
子宮がんは子宮体部にできる子宮体がんと子宮頸部にできる子宮頸がんに分けられます。この2つのがんは好発年齢や原因などが異なりますが、両方の病気とも進行すると出血することがあります。おりものに血がまざる症状が出ますが、中にはこの出血が尿に混ざってしまうことで血尿と誤解されることもあります。血尿を指摘され、尿路系に異常がないと診断された場合、婦人科検診を受けていないのであれば一度婦人科でも相談してみることをお勧めします。糸球体腎炎
腎臓で炎症が起こっている場合、血尿が出ることがあります。この時の血尿は、沈査で赤血球の変形がみられることが多いです。また、血尿とともに蛋白尿がみられる場合には糸球体腎炎の可能性が高いです。このような場合には腎臓内科を受診しましょう。 糸球体腎炎の治療は原因により異なります。腎炎の原因を調べるために腎生検という検査を行い、原因を同定します。その上で、適切な治療方針が決まります。尿路結石
尿路結石は尿路(腎臓から尿管、膀胱、尿道までの経路)に生じた結石の総称です。主な症状は、血尿と腰背部の痛みです。男性に多くみられます。結石の種類としては、シュウ酸カルシウム/リン酸カルシウム結石が最も多いです。結石の大きさや感染の有無などにより治療法は異なりますが、10mm未満の小さめの結石は薬剤による排石促進をすすめることが多いです。しかし、結石が大きく自然排石が難しかったリ、水腎症や感染を伴う場合には破砕術などの他の処置が必要となる事もあります。尿路結石が疑われた場合には、泌尿器科を受診して相談をしましょう。尿路系がん
腎臓から尿道までの尿路に悪性腫瘍ができた場合、血尿がみられることがあります。中でも膀胱がんは血尿で発見されることが多いです。 膀胱がんのほかの症状としては、頻尿、排尿時の痛み、残尿感などで膀胱炎となかなか区別がつきづらいです。膀胱がんは頻度としてはそれほど多くはありませんが、男女ともに増加傾向にあり注意が必要です。女性の尿潜血の対処法
尿潜血検査を受けるにあたって、正確な検査を行うための注意事項についてお話をいたします。健康診断などで尿検査を行う場合の参考になさってください。月経の前後は尿検査をしない
女性の場合、生理前後での採尿は血が混ざる可能性が高いです。見た目では混ざっていないと思っても、経血が混入することは少なくありません。正確な評価ができないため、月経前後2、3日はなるべく尿検査をしないようにしましょう。検査前に運動をしない
尿検査をする前に激しい運動をすると、血尿が出ることがあります。尿検査の前にはなるべく運動をしない方が良いでしょう。また、体調が悪い時を避ける
風邪をひいていたり、体調が悪い時には尿潜血は陽性になる事があります。可能であれば、体調を整えてから、健康診断などの尿検査を受けることをお勧めします。あらかじめ、尿検査をすると分かっている場合には、前日から体調を整えましょう。 ここで上げた対処法は、あくまで尿潜血検査を正確に行うためのコツです。正しい方法で尿検査を行い、それでも尿潜血が陽性となった場合には腎臓内科・泌尿器科を受診して相談することをお勧めします。女性の尿潜血を予防する方法
尿潜血検査陽性となるような疾患を予防する方法についてここでは解説いたします。膀胱炎の予防
女性の方で尿潜血が陽性になる原因として膀胱炎であることは比較的多いです。そのため、膀胱炎とならないように普段から気を付けることは非常に重要です。膀胱炎をなりやすい方では、なるべく水分を多く摂り、尿意をあまり我慢せずどんどん排尿することも大切です。尿路結石の予防
尿潜血陽性の原因として尿路結石が考えられる場合には、尿路結石を再発させないように以下のことに気をつけましょう。①食事以外に水分は1日2L以上飲みましょう。②バランスの良い食事をし、尿路結石の原因にもよりますが、動物性タンパク質、塩分、シュウ酸、プリン体糖分や脂質を過剰に摂取しないようにしましょう。③食物繊維、カルシウム、クエン酸、マグネシウムを適量摂取しましょう。 これらの注意点は結石の種類により異なるため、泌尿器科で自分に合った予防法を相談してみましょう。婦人科での定期検診
尿路だけではなく、婦人科系の病気のために尿に血が混ざることも多いです。そのため、定期的に婦人科検診を受け、異常を早めに見つけることも大切です。 これらの予防法はあくまで一例です。糸球体腎炎や尿路系のがんなどは予防法がはっきりしていないものも多く、尿潜血検査で陽性を指摘されたら早めに受診をして早期に発見し、治療をすることが非常に大切です。「女性の尿潜血の原因」についてよくある質問
ここまで女性の尿潜血の原因について紹介しました。ここでは「女性の尿潜血の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
尿潜血が出やすい人の特徴について教えてください。
伊藤 陽子(医師)
女性の場合、膀胱炎を起こしやすい方では尿潜血が陽性となりやすいと言えます。慢性化する場合もあるため注意が必要です。膀胱炎を繰り返す場合には泌尿器科で相談をしてみましょう。
女性が尿潜血+と診断されることは多いのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
人間ドックの結果から集計した報告でも、女性の方が尿潜血の陽性率が高いとの結果でした。この結果は、60歳以降の尿潜血の陽性率がより高いことから、月経の影響のみではないと考えられます。
編集部まとめ 尿潜血陽性となったらまずは再検査を!
女性で尿潜血が陽性となった場合、月経の影響、子宮からの出血、膀胱炎の可能性があります。また、そのほかにも糸球体腎炎や尿路結石、尿路系の悪性腫瘍などの病気もあり得ます。いずれも尿潜血が陽性というだけでは区別がつかないため、まず再検査を行い、必要であればより詳しく検査を行って原因を調べることが大切です。尿検査で尿潜血陽性を指摘されたら、泌尿器科、腎臓内科を受診しましょう。「女性の尿潜血」の異常で考えられる病気
「女性の尿潜血」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。婦人科の病気
- 子宮がん
- 月経




