目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 健康診断
  4. 「バリウム検査は何歳から」受けるべき?胃カメラとの違いについても医師が解説!

「バリウム検査は何歳から」受けるべき?胃カメラとの違いについても医師が解説!

 公開日:2025/07/23
「バリウム検査は何歳から」受けるべき?胃カメラとの違いについても医師が解説!

バリウム検査は何歳から受けるべき?Medical DOC監修医がバリウム検査当日の流れや検査後の副作用・結果の見方・発見できる病気などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

バリウム検査とは?

バリウム検査は、造影剤であるバリウムと発泡剤を飲んで胃を膨らませ、X線を当てて食道や胃、十二指腸の様子をチェックする検査です。正式には上部消化管X線検査と呼ばれています。 バリウム検査と聞くと、抵抗を感じる人もいるかもしれません。発泡剤を飲むのでげっぷを我慢しなければならないこと、バリウムの味が苦手な人がいることが原因でしょう。バリウムの味が苦手な人のために、いちごやチョコ、バナナや抹茶など味付きのバリウムを採用している医療機関もあります。また、バリウム検査に要する時間は数分ほどです。短時間で終わるため、あまり心配しすぎる必要はありません。

バリウム検査は何歳から受けるべき?

バリウム検査を何歳から受けるべきかという決まりはありません。特に従業員に対する健康診断で胃の検査が必須項目は指定されていません。 一方で、市町村の胃がん検診では40歳以上の方に2年に1度、バリウム検査または胃の内視鏡検査を受けることが推奨されています。

バリウム検査と胃カメラの違いとは?

バリウム検査と胃カメラは、どちらも胃の状態を調べる検査です。バリウム検査はバリウムを胃の表面に薄く広げて胃の形や凸凹を観察し、胃カメラは胃にカメラを直接入れて観察します。どちらも変わらないように思えるかもしれませんが、下記のような違いがあるので確認しておきましょう。
バリウム検査 胃カメラ
検査方法 バリウムと発泡剤を飲み、撮影台に上がってX線を照射し、胃の状態を観察する。 意識がある状態または鎮静剤を投与された状態で口や鼻からカメラを挿入し胃の状態を観察する。
特徴 胃全体の変形を確認しやすい。検査時間が短く、体への負担が少ない。X線を照射するため被爆する。 わずかな粘膜の隆起や凹みなどを認識できる。がんが疑われる組織があればその場で採取できる。人によっては苦痛に感じることがある。
費用 安い バリウム検査より高い

35歳からバリウム検査を受診する義務があるの?

35歳になってもバリウム検査の義務はありません。労働安全衛生規則第44条において定期健康診断項目は以下の通りです。
  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  • 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  • 血圧の測定
  • 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  • 貧血検査(血色素量、赤血球数)
  • 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
  • 血中脂質検査(LDL・HDLコレステロール、TG)
  • 血糖検査(ヘモグロビンA1cでも可)
  • 心電図検査
このように、バリウム検査はありません。 しかし、協会けんぽが実施している生活習慣病予防検診では、35歳以上を対象とした検診にバリウム検査が組み込まれています。なお、生活習慣病予防検診の受診義務はありません。

34歳以下はバリウム検査を受診しなくてもいいの?

34歳以下も同様に、定期健康診断にバリウム検査は含まれません。 多くの自治体で、40歳以上の人の場合、年に1回のバリウム検査が推奨されています。34歳位以下の方でも、健康診断のオプションとしてバリウム検査が追加できる場合もあります。 34歳以下の方でも、胃がんの方が家族にいるなど、ご不安な場合には胃がん検診としてバリウム検査を受けてみるとよいでしょう。

バリウム検査前日や当日の流れ・注意点

当日になって慌てることがないよう、あらかじめ以下の点についてチェックしておきましょう。

バリウム検査前日の注意点

バリウム検査の前日は、食事を20時から22時頃までに済ませるようにしてください。具体的な時間については医療機関側からから指示があります。水やお茶などの水分は就寝前までなら摂っても構いません。ただし、アルコールは避けましょう。アルコールには利尿作用があります。そのため、腸内の水分が減るためにバリウムが固まりやすくなってしまうからです。

バリウム検査当日の流れ

バリウム検査当日の流れは、以下の通りです。 1.バリウムと発泡剤を飲む 2.撮影台に上がり、体位を変換する 3.X線を照射する 4.下剤を飲む バリウムと発泡剤を飲んだ後は、バリウムを胃の表面全体に付着させるため、撮影台の上でさまざまな体位をとる必要があります。検査に要する時間は、10〜20分ほどです。

