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「胃カメラ検査で鎮静剤が効かない」人の特徴はご存じですか?医師が徹底解説!

 更新日:2025/10/20
「胃カメラ検査の鎮静剤が効かない」人の特徴はご存じですか?医師が徹底解説!

胃カメラ検査の鎮静剤が効かない理由とは?Medical DOC監修医が鎮静剤が効きやすい人・効きにくい人の特徴・鎮静剤を使用するメリット・デメリット・副作用などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

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胃カメラ(胃内視鏡検査)とは?

胃カメラ(胃内視鏡検査)は、上部消化管(食道・胃・十二指腸)の状態を観察する検査です。胃カメラ検査の方法としては、口から内視鏡を入れる「経口内視鏡」と、鼻から内視鏡を入れる「経鼻内視鏡」の2種類があります。 検査に伴う苦痛を和らげるため、鎮静剤が用いられることがあります。今回の記事では、鎮静剤が効かない理由について解説します。

胃カメラ検査の鎮静剤が効かない理由とは?

胃カメラの時に使用する内視鏡の太さは、以下のような違いがあります。
・経口内視鏡:8~9mm
・経鼻内視鏡:5~6mm
内視鏡の太さ自体は、以前に比べると細くなっています。しかし、嘔吐感や痛みなどの苦痛がある場合もみられます。そのような方々に対しては、胃カメラ検査時に鎮静剤を使用します。鎮静剤は麻酔の一種で、眠ったような状態で検査でき、嘔吐症状などの検査中における苦痛を軽減する役割があります。 胃カメラ検査では、患者の不安や苦痛を和らげるために以下の鎮静剤が使われます。
1. ベンゾジアゼピン系
例:ミダゾラム、ジアゼパム
特徴:リラックス効果が高く、眠ったような状態で検査を受けられます。
2. デクスメデトミジン
特徴:呼吸を抑制しにくく、軽い鎮静状態を保つのに適しています。
3. プロポフォール
特徴:効果が速く、深い鎮静が得られますが、呼吸や血圧への影響に注意が必要です。
こうした鎮静剤は、患者の体質や状態に合わせて選ばれます。しかし、以下のような鎮静剤が効かない理由もあるため、注意が必要です。

鎮静剤の量が少ない

鎮静剤は、それぞれの種類ごとに目安量があり、患者の年齢、性別、体重などに基づいて適切な量が投与されます。鎮静剤が適正量よりも少なかった場合は、効果が軽減する場合があります。ただ、効果が低いからといって、過剰に投与してしまった場合は、副作用が出てしまう危険性が高まるため注意が必要です。

鎮静剤の効果が出るまでの時間が足りない

鎮静剤は投与しても、すぐに効果が出るわけでなく、種類によって効果が出るまでの時間に差があります。十分な鎮静状態になる前に検査が始まってしまうと、効果が感じにくい場合があります。鎮静剤の効果を感じない場合は、鎮痛剤が出るまでの時間調整や、薬剤の種類・量の見直しなどを行います。

アルコールをたくさん飲んでいる場合

ベンゾジアゼピン系の薬剤は、脳内に作用する経路がアルコールと同じといわれています 。そのため、日常的にたくさんアルコールを摂取している方の場合、ベンゾジアゼピン系の鎮静剤が効きにくい場合があります。

心理的要因

胃カメラへの強い不安や緊張があると、鎮静剤が効きにくいことがあります。事前に医師に不安を相談しましょう。

薬剤の種類が合っていない

胃カメラの時に使用する鎮痛剤は、先ほどご紹介したようにさまざまな種類があります。鎮静剤にはミダゾラムやプロポフォールなど複数の種類があり、患者ごとに適したものを選ぶ必要があります。各個人に合ったものではない場合は、効果が得られにくくなります。

