「肺がん検診の費用」はどのくらい?保険適用の条件についても解説!【医師監修】

胃がん検診の費用はいくら?Medical DOC監修医が健診の保険適応の有無や会社員・自営業・後期高齢者が受診した場合の相場などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
肺がん検診の費用はいくらかかるの?
肺がんは、日本ではがんによる死亡原因の上位を占めており、40歳代から特にその患者数は増えていきます。肺がん検診は肺がんによる死亡を減らすために必要性の高い検診です。
肺がん検診によるがんの発見率を調べるために、毎年厚生労働省が調査を行なっています。令和4年度地域保険・健康増進事業報告の概要によると、令和3年度に肺がん検診を受けた方は3,051,356人でした。その結果、受診者のうち、1.51%(45,940人)の方が要精密検査となり、要精密検査者の1.77%(811人)の方から肺がんが発見されました。さて、今回の記事では、肺がん検診方法や費用、さらに何歳から受けるべきかなどについて解説します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
肺がん検診の費用
肺がん検診の検査項目と、費用の目安について以下の表で示します。
| 検査内容 | 費用の目安(全額自己負担) | 費用の目安(3割負担) | 費用の目安(1割負担) |
|---|---|---|---|
| 胸部X線検査 | 2,000〜3,000円程度 | 600〜900円程度 | 200〜300円程度 |
| 喀痰(かくたん)検査(痰を調べる検査) | 4,000〜5,000円程度 | 1,200〜1,500円程度 | 400〜500円程度 |
| CT検査 | 10,000〜30,000円程度 | 3,000〜9,000円程度 | 1,000〜3,000円程度 |
| 腫瘍マーカー | 3,000〜4,000円程度 | 600〜1,200円程度 | 300〜400円程度 |
肺がん検診の費用の目安・保険適用
肺がん検診の費用の目安としては、胸部X線検査のみの場合には数百円から数千円程度となります。喀痰検査が追加されると、さらに費用がかかります。医師が必要と判断した場合には保険適用となります。しかし、健康診断として行われる肺がん検診は通常保険診療の対象外となり自費診療となります。
40歳以上の自治体補助で受診した肺がん検診の費用の目安
40歳以上の方が自治体補助のがん検診を受ける際、その自治体によっても費用は異なるものの、低額で受けられることが多いです。例えば、大阪市では無料(喀痰細胞診は400円)です。名古屋市では500円、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳の方は0円となっています。
自営業など個人で受診した肺がん検診の費用の目安・保険適用がないと自費?
自営業の方でも、医師が判断し必要とされた場合の肺がん検診は保険適用となります。一方で、健康診断として肺がん検診を受けた場合は、基本的には自費負担となります。
後期高齢者が受診した肺がん検診の費用の目安・保険適用で1割負担になる?
医師が必要とみなした際の肺がん検診は、保険適用です。75歳以上の後期高齢者の方は、医療費の窓口負担割合は1割、一定以上の所得がある方は2割負担です。健康診断として肺がん検診を受ける際には、原則自費負担となります。
再検査・要精密検査を受診した場合の費用の目安・保険適用で3割負担になる?