バリウム検査当日の注意点

バリウム検査当日は、食事を摂らないでください。朝から絶食ですので注意しましょう。検査の2時間前までならコップ1杯程度の水分でしたら摂取できます。当日は、検査が終わるまで喫煙も避けてください。喫煙すると胃が刺激を受け、胃酸の分泌が促進され、バリウムが腸へと押し出されやすくなります。

バリウム検査を受診

バリウム検査は短時間で胃の様子を観察できたり苦痛が少なかったりなどのメリットがあります。しかし、すべての人が受診できるわけではありません。以下に該当する方はバリウム検査を受けられない場合があります。

バリウムなどにアレルギーがある人 できない人の特徴

バリウムや発泡剤にアレルギーがある人は、バリウム検査は原則不可です。これまでのバリウム検査で蕁麻疹やかゆみ、息苦しさなどの症状が出たことがある人は、バリウムアレルギーの可能性があるので受診を控えてください。

水分制限がある人

透析中など水分の摂取量に制限がある人は、バリウムの排出が困難になる恐れがあるため検査は不可です。

ひどい便秘の人

もともと便秘がある人は、バリウム検査を受けても良いか医師に確認してください。便秘の人がバリウム検査を受けると、腸にバリウムが溜まり消化管穿孔や腸閉塞、虫垂炎など重篤な合併症を引き起こすことがあります。

妊婦または妊娠の可能性がある人 できない人の特徴

妊娠中の人または妊娠の可能性がある人については、バリウム検査は原則不可です。バリウム検査ではX線をお腹に照射するため、胎児への放射線被曝のリスクがあるからです。

授乳中の人

バリウム検査後には、速やかにバリウムを排出するために、下剤を飲む必要があります。下剤が母乳に影響を与える可能性があります。そのため、授乳中の人については、バリウム検査を受けられないことがあります。授乳中の人はバリウム検査が可能かどうか、医療機関に事前に問い合わせするようにしましょう。

バリウム検査後に現れる副作用

バリウム検査後には、副作用が現れることがあります。検査後に気分が悪くなったりお腹が痛くなったりした場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

便秘

バリウムが腸内で固まると、便秘になることがあります。検査後は下剤を速やかに服用し、水を多めに摂りましょう。処方された下剤を服用しても3日以上白っぽい便が出ない場合は、内科や消化器内科、胃腸科などで相談してください。

消化管穿孔

消化管穿孔とは、消化管に穴が開く病気のことです。バリウムがうまく排出されず腸内で固まると、消化管穿孔を起こす可能性があります。突然の激しい腹痛、吐き気や嘔吐などの症状が見られる場合はすぐに消化器内科または消化器外科を受診してください。

腸閉塞

腸閉塞は、腸の内容物が詰まってしまう病気です。バリウムが腸内に長時間とどまると、水分が吸収されて固くなり、腸閉塞を起こす可能性があります。腹痛や吐き気、腹部膨満や発熱などの症状が見られたらすぐに消化器内科または消化器外科を受診してください。

気分不快 副作用

ごくまれに、バリウム検査後に気分不快の症状が出る人がいます。一時的な症状であることが多く緊急性はありませんが、気分が悪くなったときはすぐに医師へ相談してください。

胃痛

発泡剤の影響で、胃痛が生じることがあります。これは、発泡剤によって胃が拡張するためです。数分間休むと落ち着くことが多いですが、症状が続くときは消化器内科を受診しましょう。