胃カメラの鎮静剤が効きやすい人の特徴

以下の特徴に該当する人は、胃カメラの鎮静剤が効きやすい場合があるため、注意が必要です。

内臓機能が低下している人

内臓の機能が低下している場合は、鎮静剤の効果が長時間になってしまう傾向にあります。例えば、肝臓の機能が低下していると、鎮静剤が体内で分解されにくくなるため、鎮静剤の効果が持続しやすくなるといわれています。

体重が軽い人

一般的に体重が軽いと鎮静剤が強く効く傾向があります。これは、鎮静剤の量が同じでも、体重が軽いと血中濃度が高くなりやすいためと考えられています。

高齢者

加齢に伴って、肝臓や腎臓の機能が低下するため、薬の代謝や排泄が遅くなります。そのため、高齢者は鎮静剤の影響を受けやすく、少量でも強く作用する場合があります。

ふだんからお酒をあまり飲まない人

お酒をあまり飲まない人は薬に対する耐性が低いため、鎮静剤の効果を強く感じやすい可能性があります。また、覚醒にも時間がかかる場合があり、検査後にしばらくぼんやりした状態が続く可能性があるため注意が必要です。

睡眠不足や疲れがたまっている人

睡眠不足や疲れがたまり、脳が疲れていると、鎮静剤によって、通常よりも強く眠気を感じやすくなります。また、疲れていると血圧が下がりやすい状態にも関わらず、鎮静剤の作用によってさらに低血圧を引き起こす危険性もあります。その結果、検査後にめまいやふらつきを感じやすくなることがあるため、前日はしっかり睡眠をとり、体調を整えておきましょう。

胃カメラの鎮静剤が効きにくい人の特徴

以下のような条件に該当する人は、胃カメラの鎮静剤が効きにくいため注意が必要です。

睡眠薬や抗不安薬を服用している人

普段から、抗不安薬・うつ病・睡眠剤などの精神系の薬を飲んでいる場合は、鎮静剤の効果が減弱する場合があります。これらの薬は、鎮静剤と同じ作用の課程を多く持っているため、長期間服用していると耐性ができ、鎮静剤の効果が弱くなる場合があります。そのため、睡眠薬や抗不安薬を服用している場合は、事前に医師に伝えて、鎮静剤の種類や量を調整してもらいましょう。

緊張しやすい人

過度の緊張や不安があると、交感神経が活性化し、鎮静剤の効果が効きにくい場合があります。特に、胃カメラに対して強い恐怖心を持っている場合は、鎮静剤が効きにくく、覚醒しやすい傾向にあります。

普段からアルコールをよく飲む人

アルコールを日常的に摂取している場合は、鎮静剤に対して耐性ができていることが多いため、鎮静剤の効果が弱まる可能性があります。 検査前には、飲酒習慣を医師に伝え、適切な鎮静剤の量を調整してもらうことが重要です。また、必要に応じて、異なる種類の鎮静剤を併用して効果を高める場合もあります。

カフェインを多く摂取する人

コーヒーやエナジードリンク、緑茶などにはカフェインが多く含まれています。カフェインを普段から多く摂取しているとベンゾジアアゼピン系の鎮静剤の効果が弱まる可能性があります。そのため、検査前日はカフェインの摂取をなるべく控えた状態で検査を受けましょう。

一部の薬を長期間内服している人

抗てんかん薬(カルバマゼピンなど)や抗結核薬の一つであるリファンピシンなどは、肝臓の代謝酵素であるCYP3A4を誘導します。すると、鎮静剤の一つであるミダゾラムの分解を促進します。その結果、鎮静剤の分解が早まり、効果が短くなる可能性があります。

胃カメラで鎮静剤を使用するメリット

鎮静剤を使用して胃カメラの検査をすることは、以下のようなメリットがあります。

苦痛を軽減できる

鎮静剤を使用することで、胃カメラ検査時に伴う苦痛や不安を大幅に軽減できます。特に、内視鏡を入れる際の不快感を和らげることができるため、検査を受ける際の心理的負担が軽くなります。