健康診断の一環として肺がん検診を受け、再検査や要精密検査となった場合、その受診にかかる費用は医療保険の適用となります。そのため、小学校入学後から69歳までの方は3割負担、70歳から74歳までの方は2割負担、75歳以上の方は1割負担となります。
肺がん検診の目的と検査項目
それでは、肺がん検診の目的と検査項目について解説し 述べます。
肺がん検診の目的
肺がん検診の目的は、肺がんを早期発見・治療することによる、肺がんによる死亡リスクの低下にあります。
肺がん検診の検査内容(胸部X線検査など)
肺がん検診は、40歳以上の方は1年に1回の頻度で受けるように推奨されています。胸部X線検査は、胸のレントゲン写真を撮影するもので、肺がん検診の基本です。大きく息を吸い、しばらく息を止めて撮影します。胸部X線検査は放射線を使う検査ですが、その被爆量はとても少なく、健康被害はほとんどないとされています。この検査の際、服装の注意点としては、レントゲンに映り込むような金属類は取り外す必要があります。そのため、特に女性の場合には下着は外した状態にしましょう。食事制限は特にありません。タバコをたくさん吸う方は、喀痰細胞診という検査の追加も勧められています。具体的には、50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600位以上の方です。3日間、朝起きた際の痰を自分で専用容器に入れ、提出します。また、施設によっては低線量CTという放射線量を低くしたCT撮影を行なっています。しかし、現時点では死亡率を減らす効果を判断する証拠は不十分な段階です。 肺がん検診で要精密検査と判定されたら、医療機関で精密検査(二次検査)を受けるようにしましょう。検査内容には、血液検査や胸部CT、気管支鏡検査などがあります。
肺がん検診の検査項目
一般的な肺がん検診の項目には、以下のようなものがあります:
・胸部X線検査
肺の腫瘍性病変や肺炎、肺結核などの病変を見つけることが可能です。肺の表面に近い場所に近い病変を検出することが特に得意です。その他、気胸などの異常を見つけることもできます。
・喀痰細胞診
痰をとり、その中にがん細胞がいるかどうか顕微鏡を使って調べます。特に、気管支や太い気管支に発生するがんを発見するために有用です。
・低線量胸部CT検査
CT検査は、体を輪切りにしたような画像を取り、病気があるかどうかを調べることができます。低線量胸部CTは、通常のCT検査よりも放射線の量を低くし、被曝量を抑えた検査です。胸部X線検査では見つけにくい、心臓や横隔膜などと重なる病変や、早期の小さな病変などを見つけることが可能な場合があります。しかし、今の時点では、まだ肺がんによる死亡率を下げるというエビデンスはありません。
・腫瘍マーカー
腫瘍マーカーは、がん細胞が作る物質やがんに対して正常な細胞が作る物質のことで、血液や尿などから採取できます。
腫瘍マーカーは肺がんの早期発見には不向きですが、診断の補助や治療効果判定、再発のチェックなどに役立ちます。肺がん検診のオプションとして受けられる場合があります。例えば、CEAやシフラ、ProGRPなどの項目があります。
肺がん検診でわかる病気・疾患は?
ここではMedical DOC監修医が肺がん検診でわかる病気・疾患について解説します。
肺がん
肺がんは、肺にできる悪性腫瘍のことです。死亡率が全てのがんの中で最も高く、治療が難しいものです。肺がんの原因の多くは喫煙で、その他受動喫煙や環境、食生活、放射線、約薬品なども挙げられます。肺がんが進行すると、咳や痰などの症状が現れます。しかし、日本人では無症状の段階で、肺がん検診や他の病気で検査を受けて偶然発見されることが多いです。
治療法としては、手術による腫瘍の摘出、放射線治療、化学療法を組み合わせていきます。さらには最近では免疫療法も選択肢に加わっています。進行度や患者の体調に応じて適切な治療が検討されます。長引く咳や血痰、胸痛、息切れなどの症状がある場合は、早急に病院を受診する必要があります。呼吸器内科を受診しましょう。
肺結核
肺結核は、結核菌によって引き起こされる感染症で、肺に炎症を起こします。発症は免疫力が低下しているときに見られやすく、感染経路は飛沫感染が主です。抗結核薬を数カ月間にわたり服用することで治療を行います。感染拡大を防ぐためには医師の指示を確実に守ることが重要です。周囲への感染が懸念されるような場合(排菌している場合)には、感染のリスクが低くなるまで入院が必要です。この病気は長引く咳、微熱、寝汗、体重減少などの症状が現れるのが特徴ですので、これらが続く場合には早めに呼吸器内科を受診しましょう。
肺炎