バリウム検査の結果の見方

バリウム検査を受けた後に気になるのが、結果の内容でしょう。ここでは、異常があった際に記載される病気や判定結果の見方を紹介します。

バリウム検査の結果・判定・カテゴリーの見方

バリウム検査の結果には「要精密検査」もしくは「精密検査不要」と書かれていることが一般的です。精密検査が不要の場合、特に問題はありません。要精密検査と書かれている場合は、一緒に下記のような病名が記されていることがあります。
病名 症状
巨大レリーフ 胃にあるひだが大きくなった状態。
慢性胃炎 胃粘膜に持続的な炎症がある状態。ピロリ菌感染が疑われる。
萎縮性胃炎 胃粘膜に慢性炎症があり胃腺細胞の減少がみられる状態。ピロリ菌感染が続いた後にみられることが多い。
びらん性胃炎 潰瘍よりも浅いびらんがある状態。
ポリープ(疑い) 胃粘膜が隆起している状態。良性のことがほとんど。
憩室〔けいしつ〕 食道や胃などの壁に小さな袋ができている状態。
隆起性病変(疑い) 胃や十二指腸などの粘膜の表面が盛り上がった状態。
食道裂孔ヘルニア 食道裂孔から胃の一部が食道側に飛び出している状態。
潰瘍瘢痕(疑い) 胃潰瘍や十二指腸潰瘍が治った跡がある状態。
粘膜下腫瘍 胃粘膜の下に腫瘍ができている状態。
瀑状胃(ばくじょうい) 胃の上部が大きく膨らみ、背中側へと折り曲がった状態。
逆流性食道炎 胃酸などが逆流して食道の粘膜に炎症が起きている状態。
胃下垂 胃が正常よりも下がっている状態。
胃角部変形 胃の形がU字型ではなく直線になっている状態。
球部変形 十二指腸球部に潰瘍ができて変形している状態。
食物残渣 胃の中に食べ物が残っている状態。

バリウム検査で要精密検査と診断されたら?

バリウム検査で要精密検査と診断された場合は、より正確に胃の状態を見るために胃カメラを受ける必要があります。そのため、要精密検査と書かれていた場合は、近隣の医療機関を受診して検査を受けるようにしましょう。

「バリウム検査」で発見できる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「バリウム検査」に関する病気を紹介します。 どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

胃がん

胃がんは、胃の粘膜にできるがんのことです。初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。胃がんのリスクとしては、下記のものが知られています。 ・ヘリコバクター・ピロリ菌への感染 ・喫煙 ・飲酒 ・塩分摂取量過多 胃がんに対して自分で対処することはできません。治療法には、胃切除、化学療法、内視鏡治療などがあります。胃の痛みや不快感、胸焼けや吐き気、食欲不振や血便などの症状が続くようでしたら、消化器内科または消化器外科を受診しましょう。

食道がん

食道がんは、食道の内側を覆っている粘膜の表面にできるがんのことです。喫煙や飲酒が原因になりやすいことが分かっています。自分で対処する方法はありません。内視鏡治療、手術、放射線治療、薬物療法、化学療法などを行って治療します。飲食時に胸の違和感がある、体重が減っている、声がかすれる、胸や背中が痛いなどの症状が続くときは、消化器内科を受診しましょう。

胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸に潰瘍ができる病気です。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染などが原因となります。香辛料が多い食事を避け、アルコールやタバコを控えると症状の悪化を防ぐことが可能です。薬物療法、食事療法、手術療法などを用いて治療を行います。便が黒い、吐血などの症状がみられたら、早めに消化器内科や胃腸科を受診しましょう。

胃ポリープ

胃ポリープとは、胃の表面が盛り上がってできる病変のことです。一般的に症状はありません。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染、ストレス、加齢、遺伝などが原因となります。 胃のポリープ性病変の中でも、ヘリコバクター・ピロリ菌感染に関連した過形成ポリープの場合には、1年に1度の経過観察が勧められます。ピロリ菌除菌後にも大きくなる、がんが疑われる、貧血の原因になる、大きさが2cmを超えるなど場合、内視鏡治療を検討することがあります。

「バリウム検査は何歳から」についてよくある質問

ここまでバリウム検査は何歳からかについて紹介しました。ここでは「バリウム検査は何歳から」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃のバリウム検査は何歳以上から受診した方がいいのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

胃のバリウム検査は40歳以上の人は年に1回受けることが推奨されています。

バリウム検査は受診しなくてもいいのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

健康診断や人間ドックにおいて、バリウム検査は必須項目ではありません。受診の義務はないため、気になる症状がある人や念のため異常がないか知りたい人は検査を受けるとよいでしょう。

まとめ バリウム検査は必須検査ではない!

男性も女性も、バリウム検査は健康診断や人間ドックの検査で必須項目には含まれていません。多くの自治体で、40歳以上の人は年に1回バリウム検査を受けるように推奨されています。気になる症状がある人、胃に異常がないか不安な人はバリウム検査を受けるとよいでしょう。バリウム検査の結果で要精密検査となった場合は、早めに近隣の医療機関を受診してください。

「バリウム検査」の異常で考えられる病気

「バリウム検査」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。 バリウム検査は、これらの病気のスクリーニング検査として広く用いられている検査です。気になる症状があるときは、念のため検査を受けておくようにしましょう。

この記事の監修医師