検査の質が高くなる

嘔吐反射が抑えられることで、胃に十分な空気を入れることができるため、胃の隅々まで観察できます。結果として検査の質が高くなり、治療も行いやすくなります。

患者の精神的な安心感が得られやすい

鎮静剤を使用すれば、患者は眠っている間に検査が終わります。特に以前に胃カメラ検査で辛い経験をした人にとっては、精神的な安心感を得ながら検査ができるというメリットがあります。

胃カメラで鎮静剤を使用するデメリット

胃カメラで鎮静剤を使用するのは、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

検査後は少し休む必要がある

鎮静剤の効果が切れるまでに時間がかかるため、検査後にしばらくの間、意識がはっきりしない状態が続く場合があります。一般的には検査後もすぐには帰宅できず、30分~1時間程度休む必要があります。

運転や仕事に支障がある

検査後にゆっくり休んで、意識やふらつきなどなくても、判断力がいつもより低下している可能性があるため、検査後は車などの運転は控える必要があります。仕事で車などの乗り物を使用する場合は、その日の仕事に支障が出る場合もあるため注意しましょう。

検査時の記憶がなくなる場合がある

鎮静剤投与前後の一時の記憶がなくなることがあります。このことは、場合にとっては、患者の心理的な不安を引き起こす原因となる場合があります。

胃カメラの鎮静剤の副作用

胃カメラの鎮静剤には以下のような副作用が生じる場合があるため、注意が必要です。

眠気が残る

鎮静剤の効果が残っている場合は、検査後にも強い眠気を感じる場合があります。

吐き気がある

鎮静剤の量が多かったり、体調不良や寝不足だったりした状態の場合は、麻酔から覚めた後に、吐き気が現れることがあります。

頭痛を生じる

一部の患者には、頭痛が生じる場合があります。

呼吸が浅くなる

鎮静剤によって、呼吸が浅くなったり、呼吸回数が減ったりする場合があります。特に、高齢者や基礎疾患を持つ場合は、発生しやすいため注意が必要です。

血圧が低下する

血圧が低下した結果、めまいやふらつきを感じる場合があります。

「胃カメラ検査の鎮静剤が効かない理由」についてよくある質問

ここまで胃カメラ検査の鎮静剤が効かない理由について紹介しました。ここでは「胃カメラ検査の鎮静剤が効かない理由」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃カメラの鎮静剤が効かない際はどうすればいいのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

鎮静剤の量が不足している可能性があるため、医師に相談し、適切な量を調整してもらうことが重要です。また、体質的に鎮静剤が効きにくい方もいるため、異なる種類の鎮静剤を組み合わせて使用することが推奨されます。特に、普段から抗不安薬や睡眠薬を服用している方は、鎮静剤が効きにくい場合があるため、医師に一度相談しましょう。

胃カメラの鎮静剤はどれくらいで効き始めるのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

一般的に数分後で効果が現れます。しかし、効き始めるまでの時間には個人差があり、体質や体調、使用する薬剤の種類によっても異なります。なお、鎮静剤の作用時間は約1時間程度です。鎮静剤の効き方に不安がある場合は、事前に医師と相談し、自分に適した方法を選ぶことが重要です。

まとめ 胃カメラで鎮静剤を使用するメリットは多い

胃カメラで鎮静剤を使用すると、患者が持つ検査時の不安感が軽減するだけでなく、医師も余裕を持てるため、検査の質も上がるなど多くのメリットがあります。ただ、鎮静剤は効きにくい場合やデメリットも少なからず存在します。そのため、胃カメラを行う前に、詳細な情報を医師に伝えるようにしましょう。定期的な胃カメラ検査を行うことで、胃がんなど多くの病気の早期発見と治療を行うことができます。

「胃カメラ」の異常で考えられる病気

「胃カメラ」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器内科の病気

これらの病気は胃カメラ検査によって発見できます。定期的な検査を受けることで、早期発見に繋がります。また、小さな範囲の腫瘍であれば、その場で生検と治療を兼ねて摘出することが可能です。

この記事の監修医師