肺炎は、細菌やウイルス、真菌などの病原体が肺に感染し炎症を引き起こす病気です。特に高齢者や免疫力が低下している人は発症リスクが高いです。同様に感染が原因となるものとして、急性気管支炎という病気もあります。これは、上気道炎(かぜ)が気管支にも及んだものです。急性気管支炎の多くはウイルス感染によるものですが、細菌感染が起こると肺炎になる場合もあります。これらの病気は症状が似ているため、胸部X線検査が正確な診断のために役立ちます。
また、肺炎が進行すると胸膜炎を引き起こすことがあります。胸膜炎とは、肺を覆う胸膜が炎症を起こす状態で、呼吸時に強い胸の痛みを伴うのが特徴です。治療法としては、抗生物質や抗ウイルス薬の投与が一般的で、症状の重さに応じて入院が必要になる場合もあります。発熱や咳、息切れ、胸痛などの症状が出た場合は、放置せずに早めに病院で診察を受けてください。一般内科または呼吸器内科が適切な受診先となります。
気胸
気胸は、肺が破れて空気が胸腔に漏れ、肺がしぼんでしまう病気です。原因としては、外傷によるもの、肺の基礎疾患によるもの、または自然発生するものがあります。
症状は突然の胸の痛みや息切れ、呼吸困難などがあります。特に、肺から空気が漏れ続け、心臓や肺を強く圧迫してしまう緊張性気胸になると、緊急性が高いです。
治療法は軽症の場合は安静による自然回復を待つこともありますが、重症の場合は胸腔ドレナージや手術が必要です。これらの症状が出た場合はすぐに救急科や呼吸器内科・外科を受診してください。
肺水腫
肺水腫は、肺に液体がたまることで呼吸困難を引き起こす病気で、主に心不全が原因として知られていますが、腎疾患や肺の炎症が原因となる場合もあります。この病気では酸素吸入や利尿薬の投与が治療に用いられ、場合によっては入院が必要になることもあります。
急激な息苦しさや胸の圧迫感、呼吸困難といった症状が現れた場合には、緊急の対応が求められます。肺水腫の場合は、循環器内科や呼吸器内科で治療を受けることが多いです。
「肺がん検診の費用」についてよくある質問
ここまで肺がん検診の費用などを紹介しました。ここでは「肺がん検診の費用」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がん検診のレントゲン費用はいくらくらいですか?
木村 香菜 医師
胸部レントゲン検査の費用は、保険適用がない場合、通常2,000円から3,000円程度が目安となります。ただし、自治体の補助がある場合や企業の健康診断として行う場合には、さらに安価または無料で受けられることもあります。
肺がんの検査費用は保険適用でいくらですか?
木村 香菜 医師
<肺がん検診自体は健康診断の一環として行われるため、一般的には保険適用外です。ただし、異常が見つかり、精密検査を受ける場合には保険適用となります。その際の自己負担額は、検査内容や医療機関によりますが、通常1,500円から3,000円程度(3割負担の場合)と考えておくと良いでしょう。
肺がん検診の費用は自費でいくらでしょうか?
木村 香菜 医師
自費で肺がん検診を受ける場合、検査の種類によって費用は異なります。胸部レントゲン検査のみであれば数千円程度ですが、低線量CT検査を含む場合は5,000円から30,000円程度が一般的です。検査内容が多いほど費用が高くなる傾向がありますので、事前に確認することをおすすめします。
40歳以上の男性で自治体の肺がん検診制度を使用すると費用はいくらですか?
木村 香菜 医師
多くの自治体では40歳以上の住民を対象に肺がん検診を実施しており、負担額は数百円から2,000円程度と非常に安価です。一部自治体では無料で受けられる場合もあります。ただし、費用や条件は自治体によって異なるため、具体的な金額についてはお住まいの自治体にお問い合わせください。
費用面で肺がん検診を受けるべきか悩んでいます。喫煙者は何歳から受けるべきですか?
木村 香菜 医師
喫煙者の場合、肺がんのリスクが高いため、50歳を過ぎたら定期的に肺がん検診を受けることをおすすめします。特に20年以上喫煙している方は早期発見のために40代から検診を検討することも有効です。自治体の補助や会社の健康診断を活用すれば、費用負担を軽減できます。喫煙歴がある場合は、早めの検診を心掛けてください。
まとめ 肺がん検診の費用はケースバイケース!
今回の記事では、肺がんの検診の費用の目安や項目、肺がん検診でわかる病気についても解説しました。肺がんは早期発見が大切な病気です。また、肺がん検診では他の病気が見つかる場合もあります。きちんと肺がん検診を受けるようにし、健康管理に努めましょう。また、咳や痰、特に血痰などの症状がある際には、医療機関を受診するようにしましょう。
「肺がん検診」の異常で考えられる病気
循環器内科の病気
- 心不全(肺水腫の原因として関連)
- 肺血栓塞栓症




